法人化の判断

開業時に法人を選ぶ人は43.0%。12年続いた4割弱から上がった(公庫調査)

結論

日本政策金融公庫総合研究所の新規開業実態調査では、開業時の経営形態が法人企業だった割合は2013〜2024年度の12年間、36.5%(2019年度)〜39.8%(2015年度)の範囲にとどまっていましたが、2025年度は43.0%と調査期間中で最も高くなりました。ただし対象は公庫から融資を受けた開業1年以内の企業(不動産賃貸業を除く)で、開業者全体の割合ではありません。

  • 2025年度調査は2024年4〜9月の融資先が対象で、インボイス制度の開始(2023年10月)をまたいで開業した企業が中心
  • 6割近くは今も個人企業として開業している。開業初年度は所得が小さく、法人の固定費が重くなりやすい
  • 開業時の平均年齢は43.9歳で調査開始以来最も高い(2025年度)

事業を始めるとき、個人事業主として開業するか、最初から会社を作るかは最初の分かれ道です。周りがどちらを選んでいるかは、日本政策金融公庫総合研究所が毎年行っている「新規開業実態調査」で長く追うことができます。各年度の報告書から、開業時の経営形態だけを抜き出して並べました。

13年分の推移:4割弱から43.0%へ

各年度の報告書の実施要領に載っている「経営形態(開業時)」の割合です。

調査年度個人企業法人企業回収数
2013年度61.1%38.9%—
2014年度61.0%39.0%1,885社
2015年度60.2%39.8%1,869社
2016年度61.0%39.0%1,967社
2017年度62.7%37.3%1,425社
2018年度60.4%39.6%1,746社
2019年度63.5%36.5%2,137社
2020年度61.6%38.4%1,597社
2021年度61.3%38.7%1,467社
2022年度60.5%39.5%1,122社
2023年度60.4%39.6%1,789社
2024年度60.3%39.7%1,990社
2025年度57.0%43.0%2,165社

※ 日本政策金融公庫総合研究所「新規開業実態調査」各年度のアンケート結果の概要(実施要領)。2013年度の回収数はPDFのテキストから読み取れなかった。元データは data/official/jfc-kaigyo-jittai/、抽出は scripts/jfc-kaigyo-keiei-keitai.py(個人+法人=100%を検算)

2013〜2024年度の12年間、法人で開業した企業の割合は**36.5〜39.8%**の狭い幅で動いていました。2025年度の43.0%は、この13年間で最も高い値で、前年度から3.3ポイント上がっています。

2025年度の上昇は何を映しているか

2025年度調査の対象は、公庫が2024年4〜9月に融資した、融資時点で開業後1年以内の企業です。つまり、おおむね2023年春から2024年秋にかけて開業した企業で、2023年10月に始まったインボイス制度をまたいで開業した層が中心です。

インボイス登録をすると、個人のままでも法人でも消費税の課税事業者になります。法人化しても設立1〜2期の免税が使えないので、「消費税の免税のために個人で始める」理由は小さくなりました(インボイス登録済みなら法人化しても2年間免税にならない)。ただし、この調査は経営形態を選んだ理由を年度ごとに比べてはいないので、インボイス制度が法人の割合を押し上げたとまでは言えません。1年分の上昇なので、続くかどうかも今後の調査を見る必要があります。

公庫の融資先という偏りがある

この割合を「開業する人全体」の数字として読むのは注意が必要です。対象は公庫の国民生活事業から融資を受けた企業で、不動産賃貸業を除いています。融資を受けずに小さく始めるフリーランスは入っていません。回収率も25%前後です。

それでも、同じ方法で毎年続けている調査なので、年ごとの変化を見るには使えます。12年間ほとんど動かなかった割合が1年で3ポイント動いた、という読み方が適切です。

融資先に限らず、いま働いている起業者全体で見た割合は、総務省の就業構造基本調査で出せます。令和4年は起業者465.8万人のうち会社で起業した人が28.7%でした(起業した人の28.7%は会社を選んだ)。

開業時に法人を選ぶ前に見る数字

今も6割近くは個人企業として開業しています。開業初年度は売上が立ち上がる途中で所得が小さいことが多く、法人の固定費が相対的に重くなるためです。法人には赤字でも法人住民税の均等割がかかり、東京23区で資本金1,000万円以下なら年7万円です(法人住民税の均等割は赤字でも年7万円)。決算申告を税理士に頼めば、その費用も毎年かかります。

当サイトの計算では、東京23区・独身・40歳未満で事業所得が1,200万円台に届くあたりが、法人のほうが手取りの多くなる境目です(法人化の目安は所得いくらからか)。開業時から法人を選ぶなら、1〜2年目の所得の見込みでこの比較をしておくと判断がぶれません。取引先から法人であることを求められる、融資や許認可で法人が有利、といった税金以外の理由がある場合は、その分を上乗せして考えます。会社を作る手順と費用は会社設立を自分でする手順にまとめています。

見込みの売上と経費を判定ツールに入れると、個人のままと法人化した場合の手取りの差が出ます。

まとめ

  • 公庫の新規開業実態調査で、開業時に法人だった企業は2013〜2024年度に36.5〜39.8%で横ばい
  • 2025年度は43.0%と13年間で最も高く、インボイス制度の開始をまたいで開業した層が中心の年度
  • 対象は公庫の融資先(開業1年以内・不動産賃貸業を除く)で、開業者全体の割合ではない
  • 今も6割近くは個人で開業している。初年度の所得が小さいうちは法人の固定費が重い
  • 開業時に選ぶなら、1〜2年目の所得の見込みで手取りを比べる

よくある質問

新しく事業を始める人の何割が法人で開業していますか。

日本政策金融公庫の新規開業実態調査(2025年度)では、回答した開業1年以内の企業2,165社のうち43.0%が開業時に法人でした。ただし公庫の融資先に限った調査なので、融資を受けずに開業した人を含む全体の割合とは違う可能性があります。

法人で開業する人は増えていますか。

2013〜2024年度は4割弱でほぼ横ばいで、2025年度に43.0%へ上がりました。1年分の上昇なので、続くかどうかは今後の調査を見る必要があります。

最初から法人で開業したほうが得ですか。

所得によります。法人には赤字でも法人住民税の均等割(東京23区で年7万円)がかかり、税理士報酬も個人より高くなりがちです。開業初年度の所得が小さいうちは個人のほうが手取りが多くなることが多く、事業所得の見込みで比べる必要があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。