法人化の判断

63歳の夫と61歳の妻の法人化試算事例。国民年金のない夫婦では配偶者控除だけが効く

結論

静岡市・63歳の経営コンサルタント(年商1,300万円・経費150万円)と61歳の無収入の妻は、法人化で3期目以降年13.4万円の不利で、損益分岐は事業所得1,280万円です。夫婦とも60歳以上で国民年金がないため、妻が60歳未満の場合(年0.1万円の不利・損益分岐1,160万円)ほどの効果はありません。単身との差の7.2万円は、個人のままでは夫の所得が1,000万円を超えて受けられない配偶者控除が、役員報酬にすると受けられるようになる分です。

  • 配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられない。事業所得1,150万円の個人のままでは0円、役員報酬月54万円(給与所得474.4万円)なら受けられる
  • 国保は夫婦2人でも上限(このケースで113万円)に達しているので、妻の分の保険料が増えない。法人化で妻の国保が消える効果もない
  • 事業所得900万円の帯では、夫婦のほうが単身より法人化が不利に出る。個人のままでも配偶者控除が使え、税率の高い個人側で大きく効くため

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

配偶者がいる人の法人化が有利になる理由は、主に配偶者の国民年金が第3号被保険者になって消えることです。では、夫婦とも60歳を過ぎて、国民年金をどちらも払っていない世帯ではどうなるか。このケースでは、配偶者の効果はほぼ1つ、配偶者控除だけになりました。

このケースの条件

項目内容
職種経営コンサルタント(地元の食品・茶業の事業者の経営支援)
年齢・家族63歳・妻61歳(無収入。年金は受け取っていない前提)
住所静岡市
年商(税抜)1,300万円
経費150万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種コンサルタント業(第3種・5%)

事業所得(売上−経費)は1,150万円です。

個人事業主のまま:単身と同じ手取りになる

項目妻61歳(このケース)妻が60歳未満なら単身なら
国民健康保険113.0万円113.0万円113.0万円
国民年金0万円21.5万円(妻)0万円
所得税・住民税242.9万円234.7万円242.9万円
手取り751.1万円737.8万円751.1万円

※ 静岡市・63歳・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・個人事業税43.0万円/2026年(令和8年)分基準

妻がいても、個人のままの手取りは単身と同じ751.1万円です。理由は2つあります。

  • 国保は上限に達している:夫の所得だけで医療分・支援金分・介護分がそれぞれ上限に達しているので、妻の分が増えても保険料は113.0万円のまま
  • 配偶者控除が使えない:配偶者控除は納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられない。事業所得1,150万円では対象外

法人化した場合:配偶者控除が戻る

項目金額
役員報酬(月54万円・年額)648.0万円
給与所得474.4万円
社会保険料・本人負担(介護保険料を含む)94.6万円
所得税・住民税(配偶者控除あり)44.9万円
個人に入る手取り508.4万円
法人税等(均等割7万円を含む)93.5万円
会社に残る額311.6万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)757.7万円

※ 合同会社・静岡県(協会けんぽ)・3期目以降/2026年(令和8年)分基準

役員報酬にすると、夫の所得は給与所得474.4万円になり、1,000万円以下に下がります。配偶者控除を受けられるようになり、所得税・住民税が軽くなります。妻は健康保険の被扶養者になり、保険料はかかりません。

妻61歳(このケース)妻が60歳未満単身
法人化の手取り合計757.7万円757.7万円750.5万円
3期目以降の実質差額−13.4万円−0.1万円−20.6万円
損益分岐(事業所得)1,280万円1,160万円1,352万円

※ 税理士報酬の増加20万円を引いた額/2026年(令和8年)分基準

単身との差は手取り合計の7.2万円で、そのまま配偶者控除が戻った分です。妻が60歳未満なら、ここに妻の国民年金がなくなる効果が加わり、実質差額はさらに年13.3万円法人化の側に動きます。

所得900万円の帯では、夫婦のほうが不利になる

売上を変えて、夫婦と単身の実質差額を並べました。

年商(経費150万円)妻61歳妻が60歳未満単身
900万円−41.5万円−26.6万円−40.2万円
1,100万円−31.4万円−16.4万円−29.3万円
1,300万円−13.4万円−0.1万円−20.6万円
1,500万円+7.1万円+19.2万円−0.0万円
1,700万円+27.4万円+39.5万円+20.3万円

※ 3期目以降の実質差額/2026年(令和8年)分基準

年商1,100万円以下(事業所得950万円以下)では、夫婦のほうが単身より不利に出ます。個人のままでも夫の所得が1,000万円以下なので配偶者控除が使え、控除は税率の高い個人のままで大きく効くからです。法人化で妻の国保の均等割が消える効果はありますが、控除の差のほうが大きく出ました。

逆に夫の所得が1,000万円を超える帯では、個人のままでは配偶者控除がなく、法人化で戻る分だけ法人化が有利になります。配偶者控除の所得制限をまたぐかどうかが、60代夫婦の結論を分けます。配偶者控除の所得制限と法人化の関係は配偶者控除の所得制限と法人化で詳しく扱っています。

60代の夫婦は、妻の年齢と年金で効果が変わる

夫婦の状況配偶者による法人化の効果
妻が60歳未満妻の国民年金(年21.5万円)が消える+配偶者控除
妻が60歳以上・年金なし(このケース)配偶者控除が戻る分(所得1,000万円超の場合)だけ
妻が年金を受け取り、所得が58万円を超える配偶者控除の対象外。効果はさらに小さい

妻が60歳未満の事例は61歳の夫と56歳の妻の試算事例、夫が50代で妻が年上の事例は52歳の夫と62歳の妻の試算事例にあります。家族の条件で損益分岐がどう動くかの全体像は個人事業主の法人化の目安にまとめています。

まとめ

  • 静岡市・63歳・年商1,300万円のコンサルタントと61歳の妻は、法人化で年13.4万円の不利。損益分岐は1,280万円
  • 夫婦とも60歳以上だと国民年金がなく、国保も上限に達しているので、個人のままの手取りは単身と同じ
  • 配偶者の効果は、所得1,000万円超で消える配偶者控除が役員報酬で戻る分(年7.2万円)だけ
  • 夫の事業所得が1,000万円以下の帯では、夫婦のほうが単身より法人化が不利に出る

判定ツールでは配偶者の年齢(60歳未満か)を指定できます。60代の夫婦は、両方の年齢を入れて確かめてください。

よくある質問

妻が年金を受け取り始めたら、どうなりますか?

妻の年金収入が増えると、配偶者控除の要件(妻の合計所得金額58万円以下)や、健康保険の被扶養者の要件(60歳以上は年間収入180万円未満など)を満たさなくなることがあります。そうなると、この記事の配偶者の効果も小さくなります。

夫が65歳になったら、妻の扱いは変わりますか?

妻がすでに60歳以上なので、第3号被保険者から外れる問題は起きません。夫が65歳になると、夫の健康保険・国保から介護分が外れるのは単身の場合と同じです。

配偶者特別控除なら、所得1,000万円を超えても受けられますか?

配偶者特別控除も、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられません。所得が1,000万円を超える人が控除を使えるようになるのは、役員報酬にして給与所得を1,000万円以下に下げた場合です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。