設立の手続き
休業手当の「6割」は月給の4割?仕事がない月に従業員へ払う最低額
結論
労働基準法26条により、会社の都合で従業員を休ませた日には平均賃金の60%以上の休業手当を払います。平均賃金は直前3か月の賃金を暦日数で割った額なので、月給25万円・暦日92日なら1日あたり4,891円30銭で、所定労働日21日をすべて休ませても10万2,718円、月給の約41%です。注文が減ったなど経営上の理由による休業も、会社の都合に含まれます。
- 休業手当が不要なのは、地震や災害のような不可抗力の場合だけ。資材不足・機械の故障・注文不足は会社の都合に当たる
- 1日のうち一部だけ休ませた場合も、その日に払う賃金が平均賃金の60%に満たなければ差額を払う
- 休業手当は給与所得として源泉徴収の対象。業務上のけがによる休業補償(非課税)とは税金の扱いが違う(国税庁 No.1905)
売上が落ちて、従業員にしてもらう仕事がない月が出てきた。一人会社が初めて人を雇うと、こういう局面が必ず来ます。そのとき会社が払わなければならない最低額が、休業手当です。
よく「6割」と言われますが、月給の6割ではありません。平均賃金の6割で、平均賃金は暦日数で割るため、1か月まるごと休ませても月給の約4割に収まります。
会社の都合で休ませたら、平均賃金の60%以上
労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業期間中、労働者に平均賃金の100分の60以上の手当を払わなければならないとしています。
「使用者の責に帰すべき事由」は、民法の過失よりずっと広く捉えられています。厚生労働省は、地震や災害などの不可抗力による場合を除き、資材が集まらなかった、機械が故障した、といった経営者として不可抗力を主張し得ない一切の場合が含まれると説明しています。注文不足のような経営上の障害も、会社の都合です。
不可抗力として休業手当が不要になるのは、原因が事業の外部から発生した事故で、通常の経営者として最大の注意を尽くしても避けられないもの、という2つの要件を満たす場合とされています。売上が減ったから休ませる、という一人会社の典型的な局面は、ここには当たりません。
払わなかった場合、裁判では未払額と同額の付加金の支払いを命じられることがあります(同法114条)。
1日あたりの額と、1か月まるごと休ませた場合
平均賃金は、直前3か月の賃金総額をその期間の暦日数で割った額です(同法12条)。土日も分母に入るので、所定労働日あたりの賃金より小さくなります。計算方法の詳細は解雇予告手当はいくらかで説明しました。
月末締め・直前3か月の暦日が92日の場合の休業手当の最低額です。
| 月給 | 平均賃金(1日) | 休業手当(1日・60%) | 5日休業 | 10日休業 | 21日(所定労働日すべて)休業 | 月給に対する割合(21日) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 6,521円73銭 | 3,913円04銭 | 1万9,566円 | 3万9,131円 | 8万2,174円 | 41.1% |
| 25万円 | 8,152円17銭 | 4,891円30銭 | 2万4,457円 | 4万8,914円 | 10万2,718円 | 41.1% |
| 30万円 | 9,782円60銭 | 5,869円56銭 | 2万9,348円 | 5万8,696円 | 12万3,261円 | 41.1% |
※ 毎月同額の月給で、残業代・手当がない場合の当サイトの試算。休業日数分の合計は1円未満を切り上げ。所定労働日を月21日とした
所定労働日21日をすべて休ませても、休業手当は月給の41.1%です。60%×(3か月の暦日92日に対する1か月分)×21日という計算の構造上、月給の額にかかわらず同じ割合になります。
ただし、これは法律上の最低額です。 就業規則や雇用契約で「休業時は賃金の全額を払う」などと定めていれば、その定めに従います。10人未満の会社で就業規則を作る場合の注意点は就業規則は10人未満なら不要かにまとめています。
半日だけ休ませた日も、6割に満たなければ差額を払う
仕事が少ない日に、午前だけ働いてもらって午後は帰ってもらう、という短縮もよくあります。この場合も休業手当の対象です。
厚生労働省は、1労働日の一部を休業させた場合、労働した時間分の賃金がすでに払われていても、その日について全体として平均賃金の60%までは払わなければならないとしています。
月給25万円の人なら、その日に払う賃金が4,891円30銭に満たなければ、差額を払います。月給制で月給を減らさないなら、通常は労働した分の賃金が60%を上回るので、差額は生じません。差額が問題になるのは、時給制や日給制で、働いた時間分だけ払う場合です。
休業手当は給与。役員報酬は同じようには下げられない
税金の扱いも整理しておきます。
国税庁 No.1905 は、労働基準法26条の休業手当を給与所得としています。毎月の給与と同じく源泉徴収の対象で、年末調整にも含めます。同じ「休業」でも、業務上のけがで休んだ場合に払う休業補償(同法76条)は非課税で、扱いがまったく違います。
会社側では、休業手当は従業員への給与として損金になります。雇用調整助成金などを受けた場合、その助成金は会社の収入(益金)として別に計上します。補助金・助成金の課税のタイミングは補助金の圧縮記帳で扱っています。
一方、社長の役員報酬には休業手当の仕組みがありません。役員は労働者ではないからです。そして、仕事が減ったからといって役員報酬を事業年度の途中で下げると、定期同額給与の改定事由に当たるかが問われます。業績悪化を理由とする減額が認められる条件は役員報酬を期中に変更するとで整理しました。
従業員の人件費は休業手当で4割まで下げられるのに、社長自身の報酬は年度の途中では下げにくい。売上が読めない段階で人を雇う一人会社は、この非対称を頭に入れておく必要があります。
売上が落ちたときの人件費の下限として見積もる
一人会社が人を雇うかどうかを考えるとき、休業手当は「売上が落ちても、この額は払い続ける」という人件費の下限になります。月給25万円の従業員なら、仕事がまったくない月でも10万2,718円以上、これに社会保険料の会社負担が乗ります。社会保険料は休業手当に合わせて自動的には下がりません。
雇った場合の年間の総額は一人社長が初めて従業員を雇う費用で計算しています。売上の変動に対してどこまで人件費を固定費として抱えられるかは、法人化するかどうかとも関係します。法人化すると、社長自身の役員報酬と社会保険料も固定費になるからです。
当サイトの判定ツールは従業員のいない前提で計算しています。人を雇う予定があるなら、人件費を経費に含めた条件で、自分の数字を入れて確かめてください。
まとめ
- 会社の都合で従業員を休ませた日は、平均賃金の60%以上の休業手当が必要。注文不足などの経営上の理由も会社の都合に含まれ、不要なのは不可抗力の場合だけ
- 平均賃金は暦日数で割るため、所定労働日をすべて休ませても休業手当の最低額は月給の約41%。月給25万円なら10万2,718円
- 1日の一部だけ休ませた日も、その日の賃金が平均賃金の60%に満たなければ差額を払う
- 休業手当は給与所得で源泉徴収の対象。業務上のけがの休業補償(非課税)とは扱いが違う
- 社長の役員報酬には休業手当の仕組みがなく、年度途中の減額は定期同額給与の要件との関係で制約がある
よくある質問
社長自身の役員報酬も、仕事がない月は6割に下げられますか?
役員は労働者ではないため休業手当の仕組みはありません。役員報酬を事業年度の途中で下げると、定期同額給与の改定事由に当たらない限り、差額の扱いが税務上の問題になります。業績悪化による減額が認められるのは、経営状況が著しく悪化したなどの限られた場合です。
雇用調整助成金を受け取ったら、休業手当の分は相殺されますか?
助成金は会社の収入として益金になり、休業手当は給与として損金になります。両者は別々に計上され、助成金を受けたことで休業手当の支払義務がなくなるわけではありません。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。