法人化の判断
年商2,000万円のデザイン事務所の試算事例。法人化で配偶者控除が戻る
結論
東京23区・39歳のデザイナー(年商2,000万円・経費300万円、無収入の妻)は、個人のまま手取り1,018.7万円、法人化して役員報酬を月90万円にすると1,098.8万円で、3期目以降は年60.1万円有利です。個人では所得1,000万円超で使えない配偶者控除が、給与所得885万円になることで戻ります。
- 配偶者控除は、本人の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられない。個人のままの事業所得は1,635万円で対象外
- 役員報酬月90万円の給与所得は885万円で、配偶者控除(所得税38万円・住民税33万円)を受けられる
- 月100万円にすると給与所得が1,005万円になり配偶者控除が消える。手取り合計は月99万円の1,088.9万円から1,085.2万円に下がる
このテーマの全体像 役員報酬の決め方(最適額の計算)
ほかの試算事例 法人化の試算事例35人を1つの表で比較。損益分岐を動かすのは家族・年齢・業種
この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。
所得が大きい個人事業主は、配偶者控除をすでに失っています。配偶者控除は、本人の合計所得金額が1,000万円を超えると使えないからです。このケースでは、法人化で所得が「役員報酬」に置き換わると、その控除が戻ってきます。
このケースの条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 職種 | 一人デザイン事務所(企業のブランディング・パッケージ・Webのデザイン) |
| 年齢・家族 | 39歳・妻(無収入・30代) |
| 住所 | 東京23区 |
| 年商(税抜) | 2,000万円 |
| 経費 | 300万円 |
| 申告 | 青色申告(e-Tax・65万円控除) |
| インボイス | 登録済み |
| 個人事業税の業種 | デザイン業(第3種・5%) |
事業所得(売上−経費)は1,700万円、青色申告特別控除を引いた後は1,635万円です。
個人事業主のまま:配偶者控除が使えない
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事業所得(売上−経費) | 1,700.0万円 |
| 国民健康保険(夫婦2人) | 96.0万円 |
| 国民年金(本人+妻) | 43.0万円 |
| 所得税(配偶者控除なし) | 326.3万円 |
| 住民税 | 145.5万円 |
| 個人事業税 | 70.5万円 |
| 手取り | 1,018.7万円 |
※ 東京23区・39歳・妻(無収入)・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・デザイン業5%/2026年(令和8年)分基準
合計所得金額が1,635万円なので、配偶者控除はありません。妻の国民年金21.5万円と、国保の妻の分の均等割もかかっています。
法人化した場合:役員報酬は月90万円が最適
役員報酬を月5万〜100万円まで試すと、手取り合計が最大になったのは月90万円でした。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員報酬(年額) | 1,080.0万円 |
| 給与所得(給与所得控除195万円を引いた後) | 885.0万円 |
| 社会保険料・本人負担 | 124.6万円 |
| 所得税(配偶者控除あり) | 91.2万円 |
| 住民税 | 68.7万円 |
| 個人に入る手取り | 795.5万円 |
| 社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む) | 127.4万円 |
| 法人の利益(税引前) | 492.6万円 |
| 法人税等(均等割7万円を含む) | 113.5万円 |
| 会社に残る額 | 379.1万円 |
| 手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上) | 1,098.8万円 |
※ 合同会社・東京都(協会けんぽ)・役員報酬は手取り合計が最大になる額/2026年(令和8年)分基準
給与所得が885万円なので、配偶者控除の満額(所得税38万円・住民税33万円)を受けられます。妻は被扶養者・第3号被保険者になり、国民年金と国保の負担もなくなります。
| 1期目 | 2期目 | 3期目以降 | |
|---|---|---|---|
| 手取りの差(法人−個人) | +80.1万円 | +80.1万円 | +80.1万円 |
| 設立費用(合同会社) | −10.0万円 | — | — |
| 税理士報酬の増加 | −20.0万円 | −20.0万円 | −20.0万円 |
| 実質差額 | +50.1万円 | +60.1万円 | +60.1万円 |
妻がいることで、法人化の差が23.3万円広がる
同じ条件で独身だった場合と比べます。
| 独身 | 妻(無収入) | |
|---|---|---|
| 個人のままの手取り | 1,030.8万円 | 1,018.7万円 |
| 法人化の手取り合計(月90万円) | 1,087.6万円 | 1,098.8万円 |
| 実質差額(3期目以降) | +36.8万円 | +60.1万円 |
※ 年商2,000万円・経費300万円・東京23区・39歳・デザイン業5%/2026年(令和8年)分基準
個人のままでは、妻がいると手取りが12.1万円減ります。妻の国民年金と国保がかかるのに、配偶者控除がないためです。法人化すると逆に、妻がいると手取りが11.2万円増えます。配偶者控除が戻り、妻の保険料が消えるためです。
月100万円にすると、配偶者控除がまた消える
給与所得控除は、給与の収入が850万円を超えると195万円で頭打ちになります。役員報酬が年1,195万円(月99.6万円)を超えると、給与所得が1,000万円を超えます。
| 役員報酬(月額) | 給与所得 | 個人に入る手取り | 会社に残る額 | 手取り合計 |
|---|---|---|---|---|
| 54万円 | 474.4万円 | 511.9万円 | 726.2万円 | 1,092.9万円 |
| 90万円(最適) | 885.0万円 | 795.5万円 | 379.1万円 | 1,098.8万円 |
| 99万円 | 993.0万円 | 856.3万円 | 290.7万円 | 1,088.9万円 |
| 100万円 | 1,005.0万円 | 860.2万円 | 281.3万円 | 1,085.2万円 |
※ 妻(無収入)・東京23区。手取り合計は会社に残る額を2割引いて計上
月99万円から月100万円に上げると、報酬は年12万円増えるのに、個人に入る手取りは3.9万円しか増えず、手取り合計は3.7万円減ります。配偶者控除の額は本人の所得が900万円を超えると段階的に減り、給与所得993万円の月99万円では所得税13万円まで縮んでいます。月100万円で給与所得が1,000万円を超えると、それもなくなります。所得が大きい年に報酬を決めるときは、給与所得1,000万円の線を意識する必要があります。役員報酬が月54万円より上に跳ぶ仕組みは年商2,400万円のITコンサルの試算事例で、報酬額ごとの考え方は役員報酬の決め方で扱っています。
売上が上下すると
| 年商 | 事業所得 | 実質差額(3期目以降) |
|---|---|---|
| 1,800万円(−10%) | 1,500万円 | +43.2万円 |
| 2,000万円(このケース) | 1,700万円 | +60.1万円 |
| 2,200万円(+10%) | 1,900万円 | +80.4万円 |
損益分岐は事業所得1,016万円です。このケースは大きく上回っていて、売上が1割落ちても結論は変わりません。
まとめ
- 東京23区・年商2,000万円・妻を扶養するデザイナーは、法人化(月90万円)で3期目以降年60.1万円有利
- 個人のままでは合計所得1,635万円で配偶者控除が使えない。法人化で給与所得885万円になり控除が戻る
- 妻がいると、個人では手取りが12.1万円減り、法人では11.2万円増える。差は23.3万円
- 役員報酬を月100万円にすると給与所得が1,000万円を超え、配偶者控除が再び消える
家族構成を入れて判定ツールを使うと、最適な役員報酬が自分の条件で出ます。
よくある質問
配偶者特別控除なら所得1,000万円を超えても使えますか?
使えません。配偶者特別控除も、本人の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられません。妻に収入がある場合も、本人の所得が1,000万円以下であることが前提です。
妻を役員にして報酬を払ったほうがよいのではありませんか?
妻に報酬を払うと、所得を2人に分けて税率を下げられる一方、妻の社会保険加入や配偶者控除がなくなる影響が出ます。この試算は妻を無収入の被扶養者として計算しているので、報酬を分ける場合は別に計算が必要です。
給与所得が1,000万円を少し超える報酬だと、どれくらい損ですか?
このケースでは、月99万円の手取り合計が1,088.9万円、月100万円で1,085.2万円でした。報酬を12万円増やして、手取り合計は3.7万円減ります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。