税金の基礎
社長が自分の会社に貸す物件に個人事業税はかかる?10室の基準と290万円
結論
社長が会社に貸す物件も、不動産貸付業・駐車場業の認定基準(大阪府なら住宅以外の建物10室、倉庫など独立家屋5棟、青空駐車場10台、建物の駐車場1台など)に当たれば個人事業税の対象です。ただし税額は、家賃収入から経費を引いた所得から事業主控除290万円を引いた額の5%なので、自宅の一室や車庫を会社に貸すだけなら0円です。税がかかるのは、第三者に貸しているアパートなどと合わせて10室以上になり、所得が290万円を超える場合です。
- 認定基準は貸付先を問わず、室数・棟数・台数・件数を合計して判定する。第三者へのアパート8室に会社への事務所2室を足すと10室で該当
- 店舗ビル10室のうち3室を会社に貸し、家賃収入900万円・経費300万円なら、個人事業税は年15.5万円
- 車庫など建物の駐車場は、大阪府の基準では1台から駐車場業に当たりうる。ただし家賃が年24万円程度なら事業主控除の内側で0円
このテーマの全体像 個人事業税の業種と計算方法
法人化すると、事業の売上は会社に移ります。それでも社長個人に収入が残るのが、会社に物件を貸す場合です。自宅の一室を事務所として、車庫を社用車の置き場として、倉庫を在庫置き場として会社に貸せば、家賃は社長個人の不動産所得になります。
個人事業税は法人化で消える税ですが、不動産貸付業・駐車場業に当たる貸し方をしていれば、社長個人に残ります。どこからが対象で、実際にいくらかかるのかを整理しました。
判定は「貸付先」ではなく、室数・棟数・台数で決まる
個人事業税の不動産貸付業・駐車場業に当たるかは、都道府県が認定基準で判定します。大阪府の基準は次のとおりです。
| 区分 | 貸付けの態様 | 基準 |
|---|---|---|
| 住宅 | 一戸建住宅以外(アパートなど) | 10室 |
| 住宅 | 一戸建住宅 | 10棟 |
| 住宅以外 | 独立家屋以外の建物(貸店舗・事務所など) | 10室 |
| 住宅以外 | 独立家屋(倉庫など) | 5棟 |
| 土地 | 住宅用 | 契約10件または2,000㎡ |
| 土地 | 住宅用以外 | 契約10件 |
| 併用 | 上記を合わせて貸す場合 | 室数・棟数・件数の合計10 |
| 面積・賃料 | 上記の基準未満の建物だけを貸す場合 | 貸付総面積600㎡以上かつ賃料収入年1,000万円以上 |
| 駐車場 | 建築物でない駐車場(青空駐車場) | 10台 |
| 駐車場 | 建築物である駐車場 | 1台 |
※ 空室・空きスペースも数に含める。賃料収入に一時的な権利金・更新料・消費税は含めない
基準の書き方は、誰に貸すかを問いません。同族会社や自分の会社への貸付けを除くという記載もありません。社長が自分の会社に貸す物件も、第三者に貸す物件と同じ数え方で判定されます。空室の数え方や自己使用の扱いはアパートの個人事業税は「10室」の数え方で決まるで、答申の事例とあわせて扱っています。
該当しても、事業主控除290万円がある
不動産貸付業・駐車場業はいずれも第1種事業で、税率は5%です。税額は、所得(青色申告特別控除を引く前)から事業主控除290万円を引いた額に5%を掛けて計算します。
| 不動産所得(青色申告特別控除の前) | 個人事業税 |
|---|---|
| 290万円 | 0円 |
| 300万円 | 5,000円 |
| 500万円 | 105,000円 |
| 800万円 | 255,000円 |
自分の会社に貸す程度の家賃では、所得が290万円に届かないことがほとんどです。該当するかどうかと、税がかかるかどうかは別の話です。法人化の前から貸している物件の不動産所得は本業の事業所得と合算され、290万円は1回しか引けません。法人化で家賃側に290万円が戻る仕組みは個人事業税は不動産所得と合算で計算しています。
貸し方ごとの判定と税額
一人社長が会社に貸す典型的な形で計算しました。
| 貸し方 | 認定基準での区分 | 不動産貸付業・駐車場業 | 家賃収入(年) | 必要経費(年) | 個人事業税 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自宅の一室を会社の事務所に(月5万円) | 住宅以外の建物1室 | 該当しない | 600,000円 | 100,000円 | 0円 |
| 車庫(建物)2台分を会社の社用車に(月2万円) | 建築物である駐車場(1台から該当しうる) | 該当 | 240,000円 | 50,000円 | 0円 |
| 倉庫2棟を会社に(月20万円) | 独立家屋2棟(5棟未満) | 該当しない | 2,400,000円 | 600,000円 | 0円 |
| アパート8室を第三者に+自宅の事務所2室を会社に | 住宅8室+住宅以外2室(合計10室) | 該当 | 6,000,000円 | 2,500,000円 | 30,000円 |
| 店舗ビル10室のうち3室を会社、7室を第三者に | 独立家屋以外の建物10室 | 該当 | 9,000,000円 | 3,000,000円 | 155,000円 |
※ 大阪府の認定基準で判定。税額は(家賃収入−必要経費−事業主控除290万円)×5%で、課税標準は1,000円未満、税額は100円未満を切り捨て
※ 計算は当サイトの計算エンジン(scripts/shacho-kaisha-kashitsuke-jigyozei.mjs)による
税がかかるのは下の2行です。どちらも、第三者への賃貸と会社への賃貸を合計して10室に届いています。法人化の前からアパートや貸店舗を持っている社長が、その一部や別の部屋を会社に貸すと、会社への分も室数に足されます。
逆に、会社に貸すのが自宅の一室や倉庫数棟だけなら、基準に届かないか、届いても事業主控除の内側です。
車庫は1台から「駐車場業」になりうる
大阪府の基準では、建築物である駐車場は1台から駐車場業に当たります。社長の家の車庫を会社の社用車置き場として貸すと、形式上は該当しうる区分です。
ただし家賃が月2万円なら年24万円で、事業主控除290万円の内側です。税額は0円になります。気にすべきなのは、車庫の貸付けを他の不動産所得と合わせたときに290万円を超えるかどうかです。
法人成りの前後で、個人事業税はどう変わるか
法人成りすると、事業の所得にかかっていた個人事業税は消えます。業種ごとの税率と、法人化で減る額は個人事業税がかからない業種があると法人化で事業税はいくら減る?で計算しています。
残るのは、会社に貸す物件の家賃を含む不動産所得のうち、認定基準に当たる部分だけです。法人成りの年は、個人事業の所得と、法人成り後の家賃収入が同じ年の個人の所得として並びます。事業所得と不動産所得で業種が違えば、税率もそれぞれで判定されます。
会社に貸す家賃の決め方と、所得税・社会保険の扱いは自宅を法人へ貸す家賃は経費で、消費税(事務所家賃は課税、住宅は非課税)は法人成りしても社長個人の消費税は2年残るで扱っています。
まとめ
- 社長が自分の会社に貸す物件も、不動産貸付業・駐車場業の認定基準で判定される。貸付先が同族会社であることで除かれる規定はない
- 判定は室数・棟数・台数・件数の合計。第三者へのアパート8室に会社への事務所2室を足すと10室で該当する
- 該当しても、税額は(所得−事業主控除290万円)×5%。自宅の一室や車庫を会社に貸すだけなら0円
- 店舗ビル10室のうち3室を会社に貸し、家賃900万円・経費300万円なら年15.5万円
- 不動産をすでに持っている人は、会社に貸す分も合わせて判定する前提で、法人化後の個人の税を見積もってください
よくある質問
自宅を社宅として会社に貸す場合はどうですか。
一戸建てなら1棟、マンションなら1室の住宅の貸付けで、10室・10棟の基準には届きません。他に貸している物件がなければ、不動産貸付業には当たりません。家賃収入は不動産所得として所得税・住民税の対象にはなります。
個人事業税の申告は別に必要ですか。
所得税の確定申告書の第二表にある事業税の欄を記入すれば、改めて個人事業税の申告書を出す必要はありません。都道府県が確定申告の内容をもとに税額を計算し、納税通知書を送ります。
判定の基準は都道府県で違いますか。
室数・棟数などの基本の基準は共通していますが、基準に届かない場合の面積・賃料の基準などは府県ごとに定めています。大阪府は600㎡以上かつ年1,000万円以上、千葉県は基準の2分の1以上の規模で年900万円以上かつ600㎡以上としています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。