設立の手続き

解雇予告手当はいくら?月給25万円で24.5万円、パートは6割保障で計算

結論

労働基準法20条により、解雇するには少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を払う必要があります。平均賃金は直前3か月の賃金総額をその期間の暦日数で割った額で、月給25万円・暦日92日なら1日8,152円17銭、30日分で24万4,565円です。週3日のパートは労働日数で割る6割の最低保障が効き、時給1,280円・1日6時間なら30日分で13万8,240円になります。

  • 予告と手当は組み合わせられる。20日前に予告すれば、残り10日分の平均賃金を払えば足りる
  • 解雇予告手当は税務上は退職所得。「退職所得の受給に関する申告書」があれば勤続5年以下でも退職所得控除80万円の範囲で所得税はかからない。申告書がなければ20.42%を源泉徴収する
  • 手当を払っても解雇が有効になるわけではない。客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く解雇は、労働契約法16条で無効になる

初めて人を雇う一人社長が、雇う前に知っておきたい数字の1つが「辞めてもらうときの最低コスト」です。労働基準法は、解雇するなら30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を払うよう定めています。

金額の計算は単純ではありません。平均賃金は月給を30で割った額ではなく、パートには別の最低保障があります。

30日前の予告か、30日分の平均賃金か

労働基準法20条は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告しなければならないとしています。30日前に予告しない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払います。

予告と手当は組み合わせられます。予告の日数は、1日分の平均賃金を払うごとに1日短縮できるからです。

予告した日払う手当
30日以上前不要
20日前10日分の平均賃金
10日前20日分の平均賃金
即日30日分の平均賃金

天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能になった場合と、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、予告も手当も不要です。ただし、どちらも労働基準監督署長の認定を受けることが前提です。

予告の規定が適用されない人もいます(同法21条)。

対象予告が必要になる時点
日日雇い入れられる者1か月を超えて引き続き使用されたら
2か月以内の期間を定めて使用される者所定の期間を超えて引き続き使用されたら
季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者所定の期間を超えて引き続き使用されたら
試の使用期間中の者14日を超えて引き続き使用されたら

「試用期間中だから予告はいらない」と言えるのは、雇い入れから14日以内だけです。試用期間を3か月と定めていても、15日目以降は通常どおり予告か手当が必要です。

平均賃金は「直前3か月の賃金÷暦日数」

平均賃金は同法12条で定義されています。算定すべき事由が発生した日以前3か月間に払われた賃金の総額を、その期間の**総日数(暦日数)**で割った金額です。賃金締切日がある場合は、直前の締切日からさかのぼって3か月を数えます。

暦日数で割るので、働いていない土日も分母に入ります。そのため、月給制の平均賃金は「月給÷所定労働日数」より小さくなります。

月末締めの会社で、10月中に解雇予告をする場合の計算です。直前の締切日は9月30日なので、7月・8月・9月の3か月(暦日92日)が算定期間になります。

月給3か月の賃金総額平均賃金(1日)30日分申告書なしの源泉徴収
20万円60万円6,521円73銭19万5,651円3万9,951円
25万円75万円8,152円17銭24万4,565円4万9,940円
30万円90万円9,782円60銭29万3,478円5万9,928円

※ 3か月とも同額の月給で、残業代・通勤手当などがない場合の当サイトの計算。平均賃金は銭未満、30日分と源泉徴収額は円未満を切り捨てて表示。源泉徴収額は「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合の20.42%

月給25万円なら、即日解雇で払う手当は24万4,565円です。月給の1か月分より少し少ない額になります。

賃金総額には残業代や通勤手当なども含みます。臨時に支払われた賃金と、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(年2回の賞与など)は含みません。雇い入れから3か月に満たない人は、雇い入れ後の期間で計算します。

パートは「労働日数で割った額の6割」が下限になる

時給制や日給制の人は、同じ計算をすると平均賃金が極端に小さくなります。働く日が少ないのに、分母は暦日数だからです。

そこで同法12条1項1号は、賃金が労働日や労働時間で決まっている場合、**賃金総額をその期間中に労働した日数で割った額の60%**を下回ってはならないとしています。

時給1,280円(東京の令和8年度最低賃金)・1日6時間・週3日のパートが、3か月(暦日92日・13週)で39日働いた場合です。

計算方法計算1日あたり
原則(暦日数で割る)29万9,520円 ÷ 92日3,255円65銭
最低保障(労働日数で割って6割)29万9,520円 ÷ 39日 × 0.64,608円

※ 当サイトの計算。平均賃金は高いほうの4,608円になる

最低保障のほうが高いので、平均賃金は4,608円、30日分の手当は13万8,240円です。原則の計算だけで払うと、4万円以上足りません。

手当は退職所得。申告書があれば所得税はかからないことが多い

解雇予告手当は、税務上は給与ではなく退職所得として扱われます(国税庁 No.2736)。

退職所得は、退職所得控除を引いた残りの2分の1に税金がかかる仕組みです。退職所得控除は勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」で、計算した額が80万円未満なら80万円です。勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げます。

つまり雇って1〜2年の従業員なら、控除は80万円です。上の表の手当はどれも80万円を下回るので、所得税はかかりません。

ただし、これは本人が「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出した場合です。申告書がないと、支給額に20.42%を掛けた所得税を源泉徴収します(国税庁 No.2732)。月給25万円の30日分なら4万9,940円で、本人は確定申告をすれば取り戻せますが、手間をかけさせることになります。手当を払うときは、申告書を一緒に受け取っておくのが実務の基本です。

手当を払っても、解雇が有効になるわけではない

最後に、誤解の多い点です。解雇予告手当は、予告期間の代わりに払うものです。払えば解雇してよいというお金ではありません。

労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の濫用として無効になると定めています。予告や手当の手続きを守っていても、この要件を満たさなければ解雇そのものが無効になり得ます。

予告も手当もなしに解雇した場合は、労働基準法119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。さらに裁判になれば、未払いの手当と同額の付加金の支払いを命じられることがあります(同法114条)。

一人会社にとって最初の1人は、売上の見通しが立ちきらないうちに雇うことも多いはずです。業務量がまだ読めないなら、雇う前の段階で、業務委託にするか、有期契約にするか、あるいはまだ雇わないかを比べておく価値があります。業務委託と雇用の線引きは外注費と給与の判定、雇ったときの年間の総コストは一人社長が初めて従業員を雇う費用で計算しています。

人件費を含めた条件で法人化の効果がどう変わるかは、自分の売上と経費で確かめてください。

まとめ

  • 解雇するには30日前の予告か、30日分以上の平均賃金が必要。1日分払うごとに予告を1日短縮できる
  • 平均賃金は直前3か月の賃金総額÷暦日数。月給25万円・暦日92日なら1日8,152円17銭、30日分で24万4,565円
  • 時給制・日給制は「労働日数で割って6割」が下限。週3日・時給1,280円・1日6時間なら30日分で13万8,240円
  • 試用期間中でも、予告が不要なのは雇い入れから14日以内だけ
  • 手当は退職所得で、申告書があれば勤続5年以下でも控除80万円の範囲で非課税。申告書がなければ20.42%を源泉徴収する。手当を払っても解雇の有効性は別に判断される

よくある質問

試用期間中なら、解雇予告はいりませんか?

試用期間中の者には解雇予告の規定が適用されませんが、それは雇い入れから14日以内に限られます。14日を超えて引き続き使用している場合は、試用期間中でも30日前の予告か解雇予告手当が必要です。

従業員の重大な不正で解雇する場合も手当は必要ですか?

労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は予告も手当も不要とされていますが、その事由について労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。認定を受けずに即日解雇すると、予告義務違反になるおそれがあります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。