法人化の判断

定年後に独立した61歳の顧問の法人化試算事例。年30万円の不利を年金で取り返すのは76歳

結論

新潟市・61歳・単身の技術顧問(年商900万円・経費80万円)は、個人のまま手取り555.4万円、法人化(役員報酬月45万円)で545.0万円、税理士報酬の増加を引くと3期目以降は年30.4万円の不利です。同じ人が59歳以下なら年15.5万円の不利で、60歳を過ぎて国民年金がなくなった分だけ差が広がります。65歳まで4年間厚生年金に入ると老齢厚生年金は年11.6万円増えますが、4年間の不利(合計131.6万円)を取り返すのは76歳ごろです。

  • 60〜64歳の個人事業主は国民年金がなく、法人化で消える負担が小さい。単身の損益分岐は事業所得1,334万円(59歳以下なら1,214万円)
  • 役員報酬月45万円(標準報酬月額44万円)で厚生年金に1年入ると、老齢厚生年金は年2.9万円増える。61〜64歳の4年で年11.6万円
  • 単年の手取りの不利を、将来の年金の上乗せで取り返すには、65歳から11年余りかかる。年金にかかる税金を考えると、さらに長くなる

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

定年退職したあと、前の会社や取引先から顧問として仕事を受けて独立する人は少なくありません。そのとき「会社を作ったほうが税金が得」と言われることがあります。60代前半の、年商1,000万円に届かない規模では、そうはなりませんでした。理由は、60歳を過ぎると国民年金がなく、法人化で消える負担が小さいからです。

このケースの条件

項目内容
職種技術顧問(定年まで勤めた精密機器メーカーと、その取引先2社の顧問)
年齢・家族61歳・単身
住所新潟市
年商(税抜)900万円
経費80万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種コンサルタント業(第3種・5%)

事業所得(売上−経費)は820万円です。

個人事業主のまま:手取りは555.4万円

項目金額
事業所得(売上−経費)820.0万円
国民健康保険(介護分を含む)98.9万円
国民年金0万円(60歳以上)
所得税77.7万円
住民税61.6万円
個人事業税26.5万円
手取り555.4万円

※ 新潟市・61歳・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準

法人化した場合:手取り合計は545.0万円

項目金額
役員報酬(月45万円・年額)540.0万円
社会保険料・本人負担(介護保険料を含む)77.5万円
所得税・住民税38.1万円
個人に入る手取り424.4万円
法人税等(均等割7万円を含む)49.8万円
会社に残る額150.8万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)545.0万円

※ 合同会社・新潟県(協会けんぽ)・3期目以降/2026年(令和8年)分基準

法人化しても手取りは10.4万円少なく、税理士報酬の増加20万円を引くと、3期目以降は年30.4万円の不利です。1期目は設立費用が加わり年40.4万円の不利になります。

59歳以下なら不利は半分だった

同じ売上・経費で、59歳以下として計算した場合と比べました。

年商(経費80万円)59歳以下61歳(このケースの年代)
700万円−30.6万円−45.6万円
900万円−15.5万円−30.4万円
1,100万円−7.3万円−21.6万円
1,300万円+0.6万円−11.5万円
1,500万円+20.9万円+8.9万円

※ 3期目以降の実質差額。新潟市・単身・コンサルタント業(5%)/2026年(令和8年)分基準

60歳を過ぎて国民年金がなくなった分、どの売上でも差額は12万〜15万円悪くなります。損益分岐は、59歳以下の事業所得1,214万円に対し、60〜64歳では1,334万円です。このケースの事業所得820万円は、その6割ほどにとどまります。60歳の前後で結論がどう動くかは59歳と60歳で結論が入れ替わる技術顧問の試算事例でも扱っています。

不利の分を、厚生年金の上乗せで取り返せるか

法人化すると、65歳まで厚生年金に入り続けます。会社員時代の加入期間に足されて、老齢厚生年金が増えます。報酬比例部分は「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数」で計算されます。

項目金額
標準報酬月額(役員報酬月45万円)44万円
1年加入で増える老齢厚生年金(年額)2.9万円
61〜64歳の4年加入で増える老齢厚生年金(年額)11.6万円
4年間の実質差額の合計(1期目−40.4万円、2〜4期目−30.4万円)−131.6万円
取り返すまでの年数(131.6万円÷11.6万円)約11.3年

※ 報酬比例部分のみ。賞与なし。年金にかかる所得税・住民税は考慮していない

65歳から年11.6万円ずつ上乗せされると、4年間の不利を取り返すのはおよそ76歳です。老齢厚生年金には税金がかかるので、手取りで見るとさらに時間がかかります。年金の上乗せを理由に法人化するなら、この年数を長いと見るか短いと見るかの判断になります。

個人のままでも、国民年金の加入期間が40年に満たない人は65歳まで任意加入して老齢基礎年金を増やせます。どちらで年金を増やすかの比較は60歳以降の国民年金、任意加入と法人化にあります。法人化の判断全体は個人事業主の法人化の目安で整理しています。

顧問料を事業所得で申告すると、個人事業税ではコンサルタント業(5%)とされうる点は、カウンセラー・FP・顧問の個人事業税は「コンサルタント業」で5%で整理しています。

まとめ

  • 新潟市・61歳・年商900万円の技術顧問は、法人化で3期目以降年30.4万円の不利
  • 60代前半は国民年金がなく、損益分岐は事業所得1,334万円。59歳以下(1,214万円)より120万円高い
  • 65歳まで4年間厚生年金に入ると老齢厚生年金は年11.6万円増えるが、4年間の不利131.6万円を取り返すのは76歳ごろ
  • 取引先が法人との契約を求めるなら、年30万円前後がその費用になる

判定ツールの年齢区分で「60〜64歳」を選ぶと、国民年金のない年代として計算します。定年後に独立した人は、その区分で確かめてください。

よくある質問

定年した会社から顧問契約を受けるなら、法人のほうが取引しやすいですか?

取引先によっては法人との契約を求めることがあります。その場合は、この記事の年30万円前後の不利が、取引を続けるための費用になります。契約の継続にどれだけの価値があるかと比べて判断することになります。

個人のままで年金を増やす方法はありますか?

60歳以降も、国民年金の加入期間が40年に満たない人は65歳まで任意加入して老齢基礎年金を増やせます。厚生年金の上乗せとは別の方法で、保険料と増える年金の額を比べて選べます。

会社員時代の厚生年金の期間と合わせて計算されますか?

法人化して入った厚生年金の期間は、会社員時代の期間に足されて老齢厚生年金の額が計算されます。この記事の年11.6万円は、61〜64歳の4年分で増える額だけを示しています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。