税金の基礎

地震保険料控除は法人化で効き目が縮む。保険料5万円で年1.2万円減

結論

自宅の地震保険料を年5万円払うと、所得税で5万円・住民税で2.5万円の控除になります。事業所得1,200万円・東京23区・単身なら、減る税は個人のままで年1万9,300円、法人化して最適な役員報酬(月54万円)を取ると年7,600円で、1万1,700円縮みます。控除額は変わらず、掛かる税率が下がるためです。

  • 控除額は所得税が保険料の全額(上限5万円)、住民税が2分の1(上限2.5万円)。平成18年末までの旧長期損害保険料は所得税1.5万円・住民税1万円が上限
  • 国民健康保険料・個人事業税・法人税には効かない。動くのは所得税と住民税所得割だけなので、効き目は限界税率でほぼ決まる
  • 役員報酬が月10万円以下だと課税所得が0円になり、控除の効果も0円。社長の自宅の保険料を会社が払うと、法人税基本通達9-3-11により原則として役員給与になる

地震保険料控除の額そのものは、個人事業主でも一人社長でも同じ式で決まります。違うのは、その控除がどの税率の所得に当たるかです。法人化して役員報酬を最適な額に抑えると、社長個人の課税所得は個人事業主のときより下の税率帯に落ちます。同じ5万円の控除でも、減る税額は小さくなります。

以下では、控除額の決まり方を確認したうえで、計算エンジンで事業所得別・役員報酬別に「控除で減る税」を出します。

控除額は所得税と住民税で別の式になる

地震保険料控除の対象は、自宅や家財(生活用動産)を目的とする損害保険契約のうち、地震等損害部分の保険料です(所得税法77条、国税庁 No.1145)。所得税と住民税で控除額の式が違います。

年間の地震保険料所得税の控除額住民税の控除額
10,000円10,000円5,000円
20,000円20,000円10,000円
30,000円30,000円15,000円
50,000円50,000円25,000円
80,000円50,000円25,000円
100,000円50,000円25,000円

所得税は保険料の全額で上限5万円、住民税は2分の1で上限2.5万円です。年5万円を超えた保険料は、所得税にも住民税にも効きません。

旧長期損害保険料は上限が別に低い

平成18年12月31日までに結んだ、満期返戻金がある保険期間10年以上の契約(平成19年以後に変更していないもの)は、経過措置として旧長期損害保険料の控除が残っています。

旧長期損害保険料のみ所得税の控除額住民税の控除額
5,000円5,000円5,000円
10,000円10,000円7,500円
15,000円12,500円10,000円
20,000円15,000円10,000円
30,000円15,000円10,000円

所得税は1.5万円、住民税は1万円が上限です。地震保険料と両方ある場合は合計しますが、それでも所得税5万円・住民税2.5万円が上限です。同じ契約で両方に当たる場合は、どちらか一方を選びます。

控除額は所得控除として課税所得から引かれるだけで、税額そのものを引く税額控除ではありません。だから効き目は「控除額×限界税率」で決まり、ここに法人化の影響が出ます。

国保料・事業税・法人税には効かない

個人事業主のうちに見落としやすいのは、地震保険料控除が国民健康保険料を1円も下げないことです。国保料の所得割は旧ただし書き所得で計算し、所得控除を引きません(東京23区の国保料の計算)。個人事業税も事業主控除290万円を引く仕組みで、所得控除は関係しません。

法人化後も同じで、地震保険料控除は社長個人の所得税と住民税にしか効きません。法人税の計算には入りません。つまり比べるべきは、個人事業主の課税所得と、社長の給与所得からの課税所得の税率帯だけです。

事業所得別に、控除で減る税を比べる

年5万円の地震保険料(所得税の控除5万円・住民税の控除2.5万円)で、減る所得税(復興特別所得税込み)と住民税所得割を計算エンジンで出しました。法人化後は、判定ツールが総当たりで選ぶ手取り最大の役員報酬を取った場合です。

事業所得(青色控除前)個人のまま:減る税法人化:最適報酬法人化:減る税差
400万円5,100円月28万円5,100円+0円
600万円12,800円月42万円5,000円−7,800円
800万円12,700円月54万円7,600円−5,100円
1,000万円14,300円月54万円7,600円−6,700円
1,200万円19,300円月54万円7,600円−11,700円
1,500万円19,300円月54万円7,600円−11,700円
1,800万円19,300円月90万円13,700円−5,600円
2,100万円22,900円月95万円14,300円−8,600円
2,500万円22,900円月100万円14,200円−8,700円
3,000万円22,900円月100万円14,200円−8,700円

※ 年間の地震保険料50,000円(所得税の控除50,000円・住民税の控除25,000円)。減る税=所得税(復興特別所得税込み)+住民税所得割 ※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準

縮み幅が最も大きいのは事業所得1,200万〜1,500万円の帯で、年1万1,700円です。個人のままだと課税所得が所得税33%の帯に入るのに対し、法人化後は役員報酬を月54万円に抑えるため、社長個人は10%の帯に収まるからです。

住民税は所得割が一律10%なので、2.5万円の控除で減るのはどの帯でも2,500円です。差はほぼ所得税の税率差から来ています。事業所得400万円では、個人のままでも法人化後でも5%の帯で、差は出ません。

保険料が年2万円の場合も同じ傾向で、縮み幅は最大4,600円(事業所得1,200万〜1,500万円)でした。金額は小さいですが、生命保険料控除や医療費控除など、ほかの所得控除にも同じ縮みが重なります(生命保険料控除と法人契約の比較、医療費控除の法人化による変化)。

役員報酬を下げるほど、控除はゼロに近づく

同じ会社でも、役員報酬をいくらにするかで控除の効き目は変わります。売上1,200万円・経費200万円の一人会社で、報酬額ごとに出しました。

役員報酬(月額)所得税の課税所得減る所得税減る住民税合計
5万円0円0円0円0円
8万円0円0円0円0円
10万円0円0円0円0円
15万円0円0円2,500円2,500円
20万円219,440円2,500円2,500円5,000円
30万円889,160円2,500円2,500円5,000円
40万円1,661,852円2,500円2,500円5,000円
50万円2,468,600円5,100円2,500円7,600円
60万円3,705,348円10,200円2,500円12,700円
70万円4,646,892円10,200円2,500円12,700円

※ 売上1,200万円・経費200万円、年間の地震保険料50,000円 ※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準

月10万円以下では、給与所得控除と基礎控除・社会保険料控除だけで課税所得が0円になり、地震保険料控除は何も減らしません。月15万円は所得税の課税所得が0円でも、住民税は基礎控除が所得税より小さいため課税所得が残り、2,500円だけ効きます。

役員報酬を低く抑えて法人に利益を残す設計ほど、個人の所得控除は空振りしやすくなります。控除を「使い切れるか」は、報酬額を決める段階で一度確かめておく価値があります。

会社に払わせると、原則は役員給与になる

「控除の効き目が縮むなら、自宅の地震保険料を会社の経費にすればよい」と考える人もいます。しかし社長個人が所有する自宅の保険を会社が払うと、扱いは給与側に寄ります。

法人税基本通達9-3-11は、法人が役員の所有する建物等の長期の損害保険契約の保険料を払った場合を次のように定めています。

  • 法人が契約者、役員が被保険者:積立保険料に相当する部分は法人の資産、その他の部分は役員に対する給与
  • 役員が契約者かつ被保険者:保険料の全額が役員に対する給与

給与とされれば、社長の側では給与収入として所得税・住民税の対象になります。会社の側では、年1回払いのような支払いは毎月一定の額にならないため、損金にできるかは定期同額給与との関係で個別に確認が必要です。一人社長が自分の自宅の保険料を会社に払わせても、税の負担はそのまま個人に戻ってくると考えたほうが安全です。

会社が社長の自宅を借り上げて社宅にしている場合など、建物の所有関係が変わると扱いも変わります(9-3-10は賃借建物の場合の定め)。社宅の家賃の考え方は役員社宅の家賃で扱っています。

個人事業主が自宅の一部を仕事場にしている場合、業務に必要な部分を明確に区分できれば、家事関連費の一部を必要経費にできます(国税庁 No.2210)。この記事は住居専用の自宅と家財の地震保険を前提にしています。

まとめ

  • 地震保険料控除は所得税で保険料の全額(上限5万円)、住民税で2分の1(上限2.5万円)。旧長期損害保険料は所得税1.5万円・住民税1万円が上限
  • 国保料・個人事業税・法人税には効かず、効き目は所得税と住民税所得割の限界税率で決まる
  • 年5万円の保険料で、事業所得1,200万〜1,500万円なら減る税は個人のまま1万9,300円、法人化後(最適報酬)7,600円で、1万1,700円縮む
  • 役員報酬が月10万円以下だと課税所得が0円になり、控除の効果は0円
  • 社長所有の自宅の保険料を会社が払うと、法人税基本通達9-3-11により原則として役員給与になる

控除1つの差は小さくても、法人化後の役員報酬の決め方しだいで所得控除全体の効き目が変わります。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で役員報酬と手取りを確かめてください。

よくある質問

一人社長でも地震保険料控除は使えますか?

使えます。地震保険料控除は所得控除なので、役員報酬を受け取る社長も年末調整か確定申告で差し引けます。控除額の計算は個人事業主のときと同じで、変わるのは控除が掛かる税率です。

地震保険料が年8万円なら控除も8万円ですか?

なりません。所得税の控除は5万円、住民税の控除は2.5万円が上限です。保険料が年5万円を超えた部分は、どちらの税も減らしません。

地震保険料控除で国民健康保険料は下がりますか?

下がりません。国民健康保険料の所得割は旧ただし書き所得で計算し、地震保険料控除などの所得控除を引かないためです。個人事業税の課税標準でも差し引かれません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。