法人化の判断

外注600万円のシステム開発、法人化の試算事例。年商1,500万円でも年23万円不利

結論

静岡市で受託開発をする38歳・独身の個人事業主(年商1,500万円・外注を含む経費600万円)は、個人のままの手取りが603.2万円、法人化(役員報酬月54万円)で600.6万円です。税理士報酬の差を含め3期目以降は年22.6万円の不利です。同じ年商でも経費が150万円なら年9.7万円の有利に変わります。

  • 法人化の損得を決めるのは年商ではなく事業所得。このケースは外注を払った後の900万円で、損益分岐の1,255万円に届かない
  • 年商1,500万円のまま経費を600万→450万→300万→150万円と減らすと、差は−22.6万→−12.8万→−5.5万→+9.7万円と動く
  • 外注先を社員に切り替えると、人件費に会社負担の社会保険料が乗る。法人化と同時に雇用を考えるなら、その費用も判定に入れる

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

受託開発で案件が増えると、自分だけでは回らなくなり、知り合いのエンジニアに外注を出すようになります。年商は1,500万円まで伸びた。周りからは「もう法人化でしょう」と言われる。このケースはその段階の人です。

このケースの条件

項目内容
職種受託システム開発(地元企業の業務システム・Webアプリ)
年齢・家族38歳・独身
住所静岡市
年商(税抜)1,500万円
経費600万円(うち外注費が約450万円、その他にPC・サーバー・通信費・交通費など)
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種請負業として5%で計算

事業所得(売上−経費)は900万円です。

個人事業主のまま:手取りは603.2万円

項目金額
事業所得(売上−経費)900.0万円
国民健康保険82.9万円
国民年金21.5万円
所得税(復興特別所得税を含む)92.8万円
住民税69.0万円
個人事業税30.5万円
手取り603.2万円

※ 静岡市・38歳・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準

法人化した場合:手取り合計は600.6万円

項目金額
役員報酬(月54万円・年額)648.0万円
社会保険料・本人負担89.5万円
所得税18.7万円
住民税34.4万円
個人に入る手取り505.4万円
社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む)91.8万円
法人の利益(税引前)160.2万円
法人税等(均等割7万円を含む)41.2万円
会社に残る額119.0万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)600.6万円

※ 合同会社・静岡県(協会けんぽ)・役員報酬は手取り合計が最大になる額/2026年(令和8年)分基準

1期目2期目3期目以降
手取りの差(法人−個人)−2.6万円−2.6万円−2.6万円
設立費用(合同会社)−10.0万円——
税理士報酬の増加−20.0万円−20.0万円−20.0万円
実質差額−32.6万円−22.6万円−22.6万円

判定ツールの区分は「個人のまま有利」です。損益分岐は事業所得1,255万円で、このケースは355万円足りません。

同じ年商1,500万円で、経費だけを変えると

年商を1,500万円に固定し、経費(外注の多さ)だけを動かしました。

経費事業所得個人のままの手取り法人化の手取り合計実質差額(3期目以降)
600万円(このケース)900万円603.2万円600.6万円−22.6万円
450万円1,050万円687.7万円694.9万円−12.8万円
300万円1,200万円774.2万円788.7万円−5.5万円
150万円1,350万円851.2万円880.9万円+9.7万円

※ 年商1,500万円・静岡市・38歳・独身・個人事業税5%・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)分基準。最適な役員報酬はいずれも月54万円

年商が同じでも、経費が450万円違えば結論が逆になります。外注を出して売上を伸ばすやり方は事業としては自然ですが、法人化の判定では「自分の手元に残る利益」しか効きません。

経費の多い事業ほど年商は判断の物差しにならない、という点は物販でも同じです。年商3,000万円で不利になるケースは神戸のネットショップの試算事例で扱っています。

外注を社員に切り替えるときは別の計算になる

外注先のエンジニアを社員として迎えたい、という理由で法人化を考える人もいます。この場合、外注費が給与に置き換わるだけでは済みません。給与には会社負担の社会保険料と労働保険料が乗るため、同じ人に同じ額を払っても会社の負担は増えます。

一人社長が初めて人を雇うときの総額は一人社長が初めて従業員を雇う費用で計算しています。雇用を前提にするなら、その費用を経費に足してから判定ツールに入れる必要があります。

このケースが法人化に近づくには

変化法人化との差(3期目以降)
年商が1割増える(1,650万円、経費600万円のまま)−12.8万円
年商が1割減る(1,350万円、経費600万円のまま)−30.1万円
外注を減らし経費150万円で同じ年商を維持+9.7万円

外注に出していた分を自分でこなせれば、事業所得が増えて法人化に近づきます。ただ、それは働き方そのものの変更です。いまの体制のままなら、個人で続けるほうが手取りは多くなります。法人化の判断全体は個人事業主の法人化の目安で整理しています。

まとめ

  • 静岡市・年商1,500万円・経費600万円の受託開発者は、個人のまま603.2万円、法人化で600.6万円
  • 3期目以降も年22.6万円の不利。事業所得900万円は損益分岐1,255万円に届かない
  • 年商1,500万円のまま経費を150万円まで減らすと、年9.7万円の有利に変わる
  • 外注を社員に切り替えるなら、会社負担の社会保険料を加えて判定し直す必要がある

判定ツールには年商と経費を分けて入れます。外注を含めた実際の経費で確かめてください。

よくある質問

外注先にお金を払っているのに、なぜ年商で判断してはいけないのですか?

法人化で下がるのは所得税・住民税・個人事業税で、どれも利益にかかります。外注費は利益を減らす経費なので、外注が多いほど法人化で下げられる税金の元が小さくなります。

40歳を超えると結果は変わりますか?

40歳以上になると、個人の国保に介護分、法人の健康保険に介護保険料が加わります。同じ条件で40〜59歳として計算すると、3期目以降の差は年17.6万円の不利で、40歳未満より5.0万円縮みますが、結論は変わりません。

法人にすると外注先との契約はどうなりますか?

契約の相手方が個人から法人に変わるため、取引先と外注先の両方と契約を結び直すのが一般的です。外注先への支払いの扱い(源泉徴収の要否など)は、外注先が個人か法人か、報酬の種類で変わります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。