設立の手続き
子の看護等休暇は従業員1人でも義務?2025年改正と無給・有給の負担
結論
子の看護等休暇は、従業員が1人でも、その従業員が小学校3年生修了前の子を育てていれば会社は申出を断れません。日数は年5日(対象の子が2人以上なら10日)です。賃金の支払いは義務ではなく、無給でも法律上は問題ありません。月給25万円・年240日勤務の例で有給にすると、5日で会社負担は63,218円です。
- 2025年4月1日施行で、対象の子が「小学校就学前」から「9歳に達する日以後の最初の3月31日まで」に広がり、学級閉鎖・入園式・卒園式・入学式も取得理由になった
- 入社6か月未満の従業員を労使協定で除外する仕組みは廃止された。いま労使協定で除外できるのは週の所定労働日数2日以下の人など
- 社長本人は会社に雇われる労働者ではないため、看護等休暇を申し出る側にならない。義務が生じるのは子を育てる従業員を雇ったとき
一人会社にとってこの制度が関わるのは、社長本人ではなく、子育て中の従業員を1人目として雇ったときです。2025年4月の改正で対象の子が小学校3年生まで広がり、「うちは未就学児のいる人を雇っていないから関係ない」とは言えなくなりました。改正の段階、従業員1人でも断れない範囲、無給と有給の会社負担を順に確認します。
従業員を雇ったときの社会保険・労働保険の負担は一人社長が初めて従業員を雇うと、社長本人の育児休業と社会保険料は一人社長は育児休業で社会保険料を免除できないで扱っています。
改正は施行済み:2025年4月1日から「子の看護等休暇」
改正法(令和6年法律第42号)のうち、子の看護休暇の見直しは2025年(令和7年)4月1日に施行済みです。2026年10月時点で、すでに全企業に適用されているルールです。厚生労働省のリーフレットは、この見直しを「全企業が対象」の「義務」として示しています。
| 項目 | 改正前(2025年3月まで) | 改正後(2025年4月から) |
|---|---|---|
| 名称 | 子の看護休暇 | 子の看護等休暇 |
| 対象の子 | 小学校就学の始期に達するまで | 小学校3年生修了まで(9歳に達する日以後の最初の3月31日まで) |
| 取得理由 | 病気・けがの世話、予防接種・健康診断 | 左の2つに加え、感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式・卒園式 |
| 労使協定で除外できる人 | 週の所定労働日数2日以下、継続雇用6か月未満 | 週の所定労働日数2日以下(6か月未満の除外は廃止) |
| 日数 | 年5日(子が2人以上なら10日) | 変更なし |
日数は変わっていません。変わったのは「誰が・いつまで・何のために」取れるかです。
学級閉鎖と式典の範囲
追加された理由は、施行規則で次のように定められています。
- 学校保健安全法19条の出席停止、20条の臨時休業(学級閉鎖など)と、保育所等でこれに準ずる事由
- 入園、卒園または入学の式典と、これに準ずる式典
通達は、名称が違っても同じ性質の式典は含むとしています。一方で、授業参観や運動会は含まれないと明記しています。会社が独自に対象を広げることは差し支えありません。
対象の子は「9歳に達する日以後の最初の3月31日」まで
「小学校3年生修了まで」は、法律上は学年ではなく生年月日で決まります。9歳に達する日(9回目の誕生日の前日)以後の最初の3月31日です。生年月日から最終日を出すと次のとおりです。
| 子の生年月日 | 9歳に達する日 | 対象の最終日 | 改正前(小学校就学の始期まで)の最終日 |
|---|---|---|---|
| 2020年7月1日 | 2029年6月30日 | 2030年3月31日 | 2027年3月31日 |
| 2018年4月1日 | 2027年3月31日 | 2027年3月31日 | 2024年3月31日 |
| 2018年4月2日 | 2027年4月1日 | 2028年3月31日 | 2025年3月31日 |
| 2019年3月31日 | 2028年3月30日 | 2028年3月31日 | 2025年3月31日 |
前提:scripts/ko-no-kango-kyuka-hitori-kaisha.mjs taisho で算出。2020年7月1日生まれの例は、厚生労働省の通達に載っている例と同じ結果です。
対象期間は子1人あたり3年延びました。 4月1日生まれは早生まれの学年に入るため、2日生まれより1年早く終わります。就学を1年猶予した子は、厚生労働省のQ&Aで「小学校2年生修了まで」になると示されています。学年ではなく年齢で切るためです。
雇い入れのときに「子どもは小学生なので対象外」と考えていると、低学年なら対象に入っている可能性があります。
従業員1人でも断れない。社長本人は対象外
義務は「労働者からの申出」に対して生じる
育児・介護休業法16条の3は、事業主は労働者からの申出を「拒むことができない」と定めています。人数の下限はありません。従業員が1人だけの会社でも、その1人が対象の子を育てていれば申出を断れません。
期間を定めて雇う人にも、育児休業のような別の要件はありません。通達は、6か月契約の人に半分の2.5日しか認めない扱いは違法だとしています。
逆に、社長1人だけの会社では申出をする労働者がいません。社長(代表社員・代表取締役)は会社に雇われているのではなく、委任を受けた役員だからです。役員でも実態として従業員を兼ねる場合の考え方は一人社長の育児休業の記事で整理しています。
2025年改正で「入社直後は除外」が使えなくなった
改正前は、労使協定を結べば、継続雇用6か月未満の人を対象から外せました。この仕組みは廃止され、入社初日から対象になりました。介護休暇も同じです。
いま労使協定で外せるのは、次の人です。
- 週の所定労働日数が2日以下の人
- 時間単位での取得が業務の性質上困難な人(時間単位で取る場合に限る。1日単位なら取れる)
労使協定がなければ、この人たちも除外できません。協定を結んでいない小さな会社では、週1日勤務のパートを含め、対象の子を育てる全員が対象です。
断った場合
申出を拒むこと自体には刑事罰の定めがありません。ただし、厚生労働大臣(実務は都道府県労働局)の助言・指導・勧告の対象になり、勧告に従わなければ企業名を公表できる規定があります(56条・56条の2)。報告を求められて報告しない、または虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料です(66条)。休暇を申し出たことや取ったことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いも禁止されています。
無給でもよい。有給にした場合の会社負担
賃金の支払いは義務ではない
通達は、休暇中の賃金支払義務は民法536条により消滅し、育児・介護休業法は賃金の支払いを義務づけていないとしています。無給でも有給でも、会社が決められます。
決めたことは書面にしておく必要があります。子の看護等休暇は労働基準法89条1号の「休暇」に当たるため、就業規則を作るなら記載事項です。10人未満で就業規則がない会社の扱いは就業規則は10人未満なら不要?で扱っています。
月給別の会社負担
有給にした場合の会社の支出と、無給にした場合の本人の減収を、計算エンジンで出しました。
| 月給 | 日給相当額 | 時間単位1時間 | 有給5日の会社負担 | 有給10日の会社負担 | 無給5日の本人の減収 | 健保・厚年の会社負担(月額・有給でも無給でも同じ) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 200,000円 | 10,000円 | 1,250円 | 50,575円 | 101,150円 | 49,750円 | 29,100円 |
| 250,000円 | 12,500円 | 1,562円 | 63,218円 | 126,437円 | 62,188円 | 37,830円 |
| 300,000円 | 15,000円 | 1,875円 | 75,862円 | 151,725円 | 74,625円 | 43,650円 |
前提:年間所定労働日数240日・1日8時間の月給制、賞与・残業なし、東京・40歳未満。日給相当額=月給×12÷240。有給の会社負担は賃金に雇用保険(事業主8.5/1,000、令和8年度・一般の事業)と労災保険(3/1,000、その他の各種事業)を加えた額。無給の本人の減収は、賃金から雇用保険料(本人5/1,000)を除いた額。所得税・住民税の変動は含めない。健保・厚年の会社負担は子ども・子育て拠出金を含む。scripts/ko-no-kango-kyuka-hitori-kaisha.mjs cost で算出(概算)。
無給にしても社会保険料は減らない
表の右端の列が見落とされやすい点です。健康保険と厚生年金の保険料は、その月に払った賃金ではなく標準報酬月額に料率を掛けて決まります。看護等休暇を無給にして給与が数日分減っても、その月の保険料は会社負担も本人負担も変わりません。
そのため無給にすると、会社が浮くのは賃金と雇用保険・労災保険の部分だけです。本人の側は、社会保険料が同じまま給与だけ減るので、手取りの減り方が額面の減り方に近くなります。従業員が1人の会社では、この1人の手取りの変化がそのまま定着に響きます。
時間単位の取得
子の看護等休暇は、1日単位のほか時間単位でも取れます。施行規則では、始業時刻から連続するか、終業時刻まで連続する時間が単位です。1日分の時間数は1日の所定労働時間数で、1時間未満の端数は切り上げます。上の例(1日8時間)では、8時間で1日分です。
通院の付き添いで朝の2時間だけ抜ける、といった取り方が想定されています。従業員1人の会社では、丸1日の不在より時間単位のほうが業務を回しやすい場合があります。
一人会社が先に決めておくこと
子育て中の人を1人目の従業員として雇う予定があるなら、雇う前に次の3点を決めておくと、申出があってから慌てずに済みます。
| 決めること | 選択肢 | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| 賃金 | 無給/有給/一部有給 | 支払義務はない。就業規則や労働条件通知書に書いておく |
| 年度の起算日 | 4月1日(定めがなければこれ)/年休の基準日に合わせる | 起算日を変えると1年未満の期間にも5日(10日)を付ける必要がある |
| 証明書類 | 求める/求めない | 会社は医療機関の領収書などの証明書類を求められる。当日の電話での申出も拒めず、申出書は事後提出でよいとすべきとされる |
賃金を有給にする場合の金額は上の表のとおり、年5日でも数万円単位です。法人化そのものの損益を動かす額ではありませんが、従業員を雇うかどうかの判断では、給与・社会保険料と並べて見ておく費用です。
法人化した場合の社長自身の手取りと社会保険料は、判定ツールで売上と経費から試算できます。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。
まとめ
- 子の看護等休暇への見直しは2025年4月1日に施行済み。対象の子は9歳に達する日以後の最初の3月31日まで
- 従業員が1人でも、対象の子を育てていれば申出は断れない。社長本人は申出する側にならない
- 入社6か月未満を労使協定で除外する仕組みは廃止。協定で外せるのは週2日以下の人など
- 無給でもよい。有給にすると月給25万円で5日63,218円(概算)。無給にしても健保・厚年の保険料は変わらない
よくある質問
授業参観や運動会で子の看護等休暇を取れますか?
厚生労働省のQ&Aと通達では、授業参観や運動会は法律上の取得理由に含まれません。会社が独自に取得理由へ加えることは差し支えないとされています。
パートやアルバイトも子の看護等休暇の対象ですか?
対象です。期間を定めて雇う人にも別の要件はなく、6か月契約でも年5日(子が2人以上なら10日)を取れます。労使協定を結べば、週の所定労働日数が2日以下の人は対象から外せます。
子の看護等休暇を断ったら罰金がありますか?
申出を拒むこと自体に刑事罰の規定はありません。ただし厚生労働大臣(都道府県労働局)の助言・指導・勧告の対象になり、勧告に従わないと企業名が公表されることがあります。報告を求められて報告しない、または虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。