役員報酬

小さい会社は利益の7割強を社内に残し、配当は1〜2%。会社標本調査の益金処分

結論

国税庁の会社標本調査(令和6年度分)第4表で黒字法人の益金処分を見ると、資本金100万円超200万円以下の会社は支払配当0.8%・社内留保76.9%、200万円超500万円以下は配当2.2%・社内留保74.7%でした。資本金1億円超の会社は配当32.1%・社内留保46.4%なので、小さい会社ほど利益を配当せずに会社へ残しています。法人税と地方法人税は合わせて18〜20%前後です。

  • 資本金100万円以下の階級だけは配当が11.1%と高い。1社あたり平均は132.3万円だが、少数の会社の大きな配当が平均を引き上げている可能性がある
  • 社内留保は会社に残した利益で、個人の手取りではない。引き出すときに役員報酬・配当・退職金のどれを使うかで税負担が変わる
  • 一人会社にとって配当は、法人税を払った後の利益にさらに配当課税がかかる受け取り方になる

法人化すると、事業の利益は「役員報酬として受け取る分」と「会社に残る分」に分かれます。会社に残った利益は、配当として受け取ることも、会社に貯めておくこともできます。実際の会社がどうしているかは、国税庁の会社標本調査の「益金処分」で確かめられます。

黒字法人の益金処分の内訳

会社標本調査(令和6年度分)の第4表から、黒字の法人(利益計上法人)の益金処分を、資本金階級ごとに「計」に占める割合で示しました。

資本金階級支払配当法人税額地方法人税額その他の社外流出社内留保(純額)1社あたり支払配当
100万円以下11.1%16.2%1.7%5.8%65.2%132.3万円
100万円超〜200万円以下0.8%16.4%1.7%4.1%76.9%8.0万円
200万円超〜500万円以下2.2%16.7%1.7%4.6%74.7%24.9万円
500万円超〜1,000万円以下7.9%17.6%1.9%4.7%67.9%243.7万円
1,000万円超〜2,000万円以下10.1%18.6%2.0%5.6%63.7%521.5万円
2,000万円超〜5,000万円以下9.9%18.5%2.0%5.8%63.8%1,092.3万円
5,000万円超〜1億円以下17.4%18.1%1.9%5.9%56.7%6,105.5万円
1億円以下の計10.7%17.8%1.9%5.4%64.2%364.3万円
1億円超の計32.1%14.5%1.6%5.3%46.4%127,323.6万円

※ 国税庁 令和6年度分 会社標本調査 第4表(通算法人を除く)。社内留保(純額)は正−負。支払配当+法人税額+地方法人税額+その他の社外流出+社内留保=計を各階級で検算。1社あたりは第2表の利益計上法人数で割った当サイト計算。元データは data/official/ekikin-shobun-r06/、表は scripts/ekikin-shobun-r06.mjs で再生成できる

一人会社の多くが入る資本金100万円超〜500万円以下の階級では、支払配当は**0.8〜2.2%にすぎず、利益の75〜77%**を社内留保として会社に残しています。資本金1億円超の会社が利益の3分の1を配当に回しているのと対照的です。

資本金100万円以下の階級だけは配当が11.1%と高く出ています。1社あたりの平均は132.3万円ですが、すぐ上の階級(8.0万円)とかけ離れており、少数の会社の大きな配当が平均を引き上げている可能性があります。平均の扱いには注意が必要です(中小法人の法人税の1社平均)。

小さい会社が配当しない理由

統計はその理由を示しませんが、一人会社にとって配当が割に合いにくい仕組みははっきりしています。

  • 配当は法人税を払った後の利益から出す。会社の段階で法人税等がかかり、受け取った社長の側でも配当所得として課税される
  • 役員報酬は会社の損金になる。同じお金を役員報酬で受け取れば、会社の段階の法人税はかからない(給与所得控除もある)
  • 社内留保は将来の退職金の原資になる。役員退職金は退職所得になり、役員としての勤続年数が5年を超えれば2分の1課税の扱いがあり、会社に残した利益を取り出す手段として使われる(法人に残した利益は退職金で引き出すと負担率3%)

一方で、配当には社会保険料がかからない、という違いもあります。役員報酬の一部を配当に替えると、保険料が下がるぶん手取りが増える場合があります。ただしその分、将来の年金も減ります(役員報酬を配当に替えると手取りはどう変わるか)。

「会社に残す」の手取りへの読み方

社内留保は会社のお金で、社長個人の手取りではありません。当サイトの判定ツールは、会社に残る利益を個人の手取りとして数えるときに、引き出すときのコストを差し引いています(初期値は20%)。会社に残す割合が大きいほど、この引き出し方の前提で法人化の損得が動きます。

役員報酬をいくらにするかで、個人の手取りと会社に残る利益の配分が決まります(役員報酬の最適額)。統計の小さい会社のように利益の7割以上を残すなら、それをいつ、どの方法で取り出すかまで決めておくと、法人化の判断がぶれません。自分の売上と経費で、報酬と会社に残る額の配分を確かめてください。

まとめ

  • 資本金100万円超〜500万円以下の黒字法人は、益金処分のうち配当0.8〜2.2%、社内留保75〜77%
  • 資本金1億円超の会社は配当32.1%・社内留保46.4%で、小さい会社ほど利益を会社に残している
  • 資本金100万円以下の配当11.1%は、少数の大きな配当に引き上げられている可能性がある
  • 一人会社の配当は、法人税の後にさらに配当課税がかかる受け取り方。役員報酬・退職金と比べて選ぶ
  • 社内留保は社長の手取りではない。取り出す時期と方法まで決めて法人化を判断する

よくある質問

益金処分とは何ですか。

法人税の申告で、その事業年度の所得がどこへ行ったかを示す区分です。会社標本調査では、支払配当、法人税額、地方法人税額、その他の社外流出(役員賞与の損金不算入額など)、社内留保に分けて集計しています。

中小企業は配当を出していないのですか。

黒字の法人の益金処分に占める支払配当は、資本金100万円超500万円以下で0.8〜2.2%、資本金1億円以下全体でも10.7%です。資本金1億円超の会社(32.1%)に比べると、配当に回す割合は小さくなっています。

社内留保は多いほど良いのですか。

会社の財務の安定には役立ちますが、一人会社では最終的に社長個人が引き出すまで手取りになりません。引き出し方によっては配当課税や所得税がかかるため、残す額と引き出す方法をセットで考える必要があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。