役員報酬

小さい会社の借入金利子率は1.1%。社長への貸付けは令和8年から1.3%

結論

財務省の法人企業統計(2025年度)で、資本金1千万円未満の会社の借入金利子率は1.1%、全規模では1.5%でした。一方、会社が役員に無利息で貸したときの利息相当額の利率は、国税庁 No.2606 で令和8年中の貸付けが年1.3%と、令和7年までの0.9%から上がっています。年1.3%なら、給与として課税しなくてよい「利息相当額が年5,000円以下」の境目は残高38万4,615円です。

  • No.2606 は、会社の借入金の平均調達金利など合理的と認められる利率を定めて貸し付ければ、給与として課税しなくてよいとしている
  • 資本金1千万円未満の会社は借入金の33.9%が金融機関以外からで、支払利息を金融機関借入金だけで割ると1.7%になる
  • 役員貸付金の利率は2017〜2020年に1.6〜1.7%で、同じ時期の小さい会社の借入金利子率(1.0〜1.3%)を上回っていた

法人化した後、会社の口座から社長個人の支払いに回したお金は、役員への貸付金になります。無利息のままなら、国税庁が定める利率で計算した利息相当額が社長の給与として課税されます。その利率が令和8年中の貸付けから**年1.3%**に上がりました。小さな会社が実際に銀行などから借りている金利と比べると、どちらが高いのか。財務省の法人企業統計で確かめます。

役員貸付金の利率は、令和8年中の貸付けから1.3%

国税庁のタックスアンサー No.2606(令和8年4月1日現在法令等)は、会社が役員に貸し付けた金銭の利息相当額の利率を、次のように定めています。

  • 会社が他から借り入れて貸し付けた場合:その借入金の利率
  • その他の場合:貸付けを行った日の属する年に応じた利率(令和4年から令和7年中は0.9%、令和8年中は1.3%)

利率は「返済している年」ではなく**「貸し付けた年」**で決まります。令和7年までに貸した残高は0.9%のまま、令和8年中に新しく貸した分から1.3%です。

無利息または低い利息で貸し付けた場合でも、No.2606 は次のいずれかなら給与として課税しなくてよいとしています。

  1. 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要になった役員に、合理的な金額・返済期間で貸し付ける場合
  2. 会社の借入金の平均調達金利など、合理的と認められる貸付利率を定め、その利率で貸し付ける場合
  3. 利息相当額と実際に払う利息との差額が1年間で5,000円以下の場合

5,000円の境目を残高に直すと、年1.3%なら38万4,615円、年0.9%なら55万5,555円です。令和8年中に貸した分は、残高40万円弱で課税の対象になります。計算の詳細と、精算しないまま放置した場合の法人税への影響は役員貸付金の認定利息で扱っています。

小さい会社の借入金利子率は1.1%

では、小さな会社は実際にどのくらいの金利で借りているのか。法人企業統計は、支払利息等を借入金などの残高で割った「借入金利子率」を公表しています。2025年度の資本金階級別の値です。

資本金借入金利子率(公表値)支払利息等÷金融機関借入金(参考)借入金のうち金融機関以外からの割合
1千万円未満1.1%1.7%33.9%
1千万〜2千万円1.3%1.8%26.4%
2千万〜5千万円1.3%1.7%20.4%
5千万〜1億円1.5%1.9%24.1%
1億〜10億円1.4%2.6%45.5%
10億円以上1.6%3.2%31.7%
全規模1.5%2.5%31.3%

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データ(年次別・金融業、保険業以外の業種・原数値)。参考値と割合は年度末残高(流動+固定)から当サイトが計算。公表の借入金利子率は支払利息等を短期・長期借入金、社債、受取手形割引残高の期首・期末平均で割る算式で、参考値とは計算方法が異なる

資本金1千万円未満の会社の借入金利子率は**1.1%**でした。ただし、この階級は借入金の33.9%が金融機関以外からの借入金です。小さな会社では社長などが無利息で会社に貸していることが多いと考えられ、その分が分母に入ると率は下がります。支払利息等を金融機関借入金だけで割った参考値は1.7%です。

社長が会社に貸すお金(役員借入金)の利息をどうするかは、役員借入金の返済と利息で計算しています。

役員貸付金の利率と、統計の金利を並べる

No.2606 の利率と、同じ時期の借入金利子率を並べました。

年(年度)役員貸付金の利率(その年中の貸付け)借入金利子率 資本金1千万円未満借入金利子率 全規模
2014年1.9%1.4%1.3%
2015年1.8%1.4%1.3%
2016年1.8%1.3%1.2%
2017年1.7%1.2%1.1%
2018年1.6%1.2%1.2%
2019年1.6%1.3%1.0%
2020年1.6%1.0%1.0%
2021年1.0%0.8%1.0%
2022年0.9%1.2%1.0%
2023年0.9%0.9%1.2%
2024年0.9%1.1%1.3%
2025年0.9%1.1%1.5%
2026年1.3%(未公表)(未公表)

※ 役員貸付金の利率は国税庁 No.2606 の「その他の場合」の利率(暦年)。借入金利子率は年度で、対応する期間は厳密には一致しない

2014〜2020年は、役員貸付金の利率(1.6〜1.9%)が小さな会社の実際の借入金利(1.0〜1.4%)を上回っていました。2022年以降は逆に、役員貸付金の0.9%が全規模の借入金利子率(1.0〜1.5%)を下回っています。令和8年の1.3%への引上げは、この差を詰める動きと重なります。

「平均調達金利で貸す」はどんな会社で使えるか

No.2606 の2番目の扱いは、会社自身の借入金の平均調達金利など、合理的と認められる利率で貸し付ければ給与課税しなくてよいというものです。

たとえば会社が金融機関から年1.0%で借りていて、他に借入金がない場合、その1.0%を貸付利率として定め、社長から実際に利息を受け取っていれば、年1.3%との差について給与課税の問題は生じないと考えられます。ただし、使えるのは自分の会社の調達金利で、統計の平均値ではありません。会社が金融機関から借りていなければ、平均調達金利そのものがなく、年1.3%で計算することになります。

また、会社が銀行から借りたお金をそのまま社長に貸した場合は、その借入金の利率によります。

金額は小さいが、残高が大きいと積み上がる

令和8年中に貸し付けた分で、無利息のまま残高が残った場合の利息相当額は、残高100万円で年1万3,000円、300万円で年3万9,000円です。5,000円を超えるので全額が給与になり、役員報酬に上乗せして所得税・住民税がかかります。加えて、この給与は定期同額給与に当たらないと会社の損金にならない扱いがあり、精算しないままにすると法人側の負担も増えます。

社長が会社のお金を個人的に使うこと自体は避けるのが基本で、使った場合は貸付金として記録し、返済と利息の取り決めを残しておくことが、税務上の扱いをはっきりさせます。会社と社長の取引の承認手続は社長と会社の利益相反取引で整理しています。役員報酬で受け取るか、会社に残すかの全体の考え方は役員報酬はいくらが最適かを参照してください。

まとめ

  • 国税庁 No.2606 の役員貸付金の利率は、令和8年中の貸付けから年1.3%(令和4〜7年中は0.9%)。利率は貸し付けた年で決まる
  • 年1.3%なら、課税しなくてよい「年5,000円以下」の境目は残高38万4,615円
  • 法人企業統計(2025年度)の借入金利子率は資本金1千万円未満で1.1%、全規模で1.5%
  • 資本金1千万円未満は借入金の33.9%が金融機関以外からで、金融機関借入金だけで割ると1.7%
  • 会社自身の平均調達金利など合理的な利率で貸せば給与課税しなくてよいが、使えるのは自分の会社の金利で、統計の平均ではない

法人化した後の資金の出し入れまで含めて、自分の売上と経費で手取りを判定ツールで確かめてください。

よくある質問

統計の借入金利子率1.1%で社長に貸せば、給与課税されませんか。

統計の数字は使えません。No.2606 が認めているのは、自分の会社の借入金の平均調達金利など、その会社にとって合理的と認められる利率です。会社が銀行から借りていなければ、平均調達金利そのものがないので、貸付けを行った年の利率(令和8年中なら年1.3%)で計算します。

会社が銀行から借りたお金をそのまま社長に貸した場合は、どの利率ですか。

No.2606 は、会社が他から借り入れて貸し付けた場合はその借入金の利率によるとしています。年ごとの利率(1.3%など)ではなく、実際の借入金の利率で計算します。

令和7年に貸した分は、令和8年から1.3%になりますか。

なりません。利率は貸付けを行った年で決まるので、令和7年中に貸し付けた残高は、その後も年0.9%で計算します。令和8年中に新しく貸し付けた分から年1.3%です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。