法人化の判断
年商5,000万円のコンサルの法人化試算事例。役員報酬は月100万超が最適
結論
東京23区・48歳・独身のコンサルタント(年商5,000万円・経費800万円)は、個人のまま手取り2,121.1万円、法人化して役員報酬を月100万円にすると2,443.0万円で、3期目以降は年301.9万円有利です。月100万円を超えて計算すると月185万円で2,453.8万円が最大で、上積みは年10.8万円にとどまります。
- 個人のままでは課税所得4,000万円超の部分に所得税45%がかかり、所得税・住民税・個人事業税で年1,944.3万円になる
- 報酬月136万円以上は健康保険も標準報酬月額の上限(139万円)に達し、社会保険料は労使計年337.9万円で止まる
- 月185万円でも会社に年1,289.9万円が残る。この試算は残る額を2割引いて数えており、取り出し方しだいで有利幅は動く
このテーマの全体像 役員報酬の決め方(最適額の計算)
ほかの試算事例 法人化の試算事例35人を1つの表で比較。損益分岐を動かすのは家族・年齢・業種
この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。
年商5,000万円・利益4,000万円を超える個人事業主は、法人化で大きく手取りが変わります。結論は明らかに法人化が有利です。このケースで見たいのは、その先の2つです。役員報酬をいくらにするかと、会社に残るお金をどう考えるかです。
このケースの条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 職種 | 経営コンサルタント(上場企業・ファンドの案件。一人で受託) |
| 年齢・家族 | 48歳・独身 |
| 住所 | 東京23区 |
| 年商(税抜) | 5,000万円 |
| 経費 | 800万円 |
| 申告 | 青色申告(e-Tax・65万円控除) |
| インボイス | 登録済み |
| 個人事業税の業種 | コンサルタント業(第3種・5%) |
事業所得(売上−経費)は4,200万円です。
個人事業主のまま:税金だけで年1,944万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事業所得(売上−経費) | 4,200.0万円 |
| 国民健康保険(介護分を含む) | 113.0万円 |
| 国民年金 | 21.5万円 |
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 1,348.3万円 |
| 住民税 | 400.5万円 |
| 個人事業税 | 195.5万円 |
| 手取り | 2,121.1万円 |
※ 東京23区・48歳・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・コンサルタント業5%/2026年(令和8年)分基準
課税所得4,000万円を超える部分には、所得税45%がかかります。住民税10%と合わせると、最後の1万円の55%以上が税金です。国保は上限の113.0万円で止まっていて、保険料の負担は所得に比べて軽く見えます。
法人化した場合:判定ツールの答えは月100万円
判定ツールは役員報酬を月5万〜100万円まで1万円刻みで試します。このケースの最適は、上限の月100万円でした。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員報酬(年額) | 1,200.0万円 |
| 社会保険料・本人負担 | 140.2万円 |
| 所得税 | 123.6万円 |
| 住民税 | 82.4万円 |
| 個人に入る手取り | 853.8万円 |
| 社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む) | 143.0万円 |
| 法人の利益(税引前) | 2,857.0万円 |
| 法人税等(均等割7万円を含む) | 870.6万円 |
| 会社に残る額 | 1,986.5万円 |
| 手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上) | 2,443.0万円 |
※ 合同会社・東京都(協会けんぽ)・48歳/2026年(令和8年)分基準
| 1期目 | 2期目 | 3期目以降 | |
|---|---|---|---|
| 手取りの差(法人−個人) | +321.9万円 | +321.9万円 | +321.9万円 |
| 設立費用・税理士報酬の増加 | −30.0万円 | −20.0万円 | −20.0万円 |
| 実質差額 | +291.9万円 | +301.9万円 | +301.9万円 |
最適額が探索範囲の端に張り付いたとき、判定ツールは「範囲外にさらに有利な候補がある可能性があります」と表示します。このケースはそれに当たります。
月100万円を超えて計算すると
計算エンジンに直接、月100万円より上の報酬を入れて試しました。
| 役員報酬(月額) | 個人に入る手取り | 法人の利益(税引前) | 会社に残る額 | 社会保険料(健保・厚年の労使計) | 手取り合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 54万円 | 500.6万円 | 3,454.3万円 | 2,383.2万円 | 190.8万円 | 2,407.2万円 |
| 100万円 | 853.8万円 | 2,857.0万円 | 1,986.5万円 | 280.3万円 | 2,443.0万円 |
| 140万円 | 1,117.8万円 | 2,348.2万円 | 1,648.6万円 | 337.9万円 | 2,436.7万円 |
| 160万円 | 1,253.0万円 | 2,108.2万円 | 1,489.2万円 | 337.9万円 | 2,444.3万円 |
| 185万円 | 1,421.9万円 | 1,808.2万円 | 1,289.9万円 | 337.9万円 | 2,453.8万円 |
| 200万円 | 1,510.8万円 | 1,628.2万円 | 1,170.4万円 | 337.9万円 | 2,447.1万円 |
| 250万円 | 1,775.9万円 | 1,028.2万円 | 771.9万円 | 337.9万円 | 2,393.4万円 |
※ 年商5,000万円・経費800万円・東京23区・48歳。手取り合計は会社に残る額を2割引いて計上/2026年(令和8年)分基準
月1万円刻みで月300万円まで試すと、手取り合計の最大は月185万円の2,453.8万円でした。月100万円より10.8万円多くなります。
報酬月136万円で、社会保険料が止まる
月100万円を超えると、社会保険料の伸びが鈍り、やがて止まります。厚生年金保険料は標準報酬月額65万円が上限です。報酬が月100万円なら、すでにその上限を超えています。健康保険も標準報酬月額139万円(第50級)が上限で、報酬が月136万円前後に達すると止まります。そこから先は、報酬を上げても社会保険料は年337.9万円のままです。
報酬を上げると、法人税の23.2%の帯にあった利益が個人の所得税の帯へ移ります。会社に残る額は2割引いて数えているため、報酬で受け取るほうが得な範囲がしばらく続きます。個人側で増える税負担が、それを上回ったところで止まり、それが月185万円前後でした。
それでも上積みは0.4%
月100万円と月185万円の差は10.8万円で、手取り合計の0.4%です。曲線は最適額の周辺で平らになっていて、月160万〜200万円のどこでも差は10万円以内に収まります。報酬の細かい最適化より、個人でいくら使い、会社にいくら残すかのほうが重い決定です。報酬額の考え方は役員報酬の決め方で、所得帯ごとにまとめています。
会社に毎年1,000万円以上残るという前提
月185万円でも、会社には年1,289.9万円が残ります。月100万円なら1,986.5万円です。この試算は、残る額を2割引いた価値で手取りに数えています。
| 取り出し方 | 負担の考え方 |
|---|---|
| 役員退職金 | 退職所得控除と2分の1課税で負担は軽いが、相当な額という制約がある |
| 配当 | 配当所得として総合課税され、高所得なら負担は重い |
| 事業への再投資 | 個人に移さず会社の中で使う。人の採用・設備・新規事業など |
10年続ければ、会社に1億円以上が積み上がります。そのすべてを退職金で取り出すのは現実的ではありません。会社に残すお金の見方で結論がどこまで動くかは、会社に残すお金の見方で結論が変わる試算事例で扱っています。所得の大きい層では、法人化を「するか」より「会社のお金をどう使うか」を先に決める必要があります。
まとめ
- 東京23区・年商5,000万円・48歳のコンサルタントは、法人化(月100万円)で3期目以降年301.9万円有利
- 判定ツールの探索上限の外まで計算すると、最適は月185万円。上積みは年10.8万円(0.4%)
- 月136万円前後で健康保険も上限に達し、社会保険料は年337.9万円で止まる
- 月185万円でも会社に年1,289.9万円が残る。取り出し方で実際の有利幅は変わる
判定ツールで「探索範囲の上限」と出たら、この記事の表のように、報酬の配分と会社に残すお金の使い道を合わせて考えてください。
よくある質問
判定ツールで「探索範囲の上限」と表示されたらどうすればよいですか?
最適な報酬が月100万円の端に張り付いているという意味です。このケースのように、範囲の外で手取りがさらに増えることはありますが、上積みは小さいことが多いです。報酬を月100万円より上にするかは、個人で使うお金と会社に残すお金の配分で決めるのが現実的です。
役員報酬を高くしすぎると損金にならないことはありますか?
職務の内容や会社の収益、同業他社の水準などに照らして不相当に高額な部分は、損金に算入されません。一人会社で売上のほとんどを社長が稼いでいる場合でも、金額の根拠は説明できるようにしておく必要があります。
会社に残ったお金はどう使えますか?
事業への投資、将来の役員退職金の原資、配当などに使えます。役員退職金で取り出せる額には相当な額という制約があるため、毎年1,000万円以上を残し続けると、一部は配当など負担の重い方法で取り出すことになります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。