税金の基礎
土地を駐車場会社に一括で貸すと個人事業税はかかるか。分かれ目は運営への関与
結論
土地を駐車場会社に一括で貸していても、東京都の旧基準では原則として地主の「駐車場業」(第1種事業・税率5%)とみなされ、借り手の駐車場の運営に地主の関与が一切ない場合だけ例外とされていました。東京都の審査会は、関与の有無を確かめずに課税した処分を取り消した一方、地主が舗装費用を負担し減価償却していた事案では課税を認めました。地代による所得が500万円なら税額は年10.5万円です。
- 東京都の事務提要(令和2年3月改正前)は、建築物の駐車場・寄託を受けて保管する駐車場・10台以上の駐車場を駐車場業とし、更地の一括貸しは原則として駐車場所の提供とみなすとしていた
- 千葉県は駐車場業の要件を『駐車場の設置費用を負担し、自ら管理している(管理委託を含む)こと』とし、大阪府は青空駐車場10台・建築物の駐車場1台を基準にしている
- 駐車場業でなければ、1件の土地の貸付けは不動産貸付業の基準(土地の契約10件など)に届かず、個人事業税はかからないことが多い
このテーマの全体像 個人事業税の業種と計算方法
土地をそのまま駐車場運営会社に貸し、毎月決まった地代を受け取っている。自分では集金も管理もしていない――。それでも、都道府県から個人事業税の「駐車場業」として課税されることがあります。東京都の審査会では、この論点で結論が分かれた答申が2件あります。
駐車場業か、ただの土地の貸付けか
地方税法72条の2第8項13号は、第1種事業(税率5%)に駐車場業を挙げています。一方、土地の貸付けは不動産貸付業として判定され、件数や面積の基準を満たさなければ課税されません。
大阪府・千葉県の基準では、非住宅用の土地は貸付契約件数が10件以上などで不動産貸付業です。土地1か所を1社に一括で貸しているだけなら、通常は不動産貸付業の基準に届きません。つまり駐車場業とされるかどうかで、税額は0円か5%かに分かれるというのがこの論点の重さです。
東京都の旧基準:一括貸しは原則として駐車場業
東京都の審査会の答申(令和3年2月25日)は、東京都の「個人事業税課税事務提要」(令和2年3月27日の改正前のもの)を次のように引用しています。
駐車場業とは、対価を得る目的で自動車の駐車のための場所を提供する事業で、次のいずれかに当たるもの。
- 建築物である駐車場
- 寄託を受けて保管行為を行う駐車場
- 1・2以外で、駐車台数が10台以上である駐車場
そのうえで留意事項として、賃貸人が駐車施設を何も施さずに更地を一括して貸し、賃借人がそこで駐車場事業を営んでいる場合も、原則として駐車場所の提供とみなして駐車場業と認定するとしています。例外は次の2つでした。
- ア 賃借人が土地の上に建築物を設け、その建物の中で駐車場を運営している場合
- イ 賃借人が行う駐車場の運営について、賃貸人の関与が一切認められない場合
改正後の内容は公表されておらず、現在の東京都の運用がこのとおりかは確認できません。
東京都の審査会:認容1件と棄却1件
認容:関与がないことを確かめずに課税した(令和3年2月25日)
請求人は、所有する土地を駐車場業の会社に駐車場用地として貸していました。平面の駐車場で、建築物はありません。都税事務所は、建築物がないので例外アに当たらないとして課税しました。
答申は、貸主が駐車場業を営むかどうかの基準は運営への関与であり、建築物の有無はその着眼点の例示にすぎないと読みました。都税事務所が関与の根拠に挙げた次の2点も退けています。
- 賃料に消費税を上乗せしている → 当事者間の賃料の取り決めだけで運営への関与は認定できない
- 土地が老朽化や災害で壊れたら貸主が復旧する契約になっている → 土地の貸主の一般的な義務を超えない
そのうえで、関与の有無を確認しないまま課税したのは事務提要の運用を誤ったものとして、処分を取り消すべきとしました。東京都の個人事業税の答申40件のうち、認容はこの1件だけです。
棄却:舗装費用を負担し、減価償却していた(令和元年6月20日)
もう1件の請求人も、土地をコインパーキング会社に貸し、料金の徴収はしていませんでした。会社が法人事業税を払っているのに自分にも課税するのは二重課税だ、とも主張しました。
答申は課税を認めました。決め手は次の事実です。
- 契約書の表題が「駐車場用地一時賃貸借契約書」で、貸付けの目的が「駐車場の経営」と機器等の設置だった
- 土地にアスファルト敷が施され、請求人がその費用を減価償却費として計上していた
- 駐車可能台数は10台のコインパーキングだった
利用者から直接料金を取っていることは駐車場業の要件ではない、と答申は述べています。舗装は借り手の要望に沿っただけだという主張も、費用を自分で負担し経費にしていた以上、通りませんでした。
千葉県・大阪府の基準
ほかの府県も、駐車場業の認定基準を公表しています。
| 府県 | 公表されている基準 |
|---|---|
| 千葉県 | 駐車場の設置費用を負担し、自ら管理している(管理を委託している場合を含む)ことが要件 |
| 大阪府 | 建築物でない駐車場(青空駐車場)は収容可能台数10台、建築物である駐車場は1台。空き等も含む |
※ 千葉県「不動産貸付業及び駐車場業について」、大阪府「個人事業税における不動産貸付業・駐車場業の認定基準」
千葉県の要件は、設置費用の負担と管理の2点です。舗装・区画・機器の費用を地主が負担しているかどうかは、東京都の棄却事案でも決め手になりました。どの府県でも、駐車場としての設備に地主がお金を出しているかが重く見られていると読めます。
消費税でも、同じ事実が「課税」に効く
舗装や区画の有無は、消費税の扱いも分けます。消費税法基本通達6-1-5の注1は、駐車場として土地を使わせる場合でも、地面の整備やフェンス・区画・建物の設置などをせず、車両の管理もしていなければ、非課税の土地の貸付けに含まれるとしています。逆に、駐車場用に整備していれば、駐車場という施設の貸付けとして課税されます。
地主が舗装費用を負担すると、個人事業税では駐車場業とされやすく、消費税でも課税売上になりやすいということです。
税額と、東京都で減っている課税人員
駐車場業とされた場合の税額は、不動産所得(青色申告特別控除の前)から事業主控除290万円を引いた額の5%です。
| 駐車場の地代による不動産所得(青色申告特別控除の前) | 駐車場業とされた場合(5%) | 10年間 | 駐車場業でも不動産貸付業でもない場合 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 0.5万円 | 5万円 | 0円 |
| 388.5万円(令和元年6月20日答申の事案) | 4.92万円 | 49.2万円 | 0円 |
| 500万円 | 10.5万円 | 105万円 | 0円 |
| 700万円 | 20.5万円 | 205万円 | 0円 |
| 1,000万円 | 35.5万円 | 355万円 | 0円 |
※ 事業主控除290万円・税率5%(第1種事業 駐車場業)/2026年(令和8年)分基準。ほかに課税される事業がない場合。scripts/chushajo-tochi-kojin-jigyozei.mjs で計算
都税統計年報では、東京都で駐車場業として課税された人は2006年度の3,788人から2024年度の1,212人へ3分の1に減り、2020年度から2021年度の1年で2,642人から1,480人へ44%減っています。事務提要の改正との関係は公表資料からは確認できませんが、推移は東京都で個人事業税を払う人は19.4万人で読んでいます。
法人化と、不動産の持ち方
土地の賃貸で個人事業税がかかっている人が法人化を考えるときは、事業税だけでなく不動産の持ち方全体を比べる必要があります。法人事業税には業種の区別がないので、法人で駐車場を営めば、その所得には法人事業税がかかります。土地を法人に移すなら、不動産取得税・登録免許税、個人側の譲渡所得税が先にかかります。
土地は個人のまま持ち、管理会社を作る方式もあります。方式ごとの手取りの違いは不動産管理会社の3方式、建物の貸付けの事業的規模と個人事業税の基準の違いは家賃収入の「事業的規模」5棟10室、業種の線引き全体は個人事業税がかからない業種がある。70業種の線引きと計算方法で整理しています。
まとめ
- 駐車場業(5%)とされなければ、土地1件の一括貸しは不動産貸付業の基準に届かず、個人事業税はかからないことが多い
- 東京都の旧基準は、更地の一括貸しも原則として駐車場業とし、運営への関与が一切ない場合などを例外としていた
- 審査会は、関与を確かめずに課税した処分を取り消した一方、舗装費用を負担し減価償却していた地主への課税は認めた
- 千葉県は設置費用の負担と管理を要件とし、大阪府は青空駐車場10台・建築物1台を基準にする
- 舗装・区画は消費税でも課税の側に効く。地代所得500万円なら駐車場業の税額は年10.5万円
駐車場の契約書の書き方と、誰が設備にお金を出したかで、毎年の税額が変わります。自分の契約と所得で確かめてください。
よくある質問
月極駐車場を自分で貸していますが、台数が少なくても個人事業税はかかりますか?
大阪府の基準では、建築物でない青空駐車場は収容可能台数10台、建築物である駐車場は1台が駐車場業の認定基準です。空き区画も台数に含みます。基準未満で、ほかに課税される事業がなければ、駐車場業としての個人事業税はかかりません。
駐車場の地代に消費税はかかりますか?
消費税法基本通達6-1-5の注1は、駐車場として土地を使わせる場合に、地面の整備やフェンス・区画・建物の設置などをしておらず、車両の管理もしていなければ、その土地の使用は非課税の土地の貸付けに含まれるとしています。舗装や区画をしていれば、駐車場という施設の貸付けとして課税されます。
駐車場業と認定されたら、法人化したほうがよいですか?
法人化すると個人事業税はなくなりますが、法人事業税は業種を問わずかかります。土地を法人に移すと不動産取得税や登録免許税、譲渡所得税もかかるため、事業税の額だけでは判断できません。不動産の法人化は、管理会社の方式ごとの比較とあわせて検討する必要があります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。