法人化の判断

白色申告のプログラマーの法人化試算事例。法人化より青色申告が先

結論

仙台市・33歳・独身のプログラマー(年商900万円・経費100万円)は、白色申告のままなら法人化で3期目以降年3.4万円有利になります。しかし青色申告(e-Tax・65万円控除)に切り替えると個人の手取りが24.8万円増え、法人化は年21.5万円の不利に変わります。損益分岐も事業所得747万円から1,277万円に上がります。

  • 白色申告の損益分岐は事業所得747万円。法人化の目安とされる数字の多くは、青色65万円控除を前提にしている
  • 青色でも簡易簿記(10万円控除)だと損益分岐は807万円。55万円控除(書面)なら1,233万円、65万円控除(e-Tax)なら1,277万円
  • 青色申告の承認申請は、青色で申告したい年の3月15日まで。2027年分から青色にするなら2027年3月15日が期限

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

判定ツールに条件を入れたら「法人化がわずかに有利」と出た。ただし申告は白色のまま。このケースはそういう人です。結論から言うと、比べる相手が間違っています。法人化と比べるべきなのは、白色の個人事業主ではなく、青色申告にした個人事業主です。

このケースの条件

項目内容
職種フリーランスのプログラマー(業務システムの受託開発)
年齢・家族33歳・独身
住所仙台市
年商(税抜)900万円
経費100万円
申告白色申告(青色申告の承認申請を出していない)
インボイス登録済み
個人事業税の業種請負業として5%で計算

事業所得(売上−経費)は800万円です。

白色申告のままなら、法人化が年3.4万円有利

項目白色申告のまま法人化(役員報酬月54万円)
国民健康保険/社会保険料(本人分)92.7万円91.0万円
国民年金21.5万円—
所得税83.7万円18.6万円
住民税64.5万円34.3万円
個人事業税25.5万円—
会社に残る額(法人税等19.5万円の後)—39.2万円
手取り合計512.1万円535.5万円

※ 仙台市・33歳・独身・インボイス登録済み・個人事業税5%・合同会社・宮城県(協会けんぽ)。法人側の会社負担の社会保険料93.3万円は、手取り合計の計算に含めている。会社に残る額は2割引いて計上/2026年(令和8年)分基準

1期目2期目3期目以降
手取りの差(法人−白色の個人)+23.4万円+23.4万円+23.4万円
設立費用・税理士報酬の増加−30.0万円−20.0万円−20.0万円
実質差額−6.6万円+3.4万円+3.4万円

2期目から法人化が有利になります。損益分岐は事業所得747万円でした。「所得800万円で法人化」という目安に、このケースはちょうど当てはまっているように見えます。

青色申告にすると、手取りが24.8万円増える

同じ年商・同じ経費で、青色申告(複式簿記・e-Taxで65万円控除)に切り替えた場合です。

項目白色申告青色申告(65万円控除)差
国民健康保険92.7万円85.4万円−7.3万円
所得税83.7万円71.9万円−11.8万円
住民税64.5万円58.8万円−5.7万円
個人事業税25.5万円25.5万円0円
手取り512.1万円536.9万円+24.8万円

※ 仙台市・33歳・独身・年商900万円・経費100万円・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準

65万円の控除は、所得税・住民税だけでなく国保の計算のもとになる所得も下げます。個人事業税は青色申告特別控除を引く前の所得にかかるので変わりません。

法人化の手取り合計535.5万円は、申告の種類に関係なく同じです。比べる相手が536.9万円に上がると、法人化の差は+23.4万円から−1.4万円に変わり、費用を引くと3期目以降も年21.5万円の不利になります。

控除の種類ごとの損益分岐点

青色申告特別控除には、帳簿のつけ方と申告の方法で3つの段階があります。それぞれで法人化の損益分岐を出しました。

申告の種類控除額個人の手取り実質差額(3期目以降)損益分岐(事業所得)
白色申告0円512.1万円+3.4万円747万円
青色申告(簡易簿記)10万円515.9万円−0.4万円807万円
青色申告(複式簿記・書面)55万円533.1万円−17.6万円1,233万円
青色申告(複式簿記・e-Tax)65万円536.9万円−21.5万円1,277万円

※ 仙台市・33歳・独身・年商900万円・経費100万円・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準

損益分岐は申告の種類だけで530万円動きます。巷の「所得800万円で法人化」という目安は、簡易簿記や白色に近い前提でしか成り立ちません。65万円控除を取っている人の損益分岐は1,200万円台後半です。この差がどこから来るかは青色申告65万円控除と法人化の分岐点で詳しく扱っています。

青色申告に切り替える手順と時期

承認申請は3月15日まで

青色申告をするには、税務署に青色申告承認申請書を出します。期限は、青色で申告したい年の3月15日です。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業から2か月以内です。いまが2026年10月なら、2026年分は白色のままで、2027年分から青色にするには2027年3月15日までに出します。出し忘れたときの影響は個人の青色申告承認申請の期限にまとめています。

65万円控除の条件

控除額主な条件
65万円複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して、e-Taxで期限内に申告(または優良な電子帳簿保存)
55万円複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告
10万円上記以外(簡易な帳簿)

会計ソフトを使えば、日々の入力から複式簿記の帳簿と決算書が作られます。令和9年分からは控除額の段階が見直されます。内容は青色申告特別控除は令和9年分から変わるで確認してください。

青色にした後、法人化はいつ考えるか

青色65万円控除にした後の損益分岐は事業所得1,277万円です。このケースの800万円からは、売上が480万円ほど伸びる必要があります。それまでは個人のままで、小規模企業共済やiDeCoといった控除を使うほうが手取りに効きます。法人化の判断全体は個人事業主の法人化の目安で整理しています。

まとめ

  • 仙台市・年商900万円・白色申告のプログラマーは、白色のままなら法人化で3期目以降年3.4万円有利に見える
  • 青色申告(e-Tax・65万円控除)にすると個人の手取りが24.8万円増え、法人化は年21.5万円の不利に変わる
  • 損益分岐は白色747万円、簡易簿記807万円、書面55万円控除1,233万円、e-Tax65万円控除1,277万円
  • 白色の人が先にやるべきなのは法人化ではなく青色申告。承認申請は青色にしたい年の3月15日まで
  • 法人化しても帳簿の負担は軽くならない

判定ツールの「青色申告」の欄を切り替えると、自分の条件で損益分岐がどこまで動くかを確かめられます。

よくある質問

白色申告のまま法人化すれば、青色の手間をかけずに済みますか?

法人も帳簿と決算書が必要で、法人税の申告には複式簿記による貸借対照表・損益計算書を付けます。法人化しても帳簿の負担は軽くならず、多くの場合は重くなります。

青色申告にすると国民健康保険料も下がるのですか?

下がります。国保は青色申告特別控除を引いた後の所得から計算するため、このケースでは92.7万円から85.4万円に7.3万円下がりました。個人事業税は青色申告特別控除を引く前の所得にかかるので変わりません。

青色申告の承認申請を出し忘れた年はどうなりますか?

その年は白色申告になります。申請期限は、青色で申告したい年の3月15日(その年の1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内)です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。