税金の基礎
取引先に贈る商品券は消費税が引けない。交際費の扱いと品物との差
結論
商品券・ギフト券の購入は物品切手等の譲渡として非課税なので、取引先に贈っても仕入税額控除はできません。法人では交際費等、個人事業主では業務上の必要経費になります。本則課税の事業者が税込10万円を贈る場合、食品の詰め合わせ(8%)なら7,408円の消費税を控除できるため、所得税・法人税の効果を差し引いた実質負担の差は、当サイトの試算で3,008〜6,108円でした。
- 国税庁No.6463は、得意先への商品券の交付は課税仕入れにならないと明記。中元・歳暮の品物の購入は原則として課税仕入れ
- 1人1万円以下の除外は飲食費の規定。商品券も、中元・歳暮の食品の詰め合わせも「飲食等」に含まれず、使えない
- 法人の交際費等は贈答した時に計上する(措通61の4(1)-24)。従業員・役員に配った商品券は券面額が給与になる
お歳暮を品物で贈るか、商品券で贈るか。相手の受け取り方は同じでも、贈る側の消費税の計算は違います。品物の購入は課税仕入れになり、商品券の購入はなりません。国税庁No.6463は、得意先へ商品券を交付する場合は課税仕入れにならないと明記しています。
ただ、この差がそのまま手取りの差になるわけではありません。品物で贈れば消費税分は経費から外れ、その分だけ所得税や法人税が増えるからです。当サイトの計算エンジンで差し引きを出すと、税込10万円の贈答で残る差は3,008〜6,108円でした。以下、消費税・交際費・給与の3つの線を順に見ます。
商品券の購入は非課税。だから控除する税額がない
消費税法は、商品券などの物品切手等の譲渡を非課税取引にしています。国税庁No.6229によると、対象は商品券・ギフト券・旅行券と、いわゆるプリペイドカードです。理由も書かれています。商品券の販売に課税すると、最後に受け取る商品やサービスは1つなのに、二重に課税されてしまうからです。
課税されるのは、商品券を使って商品を買ったときです。仕入税額控除も、その時に、実際に商品やサービスを受け取った者が行います。取引先に贈った場合、商品券を使うのは取引先です。あなたの側には、控除できる消費税が最初から存在しません。
| 何を贈ったか | 購入時の消費税 | 贈った側の仕入税額控除 |
|---|---|---|
| 商品券・ギフト券・プリペイドカード | 非課税 | できない |
| 中元・歳暮の品物(食品の詰め合わせ等) | 課税(軽減税率8%) | 原則としてできる |
| 食品以外の贈答品 | 課税(標準税率10%) | 原則としてできる |
| 祝金・餞別・弔慰金(現金) | 対価のない支出 | できない |
国税庁No.6463は、中元・歳暮のような得意先への贈答品の購入代金を「原則として課税仕入れ」としています。品物で贈るなら、百貨店などのレシート(適格簡易請求書)を保存して控除を受ける流れです。
自社で使うために買った商品券は話が別です。使った時点で課税仕入れになり、一定の条件では購入時の計上も認められます。この時期のずれはSuicaのチャージの記事で扱いました。この記事は、取引先に渡して自分では使わない場合に絞ります。
1件あたりの消費税の差は7,408円か9,091円
税込10万円を贈るとして、控除できる消費税を並べます。
| 贈り方 | 税抜の経費 | 控除できる消費税 |
|---|---|---|
| 商品券 | 100,000円 | 0円 |
| 食品の詰め合わせ(8%) | 92,592円 | 7,408円 |
| 食品以外の品物(10%) | 90,909円 | 9,091円 |
※ 税込100,000円を税率で割り戻し、円未満を切り捨てた値
お歳暮の定番であるお菓子やハムは飲食料品で、軽減税率8%です。酒類は飲食料品から除かれるので、ビールやワインのギフトは10%になります。なお国税庁は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品の譲渡について消費税率が引き下げられると案内しています。その期間は、食品で贈った場合の控除額も小さくなります。
消費税の差は、所得税・法人税で一部が相殺される
7,408円がそのまま得になるわけではありません。商品券なら10万円全額が経費になります。食品なら経費は92,592円で、7,408円は経費から外れます。外れた分だけ、所得税・住民税・国民健康保険料(法人なら法人税等)が増えます。
計算エンジンで、経費200万円の事業者が税込10万円を贈った場合の実質負担を出しました。実質負担は「支払った10万円 − 控除できる消費税 − 減る税・社会保険料」です。
| 事業所得 | 個人:商品券 | 個人:食品(8%) | 個人:差 | 法人:商品券 | 法人:食品(8%) | 法人:差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 70,920円 | 65,695円 | 5,225円 | 78,600円 | 72,792円 | 5,808円 |
| 600万円 | 57,020円 | 52,795円 | 4,225円 | 78,600円 | 72,792円 | 5,808円 |
| 800万円 | 57,320円 | 52,795円 | 4,525円 | 78,800円 | 72,692円 | 6,108円 |
| 1,000万円 | 61,230円 | 56,442円 | 4,788円 | 78,600円 | 72,592円 | 6,008円 |
| 1,200万円 | 51,300円 | 47,692円 | 3,608円 | 77,000円 | 71,292円 | 5,708円 |
| 1,500万円 | 51,300円 | 47,692円 | 3,608円 | 76,700円 | 71,092円 | 5,608円 |
| 1,800万円 | 51,300円 | 47,692円 | 3,608円 | 76,800円 | 71,092円 | 5,708円 |
| 2,100万円 | 44,100円 | 41,092円 | 3,008円 | 76,800円 | 71,192円 | 5,608円 |
※ 税込100,000円の贈答の実質負担=支払額 − 仕入税額控除 − 減る税・社会保険料。商品券は100,000円全額を経費(損金)、食品は税抜92,592円を経費とし、7,408円を仕入税額控除 ※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・消費税は本則課税/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人側は役員報酬を各所得で計算エンジンが選ぶ最適額に固定。交際費等が定額控除限度額(年800万円)の内に収まる前提
差は7,408円より小さく、3,008〜6,108円に収まります。個人事業主では、所得が高く経費1円あたりの税の戻りが大きい人ほど差は縮みます。法人では5,608〜6,108円で、所得による動きはわずかです。事業所得2,100万円の個人事業主では、7,408円のうち4,400円分が所得税などの増加で消えています。
もう1つ表から読めるのは、同じ10万円の贈答でも、どの所得帯でも法人の実質負担のほうが重いことです。商品券で比べると、差は事業所得400万円で7,680円、1,000万円で17,370円、2,100万円で32,700円に広がります。法人は最適な役員報酬を取ると会社に残る利益が小さく、経費が減らすのは低い税率帯の法人税等だけです。個人は国民健康保険料・所得税・住民税・個人事業税がまとめて下がり、所得が高いほど戻りも大きくなります。品物の種類を選ぶより、どちらの器で払うかのほうが動く額は大きいと言えます。10万円の支出で減る税・保険料の内訳は、協賛金の勘定科目の記事で所得別に出しています。
簡易課税・免税事業者なら差は消える
上の差が出るのは、実際の課税仕入れを積み上げて計算する本則課税の場合だけです。
- 免税事業者は消費税を納めないので、仕入税額控除そのものがない
- 簡易課税は、売上の消費税にみなし仕入率を掛けて控除額を決める
- 2割特例(個人は令和8年分まで、法人は令和8年9月30日を含む課税期間まで)は、売上の消費税の8割を控除額とみなす
この3つでは、品物の消費税を何円払っても納税額は変わりません。税込経理なら品物も10万円全額が経費になり、商品券と同じ結果になります。
法人では交際費等、個人事業主では必要経費
消費税の次は、所得税・法人税の扱いです。取引先への贈答は、法人と個人事業主で入る箱が違います。
法人の場合、得意先や仕入先など事業に関係のある者への贈答の費用は交際費等です(措置法61条の4第6項)。通達は、社外の者の慶弔・禍福に際して支出する金品(措通61の4(1)-15(3))と、取引先の従業員に取引の謝礼として渡す金品(同(9))を、交際費等に含まれる費用として例示しています。取引先の担当者に「お礼」として渡すギフト券も、ここに入ります。
交際費等は原則として全額が損金不算入です。期末の資本金等が1億円以下の法人には、年800万円の定額控除限度額があります。一人社長の規模なら、贈答で800万円に届くことはまずありません。届いた場合の税額は交際費800万円の上限の記事で計算しています。
個人事業主には、この上限がありません。業務上の費用であれば、贈答の費用は必要経費になります。個人で問われるのは金額ではなく、業務との関係です。私的な付き合いの贈り物は家事上の費用で、必要経費になりません。
1人1万円以下の基準は、商品券には使えない
法人の交際費等から除かれる「1人あたり10,000円以下の飲食費」(令和6年3月31日以前の支出は5,000円以下)は、飲食その他これに類する行為の費用の規定です。商品券はもちろん対象外です。
見落としやすいのは、中元・歳暮の食品も対象外だという点です。措通61の4(1)-15の2の注記は、中元・歳暮のように単なる飲食物の詰め合わせ等を贈答する行為は、飲食等に含まれないとしています。5,000円のお菓子を取引先に贈っても、交際費等から除くことはできません。同じ理由で、交際費等の損金不算入額を「接待飲食費の50%」で計算する方法の、接待飲食費にも入りません。
カレンダー・手帳・扇子・うちわ・手ぬぐいなどを贈与するために通常要する費用は、交際費等から除かれます(No.5265)。名入れの物品を多数に配る広告宣伝的な贈答と、特定の取引先への商品券は、ここで線が分かれます。
税抜経理でも、商品券は満額が交際費になる
交際費等の額は、法人が採っている経理方式で決まります(No.6917)。税抜経理なら、品物の交際費等は消費税を除いた額です。食品の詰め合わせ税込10万円なら、交際費等は92,592円になります。
商品券には消費税が含まれていないので、税抜経理でも10万円がそのまま交際費等です。800万円の枠に近い法人では、贈り方によって枠の減り方も変わります。経理方式の選び方は税込経理と税抜経理の記事にまとめました。
交際費になるのは、買った時ではなく贈った時
法人の交際費等の計上時期について、措通61の4(1)-24は「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のあったとき」としています。仮払や未払で経理していても関係ありません。
商品券はまとめ買いされやすいものです。年末の贈答用に11月に買い、渡したのは翌年1月だった、というずれが起きます。期末をまたいだ場合、買っただけでまだ贈っていない分は、その事業年度の交際費等になりません。期末に手元に残っている商品券は、現金に近い資産として残高を確かめておく必要があります。
誰に贈ったかの記録も欠かせません。相当の理由なく相手先を帳簿に記載しない支出は、使途秘匿金として支出額の40%が法人税に加算されることがあります(使途秘匿金の記事)。贈答先・日付・枚数・券面額を残しておくと説明がつきます。
従業員・役員に配った商品券は給与になる
同じ商品券でも、渡す相手が社内なら交際費等ではありません。
国税庁No.2591は、創業記念品や永年勤続の記念品は一定の要件を満たせば給与として課税しなくてよいとしつつ、記念品に代えて現金や商品券を支給すると、その全額(商品券は券面額)が給与として課税されるとしています。記念品なら非課税で済む場面でも、商品券にすると課税に変わります。
法人化した一人社長にとって、ここは重要です。社長自身や家族役員に商品券を渡すと、役員給与になります。毎月同額の定期同額給与でも事前確定届出給与でもない臨時の支給なので、原則として損金の額に算入されません(No.5211)。そのうえ、受け取った社長の側では給与所得として課税されます。会社のお金で買って使い道が明らかでない商品券も、措通61の4(1)-12(3)により給与の性質を持つものとされます。
個人事業主には、この論点はありません。自分や生計を一にする家族に商品券を渡しても、それは家事費で、必要経費に入らないだけです。法人化すると、社長個人と会社が別の人格になるので、同じ行為が「損金にならない役員給与」と「社長の所得税」の二重の負担に変わります。
法人化の判断にどう効くか
贈答の扱いで、法人化の結論が変わることはまずありません。上の表で動く額は、10万円の贈答1件あたり最大でも3.3万円弱です。
それでも、取引先への贈答や謝礼が多い業種では、法人化した後に気をつける点がいくつか増えます。交際費等の上限、1人1万円基準が飲食にしか使えないこと、贈った時期での計上、社内向けの商品券が損金にならない役員給与になることです。個人事業主のときは「業務上の費用なら経費」の一本で済んでいたものが、法人では支出の相手と中身ごとに箱が分かれます。
法人化そのものが有利かどうかは、売上と経費、インボイス登録の有無で決まります。贈答の多寡は誤差に近いので、一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。
まとめ
- 商品券・ギフト券・プリペイドカードの購入は物品切手等の譲渡として非課税で、取引先に贈っても仕入税額控除はできない(No.6229・No.6463)
- 本則課税で税込10万円を贈る場合、食品(8%)なら7,408円、食品以外(10%)なら9,091円を控除できる。所得税・法人税の効果を差し引いた実質負担の差は3,008〜6,108円
- 法人では交際費等で、計上は贈った時。1人1万円以下の除外は飲食費の規定なので、商品券にも中元・歳暮の食品にも使えない
- 従業員・役員に商品券を渡すと券面額が給与になる。一人社長への商品券は定期同額給与に当たらず、損金不算入になり得る
- 免税事業者・簡易課税・2割特例では、品物と商品券の消費税の差はなくなる
よくある質問
取引先に渡すギフトカードやAmazonギフト券も同じ扱いですか
国税庁No.6229は、商品券・ギフト券・旅行券のほか、いわゆるプリペイドカードの譲渡を物品切手等の譲渡として非課税としています。購入した時点では課税仕入れにならず、取引先に贈った場合も仕入税額控除の対象になりません。
商品券を買った領収書にインボイス番号が書いてあれば控除できますか
商品券の販売自体が非課税取引なので、購入代金に消費税は含まれておらず、控除できる税額がありません。控除の対象になるのは、商品券を使って実際に商品やサービスを受け取った者の側の課税仕入れです。
社長が自分で使った商品券を交際費にしてもよいですか
取引先に贈った事実がなければ交際費等にはなりません。業務に使ったことが明らかでない支出は給与の性質を持つとされ(措通61の4(1)-12)、一人社長の場合は定期同額給与などに当たらない役員給与として損金不算入になり得ます。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.6463 寄附金や交際費の取扱い
- 国税庁 タックスアンサー No.6229 商品券やプリペイドカードなど
- 国税庁 タックスアンサー No.6201 非課税となる取引
- 国税庁 タックスアンサー No.6303 消費税および地方消費税の税率
- 国税庁 タックスアンサー No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
- 国税庁 タックスアンサー No.6917 交際費等の損金不算入額を算出する場合における消費税等の取扱い
- 国税庁 租税特別措置法関係通達(法人税編)第61条の4関係 第1款 交際費等の範囲
- 国税庁 タックスアンサー No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき
- 国税庁 タックスアンサー No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)
- 国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。