設立の手続き

年5日の有給取得義務は従業員1人の会社にも?週3日パートは5年半後から

結論

年5日の時季指定義務は、会社の規模や人数に関係なく、年10日以上の有給休暇が付与される労働者がいれば適用されます。従業員1人の会社も対象です。一方、社長や役員は労働者ではないため対象外で、週3日勤務のパートは付与日数が10日に届く勤続5年6か月から義務が始まります。違反すると対象者1人につき30万円以下の罰金の対象です。

  • フルタイムは雇入れ6か月で10日付与されるため、その日から1年以内に5日取らせる義務が始まる。週4日は3年6か月後、週3日は5年6か月後から
  • 週2日以下(週30時間未満)のパートは、勤続年数にかかわらず付与日数が最大7日で10日に届かず、5日の時季指定義務は生じない
  • 月給25万円・月21日勤務なら有給5日分の賃金は5万9,524円。月給制では追加の支出ではなく、時給制のパートでは追加の支出になる

社長1人の会社が初めて人を雇うと、給与と社会保険の次に効いてくるのが年次有給休暇です。2019年4月から、年10日以上の有給が付与される労働者には、会社が年5日を必ず取らせる義務があります。

この義務に従業員数による免除はありません。ただし、誰に、いつから義務がかかるかは週の勤務日数で大きく変わります。

義務がかかるのは「年10日以上付与される労働者」

労働基準法39条7項は、使用者が与えなければならない有給休暇の日数が10労働日以上の労働者について、そのうち5日を、基準日から1年以内に、労働者ごとに時季を定めて与えなければならないとしています。

ポイントを分けると次の3つです。

論点条文の内容
対象者法定の付与日数が10労働日以上の労働者
期限付与した日(基準日)から1年以内
差し引けるもの労働者が自ら請求して取得した日数、計画年休で与えた日数(合わせて5日まで)

会社の人数や業種による適用除外の規定はありません。従業員が1人でも、その人が10日以上付与される対象なら義務がかかります。

逆に、社長や役員には付与も義務もありません。有給休暇は労働基準法9条の労働者に与えるもので、代表取締役や合同会社の業務執行社員は労働者に当たらないからです。役員報酬に最低賃金がかからないのと同じ理屈です。ただし代表権も業務執行権もない取締役が部長などとして働いている場合は、その部分が労働者とされる余地があります(名ばかり役員は労働者か)。

時季を指定するときは、あらかじめ労働者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めることが施行規則で求められています。

週の勤務日数で、義務が始まる時期は5年変わる

フルタイムの従業員は、雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すれば10日付与されます。その日が基準日になり、そこから1年以内に5日を取らせる義務が始まります。

パートは事情が違います。週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下の労働者は、付与日数が勤務日数に比例して少なくなります(比例付与)。施行規則24条の3の表から、付与日数が初めて10日に届く時期を抜き出したのが次の表です。

週の所定労働日数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上5日の義務が始まる時期
5日以上または週30時間以上10日11日12日14日16日18日20日雇入れ6か月後
4日(年169〜216日)7日8日9日10日12日13日15日3年6か月後
3日(年121〜168日)5日6日6日8日9日10日11日5年6か月後
2日(年73〜120日)3日4日4日5日6日6日7日生じない
1日(年48〜72日)1日2日2日2日3日3日3日生じない

※ 付与日数は労働基準法39条1〜3項と同法施行規則24条の3による。右端の列は、付与日数が10日以上になる最初の時期を当サイトが表から読み取ったもの。いずれも出勤率8割以上が前提

同じ「パート1人」でも、週5日・1日5時間で雇えば6か月後から義務がかかり、週3日・1日8時間で雇えば5年6か月後まで義務はかかりません。週2日以下なら、勤続が何年になっても10日に届かないため、時季指定の義務は生じません。

付与そのものは週1日のパートにも発生します。 義務がかからないのは「会社が時季を指定して5日取らせる」部分だけで、本人が請求すれば有給は与える必要があります。

有給5日分の人件費は、月給制と時給制で意味が違う

一人会社にとって気になるのは、休まれた日の人件費です。ここは給与の決め方で話が分かれます。

月給制の従業員の場合、有給を取っても月給は変わりません。有給の日の賃金は「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」で払うのが一般的で、月給制ならその月の給与に含まれています。

月給1日あたり(月21日勤務)有給5日分有給10日分
20万円9,524円4万7,619円9万5,238円
25万円1万1,905円5万9,524円11万9,048円
30万円1万4,286円7万1,429円14万2,857円

※ 月給を月21日で割った当サイトの試算。実際には会社の所定労働日数で割る

この表の金額は、新たに出ていくお金ではありません。月給の中に最初から入っている金額で、有給を取られると、その日数分の労働が提供されなくなるという意味のコストです。

時給制のパートは逆です。有給の日には、働いていないその日の分の賃金を追加で払います。東京の最低賃金1,280円・1日6時間のパートが5日取れば3万8,400円、10日なら7万6,800円の支出が増えます。

一人会社が人件費の予算を組むとき、月給制なら「有給で減る稼働日」を、時給制なら「有給で増える支払い」を見込んでおくことになります。社会保険料や労働保険料まで含めた会社負担の総額は、一人社長が初めて従業員を雇う費用で計算しています。

管理簿と罰則

時季指定の義務とあわせて、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作ることも求められています。基準日、取得した日付(時季)、日数を記録する書類で、保存期間は施行規則の本則では5年、附則71条により当分の間3年です。

管理簿は労働者名簿や賃金台帳とあわせて作ることもできます。三帳簿の保存期間と起算日は法定三帳簿は一人会社に必要かで整理しました。

年5日を取らせなかった場合、労働基準法120条により30万円以下の罰金の対象になります。厚生労働省は、この違反は対象となる労働者1人につき1罪として扱われるとしています。

法人化の判定で人件費をどう扱うか

ここまでの話は、法人化したかどうかに関係なく、人を雇えばかかる義務です。個人事業主のままでも、従業員を雇えば有給休暇は付与しなければなりません。

法人化の判定に影響するのは、従業員を雇うと社会保険の扱いが変わる点です。法人は従業員1人でも健康保険・厚生年金の適用事業所になりますが、個人事業主は業種と人数によっては任意です。どちらの形で雇うかで会社負担の保険料が変わるため、人件費を経費に含めたうえで判定ツールに入れてください。有給休暇の義務そのものは、どちらを選んでも同じです。

まとめ

  • 年5日の時季指定義務は、年10日以上付与される労働者がいれば会社の規模にかかわらず適用される。従業員1人の会社も対象
  • 社長・役員は労働者ではないため、付与も時季指定義務もない
  • 比例付与のパートは、週4日なら勤続3年6か月、週3日なら5年6か月で10日に届き、そこから義務が始まる。週2日以下は義務が生じない
  • 月給25万円なら有給5日分は5万9,524円。月給制では追加の支出ではなく稼働日の減少、時給制では追加の支出になる
  • 年次有給休暇管理簿は当分の間3年保存。5日を取らせなかった場合は、対象者1人につき30万円以下の罰金の対象

よくある質問

社長が自分で年5日休まなくても違反になりませんか?

なりません。年次有給休暇は労働基準法9条の労働者に付与されるもので、代表取締役や合同会社の業務執行社員のような役員は労働者に当たらないため、付与も時季指定義務もありません。

従業員が自分から5日以上有給を取っていれば、会社が時季指定する必要はありますか?

ありません。労働者が自ら請求して取得した日数や、計画年休で与えた日数は、5日から差し引けます。すでに5日以上取得している労働者に対して、会社が時季を指定する必要はありませんし、指定することもできません。

年次有給休暇管理簿は何年保存しますか?

労働基準法施行規則24条の7は、有給休暇を与えた期間中とその満了後5年間の保存を求めていますが、附則71条により当分の間は3年間です。労働者名簿や賃金台帳とあわせて作成することもできます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。