法人化の判断

63歳・年商2,500万円のコンサルタントの法人化試算事例。65歳で役員報酬を月54万円に下げる理由

結論

東京23区・63歳・単身のコンサルタント(年商2,500万円・経費300万円)は、法人化して役員報酬を月100万円にすると3期目以降年82.0万円の有利です。昭和36年4月2日以後生まれの男性は65歳まで老齢厚生年金がないので、報酬を高くしても年金は止まりません。65歳からは月100万円の報酬だと年金の半分が止まるため、老齢厚生年金の基本月額が6.7万円を超えるなら月54万円に下げたほうが、止まる年金を差し引いた手元の額が多くなります。

  • 特別支給の老齢厚生年金は、男性は昭和36年4月1日以前、女性は昭和41年4月1日以前に生まれた人が対象。それ以後に生まれた人は65歳から受け取る
  • 令和8年4月から、基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超えると、超えた額の半分の年金が止まる。月100万円の報酬だと厚生年金の標準報酬月額は上限の65万円で、基本月額の半分が止まる
  • 66歳の試算で、報酬月100万円と月54万円の手取り合計の差は年40.3万円。基本月額10万円なら月100万円では年60万円止まるので、月54万円のほうが19.7万円多く残る

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

60代で売上の大きい人は、法人化の損得そのものより、役員報酬をいくらにするかの判断が重くなります。65歳を境に、高い報酬が年金を止めるようになるからです。このケースでは、63歳では月100万円が最適だった報酬が、65歳以降は月54万円まで下げるほうが手元に残るようになりました。

このケースの条件

項目内容
職種経営コンサルタント(元商社役員。複数社の顧問・社外アドバイザー)
年齢・家族63歳・単身(昭和38年生まれの男性)
住所東京23区
年商(税抜)2,500万円
経費300万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種コンサルタント業(第3種・5%)
年金会社員時代の厚生年金加入期間あり。65歳から老齢厚生年金を受け取る予定

事業所得(売上−経費)は2,200万円です。

個人事業主のまま:手取りは1,278.4万円

項目金額
事業所得(売上−経費)2,200.0万円
国民健康保険(介護分を含む)113.0万円
国民年金0万円(60歳以上)
所得税515.0万円
住民税198.2万円
個人事業税95.5万円
手取り1,278.4万円

※ 東京23区・63歳・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準

所得税の税率は最高で40%の帯に入っています。国保は上限に達しています。

63歳で法人化:報酬は月100万円が最適、年82.0万円の有利

項目金額
役員報酬(月100万円・年額)1,200.0万円
社会保険料・本人負担(介護保険料を含む)140.2万円
所得税・住民税206.0万円
個人に入る手取り853.8万円
法人税等(均等割7万円を含む)198.9万円
会社に残る額658.1万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)1,380.3万円

※ 合同会社・東京都(協会けんぽ)・3期目以降。健康保険の標準報酬月額98万円、厚生年金は上限の65万円/2026年(令和8年)分基準

税理士報酬の増加20万円を引いて、3期目以降は年82.0万円の有利です。損益分岐は事業所得1,362万円で、この売上なら大きく超えています。

最適な報酬は、判定ツールの探索の上限の月100万円です。厚生年金の標準報酬月額は65万円が上限なので、それを超える報酬には厚生年金保険料がかからず、報酬を上げても社会保険料が増えにくいためです。

このケースの社長は昭和38年生まれの男性です。特別支給の老齢厚生年金は、男性は昭和36年4月1日以前に生まれた人が対象なので、65歳まで老齢厚生年金はありません。受け取る年金がなければ止まる年金もないので、63〜64歳のうちは報酬をいくら高くしても問題は起きません。

65歳から:報酬が高いと、年金の半分が止まる

65歳で老齢厚生年金を受け取り始めると、在職老齢年金の仕組みが効きます。令和8年4月からは、年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超えると、超えた額の半分が止まります。

報酬を月100万円にすると、総報酬月額相当額は厚生年金の上限の65万円です。合計は「65万円+基本月額」なので、基本月額の半分が止まります。

66歳の時点で、報酬の額ごとの手取り合計と、止まる年金を並べました。

役員報酬(月)厚生年金の標準報酬月額手取り合計止まる年金(基本月額10万円の場合・年)差し引き
51万円50万円1,347.2万円0万円1,347.2万円
54万円53万円1,351.4万円0万円1,351.4万円
60万円59万円1,350.6万円24万円1,326.6万円
80万円65万円1,369.9万円60万円1,309.9万円
100万円65万円1,391.7万円60万円1,331.7万円

※ 66歳・単身・年商2,500万円・経費300万円・東京23区。止まる年金=(基本月額+標準報酬月額−65万円)÷2×12。賞与なし。年金にかかる税金は考慮していない/2026年(令和8年)分基準

基本月額10万円なら、月100万円の報酬では年60万円の年金が止まります。報酬を月54万円に下げると、手取り合計は年40.3万円減りますが、年金は止まりません。差し引きで月54万円のほうが19.7万円多く手元に残ります。

基本月額6.7万円が分かれ目

報酬を月100万円から月54万円に下げると、手取り合計は年40.3万円減ります。止まる年金が年40.3万円を超えるなら、下げたほうが得です。月100万円で止まる年金は「基本月額の半分×12か月」なので、**基本月額が約6.7万円(年金の年額で約80万円)**を超えると、月54万円が有利になります。

老齢厚生年金の基本月額差し引きが最大になる報酬
5万円月100万円(止まる年金は年30万円)
8万円月54万円
10万円月54万円
15万円月51万円(月54万円だと年18万円止まる)

※ 66歳・年商2,500万円の試算から。役員報酬は月45万〜100万円の候補で比較

65歳になる年は、期首に報酬を決め直す

役員報酬は、期首から3か月以内に決めて期中は同じ額を払うのが原則です。65歳の誕生月に合わせて期の途中で下げると、経費として認められるかどうかが問題になります。65歳になる事業年度の期首に、年金の受け取り開始を見込んで報酬を決め直しておくのが確実です。

報酬を下げると会社に残る利益が増え、法人税の税率も上がります。それでも基本月額が大きい人は、止まる年金のほうが大きくなります。止まる仕組みと基本月額ごとの「止まらない報酬の上限」は在職老齢年金と法人化で詳しく扱っています。報酬の決め方の全体像は役員報酬の最適額はいくらかにまとめています。

まとめ

  • 東京23区・63歳・年商2,500万円のコンサルタントは、法人化して報酬を月100万円にすると年82.0万円の有利
  • 昭和36年4月2日以後生まれの男性は65歳まで老齢厚生年金がなく、60代前半は報酬を高くしても年金は止まらない
  • 65歳からは月100万円の報酬で年金の基本月額の半分が止まる
  • 基本月額が約6.7万円を超えるなら、報酬を月54万円に下げたほうが止まる年金を差し引いて多く残る
  • 65歳になる事業年度の期首に、報酬を決め直す

判定ツールは役員報酬ごとの手取り合計を一覧で出しますが、年金の停止は入っていません。年金を受け取る年齢の人は、表の上に止まる額を重ねて確かめてください。

よくある質問

65歳の誕生月に、期の途中で役員報酬を下げてもよいですか?

役員報酬は原則として期首から3か月以内に決め、期中は同じ額を払う必要があります。年金を止めないために期中に下げた場合に、経費として認められるかどうかは個別の判断になります。65歳になる年は、期首の時点で報酬を決め直しておくのが確実です。

65歳から年金を繰り下げれば、報酬を高いままにできますか?

繰り下げている間は年金を受け取っていないので止まりませんが、繰下げで増える額は、在職中に止まるはずだった部分を除いて計算されます。報酬を高くしたまま繰り下げても、止まる分は増額の対象になりません。

63歳のうちに法人化しておく意味はありますか?

このケースでは63歳の時点で年82.0万円の有利があり、年金の停止も起きません。65歳以降も報酬を下げれば有利は残るので、63歳で法人化する理由は十分にあります。65歳で報酬をどう決め直すかを最初から見込んでおくことが前提です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。