設立の手続き
介護休業・介護休暇は従業員1人でも義務?2025年改正と会社の負担
結論
介護休業(対象家族1人につき通算93日・3回まで)と介護休暇(年5日、対象家族2人以上なら10日)は、従業員が1人でも会社は申出を断れません。社長本人は労働者でないため対象外です。介護休業は無給でよいものの社会保険料の免除はなく、東京・40歳以上・月給25万円なら93日(3か月)で本人11.7万円・会社11.98万円の保険料が休業前と同じようにかかります。
- 2025年4月1日から、介護に直面した旨の申出への個別周知・意向確認、40歳になる時期の情報提供、研修・相談窓口などの雇用環境整備が、従業員数にかかわらず義務になった
- 介護休暇は入社6か月未満を労使協定で除外する仕組みが廃止された。介護休業は入社1年未満などを協定で除外できる仕組みが残っている
- 介護休業給付金は休業開始時賃金日額×支給日数×67%。30日あたりの上限は366,222円(令和8年8月1日から)
社長1人の会社には、介護休業を申し出る労働者がいません。この制度が関わるのは、従業員を1人でも雇ったときです。介護は40代以降に急に始まることが多く、採用時には予測できません。2025年4月の改正で会社側の「知らせる義務」が増えたため、申出がなくても動く必要がある場面が生まれました。
子育て中の従業員の休暇は子の看護等休暇は従業員1人でも義務?、社長本人の育児休業と保険料は一人社長は育児休業で社会保険料を免除できないで扱っています。この記事は家族の介護に絞ります。
介護休業と介護休暇は別の制度
名前が似ていますが、日数も使い方も違います。どちらも育児・介護休業法の制度で、事業主は労働者からの申出を「拒むことができない」と定められています(12条・16条の6)。人数の下限はありません。
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 日数 | 対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割可 | 年5日(要介護状態の対象家族が2人以上なら10日) |
| 単位 | 期間の初日と末日を決めて休む | 1日または時間単位 |
| 申出の期限 | 開始予定日の2週間前までなら会社は開始日を変えられない | 当日の申出も可 |
| 労使協定で除外できる人 | 入社1年未満、93日以内に雇用が終わる人、週2日以下 | 週2日以下(時間単位が困難な業務は時間単位のみ) |
| 会社の賃金支払い | 義務なし | 義務なし |
| 雇用保険の給付 | 介護休業給付金(67%) | なし |
93日という日数は、介護そのものを担うためではなく、介護サービスの手配など介護の体制を作るための期間として設計されています。厚生労働省のリーフレットも、情報提供ではこの趣旨を踏まえるよう求めています。日常の通院付き添いのような短い用事は、介護休暇で受ける形です。
2025年改正で介護休暇の「入社6か月未満」除外が廃止
改正前は、労使協定を結べば継続雇用6か月未満の人を介護休暇の対象から外せました。2025年4月1日からこの仕組みは廃止され、入社初日から介護休暇の対象になりました。協定で外せるのは週の所定労働日数2日以下の人などに限られます。
一方、介護休業の側は改正の対象外です。施行規則24条により、入社1年未満の人や、申出から93日以内に雇用関係が終わることが明らかな人は、労使協定があれば今も除外できます。介護休暇と介護休業で除外の範囲が違う点は、就業規則のひな形を流用すると取り違えやすいところです。
協定がなければ誰も除外できません。従業員1人の会社では協定を結んでいないことが多く、その場合はパートを含め全員が対象です。
2025年4月から増えた「会社から知らせる」3つの義務
改正法(令和6年法律第42号)のうち、介護離職防止のための措置は2025年4月1日に施行済みです。リーフレットはいずれも規模を問わない「義務」として示しています。
| 義務 | いつ | 内容 |
|---|---|---|
| 個別周知・意向確認(21条2項) | 従業員が家族の介護に直面した旨を申し出たとき | 制度の内容、申出先、介護休業給付金を知らせ、利用の意向を確認する |
| 早期の情報提供(21条3項) | 40歳に達する日の属する年度、または40歳の誕生日から1年間 | 同じ3項目を知らせる。介護保険制度もあわせて周知するのが望ましい |
| 雇用環境の整備(22条4項) | 常時 | 研修、相談窓口、利用事例の提供、方針の周知のうち1つ以上 |
方法は面談(オンライン可)か書面交付が基本で、FAXと電子メールも使えます。個別周知・意向確認では、FAXと電子メールは労働者が希望した場合に限られます。取得を控えさせるような周知や意向確認は認められないとリーフレットは明記しています。
40歳の情報提供は、申出がなくても期限が来る
3つのうち、一人会社で見落とされやすいのが40歳時点の情報提供です。個別周知は従業員の申出がきっかけですが、情報提供は従業員の年齢だけで義務が始まります。30代で雇った人が40歳になる年度に、会社から知らせる必要があります。
この時期は、健康保険で介護保険料の徴収が始まる時期とも重なります。給与計算の設定を変えるついでに情報提供の書面を渡す、と決めておくと漏れにくくなります。介護保険料が加わる額を計算エンジンで出すと次のとおりです。
| 月給 | 39歳までの会社負担(月額) | 40歳からの会社負担(月額) | 増える会社負担(年額) | 増える本人負担(年額) |
|---|---|---|---|---|
| 200,000円 | 29,100円 | 30,720円 | 19,440円 | 19,440円 |
| 250,000円 | 37,830円 | 39,936円 | 25,272円 | 25,272円 |
| 300,000円 | 43,650円 | 46,080円 | 29,160円 | 29,160円 |
前提:東京・協会けんぽ、介護保険料率1.62%(令和8年度)。会社負担は健康保険・厚生年金の折半分に子ども・子育て拠出金を含む。scripts/kaigo-kyugyo-hitori-kaisha.mjs 40sai で算出(概算)。
社長自身が40歳になったときの介護保険料は40歳からの介護保険料と法人化で扱っています。
雇用環境の整備は「どれか1つ」
研修・相談窓口・事例提供・方針周知のうち1つ以上が義務で、複数が望ましいとされています。従業員1人の会社なら、相談窓口を社長と定めて書面で伝える、方針を書面で周知する、といった形が現実的です。ただし、どの措置で足りるかは会社の実態によるため、迷う場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確認できます。
社長本人は対象外。役員が使えるかは「労働者」かどうか
育児・介護休業法の介護休業・介護休暇は「労働者」の権利です。代表取締役や合同会社の代表社員は会社と委任関係にある役員で、通常は会社に雇われる労働者ではありません。一人社長が親の介護で仕事を減らしても、介護休業にはなりません。
社長の場合、雇用保険の被保険者でもないため、介護休業給付金も受けられません。休む間の収入をどう確保するかは、役員報酬の決め方の問題になります。役員報酬は原則として期中に変えると損金算入が制限されるため(定期同額給与)、介護で業務量が減ったからといって月の途中で下げると税務上の扱いが変わり得ます。
取締役でも、部長などを兼ねて労働者としての実態がある「兼務役員」は、雇用保険の被保険者になり得ます。その場合の扱いは、実態で判断されます。一人社長が雇用保険に入れない理由で、役員が被保険者になる条件を整理しています。
無給の介護休業でも社会保険料は免除されない
介護休業中の賃金は払わなくても構いません。ただし、育児休業との大きな違いがあります。日本年金機構の保険料免除は産前産後休業と育児休業等が対象で、介護休業は含まれません。厚生労働省の施行通達も、介護休業中に労働者が負担すべき社会保険料を事業主に支払う方法を、あらかじめ定めておく事項に挙げています。
健康保険・厚生年金の保険料は標準報酬月額で決まるため、賃金が0円の月も休業前と同じ額です。93日の介護休業を3か月として、月給別に計算しました。
| 月給 | 本人負担の社会保険料(月額) | 会社負担の社会保険料(月額) | 93日(3か月)の本人負担 | 93日(3か月)の会社負担 | 介護休業給付金(93日・概算) |
|---|---|---|---|---|---|
| 200,000円 | 30,000円 | 30,720円 | 90,000円 | 92,160円 | 415,358円 |
| 250,000円 | 39,000円 | 39,936円 | 117,000円 | 119,808円 | 519,229円 |
| 300,000円 | 45,000円 | 46,080円 | 135,000円 | 138,240円 | 623,100円 |
| 600,000円 | 88,500円 | 90,624円 | 265,500円 | 271,872円 | 1,135,288円 |
前提:東京・協会けんぽ・40〜64歳(介護保険料あり)、賞与・残業なし、休業前6か月の賃金は毎月同額、休業中の賃金は0円。会社負担は子ども・子育て拠出金を含む。介護休業給付金は休業開始時賃金日額(休業前6か月の賃金÷180)×93日×67%で、休業開始時賃金月額の上限546,600円(令和8年8月1日から)を適用。雇用保険料は賃金がないため0円。所得税・住民税は含めない。scripts/kaigo-kyugyo-hitori-kaisha.mjs kyugyo で算出(概算)。
本人負担分は「給与から引けない」
賃金が0円の月は、本人負担の保険料を給与から控除できません。会社はいったん本人分も含めて納め、あとで本人から受け取ることになります。月給25万円なら月39,000円です。決めておかないと、休業明けの給与からまとめて差し引くか、毎月振り込んでもらうかで揉めます。通達が「支払う方法」を事前に定める事項に挙げているのは、このためです。
月給25万円の例では、給付金51.9万円から3か月分の本人負担11.7万円を引くと、手元に残るのは約40.2万円です。休業前3か月の額面75万円に対して、給付率67%より低く見えるのはこの保険料のためです。
給付金の上限
介護休業給付金は30日あたり、休業開始時賃金日額×30日×67%です。休業開始時賃金月額の上限が546,600円のため、30日あたりの支給額の上限は366,222円です。月給60万円の例で給付金が67%に届かないのはこの上限によります。
受給には、休業開始前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上必要です。入社1年未満の人は、会社が労使協定で除外していなくても、給付金を受けられない場合があります。手続きは原則として事業主を経由してハローワークに申請します。
一人会社が先に用意しておくこと
従業員を1人雇った時点で、次の4点を書面にしておくと、介護の申出が突然あっても対応できます。
| 準備すること | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 個別周知の書面 | 介護休業・介護休暇などの内容、申出先、介護休業給付金 | 21条2項(申出時の義務) |
| 40歳到達の管理 | 従業員の誕生日から情報提供の期限を把握する | 21条3項 |
| 雇用環境整備の措置 | 相談窓口の指定や方針の周知など1つ以上 | 22条4項 |
| 休業中の待遇 | 賃金の有無、社会保険料の本人負担分の受け取り方 | 21条の2(努力義務)・施行規則70条 |
従業員が1人の会社では、その1人が3か月抜けると業務が止まりかねません。休業中は賃金を払わなくても、会社負担の保険料(月給25万円で3か月約12万円)と、代わりの人手を確保する費用はかかります。法人化そのものの損益を左右する額ではありませんが、人を雇うかどうかを考えるときは、給与・社会保険料と並べて見ておく費用です。
社長自身の役員報酬と社会保険料、法人化した場合の手取りは、判定ツールで売上と経費から試算できます。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。
まとめ
- 介護休業(通算93日・3回)と介護休暇(年5日・10日)は、従業員1人でも申出を断れない。社長本人は労働者でないため対象外
- 2025年4月から、個別周知・意向確認、40歳時点の情報提供、雇用環境整備が規模を問わず義務。40歳の情報提供は申出がなくても期限が来る
- 介護休暇の入社6か月未満の除外は廃止。介護休業の入社1年未満などの協定除外は残る
- 介護休業は無給でよいが社会保険料は免除されない。月給25万円・40歳以上で3か月に本人11.7万円・会社11.98万円(概算)
- 介護休業給付金は67%、30日あたり上限366,222円。本人負担の保険料を引くと手元に残る額は額面の約54%
よくある質問
介護休業は2週間以上休まないと取れませんか?
休業期間に2週間以上という条件はありません。「2週間以上の常時介護を必要とする状態」は対象家族の状態の要件で、厚生労働省のQ&Aでは10日間だけの介護休業でも介護休業給付の対象になり得るとされています。
介護休業給付金に税金はかかりますか?
厚生労働省のQ&Aでは、介護休業給付は課税の対象にならないとされています。会社が払う賃金ではないため、会社の人件費にもなりません。
同じ親について93日を使い切った後、要介護度が変わったらもう一度取れますか?
法律上、同じ対象家族については通算93日・3回が上限です。介護休業給付金についても、厚生労働省のQ&Aは要介護状態が変わっても同じ家族について再度は支給されないとしています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。