税金の基礎

一人社長の住民税は特別徴収?普通徴収を選べる「普A」の条件

結論

役員報酬から所得税を源泉徴収している会社は、原則として社長本人の住民税も給与から天引きして納める特別徴収義務者になります。ただし、総従業員数が2人以下の事業所は「普A」に当たり、給与支払報告書の摘要欄に符号を書けば普通徴収にできます。社長1人の会社や、社長と配偶者だけの会社はこれに当たります。

  • 特別徴収は年12回、翌月10日納付。給与を受ける人が常時10人未満なら、申請して6月10日と12月10日の年2回にまとめられる(納期の特例)
  • 役員報酬月50万円(東京23区・単身・40歳未満)なら住民税は年31万300円で、特別徴収の月額は6月2万6,500円、7月以降2万5,800円(当サイト試算)
  • 給与支払報告書は毎年1月31日までに、1月1日時点の住所地の区市町村へ出す。社長1人分でも必要

個人事業主のときの住民税は、自宅に届く納付書で年4回払っていました。法人化して役員報酬を受け取るようになると、会社が社長の給与から住民税を天引きして納める特別徴収が原則になります。

ただ、一人会社なら普通徴収を選ぶ道も残っています。どちらにするかで、資金繰りと事務の手間が変わります。

源泉徴収をしている会社は、原則として特別徴収義務者

給与から所得税を源泉徴収している事業主は、住民税についても特別徴収を行う義務があります。東京都では平成29年度から都内の全区市町村で一斉に、特別徴収義務者の指定を行っています。

社長1人の会社でも、役員報酬から源泉徴収をしていれば対象です。役員報酬の源泉徴収がいくらから生じるかは、役員報酬の源泉徴収はいくらからで整理しました。

流れは次のとおりです。

時期会社がすること
1月31日まで1月1日時点の住所地の区市町村へ給与支払報告書を出す
5月31日まで区市町村から特別徴収税額決定通知書が届く
6月〜翌年5月毎月の給与から天引きし、翌月10日までに納める

総従業員数が2人以下なら「普A」で普通徴収にできる

特別徴収が原則でも、次のいずれかに当たる人は普通徴収にできます。区市町村が示している普通徴収切替理由の符号です。

符号理由
普A総従業員数が2人以下
普B他の事業所で特別徴収(乙欄該当者など)
普C給与が少なく税額が引けない(年間の給与支払額が100万円以下)
普D給与の支払いが不定期
普E事業専従者(個人事業主のみ)
普F退職者・退職予定者(5月末日まで)・休職者

※ 世田谷区の案内による。区市町村により様式が異なる場合がある

社長1人の会社、社長と配偶者の役員2人の会社は普Aに当たります。給与支払報告書の個人別明細書の摘要欄に「普A」と書けば、その人の住民税は普通徴収になります。符号の記入がなければ原則どおり特別徴収です。

従業員を1人雇って総従業員数が3人になると、普Aは使えません。

役員報酬別の住民税と、特別徴収の月額

特別徴収にした場合に、毎月の役員報酬から引かれる住民税です。東京23区・単身・40歳未満で、当サイトの計算エンジンで年税額を出しました。

役員報酬(月)住民税(年)うち所得割6月の天引き額7月〜翌5月の天引き額
20万円8万5,400円8万400円7,300円7,100円
30万円15万2,400円14万7,400円1万2,700円1万2,700円
40万円22万9,600円22万4,600円1万9,500円1万9,100円
50万円31万300円30万5,300円2万6,500円2万5,800円
60万円39万7,000円39万2,000円3万4,000円3万3,000円

※ 令和8年分の所得に対する住民税(令和9年度)の当サイトの試算。月額は100円未満を切り捨て、端数を6月分に寄せた。均等割・森林環境税を含む

普通徴収にすると、同じ年税額を自治体の定める年4回の納期で、社長が自分の口座から納めます。

特別徴収と普通徴収、一人会社ではどちらを選ぶか

年税額はどちらでも同じです。違うのは、誰がいつ納めるかです。

項目特別徴収普通徴収(普A)
納める人会社社長本人
回数年12回(納期の特例なら年2回)年4回
会社の事務毎月の天引きと納付なし
社長の手取りの見え方天引き後の額が振り込まれる報酬は満額で入り、納付書で別に払う

一人会社の場合、天引きした住民税は会社の口座から納め、社長個人の口座には天引き後の額が入ります。会社と個人のお金の流れを分けておきたいなら特別徴収、事務を減らしたいなら普通徴収、というのが実務上の分かれ目です。

特別徴収でも、給与を受ける人が常時10人未満なら、区市町村の承認を受けて納期の特例を使えます。6〜11月分を12月10日まで、12〜5月分を6月10日までの年2回にまとめて納めます。源泉所得税の納期の特例(一人会社の源泉所得税は年2回にできる)と同じ考え方ですが、申請先は税務署ではなく区市町村です。

給与支払報告書は社長1人分でも1月31日まで

どちらを選ぶにしても、給与支払報告書は出します。毎年1月31日までに、1月1日時点で社長が住んでいる区市町村へ、個人別明細書と総括表を提出します(地方税法317条の6)。年の途中で退職した人の分も対象です。

給与支払報告書が住民税の課税の基礎になるので、出し忘れると住民税が正しく計算されません。税務署へ出す法定調書との関係は一人会社の法定調書にまとめています。

法人化した年の住民税は個人事業の所得にかかるもので、役員報酬にかかる住民税が始まるのは翌年6月からです。切り替わりの時期は法人化した年に届く住民税で説明しました。役員報酬をいくらにすると住民税を含めた手取りが最大になるかは、当サイトの判定ツールで自分の数字を入れて確かめてください。

まとめ

  • 役員報酬から源泉徴収をしている会社は、原則として社長の住民税も特別徴収する
  • 総従業員数が2人以下なら「普A」で普通徴収にできる。社長1人や社長と配偶者だけの会社が当たる
  • 役員報酬月50万円(東京23区・単身)なら住民税は年31万300円、特別徴収の月額は2万5,800円前後
  • 特別徴収でも給与を受ける人が常時10人未満なら、納期の特例で年2回にまとめられる
  • 給与支払報告書は社長1人分でも、毎年1月31日までに住所地の区市町村へ出す

よくある質問

普通徴収にすると住民税は安くなりますか?

いいえ。年税額は同じで、変わるのは納め方と回数だけです。特別徴収は年12回、普通徴収は自治体が定める年4回の納期で本人が納めます。

法人化した最初の年も特別徴収になりますか?

法人化した年に届く住民税は、前年の個人事業の所得にかかるもので、通常は本人あての普通徴収です。役員報酬にかかる住民税を特別徴収するのは、給与支払報告書を出した翌年の6月からです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。