税金の基礎

借家に住む個人事業主は16.0%。年収700万円以上なら9.6%で、役員社宅が効く人は少ない

結論

令和5年住宅・土地統計調査では、家計を主に支える人が「商工・その他の業主」の世帯332.2万のうち、持ち家は80.9%、民営借家は16.0%でした。会社などに雇われている人の世帯(役員を含む)は民営借家が27.9%で、業主の世帯のほうが借家に住む割合は低くなっています。世帯の年間収入が700万円以上の業主の世帯では、民営借家は9.6%です。役員社宅は会社が借りた住宅を社長に貸す仕組みなので、効果を受けやすいのは借家に住む人で、法人化を検討する所得帯では1割ほどにとどまります。

  • 業主の世帯の民営借家の家賃は平均月78,305円。当サイトの試算では、家賃月8万円の住宅を役員社宅にして社長が半額を負担すると、事業所得1,000万円で可処分所得が年17.8万円増える
  • 持ち家の人は、今の家をそのまま社宅にすることは難しい。会社に家を貸すと受け取る家賃が個人の不動産所得になる
  • 業主の世帯が持ち家に住む割合は、年収が上がるほど高い。年収1,000万〜1,500万円では民営借家は8.6%

法人化のメリットとして、役員社宅はほぼ必ず挙がります。会社が借りた住宅を社長に貸し、家賃の一部を会社の経費にできる仕組みで、家賃が高いほど効果が大きくなります。ただし、この仕組みが使いやすいのは賃貸に住んでいる人です。個人事業主のうち、実際に借家に住んでいる人はどれくらいいるのか。総務省の住宅・土地統計調査で確かめます。

業主の世帯は8割が持ち家、民営借家は16.0%

住宅・土地統計調査は、家計を主に支える人の従業上の地位ごとに、住宅の所有の関係を集計しています。個人事業主に近いのは「商工・その他の業主」(農林漁業以外の業主)です。

家計を主に支える人の地位主世帯数持ち家民営借家給与住宅
商工・その他の業主3,321,80080.9%16.0%1.0%
会社等に雇われている者15,740,00063.5%27.9%6.3%
全世帯55,665,00060.9%28.2%2.3%

※ 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」表43-1(e-Stat)から当サイトが計算。「会社等に雇われている者」は「会社・団体・公社又は個人に雇われている者」で、会社の役員を含む。全世帯には地位が不詳の世帯を含む

業主の世帯は80.9%が持ち家です。会社などに雇われている人の世帯(63.5%)や全世帯(60.9%)より高く、民営借家に住むのは16.0%にとどまります。自宅で事業をしている人や、店舗併用の住宅に住む人が多いことも影響していると考えられます。

年収が上がるほど、借家の割合は下がる

世帯の年間収入別に、民営借家に住む割合を並べました。

世帯の年間収入商工・その他の業主会社等に雇われている者
200~300万円未満20.7%46.9%
300~400万円未満18.4%42.5%
400~500万円未満16.1%34.3%
500~700万円未満14.2%25.8%
700~1000万円未満11.3%19.0%
1000~1500万円未満8.6%15.3%
1500~2000万円未満7.4%13.7%
2000万円以上7.6%12.5%

※ 出典は上の表と同じ。世帯の年間収入は世帯全員の収入の合計(税込み)

業主の世帯でも雇われている人の世帯でも、年収が上がるほど借家の割合は下がります。業主の世帯で年収700万円以上をまとめると、94.4万世帯のうち民営借家は9.0万世帯、**9.6%**です。

法人化で手取りが増え始めるのは、東京23区・40歳未満・単身で事業所得1,266万円からです(当サイトの計算エンジン)。統計の年収は世帯全員の収入なので単純には重ねられませんが、法人化を検討する所得帯の業主の世帯では、賃貸に住んでいる人は1割ほどだと考えられます。

役員社宅が効くのは、借家に住んでいる人

役員社宅の仕組みは、会社が借りた住宅を社長に貸し、社長から「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取るものです。会社が払う家賃との差は会社の経費になり、社長の給与として課税されません。賃貸料相当額は、床面積が132㎡以下(法定耐用年数30年超の建物は99㎡以下)の小規模な住宅なら固定資産税の課税標準額などから計算する算式の額、それより広い住宅を借りて貸す場合は家賃の50%と算式の額の多いほうです(国税庁 No.2600)。

業主の世帯が住む民営借家の家賃は、平均で月78,305円(木造65,119円・非木造86,011円、家賃0円を除く)でした。当サイトが家賃別に計算した役員社宅の試算では、社長が家賃の50%を負担する前提で、事業所得1,000万円・家賃月8万円の住宅を社宅にすると可処分所得は年17.8万円増えます。平均的な家賃の借家に住む人なら、年17万〜18万円ほどの効果が見込める計算です。

一方、持ち家に住んでいる人は、今の家をそのまま社宅にするのは難しくなります。自分の家を会社に貸して社宅にすることはできますが、会社から受け取る家賃は個人の不動産所得として課税され、借家のような効果は出ません(自宅を法人へ貸す家賃)。

「社宅で節税」は、8割の業主には当てはまらない

役員社宅は、法人化の判断を動かすほどの効果がある仕組みです。同じ試算で家賃月15万円なら年33.4万円の差になり、分岐点を大きく下げます。しかし統計で見ると、それが使いやすい借家住まいの業主は16.0%、年収700万円以上なら1割ほどです。

法人化のメリットを数えるときは、社宅のように「条件がそろえば大きい効果」を、自分に当てはまるかどうかで仕分けることが大切です。判定ツールは社宅を前提にしない手取りで比べています。賃貸に住んでいる人は、判定ツールの結果に社宅の効果を上乗せして考えてください。役員報酬の受け取り方全体は役員報酬の最適額で、計算の前提は計算方法で確かめられます。

まとめ

  • 令和5年住宅・土地統計調査で、商工・その他の業主の世帯は持ち家80.9%・民営借家16.0%。雇われている人の世帯(民営借家27.9%)より借家が少ない
  • 年収が上がるほど借家の割合は下がり、業主の世帯で年収700万円以上では9.6%
  • 業主の世帯の民営借家の家賃は平均月78,305円。家賃月8万円を社宅にして半額を負担すると事業所得1,000万円で年17.8万円の効果(当サイトの試算)
  • 持ち家の人は、今の家を社宅にしても借家のような効果は出ない
  • 社宅の効果は自分が借家に住んでいるかで決まる。判定ツールの結果に、当てはまる人だけが上乗せする

よくある質問

住宅・土地統計調査で、会社の社長はどの区分に入りますか。

従業上の地位の区分に会社の役員だけの欄はなく、「会社・団体・公社又は個人に雇われている者」に含まれます。そのため、社長だけの持ち家率や借家の割合はこの統計からは出せません。

持ち家に住んでいると、役員社宅は使えませんか。

会社が住宅を借りるか買うかして社長に貸すのが役員社宅です。自分の持ち家を会社に貸して社宅にする形も取れますが、会社から受け取る家賃は個人の不動産所得として課税されるため、借家の場合ほど手取りは増えません。

法人化してから賃貸に引っ越せば、社宅にできますか。

会社が貸主と賃貸借契約を結び、社長から賃貸料相当額以上を受け取っていれば、引っ越し後の住宅を社宅として扱えます。個人名義の契約のまま会社が家賃を払うと、社長への給与とみなされる点に注意が必要です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。