法人化の判断

出張マッサージ師の法人化試算事例。免税の2年は有利でも5期目までに48万円の不利

結論

相模原市・38歳の出張マッサージ師(年商1,100万円・経費150万円・インボイス未登録)は、消費税の免税が効く1〜2期目は法人化が年20.5万〜30.5万円有利ですが、3期目以降は年33.1万円の不利です。個人事業税が3%の業種なので、損益分岐は事業所得1,508万円と、5%の業種(1,269万円)より239万円高くなります。

  • 個人事業税は(事業所得−事業主控除290万円)×税率。あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復などの医業類似業は3%で、5%の業種より法人化で消える税が年13.2万円小さい
  • 設立1〜2期は資本金1,000万円未満なら原則として消費税が免除され、このケースでは年101万円の納税がなくなる。3期目からは個人のときと同じく課税事業者になる
  • 1〜3期目の合計は+17.9万円でも、5期目までの合計は−48.3万円。最初の2年の数字だけで判断すると結論を誤る

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

個人事業主の法人化の試算では、たいてい個人事業税を5%で計算します。ところが業種によっては3%や0%になり、それだけで法人化の分岐点は動きます。このケースは、3%の業種で、しかも設立直後の消費税の免税が効く人です。最初の2年は有利、3年目から不利という形になります。

このケースの条件

項目内容
職種あん摩マッサージ指圧師(個人宅・高齢者施設への出張施術)
年齢・家族38歳・単身
住所相模原市
年商(税抜)1,100万円(すべて保険外の自費施術)
経費150万円(車両費・施術用品など)
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス未登録(客は個人のため)
個人事業税の業種医業類似業(第3種・3%)

事業所得(売上−経費)は950万円です。年商が1,000万円を超えているので、インボイスに登録していなくても、個人のままなら消費税の課税事業者です。

個人事業主のまま:手取りは643.7万円

項目金額
事業所得(売上−経費)950.0万円
国民健康保険89.4万円
国民年金21.5万円
所得税102.3万円
住民税73.4万円
個人事業税(3%)19.8万円
手取り643.7万円

※ 相模原市・38歳・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス未登録・個人事業税3%/2026年(令和8年)分基準。消費税(年101万円)は個人・法人とも売上から納めるため手取りの比較から除外

個人事業税は(950万円−事業主控除290万円)×3%で19.8万円です。5%の業種なら33.0万円なので、年13.2万円軽いことになります。

法人化した場合:手取り合計は630.6万円

項目金額
役員報酬(月54万円・年額)648.0万円
社会保険料・本人負担90.5万円
所得税18.6万円
住民税34.3万円
個人に入る手取り504.6万円
社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む)92.8万円
法人の利益(税引前)209.2万円
法人税等(均等割7万円を含む)51.7万円
会社に残る額157.6万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)630.6万円

※ 合同会社・神奈川県(協会けんぽ)・役員報酬は手取り合計が最大になる額・3期目以降/2026年(令和8年)分基準

3期目以降の手取り合計は、個人のままより13.1万円少なく出ます。法人事業税は業種に関係なく所得で決まるので、法人化しても「3%の軽さ」は引き継げません。

1〜2期目だけは、消費税の免税で有利になる

資本金1,000万円未満で設立した法人は、設立1期目と2期目は基準期間がないため、原則として消費税の納税義務が免除されます。インボイスに登録しなければ、この免除が使えます。客が個人なので、登録しなくても取引に影響は出にくい業態です。

1期目2期目3期目4期目5期目
手取りの差(法人−個人)+50.5万円+50.5万円−13.1万円−13.1万円−13.1万円
設立費用(合同会社)−10.0万円————
税理士報酬の増加−20.0万円−20.0万円−20.0万円−20.0万円−20.0万円
実質差額+20.5万円+30.5万円−33.1万円−33.1万円−33.1万円

※ 1〜2期目は消費税(年101万円)の免除を織り込んで役員報酬を最適化した結果。免除で残った消費税は法人の利益になり法人税がかかるうえ、会社に残る額は2割引いて数えるため、手取りの差は101万円より小さくなる/2026年(令和8年)分基準

最初の2年は年20万〜30万円の有利です。ところが3期目から毎年33.1万円の不利になり、5期目までの合計は−48.3万円です。設立直後の免税は2年で終わりますが、法人の固定費と社会保険料は続きます。この業種で法人化を検討するときは、3期目以降の数字で判断する必要があります。

免税の仕組みと、インボイス登録との関係はインボイス登録済みなら法人化しても消費税の免税は受けられないで整理しています。

3%の業種は、損益分岐が239万円高い

個人事業税の税率だけを変えて、同じ条件で比べました。

個人事業税の税率個人事業税(年)3期目以降の実質差額損益分岐(事業所得)
3%(あん摩・はり・きゅう等)19.8万円−33.1万円1,508万円
5%(デザイン業・請負業など)33.0万円−19.9万円1,269万円

※ 相模原市・38歳・単身・年商1,100万円・経費150万円・インボイス未登録/2026年(令和8年)分基準

法人化で消える負担のひとつが個人事業税です。税率が低いほど消える額が小さく、法人化の有利が出にくくなります。3%の業種では、損益分岐が事業所得1,508万円まで上がりました。経費150万円なら、年商1,660万円前後が分かれ目です。

業種ごとの個人事業税の額と、法人化で何が変わるかは個人事業税は業種でいくら変わるかにまとめています。施術所の3%の区分と保険収入の扱い、受領委任の手続きは整骨院・鍼灸院の法人化で扱っています。

このケースの結論を動かす条件

条件の変化結論が動く方向
年商が1,660万円を超える3期目以降も法人化が有利に近づく
施設との契約が増え、インボイス登録を求められる1〜2期目の免税がなくなり、法人化の初期の有利が消える
施術スタッフを雇う社会保険の加入が個人でも問題になり、比較の前提が変わる

売上±10%で見ても、3期目以降の実質差額は−29.4万〜−34.2万円で、結論は変わりません。

まとめ

  • 相模原市・年商1,100万円の出張マッサージ師は、法人化で1〜2期目は年20.5万〜30.5万円の有利、3期目以降は年33.1万円の不利
  • あん摩・マッサージ・はり・きゅう等の個人事業税は3%。5%の業種より法人化で消える税が年13.2万円小さい
  • 損益分岐は事業所得1,508万円で、5%の業種より239万円高い
  • 設立直後の消費税の免税(年101万円)は2年で終わる。5期目までの合計は−48.3万円

判定ツールでは、個人事業税の業種を選ぶと税率が切り替わります。5%のまま試算せず、自分の業種と売上・経費で確かめてください。

よくある質問

健康保険の療養費(受領委任)で施術している場合も、同じ計算になりますか?

この試算は保険外(自費)の施術だけを前提にしています。療養費の扱いや消費税の課否は施術の内容と契約で変わるため、保険を使う施術の比率が高い場合は、消費税の部分を個別に確かめる必要があります。

整体やリラクゼーションサロンも3%ですか?

3%になるのは、あん摩・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業です。国家資格によらない整体やリラクゼーションが法定業種のどれに当たるかは、都道府県の判断によります。

法人化すると、法人の事業税も3%になりますか?

なりません。法人事業税は業種ではなく所得の額で税率が決まります。個人事業税の軽い業種ほど、法人化で消える税と新しくかかる法人事業税の差が小さくなります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。