税金の基礎

ノベルティのカレンダー・手帳は交際費から除外。差が出るのは法人だけ

結論

カレンダー・手帳・扇子・うちわ・手拭いなどを贈るために通常要する費用は、法令で交際費等から除かれています(租税特別措置法施行令37条の5第2項1号)。それ以外の物品は、多数に配る・広告宣伝が主目的・価額が少額の3つがそろえば同じ扱いです。法人税額に差が出るのは交際費等が800万円(設立初年度は月割)を超える場合だけで、交際費等が800万円の会社なら、ノベルティ100万円を除くと法人税等は23.2万〜33.6万円減る試算でした。

  • 「これらに類する物品」は、多数の者に配付する目的で、主に広告宣伝の効果を狙い、価額が少額のもの(措通61の4(1)-20)。金額の基準は書かれていない
  • 「おおむね3,000円以下」は、売上割戻しと同じ基準で交付する物品や景品付販売の景品の通達(措通61の4(1)-3〜5)にある数字
  • 10月1日設立・12月決算の会社は初年度が3か月で、定額控除限度額は200万円。年末に配るカレンダーを交際費等に入れるかで損金不算入額が変わる

条文の言葉は「交際費等から除く」です。カレンダー代を広告宣伝費の科目で記帳したから外れるのではなく、法令が除外の対象を名指ししています。科目の名前より、何をどう配ったかが判定を決めます。

もう1つ先に押さえたいのは、この区分で税額が変わるのは法人だけだという点です。個人事業主には交際費の上限がないので、カレンダー代を広告宣伝費にしても接待交際費にしても、必要経費になる額は同じです。以下、除外の条件を条文と通達で確かめ、法人で何円の差になるかを計算エンジンで出します。

法令が名指しする5品目と、「類する物品」の3条件

租税特別措置法61条の4第6項は、交際費等を、得意先や仕入先など事業に関係のある者への接待・供応・慰安・贈答などのための支出と定めています。そのうえで3つの除外を置き、3号の「政令で定める費用」を施行令37条の5第2項が列挙します。その1号が次の規定です。

カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用

名前が出るのはこの5品目です。「これらに類する物品」の範囲は、措置法関係通達61の4(1)-20が次のように定めています。

条件中身欠けやすい例
多数の者に配付する目的特定の相手に絞らず、まとめて配る主要取引先の数社だけに贈る
主として広告宣伝的効果を意図社名やロゴを見せて覚えてもらうことが主目的社名の入っていない一般の贈答品
価額が少額配る1個あたりの価額が小さい名入れでも高価な品物

3つは「かつ」でつながっています。社名入りでも、少数の得意先に高価な品物を贈れば、それは贈答そのもので交際費等に入ります。逆にタオルやボールペンのように法令に名前のない品物でも、3条件がそろえば除外の対象です。

書類の保存要件がない

1人1万円以下の飲食費の除外(措置法61条の4第6項2号)は、参加者の氏名や人数などを記載した書類の保存が条件です(同条8項)。8項が対象にしているのは2号だけで、カレンダー・手帳の除外を定める3号には書類の要件がありません。

ただし、帳簿に何も残さなくてよいという意味ではありません。後から「多数に配った広告宣伝用の物品だった」と説明するには、発注書、物品の写真、配った先の範囲や部数のメモがあると話が早くなります。相手先を1人ずつ記録しないことに相当の理由がある支出の扱いは、使途秘匿金の記事で取り上げました。

「3,000円以下なら交際費にならない」はどこから来たか

ノベルティの説明では「1個3,000円以下が目安」という言い方をよく目にします。通達61の4(1)-20そのものには金額が書かれていません。通達集で「おおむね3,000円以下」が出てくるのは、別の場面です。

通達場面少額物品の扱い
61の4(1)-3(注)2売上高などに比例する売上割戻しの代わりに物品を交付する割戻しと同じ算定基準なら、少額物品(購入単価おおむね3,000円以下)の交付費用は交際費等に該当しない
61の4(1)-4売上割戻しと同様の基準で物品を交付する原則は交際費等。少額物品で、交付の基準が割戻しと同一なら交際費等に該当しないものとすることができる
61の4(1)-5製造業者・卸売業者が景品引換券付販売・景品付販売で得意先に景品を交付する少額物品で、種類と金額を確認できるなら交際費等に該当しないものとすることができる

つまり3,000円は「売上割戻しや景品の代わりに渡す物品」についての数字です。カレンダーや手帳の規定とは根拠が違います。

この違いが効くのは、3,000円を安全圏と思い込んだときです。2,000円の名入れ品でも、配る相手を特定の数社に絞れば「多数の者に配付する目的」を欠きます。金額だけで判断すると、条件の残り2つを見落とします。

広告宣伝費の側から見ても、軸は「不特定多数」

国税庁No.5260は、カレンダー・手帳・手ぬぐいなどの贈与費用を、不特定多数への宣伝的効果を意図した費用と並べて「広告宣伝費となります」と説明しています。後者の例は、抽選による一般消費者への金品の交付、小売業者が購入者に渡す景品、得意先等への見本品・試用品の供与などです(措通61の4(1)-9)。

同じページは、医薬品メーカーにとっての医師、建材メーカーにとっての大工などは「一般消費者」に当たらないと注記しています。祭りやイベントへの協賛で、この線がどう効くかは協賛金の勘定科目の記事で整理しました。

個人事業主は、科目を変えても税額は同じ

ここまでの線引きは法人税の話です。所得税には交際費の定義も上限もありません。個人事業主の必要経費は、総収入金額を得るために直接要した費用と、その年の販売費・一般管理費その他業務上の費用です(国税庁No.2210)。

そのため個人事業主にとって、カレンダー代を「広告宣伝費」と「接待交際費」のどちらで記帳しても、必要経費になる額は変わりません。問われるのは、業務のための支出かどうかです。家族や友人への私的な贈り物は、名入れでも家事上の費用です。

経費になる支出が、個人と法人で手取りにどう効くかは、ロータリークラブの会費の記事で試算しています。同じ30万円を経費にしても、個人事業主は国民健康保険料や個人事業税も減るぶん、法人より負担が軽くなる所得帯がありました。

法人で差が出るのは、交際費等が800万円を超えるときだけ

資本金1億円以下などの中小法人は、交際費等のうち年800万円の定額控除限度額までを損金にできます(措置法61条の4第2項)。逆に言えば、ノベルティ込みでも交際費等が800万円以内に収まる会社では、除外できてもできなくても損金になる額は同じです。

では、どこから差が出るのか。ノベルティの費用100万円を交際費等から除いた場合と含めた場合で、法人税等を当サイトの計算エンジンで比べました。

交際費等(ノベルティ除く)除いた場合の損金不算入額含めた場合の損金不算入額法人税等の差(利益500万円)法人税等の差(利益1,000万円)法人税等の差(利益2,000万円)
600万円0円0円0円0円0円
700万円0円0円0円0円0円
750万円0円500,000円115,900円167,800円167,900円
800万円0円1,000,000円231,700円335,500円335,600円
850万円500,000円1,500,000円231,800円335,700円335,400円

※ ノベルティ(カレンダー・手帳等)の費用100万円を、交際費等から除いた場合と含めた場合の比較。利益は交際費等を全額損金とした場合の税引前利益(仮定) ※ 資本金1億円以下・12か月の事業年度・定額控除限度額800万円で計算。法人税等は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税(東京23区)/2026年(令和8年)分基準

ノベルティ以外の交際費等が700万円以下なら、差は0円です。一人社長の会社の多くはこの範囲に入ります。差が最大になるのは、ノベルティ以外ですでに800万円に達している会社で、100万円を除けるかどうかで法人税等が23.2万〜33.6万円変わります。

利益500万円の列の差が小さいのは、法人税の軽減税率(所得800万円以下の部分)が効いているためです。800万円を超えたときの税額と損益分岐点への影響は、交際費800万円の上限があるのは法人だけで計算しました。

設立初年度は、800万円が月割になる

一人社長の会社でも800万円の線が近づく場面があります。法人を作った最初の事業年度です。定額控除限度額は「800万円に事業年度の月数を乗じて12で除した金額」で、月数は暦に従い、1月に満たない端数は1月とします(措置法61条の4第2項・4項)。

ノベルティ以外の交際費等が180万円、カレンダー・手帳などのノベルティが120万円の会社で、初年度の月数ごとに損金不算入額を出しました。

設立初年度の月数定額控除限度額ノベルティを除いた場合の損金不算入額含めた場合の損金不算入額差
3か月2,000,000円0円1,000,000円1,000,000円
4か月2,666,666円0円333,334円333,334円
6か月4,000,000円0円0円0円
9か月6,000,000円0円0円0円
12か月8,000,000円0円0円0円

※ 交際費等(ノベルティ除く)180万円、ノベルティ(カレンダー・手帳等)120万円を同じ事業年度に支出した仮定。定額控除限度額=800万円×月数÷12(1月未満の端数は1月)

たとえば10月1日に設立し12月を決算月にした会社は、初年度が3か月で、限度額は200万円です。10月15日の設立でも、端数が1月に切り上がるので同じく3か月になります。年末に取引先へ配るカレンダーや翌年の手帳は、ちょうどこの短い事業年度に入ります。

個人事業主のころは交際費の上限を意識する必要がありませんでした。法人成りの初年度は、年末の贈答とノベルティの支出が重なる時期と、月割で小さくなった限度額が重なります。決算月の決め方は決算月の記事で扱いました。

期末に残ったカレンダーと、消費税

配る前の在庫は、原則として配った期の経費

消耗品などの棚卸資産は、原則として消費した日の属する事業年度(個人は年分)の経費です。ただし法人税基本通達2-2-15は、広告宣伝用印刷物・見本品などで、毎期おおむね一定数量を取得し経常的に消費するものは、継続して取得した期の損金にする処理を認めています。個人事業主にも同じ趣旨の所得税基本通達37-30の3があります。

毎年同じ時期に同じくらいの部数を作るカレンダーなら、この取扱いに当てはまる余地があります。一方、初めて大量に作った記念品や、年によって数量が大きく変わる物品は「おおむね一定数量」に当たりにくくなります。期末に箱のまま残っている数量は、確認しておくと説明がしやすくなります。

なお、交際費等に当たる贈答の費用は、買った時ではなく贈答した時に交際費等として計上します(措通61の4(1)-24)。少数の得意先向けの高価な名入れ品のように交際費等になる物品は、期末に未配付で残っていれば、その期の交際費等には入りません。

購入は課税仕入れ。商品券とは違う

物品を買って配る場合、その購入代金は原則として課税仕入れになります。国税庁No.6463は、中元・歳暮のように得意先への贈答品として物品を購入した代金を、原則として課税仕入れとしています。広告宣伝用の物品も、買ったものを配る点は同じです。

本則課税で仕入税額控除を受けるには、印刷業者などから受け取ったインボイスの保存が必要です。取引先へ商品券を贈る場合は購入自体が非課税なので、控除できる消費税がありません(商品券の贈答の記事)。名入れの物品と商品券は、法人税の交際費等でも消費税でも扱いが分かれます。

まとめ

  • カレンダー・手帳・扇子・うちわ・手拭いなどを贈与するために通常要する費用は、法令で交際費等から除かれている(措置法施行令37条の5第2項1号)
  • 「これらに類する物品」は、多数に配る目的・主に広告宣伝の効果を狙う・価額が少額の3条件で決まる。通達に金額の基準はなく、「おおむね3,000円以下」は売上割戻しや景品の通達の数字
  • 個人事業主には交際費の上限がなく、科目をどちらにしても必要経費になる額は変わらない
  • 法人で税額に差が出るのは交際費等が800万円を超える場合だけ。ノベルティ以外ですでに800万円に達している会社では、100万円を除けるかで法人税等が23.2万〜33.6万円変わる試算だった
  • 設立初年度は限度額が月割になり、3か月なら200万円。年末のノベルティ支出と重なりやすい

ノベルティの区分が効くかどうかは、法人化した後の交際費の規模と、設立時期の組み合わせで決まります。一般論ではなく、自分の売上と経費で法人化の損得を確かめてください。

よくある質問

社名入りのタオルやボールペンも交際費から除けますか

法令に名前が出るのはカレンダー・手帳・扇子・うちわ・手拭いだけで、タオルやボールペンは「これらに類する物品」に当たるかで判断します。多数の者に配る目的で、主に広告宣伝の効果を狙い、価額が少額であれば同じく交際費等から除かれます(措通61の4(1)-20)。

個人事業主はカレンダー代を広告宣伝費と接待交際費のどちらにすればよいですか

所得税には交際費の金額を制限する規定がないため、業務のための支出であれば、どちらの科目でも必要経費になる額は変わりません。科目は帳簿の上の分類で、税額を決めるのは業務との関係です。

ノベルティを買ったときの消費税は仕入税額控除できますか

物品を購入して配る場合、その購入代金は原則として課税仕入れになります(国税庁No.6463)。本則課税で控除するには、印刷業者などの仕入先から受け取ったインボイスの保存が必要です。商品券を配る場合は購入が非課税なので控除できません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。