税金の基礎

法人化で事業税はいくら減る?個人事業税と法人事業税を所得別に比較

結論

事業所得1,100万円(5%の業種)なら、個人事業税は年40万5,000円、法人化して最適な役員報酬(月54万円)を取ると法人事業税と特別法人事業税は合わせて16万4,400円で、年24万600円減ります。ただし個人事業税が非課税の業種では減る税がなく、法人化の損益分岐点は5%の業種の1,266万円から2,198万円へ932万円上がります。

  • 法人化で減る事業税は、事業所得500万円で10.3万円、1,100万円で24.1万円が山。所得が上がると法人に残る利益が増え、減る額は18万〜41万円で上下する
  • 損益分岐点(単身・東京23区)は、5%の業種1,266万円、4%(第2種)1,372万円、3%(あん摩・はり等)1,504万円、非課税2,198万円
  • 非課税の業種は、法人化すると事業税が「ゼロから新たにかかる」側になる。損益分岐の差は個人事業税の額よりずっと大きく開く

法人化すると、個人事業税(多くの業種で5%)はなくなります。その代わり、会社に残った利益に法人事業税と特別法人事業税がかかります。どちらが重いかは、事業所得と役員報酬の取り方で決まります。計算すると、法人化で減る事業税は思われているほど大きくありませんでした。

2つの事業税は、かかる所得が違う

項目個人事業税法人事業税(+特別法人事業税)
かかる所得事業所得+青色申告特別控除 − 事業主控除290万円法人の所得(役員報酬を引いた後)
税率業種により5%・4%・3%、法定業種外は非課税所得400万円までの部分3.5%・800万円までの部分5.3%・それ超7.0%(標準税率)
上乗せなし法人事業税額の37%(特別法人事業税)
業種による違いありなし(すべての業種にかかる)

いちばん大きな違いは、法人事業税には役員報酬が効くことです。個人事業税は事業の儲けそのもの(青色申告特別控除の前)から290万円を引いた額にかかります。一方、法人では役員報酬が経費になるので、報酬を多く取れば会社の所得は小さくなり、法人事業税も小さくなります。法人事業税の段階と特別法人事業税の計算は法人事業税は所得400万円まで3.5%で整理しています。

事業所得別:法人化で減る事業税は最大でも年24万円

当サイトの計算エンジンで、同じ人の個人事業税と、法人化して手取り最大の役員報酬を取ったときの法人事業税を並べました。5%の業種・東京23区・単身・経費200万円です。

事業所得個人事業税最適報酬(月)法人に残る利益法人事業税+特別法人事業税法人化で減る事業税法人化の実質差額(3期目以降)
500万円105,000円36.0万円5.1万円2,300円102,700円−49.8万円
700万円205,000円48.0万円41.9万円19,100円185,900円−31.2万円
900万円305,000円54.0万円159.5万円72,800円232,200円−18.4万円
1,100万円405,000円54.0万円359.5万円164,400円240,600円−13.1万円
1,300万円505,000円54.0万円559.5万円286,600円218,400円+3.6万円
1,500万円605,000円54.0万円759.5万円422,000円183,000円+23.9万円
2,000万円855,000円90.0万円792.6万円444,400円410,600円+67.3万円
2,500万円1,105,000円100.0万円1,166.6万円760,600円344,400円+136.1万円

※ 事業所得は売上−経費(青色申告特別控除の前)。実質差額は、所得税・住民税・社会保険料・税理士報酬の差まで含めた3期目以降の手取りの差。計算エンジンは法人事業税を当期の損金とみなす近似で計算している

事業所得1,100万円までは、法人化で減る事業税は10万円台から24万円へ増えていきます。ところが、そこから先は減る額がかえって小さくなります。1,300万円で21.8万円、1,500万円で18.3万円です。

理由は役員報酬にあります。この帯では最適な役員報酬が月54万円で止まり、増えた利益がそのまま会社に残ります。会社の利益が400万円を超えると法人事業税の税率が5.3%に上がり、特別法人事業税を含めた負担は7.261%になります。個人事業税の5%より重い部分が出てくるため、差が縮むのです。事業所得2,000万円で最適報酬が月90万円に上がると、会社の利益が再び抑えられ、減る額は41.1万円に戻ります。

もう1つ分かるのは、事業税の差だけでは法人化の損得は決まらないということです。事業所得1,100万円では事業税が24万円減っても、全体では13.1万円の不利です。社会保険料の増加や税理士報酬の差のほうが大きく効いています。

個人事業税の税率区分で、損益分岐点はここまで動く

個人事業税の税率は業種で決まります。法定の70業種のうち多くは5%で、畜産業・水産業・薪炭製造業の第2種事業は4%、あん摩・マッサージ・はり・きゅう等の医業類似業と装蹄師業は3%です。法定業種に当たらない事業(一部のライター業など)は非課税です。業種の線引きは個人事業税がかからない業種があるにまとめています。

税率区分ごとに、法人化の損益分岐点(実質差額がプラスに転じる事業所得)を出しました。

税率区分単身・40歳未満配偶者あり(無収入)40〜59歳白色申告
5%(第1種・第3種の多く)1,266万円1,016万円1,243万円793万円
4%(第2種:畜産業・水産業・薪炭製造業)1,372万円1,066万円1,347万円986万円
3%(あん摩・マッサージ・はり・きゅう等、装蹄師業)1,504万円1,268万円1,477万円1,157万円
非課税(法定業種外)2,198万円1,902万円2,277万円1,802万円

※ 東京23区・経費200万円・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。白色申告の列は青色申告特別控除なし

単身・40歳未満で見ると、5%の業種の1,266万円に対して、4%は106万円、3%は238万円、非課税は932万円上に動きます。

税率が1ポイント違うだけで、損益分岐点が100万円以上動くのは意外かもしれません。損益分岐点の近くでは、事業所得が増えても法人化の有利さは少しずつしか増えないためです。上の表でも、事業所得1,300万円から1,500万円へ200万円増えて、実質差額は20.3万円しか増えていません。個人事業税が年数万円軽いだけで、その差を取り返すのに事業所得が100万円単位で必要になります。

非課税の業種は、法人化で事業税が「増える」

非課税の業種では、差がさらに大きく開きます。個人のときは事業税ゼロなので減る税がなく、法人化すると会社の利益に法人事業税が新たにかかるからです。5%の業種の損益分岐点(事業所得1,266万円)の人なら、個人事業税48.8万円に対して法人事業税と特別法人事業税は26.4万円です。非課税の業種では、この26.4万円が丸ごと法人化の負担増になります。

非課税の業種の法人化を具体的に追った例はライターの法人化試算事例に、3%の業種は整骨院・鍼灸院の法人化にあります。

業種区分を入れずに試算すると、判定がずれる

当サイトの判定ツールは、初期設定では個人事業税5%で計算します。自分の業種が4%・3%・非課税に当たる場合は、詳細設定で業種区分を選ばないと、法人化を有利に見積もりすぎることになります。

逆に、5%の業種の人が「事業税が5%から3.5%に下がるから法人化」と考えるのも正確ではありません。法人化で減る事業税は、最適な役員報酬を取っても年24万円前後が上限で、社会保険料の増加はそれより大きくなることが多いからです。事業税は判断材料の1つとして、全体の手取りで比べてください。自分の売上と経費、業種区分を入れて確かめるのが確実です。

まとめ

  • 個人事業税は「事業所得+青色控除−290万円」に5%などの税率、法人事業税は役員報酬を引いた後の法人の所得にかかる
  • 5%の業種で法人化して減る事業税は、事業所得500万円で10.3万円、1,100万円で24.1万円が山。1,300万〜1,500万円ではかえって縮む
  • 事業所得1,100万円では事業税が24万円減っても、全体の手取りは13.1万円の不利
  • 損益分岐点は5%で1,266万円、4%で1,372万円、3%で1,504万円、非課税で2,198万円(単身・東京23区)
  • 非課税の業種は法人化で事業税が新たに生じるため、損益分岐点が932万円上がる

よくある質問

法人化すると事業税はなくなりますか。

個人事業税はなくなりますが、法人に利益が残れば法人事業税と特別法人事業税がかかります。役員報酬は法人の経費になるため、報酬を多く取るほど法人の利益と法人事業税は小さくなります。

個人事業税がかからない業種でも法人化すると事業税がかかりますか。

かかります。法人事業税は業種を問わず、法人の所得に対して課税されます。個人のときに非課税だった業種は、法人化で事業税が新たに生じるため、法人化の損益分岐点が高くなります。

法人化した年は、個人事業税と法人事業税の両方を払いますか。

法人成りした年は、個人事業として営業した期間の所得に個人事業税、法人の事業年度の所得に法人事業税がかかります。個人事業税の事業主控除290万円は、年の途中で廃業した場合は月割になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。