税金の基礎

アパートの個人事業税は「10室」の数え方で決まる。空室・自己使用・建替え中

結論

東京都では、アパートなど一戸建以外の住宅は独立した区画が10以上で不動産貸付業(税率5%)です。空室も、貸す目的で設けた部屋なら数え、その判定には減価償却をしているかを使います。自分で使っていると主張した4階も、確定申告で貸付割合100%として減価償却していたため室数に入れられました。建替えで10室を切った期間は課税の対象外とされ、その期間の赤字は繰越損失から按分で外されています。

  • 東京都の事務提要は、空室等も『貸し付ける目的で設けられた』ものは室数に含め、その判断は減価償却しているかどうかで差し支えないとしている(平成30年12月26日答申の引用)
  • 大阪府は基準未満でも建物の貸付面積600㎡以上かつ賃料年1,000万円以上なら、千葉県は基準の2分の1以上・賃料年900万円以上・床面積600㎡以上なら不動産貸付業とする
  • 不動産所得(青色申告特別控除の前)700万円なら税額は年20.5万円。法人で持てば個人事業税はなく、法人事業税に替わる

個人で持つアパートや貸家の家賃収入には、所得税・住民税のほかに個人事業税がかかることがあります。不動産貸付業(第1種事業・税率5%)に当たるかどうかは都道府県の基準で決まり、アパートなら「独立した区画が10以上」がひとつの目安です。問題は、その10をどう数えるかです。

基準の確認:東京都は「10室」、大阪府・千葉県は面積と賃料の基準もある

一戸建以外の住宅(アパート・マンションの貸付け)の基準は、東京都・大阪府・千葉県とも独立的に区画された部分が10以上です。東京都の基準表は家賃収入の「事業的規模」5棟10室にまとめています。

大阪府と千葉県は、室数の基準に届かなくても不動産貸付業とする条件を公表しています。

府県室数・棟数の基準に届かなくても課税される条件
大阪府建物の貸付総面積が600㎡以上で、かつ賃貸料収入が年1,000万円以上(一時的な権利金・更新料・消費税を除く)
千葉県基準の2分の1以上の規模で、賃貸料収入が年900万円以上、かつ家屋の総床面積が600㎡以上の貸付け

※ 大阪府「個人事業税における不動産貸付業・駐車場業の認定基準」、千葉県「不動産貸付業及び駐車場業について」

部屋数の少ない大型の物件(広い店舗、ファミリー向けの数戸など)は、室数ではなく面積と賃料で判定される可能性があるということです。

共有も、1棟貸しも、全体で数える

大阪府・千葉県は、次の数え方も明記しています。

  • 共有不動産は、持分にかかわらず共有不動産全体の貸付状況で認定する(千葉県は、税額は持分に応じた所得で計算)
  • 独立的に区画された2以上の室がある建物は、1棟貸しでも室数で判定する
  • 1つの契約で2以上の画地を貸す場合は、画地の数が契約件数になる

空室も自分で使う部屋も、減価償却していれば数える

平成30年12月26日の東京都の答申は、4階建ての建物を持つ人の事案です。

階用途区画
1階店舗3室
2階住宅3室
3階住宅3室
4階住宅(請求人は「全フロア自己使用」と主張)1室

※ 東京都行政不服審査会 答申(平成30年12月26日)

請求人は、4階は自分で使っているので貸しているのは9室で、10室に届かないと主張しました。答申は次の2点で退けています。

  1. 東京都の事務提要は、空室等も貸し付ける目的で設けられたものは室数に含め、その判断は減価償却しているかどうかで差し支えないとしている
  2. 請求人は確定申告で、建物全体を減価償却の対象にし、**貸付割合を100%**と書いていた。確定申告書の提出は個人事業税の申告とみなされる(地方税法72条の55の2)ので、自己使用という主張は自分の申告と矛盾する

店舗3室と住宅7室のように種類が混ざっていても、合計が10以上なら不動産貸付業になる、という基準も当てはめられました。税額は年14万2,100円です。

自分で使っている部屋があるなら、確定申告で事業用割合を正しく書き、減価償却もその割合にとどめることが、室数の判定でも効いてきます。

建替え中に10室を切った期間は「対象外」、赤字は按分

令和6年5月24日の答申は、木造の建物を取り壊し、隣地を買い足して9階建ての賃貸マンションに建て替えた人の事案です。取壊しの費用などで赤字が出て、それを翌年以降の個人事業税で繰り越して控除しようとしました。

都税事務所は、取壊し期間中に残った部屋数では不動産貸付業に当たらないとして、その期間を「個人の事業として認定されない期間」とし、その年の収入を課税収入と対象外収入に振り分けて按分し、繰越損失の額を計算しました。請求人は、建替えは規模を増やすためで事業の中身は変わっていない、月数で按分する方法は法令に書かれていないと主張しました。

答申は、対象外期間の収入は課税の対象にならないので、課税事業と非課税事業を兼ねる場合の按分の定め(事務提要)と同じように扱えるとし、都税事務所の計算に不合理はないと判断しました。認められた繰越損失は526万2,318円で、翌年の税額は20万200円でした。

建替えで一時的に基準を下回ると、その期間に出た赤字の一部は個人事業税の繰越損失から外れます。大きな赤字が出る年ほど、基準を満たしている期間の割合が税額に効くことになります。課税・非課税を兼ねるときの按分の考え方は課税と非課税の仕事を兼ねる個人事業税で計算しています。

車の売却損も、事業専用割合までしか引けない

平成30年2月21日の答申は、区分所有の住宅12戸を貸していた人が、車を売って出た損失を個人事業税から引こうとした事案です。個人事業税では、直接事業の用に供する資産の譲渡損失を所得から控除できます(地方税法72条の49の12)。

確定申告書の譲渡損失は30万4,236円でしたが、減価償却の計算で車の事業専用割合が50%とされていたため、都は控除額を15万2,118円としました。答申はこれを支持しています。法人成りで資産を会社に売ったときの譲渡損失の控除は、法人成りで資産を会社に売った損は個人事業税から引けるで扱っています。

税額と、法人で持つという選択

法人成りした後に、社長が自分の会社へ事務所や倉庫を貸す場合も、同じ数え方で室数に足されます。会社に貸す分が個人事業税にどう効くかは社長が自分の会社に貸す物件に個人事業税はかかる?で計算しています。

不動産貸付業とされた場合の税額は次のとおりです。

不動産所得(青色申告特別控除の前)不動産貸付業(5%)10年間
300万円0.5万円5万円
500万円10.5万円105万円
700万円20.5万円205万円
1,000万円35.5万円355万円
1,500万円60.5万円605万円

※ 事業主控除290万円・税率5%(第1種事業 不動産貸付業)/2026年(令和8年)分基準。scripts/fudosan-shitsusu-kojin-jigyozei.mjs で計算(答申3件の税額も同じスクリプトで再計算し一致を確認)

法人で不動産を持てば個人事業税はかからず、法人の所得に法人事業税がかかります。ただし不動産を個人から法人に移すと、不動産取得税・登録免許税、個人側の譲渡所得税が先にかかります。建物だけを法人に移す方法や管理会社を作る方法の比較は不動産管理会社の3方式、移転時の税金は法人成りで建物・土地を法人名義ににまとめています。

業種の線引き全体は個人事業税がかからない業種がある。70業種の線引きと計算方法、東京都の審査請求の全体像は個人事業税の審査請求、東京都の答申40件で認められたのは1件だけで整理しています。

まとめ

  • アパートは独立した区画が10以上で不動産貸付業(5%)。大阪府・千葉県は面積600㎡と賃料(年1,000万円・900万円)で、10室未満でも課税する条件を公表している
  • 空室も貸す目的の部屋なら数え、判断には減価償却の有無を使う。自己使用と主張した4階も、申告で貸付割合100%としていたため数えられた
  • 種類の違う不動産は合計で10、共有は全体で、1棟貸しも室数で数える
  • 建替えで10室を切った期間は対象外とされ、その期間の赤字は繰越損失から按分で外された
  • 車の売却損は事業専用割合まで。法人で持てば個人事業税はないが、移転時の税金が先にかかる

不動産の個人事業税は、確定申告書に書いた割合と減価償却がそのまま判定の材料になります。自分の物件の区画数と所得で確かめてください。

よくある質問

共有で持っているアパートは、自分の持分だけで室数を数えますか?

大阪府と千葉県は、共有不動産は持分にかかわらず共有不動産全体の貸付状況で認定するとしています。千葉県は、税額は各共有者の持分に応じた不動産所得で計算するとしています。

店舗と住宅が混ざった建物はどう数えますか?

東京都の事務提要は、種類の違う不動産を併せて貸している場合、一つの種類が基準以上でなくても、室数・棟数・土地の契約件数の合計が10以上なら不動産貸付業とするとしています(平成30年12月26日答申の引用)。答申の事案は、1階の店舗3室と住宅7室の合計10室で課税されました。

1棟まるごと1社に貸している場合も室数で数えますか?

大阪府と千葉県は、独立的に区画された2以上の室がある建物は、1棟貸しでも室数で判定するとしています。1社に一括で貸していても、部屋が10以上に区画されていれば基準に当たります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。