設立の手続き
合同会社から株式会社への組織変更、費用は登録免許税6万円+官報
結論
資本金2,000万円以下なら、組織変更の登録免許税は株式会社の設立登記3万円と合同会社の解散登記3万円の計6万円です。これに官報公告の掲載料(1行3,947円、10行なら3万9,470円)が加わり、法定費用はおよそ10万円。公証人の定款認証は要りません。
- 債権者の異議申述期間は1か月以上。効力発生日から2週間以内に、設立と解散の登記を同時に申請する
- 法人税の事業年度も消費税の課税期間も組織変更で区切られない。新設法人の消費税免税が改めて受けられるわけではない
- 合同会社の設立実費6万円と組織変更の約10万円を足すと約16万円で、最初から株式会社を作る実費(16.5万〜20万円)とほぼ変わらない
合同会社と株式会社で迷う人に、「迷ったら合同会社、必要になったら組織変更」という助言がよく出されます。当サイトの合同会社と株式会社の設立費用の比較でも同じ結論にしました。
では、その「必要になったとき」にいくらかかり、何か月かかるのか。この記事では、会社法・登録免許税法・法務局の申請書記載例で手続きと費用を確かめ、最初から株式会社にした場合と実費で比べます。
法定費用は登録免許税6万円と官報の掲載料
組織変更で必ずかかる費用は2つです。
登録免許税:設立登記と解散登記で計6万円
会社法第920条により、組織変更をしたら、組織変更前の会社(合同会社)は解散の登記、組織変更後の会社(株式会社)は設立の登記をします。登録免許税はそれぞれにかかります。
登録免許税法の別表第一によると、組織変更による株式会社の設立の登記は資本金の額の1,000分の1.5(最低3万円)、会社の解散の登記は1件3万円です。組織変更の直前の資本金を超える部分(組織変更と同時に資本金を増やす場合)だけは1,000分の7になります。
| 資本金 | 株式会社の設立登記 | 合同会社の解散登記 | 登録免許税の合計 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 30,000円 | 30,000円 | 60,000円 |
| 300万円 | 30,000円 | 30,000円 | 60,000円 |
| 1,000万円 | 30,000円 | 30,000円 | 60,000円 |
| 2,000万円 | 30,000円 | 30,000円 | 60,000円 |
| 3,000万円 | 45,000円 | 30,000円 | 75,000円 |
※ 資本金を変えずに組織変更する場合。計算は scripts/godo-kabushiki-soshiki-henko.mjs で再現できます
最低額の3万円を超えるのは資本金2,000万円を超えてからです。一人会社の資本金ならほぼ確実に6万円で済みます。株式会社を新しく設立すると最低15万円かかるのと比べると、設立登記の部分が大きく安いのが組織変更の特徴です。
官報公告:1行3,947円
債権者保護手続として官報に公告します。全国官報販売協同組合の料金表では、会社等の各種公告は1行3,947円(税込)です。料金は全国一律です。
同組合が公開している「組織変更公告(持分会社から株式会社へ)」の文例は、組織変更をする旨、効力発生日と変更後の商号、異議のある債権者は1か月以内に申し出るよう求める文、日付、所在地、商号、代表社員名で構成されています。行数は原稿を組んだゲラで確定するので、行数別に掲載料を並べておきます。
| 行数 | 掲載料 |
|---|---|
| 8行 | 31,576円 |
| 10行 | 39,470円 |
| 12行 | 47,364円 |
| 15行 | 59,205円 |
登録免許税6万円と合わせて、法定費用はおよそ10万円です。これに、知れている債権者への催告の郵送費と、依頼する場合の司法書士報酬が加わります。
定款認証は要らない
株式会社を新しく設立すると公証人の定款認証(3万〜5万円、条件を満たせば1万5,000円)が必要ですが、組織変更では要りません。法務局の申請書記載例に「公証人の認証は必要ありません」と明記されています。組織変更計画で定めた定款の内容が、効力発生日に定款変更されたものとみなされる(会社法第747条第2項)ためです。
手続きは5段階。異議申述の1か月が必ず入る
会社法の条文に沿って並べると次の順番です。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 組織変更計画を作る。株式会社の目的・商号・本店・発行可能株式総数、取締役の氏名、社員に割り当てる株式の数、効力発生日などを定める | 会社法第746条 |
| 2 | 効力発生日の前日までに、総社員の同意を得る | 会社法第781条第1項 |
| 3 | 官報に公告し、知れている債権者に各別に催告する。異議を述べられる期間は1か月以上 | 会社法第781条第2項・第779条第2項 |
| 4 | 効力発生日に株式会社になる | 会社法第747条第1項 |
| 5 | 効力発生日から2週間以内に、株式会社の設立登記と合同会社の解散登記を同時に申請する | 会社法第920条 |
一人会社なら段階2の同意は自分1人の同意書で足ります。時間を決めるのは段階3です。公告が官報に載ってから1か月以上の異議申述期間を置かないと、効力発生日を迎えられません。官報の申込みから掲載までの日数も加わるので、準備を始めてから効力発生日まで1か月を超える期間を見込む必要があります。
株式会社への組織変更の場合、官報の公告に計算書類に関する事項を載せる必要はありません。会社法第781条第2項は、株式会社が組織変更するときの第779条第2項第2号(計算書類に関する事項)を準用から外しているからです。合同会社から株式会社への方向は、逆方向より公告が簡単です。
知れている債権者への各別の催告は、合同会社の定款で公告方法を日刊新聞紙か電子公告にしていて、官報に加えてその方法でも公告した場合に限り、省略できます(会社法第779条第3項の読替え)。定款の公告方法を官報のままにしている会社は、取引先や借入先に1社ずつ催告します。
登記が済んだら、商号などが変わるので、税務署・都道府県・市区町村に異動の届出をします。国税庁は法人の商号や事業年度などが変わったときの「異動届出書」の提出を案内しています。銀行口座や取引先の名義変更も必要です。
税金の上では、同じ会社が続く
登記の上では「解散」と「設立」をしますが、税金の上では別の会社にはなりません。
法人税は、法人税基本通達1-2-2で、組織変更前の法人の解散の登記、組織変更後の法人の設立の登記にかかわらず、事業年度は組織変更によって区分されず継続する、とされています。組織変更の日で決算を締める必要はありません。
消費税も、消費税法基本通達3-2-2で課税期間は区分されず継続するとされています。課税期間が続く以上、納税義務を判定する基準期間(前々事業年度)も合同会社時代のものがそのまま使われます。同通達の注書きは、基準期間ができた後に組織変更した法人には、資本金1,000万円以上の新設法人を課税事業者とする特例(消費税法第12条の2第1項)も適用されないと確認しています。組織変更後の会社を「新しく設立した法人」として扱わない、という点で一貫しています。
つまり、組織変更は消費税の免税期間を取り直す手段にはなりません。 合同会社として設立2期を過ぎた会社が株式会社に組織変更しても、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば課税事業者のままです。新設法人の免税の条件は新設法人の消費税が免税になる条件にまとめています。
法人住民税の均等割は資本金等の額と従業者数で決まるので、資本金を変えなければ年7万円(東京都の場合)のままです。
最初から株式会社と比べると、実費はほぼ同じ
「迷ったら合同会社」が正しいかどうかは、あとで組織変更したときに合計がいくらになるかで判断できます。
自分で手続きした場合の実費で比べます。合同会社の設立は登録免許税6万円で、定款認証はありません。株式会社の設立は登録免許税15万円と定款認証1万5,000円〜5万円で、16.5万〜20万円です(いずれも電子定款の場合)。
| 進め方 | 設立時 | 組織変更時 | 合計(実費) |
|---|---|---|---|
| 最初から株式会社 | 16.5万〜20万円 | — | 16.5万〜20万円 |
| 合同会社で設立し、後で株式会社へ組織変更(官報10行) | 6万円 | 約9.9万円 | 約15.9万円 |
※ 謄本・印鑑証明書などの数千円の実費、司法書士等の報酬、催告の郵送費は含まない
実費の合計はほぼ同じです。合同会社で始めて必要になってから組織変更すれば、株式会社で最初から始めた場合と比べて余分な出費はほとんどありません。しかも、組織変更するまでの間は、株式会社だけにかかる費用(役員の任期ごとの重任登記、決算公告)がかかりません。株式会社の決算公告の費用は決算公告の記事で扱っています。
当サイトの判定ツールは、専門家に依頼する費用も含めて合同会社10万円・株式会社25万円を設立費用の前提にしています。同じ前提で組織変更を専門家に頼むと報酬が上乗せされ、合計は最初から株式会社の25万円に近いか上回ることがあります。どちらにしても、株式会社を選ぶ理由が今はっきりしないなら、組織変更の費用を理由に最初から株式会社にする必要はない、というのが数字から言えることです。
株式会社を選ぶ理由がはっきりしているケースは、外部から出資を受ける予定がある、取引先が株式会社であることを条件にしている、といった場合です。その判断軸は合同会社と株式会社の比較記事で整理しています。
まとめ
- 組織変更の登録免許税は、株式会社の設立登記3万円(資本金×0.15%、最低3万円)+合同会社の解散登記3万円=6万円。資本金2,000万円まで変わらない
- 官報公告は1行3,947円。10行なら3万9,470円で、法定費用は合計でおよそ10万円。定款認証は不要
- 異議申述期間は1か月以上、登記は効力発生日から2週間以内。準備から効力発生日まで1か月を超える
- 法人税の事業年度も消費税の課税期間も継続する。新設法人の消費税免税は受け直せない
- 合同会社設立+後で組織変更の実費は約16万円で、最初から株式会社の16.5万〜20万円とほぼ同じ
一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。合同会社と株式会社で税金と社会保険の計算は変わらないので、判定ツールの結果は会社の種類を切り替えても設立費用の差しか動きません。
よくある質問
組織変更すると、税務上は別の会社になりますか。
登記の上では合同会社の解散と株式会社の設立の登記をしますが、法人税法上も消費税法上も同じ法人として事業年度・課税期間が続きます。税務署には商号などの変更として異動届出書を出します。
債権者がいなければ官報公告は省略できますか。
省略できません。会社法第781条第2項が準用する第779条第2項は、官報への公告を必ず求めています。省略できる可能性があるのは、知れている債権者への各別の催告のほうで、定款で定めた公告方法(日刊新聞紙または電子公告)でも公告した場合に限られます。
株式会社から合同会社に戻すこともできますか。
会社法上はできます。ただし株式会社側の組織変更では、官報に計算書類に関する事項も公告する必要があり、株主全員の同意(総株主の同意)も要ります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。