設立の手続き

法人成りの現物出資、検査役が不要になる500万円の壁

結論

現物出資財産の総額が500万円を超えない場合、会社法33条10項1号により検査役の調査は不要です。500万円を超える場合でも、弁護士・公認会計士・税理士等の証明(不動産なら不動産鑑定士の鑑定評価も追加)を受ければ、同項3号により検査役の調査を省略できます。現物出資は消費税法上「資産の譲渡等」に含まれ、課税標準は譲渡する資産の時価ではなく、出資により取得する株式(または持分)の時価です。

  • 検査役の調査が不要になるのは、現物出資財産の総額が500万円を超えない場合(会社法33条10項1号)、または弁護士・公認会計士・税理士等の証明を受けた場合(同項3号、不動産は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)
  • 検査役を選任すると裁判所への申立てが必要で、選任された検査役への報酬を成立後の会社が負担することもある(会社法33条1項・3項)
  • 現物出資は消費税法施行令2条1項2号の「資産の譲渡等」に含まれる。課税標準は出資により取得する株式の時価で、譲渡する資産自体の時価ではない(消費税法施行令45条2項3号)

車やパソコンを法人成りの資本として現物出資する場合、価額が一定額を超えると、原則として裁判所が選任する検査役の調査が必要になります。この境目は500万円です。 超えた場合でも、弁護士や税理士等の証明を受ければ検査役の調査を省略できます。

原則は検査役の調査。会社法33条

会社法33条1項は、定款に記載した現物出資財産等について、公証人の認証の後、発起人が裁判所に検査役の選任を申し立てなければならないと定めています。申立てがあれば、裁判所は原則として検査役を選任します。

検査役は必要な調査を行い、その結果を裁判所へ報告します。裁判所は報告を踏まえ、記載事項を不当と認めたときは変更を命じることもできます。検査役への報酬は、裁判所が定め、成立後の株式会社が負担することがあります。 現物出資は資本金を現金で用意せずに済む一方、この手続きの重さが引き換えになります。

500万円以下なら検査役は不要

会社法33条10項は、一定の場合には検査役の調査を不要としています。1号に定められているのが、現物出資財産等について定款に記載・記録された価額の総額が500万円を超えない場合です。

車やパソコンなど、法人成りで個人から法人へ移す資産の多くは、この500万円の枠に収まります。法人成りの資産引継ぎで扱った売買・賃貸・現物出資の3つの方法のうち、現物出資を選ぶ場合は、まずこの500万円の壁を確認してください。

500万円を超えても、証明を受ければ調査は不要

500万円を超える場合でも、検査役の調査を避ける方法があります。会社法33条10項には、あと2つの不要要件があります。

不要になる条件
2号市場価格のある有価証券で、定款記載額が市場価格として法務省令で定める方法により算定される額を超えない場合
3号弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人の証明を受けた場合(不動産の場合は、この証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価も必要)

実務でよく使われるのは3号です。士業による証明を受ければ、500万円を超える現物出資でも検査役の選任申立てを避けられます。証明を得る費用と、検査役の調査にかかる時間・費用を比べて、どちらの手続きを取るかを判断します。

現物出資は消費税の課税対象。課税標準は「株式の時価」

現物出資は、単に資産を法人へ移すだけの手続きではありません。国税庁の質疑応答事例は、現物出資が消費税法施行令2条1項2号の「資産の譲渡等」に含まれることを示しています。個人が課税事業者である年に現物出資をすれば、消費税の課税対象になります。

課税標準の考え方には注意が必要です。課税標準になるのは、譲渡する資産自体の時価ではなく、その出資によって取得する株式(または持分)の時価です。 消費税法施行令45条2項3号にこの定めがあります。多くの場合、出資によって取得する株式の時価は出資額と同額になるため、結果として出資した資産の評価額に近い金額が課税標準になります。

法人成りの資産引継ぎで扱った売買の場合と同じく、個人が免税事業者なら消費税の納税は生じません。インボイス登録済みで課税事業者になっている個人は、現物出資でも消費税の扱いを確認する必要があります。

まとめ

  • 現物出資財産の総額が500万円を超えない場合、会社法33条10項1号により検査役の調査は不要
  • 500万円を超えても、弁護士・公認会計士・税理士等の証明(不動産は不動産鑑定士の鑑定評価も追加)を受ければ、同項3号により検査役の調査を省略できる
  • 検査役を選任すると裁判所への申立てが必要で、報酬を成立後の会社が負担することもある
  • 現物出資は消費税法上の資産の譲渡等に含まれ、個人が課税事業者なら消費税の課税対象になる
  • 課税標準は譲渡する資産の時価ではなく、出資により取得する株式の時価

よくある質問

現物出資する資産が500万円を超えたら、必ず検査役の調査が必要ですか?

必ずではありません。500万円を超えても、弁護士・公認会計士・税理士等の証明(不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)を受ければ検査役の調査を省略できます。実務では、検査役の申立てより専門家の証明を受ける方法が使われることが多くなっています。

現物出資した資産に消費税はかかりますか?

現物出資は消費税法上の資産の譲渡等に含まれます。個人が課税事業者である年に現物出資をすれば、消費税の課税対象になります。課税標準は、出資によって取得する株式の時価です。

検査役の調査には時間がかかりますか?

検査役は裁判所が選任し、必要な調査を行って裁判所へ報告します。弁護士等の証明を受ける方法に比べて、時間と費用がかかりやすい手続きです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。