税金の基礎

NFTの売上は雑所得か事業所得か。法人化で手取りが逆転する境目

結論

国税庁の情報(令和5年1月)では、デジタルアートを制作して紐づけたNFTを販売した所得は雑所得(または事業所得)、購入したNFTを転売した所得は原則として特別控除50万円のある譲渡所得です。手数料控除後の売上700万円・経費100万円で比べると、事業所得で個人事業税がかかれば手取り463.9万円、個人事業税の法定業種に当たらなければ482.6万円、雑所得なら457.1万円、法人化して最適報酬(月45万円)を取ると450.5万円でした。法人は業種を問わず事業税がかかるため、個人事業税がかからない制作者ほど法人化で失うものが大きくなります。

  • 財産的価値のある資産と交換できるNFTの取引は所得税の課税対象。交換できないNFTの取引は課税対象にならない(国税庁 No.1525-2)
  • NFTの転売が営利目的で継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく雑所得または事業所得になる
  • 国内の消費者へのNFTの販売は、著作物の利用の許諾として電気通信利用役務の提供に当たり、消費税の課税対象になる。購入者が国外にいれば不課税(国税庁 NFT情報 問11)

NFTの売上を確定申告する段になって迷うのが、所得区分です。国税庁は令和5年1月にNFTの取扱いをまとめた情報を出しており、制作して売る「一次流通」と、買ったものを売る「二次流通」で区分を分けています。

この記事では、その区分を確認したうえで、制作者がNFTを売って生計を立てている場合に、事業所得・雑所得・法人化のどれで手取りがいくらになるかを計算エンジンで並べます。結論を先に言うと、個人事業税がかかるかどうかで、法人化の損得が逆転します。

制作して売るのは雑所得か事業所得、転売は原則として譲渡所得

国税庁 No.1525-2 は、NFTやFTが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できる場合、その取引は所得税の課税対象になるとしています。交換できないNFTの取引は課税対象になりません。

そのうえで、国税庁の「NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)」は、典型的な取引の区分を次のように示しています。

取引所得区分所得の計算
デジタルアートを制作し、紐づけたNFTをマーケットプレイスで販売(一次流通)雑所得(または事業所得)譲渡収入-必要経費
購入したNFTを転売(二次流通)譲渡所得転売収入-取得費-譲渡費用-特別控除50万円
転売が営利目的で継続的に行われている場合雑所得または事業所得収入-必要経費
役務提供の対価としてトークンを受け取った場合事業所得・雑所得(請負など)、給与所得(雇用など)受け取ったトークンの時価が収入

一次流通が譲渡所得にならないのは、取引の中身が「デジタルアートの閲覧に関する権利」の設定だと整理されているためです。制作者は作品を手放しているのではなく、閲覧の権利を設定して対価を得ている、という見方です。

一次流通の必要経費には、制作費が入らないことがある

同じ情報の問1は、NFTの売上原価はNFTを組成するために要した費用で、デジタルアートの制作費は含まれないとしています。販売費や一般管理費は必要経費になります。作品の制作にかかった費用をどう扱うかは、事業として行っているかどうかも含めて整理が必要です。

事業所得と雑所得で、使える控除と税が違う

制作したNFTの販売が事業所得になるか雑所得になるかで、次の点が変わります。

項目事業所得雑所得
青色申告特別控除(最大65万円)使える使えない
赤字の損益通算他の所得と通算できる雑所得の中でしか通算できない
個人事業税法定業種に当たれば課税課税されない

個人事業税は、地方税法の法定業種に当たる事業だけにかかります。デザイン業は第3種で5%ですが、画家などの芸術家は原則として法定業種に入っていません。デジタルアートの制作がどちらに当たるかは、作品の性質と都道府県の判断によります。業種ごとの線引きは個人事業税がかからない業種がある。70業種の線引きと計算方法で整理しています。

計算エンジンで比べる:4つの形の手取り

制作者が手数料控除後の売上を得て、経費が年100万円かかる場合で、4つの形の手取りを計算しました。

売上(手数料控除後)事業所得・個人事業税あり事業所得・個人事業税なし雑所得法人化(最適報酬)最適報酬
500万円333.5万円341.2万円322.5万円303.6万円月32万円
700万円463.9万円482.6万円457.1万円450.5万円月45万円
900万円588.8万円618.5万円594.2万円589.4万円月54万円

※ 経費100万円・東京23区・40歳未満・独身・インボイス未登録・2026年(令和8年)分基準。当サイトの計算エンジン(scripts/nft-kazei-kojin-houjin.mjs)で計算 ※ 事業所得は青色申告(e-Tax 65万円控除)。雑所得は青色申告特別控除なし・個人事業税なしとして計算 ※ 売上(税抜)1,000万円以下の免税事業者として計算している。法人化の手取りは法人に残る利益を引き出すコスト20%を控除後の額で、税理士報酬・設立費用は含まない

表から読めること

1つ目。個人事業税がかからない事業所得が、どの売上でもいちばん手取りが多くなります。売上700万円では482.6万円です。

2つ目。法人化すると、個人事業税がかからないという利点が消えます。法人事業税は業種を問わずかかるからです。売上900万円では、個人事業税がかからない事業所得の618.5万円に対し、法人化は589.4万円で、29.1万円少なくなります。

3つ目。個人事業税がかかる場合でも、売上900万円で法人化の589.4万円と事業所得の588.8万円がほぼ並びます。雑所得は売上900万円で594.2万円となり、事業所得(個人事業税あり)を上回ります。青色申告特別控除の効果より、個人事業税の負担のほうが大きくなるからです。

法人化の判断は、所得区分と個人事業税の扱いが決まってから行う順番です。計算の前提は計算の根拠と前提にまとめています。

二次流通(転売)は、特別控除50万円の総合課税

購入したNFTを転売した場合は、原則として総合課税の譲渡所得です。国税庁の情報の問4は、譲渡所得の特別控除を50万円とし、譲渡益が50万円以下ならその金額までしか控除できないとしています。損失が出た場合は他の所得と損益通算できますが、主として趣味・娯楽・鑑賞の目的で持っていたNFTの損失は通算できません。

転売を営利目的で継続的に行っている場合は、譲渡所得ではなく雑所得または事業所得です。この場合は特別控除50万円がなくなります。

法人で転売した場合は、所得税と同じく、その利益が益金になります(同 問4の参考)。法人では所得区分がないので、特別控除50万円のような個人の優遇は使えません。

消費税は「誰に売ったか」で決まる

国税庁の情報の問11によると、デジタルアートの制作者が日本の消費者にNFTを有償で販売する取引は、著作物の利用の許諾として電気通信利用役務の提供に当たり、制作者に消費税が課されます。購入者の住所等が国外なら不課税です。

ここで注意したいのは、購入者が国外にいる売上は不課税なので、課税売上高1,000万円の判定に入らないことです。国外向けの売上が多い制作者は、売上全体が1,000万円を超えていても免税事業者のままのことがあります。海外向け売上と1,000万円の判定の関係は海外向け売上は消費税1,000万円の判定に入る?不課税と輸出免税で逆で扱っています。

暗号資産で受け取ったら、その暗号資産の損益も別に出る

NFTの代金を暗号資産で受け取り、それを後で売ったり別のNFTの購入に使ったりすると、その時点で暗号資産の損益が生じます。暗号資産を法人で持つ場合の期末時価評価については暗号資産は法人化で税率が下がる。ただし含み益に課税されるで計算しています。

まとめ

  • 財産的価値のある資産と交換できるNFTの取引は所得税の課税対象。制作して売る一次流通は雑所得(または事業所得)、転売は原則として特別控除50万円の譲渡所得
  • 一次流通の売上原価はNFTの組成費用で、デジタルアートの制作費は含まれないとされている
  • 事業所得なら青色申告特別控除と損益通算が使えるが、法定業種に当たれば個人事業税がかかる。雑所得は個人事業税がない代わりに控除も通算もない
  • 売上700万円・経費100万円では、個人事業税なしの事業所得が482.6万円で最も多く、法人化(最適報酬)は450.5万円。法人事業税は業種を問わないため、個人事業税がかからない制作者ほど法人化で失うものが大きい
  • 国内の消費者への販売は電気通信利用役務の提供として課税、国外の購入者への販売は不課税

所得区分と個人事業税の扱いが決まったら、その条件で個人のままと法人化した場合の手取りを、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

NFTの販売で赤字が出ました。給与と相殺できますか?

雑所得に区分される場合、赤字は他の所得と損益通算できません(雑所得の中での通算は可能です)。購入したNFTの転売で譲渡所得の損失が出た場合は損益通算できますが、そのNFTが主として趣味・娯楽・鑑賞の目的で持っていたものなら通算できません(国税庁 NFT情報 問1・問4)。

マーケットプレイス内のトークンで代金を受け取りました。売上はいくらで計上しますか?

受け取ったトークンの時価が収入になります。トークンが暗号資産などと交換できず時価の算定が難しい場合は、販売したNFTの市場価額(ない場合は売上原価等)をトークンの時価として扱ってよいとされています(国税庁 NFT情報 問1)。

不正アクセスでNFTを盗まれました。損失は引けますか?

事業用の資産なら、その損失を事業所得または雑所得の必要経費に算入できます。生活に通常必要でない資産や事業用資産に当たらず、盗難等に当たる場合は雑損控除の対象になります(国税庁 NFT情報 問5)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。