社会保険

法人化で健康診断はどう変わる?国保の特定健診から協会けんぽの健診へ

結論

40歳以上なら、国保の特定健診は横浜市・大阪市・札幌市とも無料で、協会けんぽの一般健診(自己負担上限5,500円)のほうが負担は増えますが、胃・大腸がんの検査まで含まれます。35〜39歳は国保の特定健診の対象外なので、法人化で公的な健診を受けられるようになります。令和8年度からは35歳以上の人間ドックに最高2万5,000円の補助も付きました。

  • 協会けんぽの生活習慣病予防健診は35〜74歳の被保険者が対象で、一般健診の自己負担は最高5,500円(令和8年度)
  • 令和8年度から、35歳以上の人間ドックに最高2万5,000円の補助、20・25・30歳の被保険者に自己負担最高2,500円の健診が加わった
  • 扶養に入れた家族は特定健診(協会けんぽの補助は最高7,150円)。国保のときに無料だった市では、家族の自己負担が増えることがある

法人化の判断で健康診断を気にする人は少ないかもしれません。ただ、国民健康保険から協会けんぽに移ると、受けられる公的な健診が替わります。対象の年齢も、検査の範囲も、自己負担も違います。

協会けんぽの健診は令和8年度(2026年4月)から大きく広がりました。年齢と家族構成ごとに、何が増えて何が減るのかを整理します。

国保の特定健診は40歳から。多くの市で無料

国民健康保険の健診は、特定健康診査(特定健診)です。メタボリックシンドロームに着目した健診で、身体計測・血圧・血液検査・尿検査が中心です。対象は40〜74歳に限られます。

自己負担は市区町村が決めます。実データを確認できた3市は次のとおりです。

市対象特定健診の自己負担市独自の上乗せ
横浜市40〜74歳無料—
大阪市40〜74歳無料国保プラス健診(18歳以上・1,800円)、国保人間ドック(30〜39歳1万5,000円、40〜74歳1万円、節目の生まれ年は無料)
札幌市40歳以上無料(付加健診を希望すると500円)—

※ 各市の公表資料(令和8年度)。対象年齢は年度内に到達する年齢で判定

3市の公表する検査項目を見ると、特定健診には胃がん・大腸がんの検査は含まれていません。

協会けんぽは35歳から。令和8年度に3つ広がった

協会けんぽの被保険者(法人化した一人社長本人)が受けるのは、生活習慣病予防健診です。対象は35〜74歳で、特定健診の項目に加えて胃がん・大腸がんの検査などが入った健診を、年度に1回受けられます。

令和8年度からの主な内容は次のとおりです。

健診対象自己負担の上限・補助
一般健診35〜74歳の被保険者最高5,500円
節目健診(一般健診に項目を追加)40・45・50・55・60・65・70歳最高8,280円
人間ドック(令和8年度新設)35歳以上の被保険者最高2万5,000円を補助
若年層の健診(令和8年度新設)20・25・30歳の被保険者最高2,500円(胃・大腸の検査は省略)
骨粗しょう症検診(令和8年度新設)40歳以上の偶数年齢の女性被保険者最高1,390円

※ 全国健康保険協会「新しい健診のお知らせ」(令和8年度)

人間ドックの補助は、協会けんぽでは令和8年度に始まった制度です。これまで一人社長が人間ドックを受けるなら、全額を自分か会社で払う必要がありました。

年齢で得失が入れ替わる

国保と協会けんぽを並べると、年齢によって法人化の影響が逆になります。

年齢国保(上の3市)協会けんぽ(本人)法人化の影響
20・25・30歳特定健診なし(大阪市は国保プラス健診1,800円)最高2,500円の健診受けられる健診が増える
31〜34歳特定健診なし生活習慣病予防健診の対象外ほぼ変わらない
35〜39歳特定健診なし一般健診(最高5,500円)、人間ドック補助受けられる健診が増える
40〜74歳特定健診が無料一般健診(最高5,500円)、人間ドック補助自己負担は増えるが、胃・大腸がんの検査まで含まれる

35〜39歳の空白が埋まるのが、法人化のいちばんはっきりした違いです。 国保では40歳になるまで特定健診がなく、自分で受けるなら全額自己負担でした。

40歳以上では、無料の特定健診から自己負担のある一般健診に替わります。ただし胃・大腸がんの検査まで含まれるので、検査の範囲も広がります。単純な負担増とは言えません。

扶養に入れた家族の健診は別の仕組み

法人化すると、配偶者などを健康保険の扶養に入れられます(配偶者がいると法人化の分岐点は250万円下がる)。扶養に入った家族は被保険者ではないので、受けるのは生活習慣病予防健診ではなく特定健診です。協会けんぽの補助は最高7,150円です。

協会けんぽは、本人向けの拡充を令和9年度から被扶養者にも広げる予定としています。令和8年度の時点では、家族の側の健診は本人ほど厚くありません。国保のときに無料で特定健診を受けていた市では、扶養に入った配偶者の自己負担が増えることがあります。

健診の差は、保険料の差よりひと桁以上小さい

健診の自己負担の差は、数千円から人間ドック補助の2万5,000円までの幅です。一方、保険料そのものは法人化で大きく動きます。判定ツールで、事業所得800万円の人の保険料を比べました。

地域年齢個人のまま(国保+国民年金)法人化後の最適報酬法人化後(社会保険の労使合計)
東京23区40歳未満101.4万円月54万円182.8万円
東京23区40〜64歳118.4万円月45万円160.3万円
横浜市40歳未満105.2万円月54万円183.2万円
横浜市40〜64歳122.2万円月45万円160.7万円
大阪市40歳未満113.0万円月54万円184.6万円
大阪市40〜64歳130.0万円月45万円161.8万円
札幌市40歳未満108.0万円月54万円185.5万円
札幌市40〜64歳125.0万円月45万円162.6万円

※ 売上1,000万円・経費200万円・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。国保は各市区の令和8年度料率、社会保険は協会けんぽの都道府県支部の料率で計算

保険料の差は年30万〜80万円です。健診の違いで法人化の判断が変わることはまずありません。 保険料の差には厚生年金の上乗せという将来の給付も含まれているので、単年の数字だけで比べるものでもありません(法人化で厚生年金は年69万円増える)。

それでも、健診は「法人化したら受けられるようになるもの」の1つとして知っておく価値があります。特に35〜39歳で法人化する人は、協会けんぽの健診と人間ドック補助をそのまま使えます。会社が自己負担分を払う場合の税務は一人社長の人間ドックは会社負担できる?で扱っています。

まとめ

  • 国保の特定健診は40〜74歳が対象で、横浜市・大阪市・札幌市は無料。胃・大腸がんの検査は含まれない
  • 協会けんぽの生活習慣病予防健診は35〜74歳の被保険者が対象で、一般健診の自己負担は最高5,500円。胃・大腸がんの検査まで含む
  • 令和8年度から、人間ドック補助(35歳以上・最高2万5,000円)と20・25・30歳の健診(最高2,500円)が始まった
  • 35〜39歳は、国保にない健診を法人化で受けられるようになる。40歳以上は自己負担が増えるが検査の範囲が広がる
  • 扶養に入れた家族は特定健診(補助最高7,150円)。健診の差は保険料の差よりひと桁以上小さく、判定を動かすほどではない

一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で保険料と手取りの差を出し、そのうえで健診のような給付の違いを確かめてください。

よくある質問

法人化した年は、国保と協会けんぽの両方で健診を受けられますか?

受けられるのは、受診日に加入している保険の健診です。国保の受診券が手元に残っていても、協会けんぽに加入した後は国保の健診は使えません。年度の途中で法人化した場合は、加入後に協会けんぽの健診を申し込みます。

協会けんぽの健診の自己負担を会社で払えますか?

払えます。ただし役員だけが対象の健診費用を会社が負担すると、役員への給与として扱われることがあります。全員に同じ条件で行っているか、金額が常識的な範囲かなど、福利厚生費として認められる条件を確認してください。

40歳未満で、国保の人が受けられる健診はありませんか?

国保の特定健診は40〜74歳が対象ですが、市区町村によっては若い世代向けの健診を別に用意しています。大阪市国保では18歳以上が受けられる国保プラス健診(自己負担1,800円)と、30歳以上の国保人間ドック(30〜39歳は1万5,000円)があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。