法人化の判断
年商いくらで法人化?売上×経費率の早見表で見る分岐点
結論
東京23区・単身なら、法人化の分岐点は事業所得1,266万円なので、年商に直すと経費率10%で約1,407万円、30%で約1,809万円、50%で2,532万円、70%で4,220万円です。同じ年商2,000万円でも、経費率10%なら年47.0万円の有利、経費率70%なら年37.6万円の不利です。年商だけでは判定できず、見るのは売上から経費を引いた所得です。
- 売上1,000万円は消費税の課税事業者の判定の線で、法人化の分岐点ではない。売上1,000万円では経費率にかかわらず不利(年18.4万〜49.8万円)
- 配偶者が無収入なら分岐点の所得は1,016万円で、経費率30%の年商は約1,451万円まで下がる
- 外注費や仕入は法人化しても減らない。年商が大きくても粗利が小さい事業は分岐点が遠い
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
「年商いくらから法人化すべきか」という聞き方はとても多いのですが、この問いには年商だけでは答えられません。同じ年商でも、残る利益が違えば税金も社会保険料も違うからです。
そこで、売上と経費率の組み合わせで表を作りました。自分の場所を探すだけで、おおよその位置が分かります。
売上×経費率の早見表
| 売上 | 10% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% | 70% |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1,000万円 | −18.4万 | −24.1万 | −31.2万 | −37.6万 | −49.8万 | −48.6万 | −45.7万 |
| 1,500万円 | +8.6万 | −6.6万 | −13.9万 | −18.4万 | −27.0万 | −37.6万 | −49.3万 |
| 2,000万円 | +47.0万 | +33.1万 | +13.7万 | −6.6万 | −14.7万 | −24.1万 | −37.6万 |
| 2,500万円 | +100.0万 | +67.3万 | +41.9万 | +23.9万 | −1.5万 | −14.7万 | −27.0万 |
| 3,000万円 | +170.3万 | +113.5万 | +80.6万 | +47.0万 | +23.9万 | −6.6万 | −18.4万 |
| 4,000万円 | +251.0万 | +215.1万 | +179.3万 | +113.5万 | +67.3万 | +33.1万 | −6.6万 |
| 5,000万円 | +348.0万 | +286.9万 | +242.1万 | +197.2万 | +136.1万 | +67.3万 | +23.9万 |
| 7,000万円 | +601.4万 | +502.9万 | +404.3万 | +305.8万 | +242.1万 | +179.3万 | +80.6万 |
※ 個人のままと比べた法人の実質差額(年)。プラスが法人有利。最適な役員報酬(月5万〜100万円を1万円刻みで総当たり)で計算。税理士報酬の差20万円と均等割を含み、設立費用は含まない。売上は税抜、経費は社会保険料・税金を除く。東京23区・40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。スクリプト:scripts/houjinka-bw-tables.mjs nensho
同じ年商2,000万円でも、経費率10%なら+47.0万円、70%なら−37.6万円です。 差は年84.6万円あります。
表の中で同じ数字が繰り返し出てくるのは、結果を決めているのが売上ではなく所得だからです。売上2,000万円・経費率40%も、売上3,000万円・経費率60%も、売上4,000万円・経費率70%も、所得は同じ1,200万円で、差額は同じ−6.6万円です。
分岐点を年商に直すと
分岐点の事業所得は、この条件で1,266万円です(なぜそうなるかは個人事業主の法人化の目安と損益分岐点)。これを年商に直します。
| 経費率 | 分岐点の年商 |
|---|---|
| 10% | 1,406.7万円 |
| 20% | 1,582.5万円 |
| 30% | 1,808.6万円 |
| 40% | 2,110.0万円 |
| 50% | 2,532.0万円 |
| 60% | 3,165.0万円 |
| 70% | 4,220.0万円 |
※ 上の表と同じ条件。分岐点の事業所得1,266万円÷(1−経費率)
自分の経費率は、確定申告の数字で計算できます。
経費率 =(必要経費 − 社会保険料・税金)÷ 売上
青色申告特別控除は経費に入れません。 判定ツールも同じで、控除の前の所得で判定します。
業種の違いも、多くはこの経費率に現れます。業種別の分岐点は職種別の法人化の分岐点で扱っていますが、経費の多い少ないだけでは分岐点の所得そのものは動きません。動くのは個人事業税の区分などの事情です。
「年商1,000万円で法人化」が生まれた理由
年商1,000万円という数字がよく語られるのは、消費税の線だからです。
個人事業主は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。法人を新設すれば、資本金1,000万円未満などの条件で最初の2期は免税になり得る。ここから「1,000万円を超えたら法人化」という説が広がりました。
ところが、2つの点で今は成り立ちにくくなっています。
- インボイス登録済みなら免税にならない。 法人でも登録すれば課税事業者です(インボイス登録済みなら法人化しても2年間免税は受けられない)
- 免税の効果は最初の2期だけ。 毎年かかる社会保険料と固定費の差は続きます
実際、売上1,000万円のマスは経費率にかかわらずすべて不利です。
インボイスに登録していない場合はどうか。売上900万円で試すと次のとおりです。
| 経費率 | 個人のままの手取り | うち消費税の免税分 | 法人の実質差額(3年目以降) |
|---|---|---|---|
| 10% | 594.9万円 | 84.6万円 | −18.8万円 |
| 30% | 486.7万円 | 73.8万円 | −30.9万円 |
| 50% | 379.2万円 | 63.0万円 | −49.6万円 |
※ インボイス未登録・売上900万円(課税事業者にならない売上)の場合。個人は免税、法人も3年目以降は免税の前提。そのほかの条件は上の表と同じ
未登録でも、法人化の差額は不利のままです。売上1,000万円の手取りの全体は売上1,000万円のフリーランスの手取りで内訳を出しています。
分岐点が動く条件
早見表は単身の数字です。条件が変わると分岐点は動きます。
| 条件 | 分岐点の事業所得 | 経費率30%の年商 | 経費率50%の年商 |
|---|---|---|---|
| 基本(単身・インボイス登録済み) | 1,266万円 | 1,808.6万円 | 2,532.0万円 |
| 配偶者あり(無収入) | 1,016万円 | 1,451.4万円 | 2,032.0万円 |
| 配偶者あり+扶養1人 | 1,066万円 | 1,522.9万円 | 2,132.0万円 |
| 40〜59歳 | 1,243万円 | 1,775.7万円 | 2,486.0万円 |
| 60〜64歳 | 1,362万円 | 1,945.7万円 | 2,724.0万円 |
| 大阪市 | 1,283万円 | 1,832.9万円 | 2,566.0万円 |
| 白色申告 | 793万円 | 1,132.9万円 | 1,586.0万円 |
※ 計算エンジンの損益分岐点(npm run calc:table -- breakeven)を年商に換算。3年目以降の定常状態
配偶者が無収入かどうかだけで、経費率50%の年商の分岐は500万円動きます。「年商いくら」という1つの答えがない理由はここにもあります。 白色申告の分岐点が低いのは、法人が優れているというより、青色申告特別控除を使っていない分だけ個人側の負担が重いためです。先に青色申告にすれば差は縮みます。
粗利が小さい事業は、年商が大きくても遠い
仕入や外注が多い事業は、法人化しても経費が減るわけではありません。年商5,000万円でも経費率70%なら所得1,500万円で、法人化の差は年23.9万円です。経費率80%なら所得1,000万円で、年14.7万円の不利になります。
年商が大きいと、ほかの負担も増えます。早見表は税理士報酬を一律で置いていますが、取引量が多いと記帳や決算の報酬は上がりやすく、年商が大きいほど顧問料の前提を自分の見積もりに置き換える必要があります(税理士の顧問料はいくらまでか)。
判定が僅差なら、売上の変動も見ておいてください。売上の増減で所得が大きく動く事業は、売上に波がある人の法人化のように複数年で確かめるほうが確実です。
早見表の読み方
- 去年の売上と経費から経費率を計算する
- 表で自分の場所を探す。プラスなら法人の余地あり、マイナスなら個人のままが有利な条件
- ±30万円の範囲なら、配偶者・年齢・自治体で結論が変わる可能性が高い
- 判定ツールに自分の数字を入れて確かめる
判定ツールは最適な役員報酬と、設立費用を引いた初年度の差額まで出します。早見表は入口として使い、結論は自分の売上と経費で出してください。
まとめ
- 年商だけでは判定できない。東京23区・単身の分岐点は所得1,266万円で、年商なら経費率30%で約1,809万円、50%で2,532万円、70%で4,220万円
- 同じ年商2,000万円でも経費率で+47.0万円から−37.6万円まで動く
- 売上1,000万円は消費税の線で、法人化の分岐点ではない。経費率にかかわらず不利
- 配偶者が無収入なら分岐点は所得1,016万円に下がる
- 粗利の小さい事業は年商が大きくても分岐点が遠い
よくある質問
年商3,000万円なら法人化したほうがよいですか?
経費率によります。この記事の条件では、経費率50%(所得1,500万円)なら年23.9万円の有利、60%(所得1,200万円)なら年6.6万円の不利です。年商だけでは結論が出ないので、売上と経費を入れて確かめてください。
この早見表の売上は税込ですか、税抜ですか?
税抜です。インボイス登録済みの前提なので、受け取った消費税は納付するものとして手取りに含めていません。
経費に役員報酬や社会保険料は入れますか?
入れません。経費は個人事業のときの経費(社会保険料・税金を除く)です。役員報酬と社会保険料は、法人化した場合の計算の中で別に処理しています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。