設立の手続き

休憩時間は6時間超で45分・8時間超で1時間|一人会社のパートと電話番

結論

休憩は、労働時間が6時間を超える日に45分以上、8時間を超える日に1時間以上を、勤務の途中に与えます(労働基準法34条)。6時間ちょうどなら休憩は不要ですが、1分でも超えると最低45分が必要になり、出勤から退勤までが46分延びます。休憩中にパートへ電話番をさせると、その時間は労働時間になり、時給1,200円・実働8時間+休憩1時間の例では1日1,500円、時効3年分で113.4万円の未払いになります(当サイト試算)。

  • 休憩の3原則は、途中に与える・一斉に与える・自由に利用させる。違反すると6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(119条)
  • 6時間ちょうどのシフトに45分休憩を付けて電話番をさせると、実働6時間45分になって休憩が必要な勤務に変わり、しかも休憩が0分になる
  • 社長は労働者ではないため、従業員が1人なら社長が電話を取れば一斉休憩と自由利用の問題は生じにくい

休憩のルールは条文が短いぶん、「何時間なら何分か」の境目と、「休憩中に何をさせると休憩でなくなるか」で誤解が起きやすい論点です。社長1人の会社が初めてパートを雇うとき、シフト表を作る段階でどこに注意するかを、条文と再現計算で整理します。

この記事は休憩の時間数と扱いに絞ります。雇うときに書面で示す項目は労働条件通知書の記事、10人未満で就業規則が要るかは就業規則の記事、残業の端数処理は残業代の1分単位の記事で扱っています。

条文が求めるのは「時間数」と「3つの原則」

労働基準法34条は3つの項で成り立っています。

項内容
1項労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与える
2項休憩は一斉に与える。ただし労使協定があれば一斉でなくてよい
3項休憩時間を自由に利用させる

ここから「途中付与」「一斉付与」「自由利用」の3原則と呼ばれます。違反すると、119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります。34条は119条1号の列挙に入っています。

基準は「労働時間」です。出勤から退勤までの拘束時間ではありません。休憩そのものは労働時間に数えないため、9時出勤・17時45分退勤で45分休憩なら、労働時間は7時間です。

また、適用されるのは労働者です。社長や役員は労働者ではないため、社長自身の休憩に34条は及びません。従業員を1人でも雇えば、その人には人数に関係なく適用されます。

6時間ちょうどと6時間1分で、拘束時間は46分変わる

「6時間を超える」「8時間を超える」は、ちょうどの時間を含みません。境目の前後で、最低限必要な休憩と拘束時間がどう変わるかを scripts/kyukei-jikan-6jikan-8jikan.mjs で出しました。

実働必要な休憩(最低)拘束時間(最低)実働1分増に対する拘束の増加
5時間00分0分5時間00分1分
6時間00分0分6時間00分1分
6時間01分45分6時間46分46分
7時間00分45分7時間45分1分
7時間45分45分8時間30分1分
8時間00分45分8時間45分1分
8時間01分60分9時間01分16分
9時間00分60分10時間00分1分

※ 当サイトが条文の基準を当てはめて計算。休憩は最低限の分数で計算

読み取れることは2つあります。

1つ目は、6時間の壁が一番大きい段差だという点です。実働が6時間から1分延びるだけで、休憩45分を挟む必要が生じ、店や事務所に居る時間が46分延びます。10時〜16時の6時間パートで、閉店作業が毎日数分はみ出す運用だと、その日は休憩が必要な勤務になります。休憩なしで6時間を少し超えれば、その日は34条違反です。

2つ目は、8時間ちょうどなら45分で条文の基準を満たすという点です。「フルタイムは1時間休憩」が慣行として定着しているのは、残業で8時間を1分でも超えた日に1時間が必要になるためです。8時間ちょうど+45分休憩のシフトで残業が出た日は、休憩の追加が15分必要になります。

シフトを組むときの考え方

6時間前後のパートでは、次のどちらかに寄せると管理が単純になります。

  • 実働を6時間以内に収め、終業時刻を守る(休憩なし)
  • 最初から実働6時間を超える前提で45分以上の休憩を入れる

中間の「6時間の予定だが、ときどき数分超える」が最も事故の起きやすい形です。延びた日に休憩を後から足すことはできず、休憩は「途中に」与える必要があるため、終業後に休ませても休憩になりません。勤怠の記録で実働を確認する方法は労働時間の把握義務の記事で扱っています。

休憩中の電話番は労働時間になる

一人会社で起きやすいのが、「昼休みは事務所にいて、電話が鳴ったら出てほしい」という頼み方です。厚労省の労働時間ガイドラインは、使用者の指示があれば即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(いわゆる手待時間)を、労働時間に当たるものとして挙げています。

電話が1本も鳴らなくても、出る前提で待機していれば手待時間です。その時間は休憩ではなく労働時間になるため、次の2つが同時に起きます。

  1. 休憩を与えていないことになる(34条の問題)
  2. その時間の賃金が払われていないことになる(賃金の問題)

未払いになる金額

時給1,200円のパートに、休憩時間中ずっと電話番をさせた場合を計算しました。8時間を超えた部分は37条の2割5分増しで計算しています。

シフト(実働+休憩)電話番込みの実働本来必要な休憩1日の未払い月(21日)年時効3年分
6時間00分+休憩45分6時間45分45分900円18,900円226,800円680,400円
7時間00分+休憩45分7時間45分45分900円18,900円226,800円680,400円
8時間00分+休憩60分9時間00分60分1,500円31,500円378,000円1,134,000円

※ 時給1,200円・月21日勤務の例。賃金請求権の時効は当分の間3年(115条・143条3項)。当サイト試算

1行目は見落とされやすい形です。実働6時間ちょうどなら本来休憩は不要ですが、45分の休憩を付けたうえで電話番をさせると、実働は6時間45分になります。休憩が不要だった勤務が、45分の休憩が必要な勤務に変わり、しかもその休憩が0分という状態です。親切のつもりで付けた休憩が、かえって違反の形を作ります。

3行目は、休憩の1時間がまるごと8時間を超える部分になるため、割増賃金が乗ります。年37.8万円は、社長1人の会社の利益から見ると小さくない金額です。

「電話が鳴ったときだけ出る」でも同じか

鳴った分だけ労働時間にすればよい、という考え方もありますが、上のガイドラインの基準は「待機の状態」です。電話に出る義務があり、事務所を離れられないなら、通話していない時間も労働から離れることが保障されていません。実際にどう判断されるかは指示の内容や実態によるため、頼み方を変えるほうが確実です。

一人会社なら「社長が電話を取る」で解決しやすい

34条2項の一斉付与と3項の自由利用は、従業員が複数いる職場を想定した原則です。社長1人+パート1人の会社では、次の理由で扱いが単純になります。

  • 一斉付与は労働者同士の話なので、労働者が1人なら休憩時間を決めればそのまま一斉になる
  • 社長は労働者ではないため、社長が昼休みに電話番をしても34条の問題にならない
  • パートの休憩中は社長が電話を取る、社長が不在の時間帯は留守番電話に切り替える、という運用で手待時間を作らずに済む

従業員が2人以上になり、休憩を交代で取らせたいときは、一斉付与の例外を使うことになります。

一斉付与の例外:業種と労使協定

一斉に休憩を与えなくてよいのは次の2つの場合です。

例外の根拠対象
施行規則31条(業種)運送(別表第一4号)、商業(8号)、金融・広告(9号)、映画・興行(10号)、郵便・通信(11号)、保健衛生(13号)、接客娯楽(14号)、官公署
34条2項ただし書(労使協定)上記以外の業種でも、労働者の過半数代表との書面の協定があれば可

小売店(8号)、飲食店(14号)、医療・看護(13号)などは業種の例外に入るため、協定なしで交代休憩ができます。製造業やIT・制作などの事務所はこの列挙にないため、交代で取らせるには労使協定が要ります。協定では、施行規則15条により「一斉に休憩を与えない労働者の範囲」と「その労働者に対する休憩の与え方」を定めます。34条2項と施行規則15条には、この協定を労基署へ届け出る定めはありません(36協定とは扱いが違います)。

なお、交代制にしても自由利用の原則は外れません。交代で休んでいる人に電話を取らせれば、やはり手待時間です。

休憩をめぐるほかの誤解

分割してもよいか

34条は分割を禁じていません。45分を「30分+15分」にすることも条文上はできます。ただし、5分や10分の細切れで、実際に職場を離れたり自由に過ごしたりできない長さだと、休憩としての実質が問われる可能性があります。

休憩を取らずに早く帰りたいと言われたら

本人の希望でも、6時間を超えて働く日に休憩を与えないことは34条に反します。義務は使用者が負うものなので、同意で外すことはできません。早く帰りたいなら、実働を6時間以内に縮めるのが条文に沿った方法です。

高校生アルバイトの場合

年少者には労働時間の別の上限がありますが、休憩の基準そのものは同じ34条です。年少者の深夜業や時間の制限は高校生アルバイトの記事で扱っています。

人件費の判断は会社全体の数字で

パートを雇うかどうかは、休憩の扱いを含めた人件費と、会社に残る利益の両方で決まります。社長の役員報酬と法人化の損益は、一般論ではなく自分の売上と経費で確かめてください。判定ツールは役員報酬を月5万〜100万円の範囲で総当たりし、手取りが最大になる額を出します。

まとめ

  • 休憩は、労働時間が6時間を超えると45分以上、8時間を超えると1時間以上。途中付与・一斉付与・自由利用の3原則があり、違反は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
  • 6時間ちょうどなら休憩は不要だが、1分超えると最低45分が必要になり、拘束時間が46分延びる
  • 休憩中の電話番は手待時間として労働時間になる。時給1,200円・8時間+休憩1時間の例で年37.8万円、3年で113.4万円の未払い(当サイト試算)
  • 6時間ちょうどのシフトに休憩を付けて電話番をさせると、休憩が必要な勤務に変わったうえで休憩0分になる
  • 社長は労働者ではないため、従業員1人の会社では社長が電話を取る運用で問題を避けやすい。交代休憩は業種の例外か労使協定で認められる

よくある質問

実働8時間ちょうどなら、休憩は45分でもよいですか?

労働基準法34条の基準は「8時間を超える場合に1時間以上」なので、8時間ちょうどであれば45分以上で条文の基準を満たします。ただし残業で1分でも8時間を超える日は1時間以上が必要になるため、残業がありうる勤務では最初から1時間にしておく運用も見られます。

休憩を15分ずつ3回に分けてもよいですか?

34条は休憩を分割して与えることを禁じていません。合計が基準以上で、勤務の途中に与え、自由に利用できる時間であることが条件です。ただし細切れで実際に職場を離れられない場合は、休憩と言えるかが問題になり得ます。

5時間のパートに休憩は必要ですか?

労働時間が6時間以下なら、34条による休憩の義務はありません。与えること自体は自由ですが、与えた時間に電話番などをさせれば労働時間になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。