法人化の判断

起業した人の28.7%は会社を選んだ。個人で起業した人との所得の差

結論

令和4年就業構造基本調査では、今の事業を自ら起こした起業者は、個人で起業した自営業主332.1万人、会社で起業した役員133.7万人で、会社を選んだ人は28.7%でした。主な仕事からの年間収入・収益の中央値は、個人が200万〜249万円、会社の役員が400万〜499万円の階級に入り、1,000万円以上は個人5.0%・会社16.1%です。ただし役員の所得は役員報酬だけで、会社に残した利益は含みません。

  • 会社で起業した割合は39歳以下で19.4%、50歳以上では30%台。年齢が高いほど会社を選んでいる
  • 個人で起業した人の64.7%は収益300万円未満。会社で起業した役員では33.8%
  • 役員の所得400万〜499万円の階級は、計算エンジンでは事業所得480万〜570万円の一人社長の最適報酬にあたる。法人化の損益分岐点(単身1,266万円)より低い

自分で事業を始める人は、個人事業主として始めるか、最初から会社を作るかを選びます。新しく開業した人についての調査は日本政策金融公庫が毎年行っていますが(開業時に法人を選ぶ割合の推移)、融資先に限った調査です。総務省の就業構造基本調査は、いま働いている人のうち自分で事業を起こした人全員を数え、個人で起業した人と会社で起業した人を分けて所得を出しています。

起業者465.8万人、会社を選んだのは28.7%

就業構造基本調査の用語の解説は、自営業主と会社などの役員のうち、今の事業を自ら起こした者を「起業者」としています。統計表04000では、起業者が自営業主(個人で起業)と雇用者(会社などの役員=会社で起業)に分かれています。

令和4年の起業者は、個人で起業した自営業主が332.1万人、会社で起業した役員が133.7万人でした。合わせて465.8万人のうち28.7%が会社を選んでいます。

自営業主510.8万人のうち、自分で事業を起こした人は332.1万人(65.0%)です。残りは親から事業を継いだ人などです。

会社で起業した役員の所得は、中央値で倍の階級

令和4年の表04000から、所得の分布を計算しました。

区分人数中央値が入る階級300万円未満600万円以上1,000万円以上1,500万円以上
個人で起業(自営業主)332.1万人200~249万円64.7%12.6%5.0%2.3%
会社で起業(会社などの役員)133.7万人400~499万円33.8%36.1%16.1%7.5%
自営業主全体510.8万人150~199万円68.6%11.0%4.4%1.9%

※ 総務省「令和4年就業構造基本調査」表04000(e-Stat)から当サイトが計算。割合の分母は所得不詳を除いた人数

個人で起業した人の中央値は200万〜249万円の階級で、64.7%が300万円未満です。会社で起業した役員は中央値が400万〜499万円の階級で、1,000万円以上が16.1%と、個人の3倍以上の割合でした。

ただし、2つの「所得」は中身が違います。用語の解説では、自営業主の所得は売上から必要経費を引いた収益、役員を含む雇用者の所得は税込みの給与総額です。会社で起業した人の所得は役員報酬だけで、会社に残した利益は入っていません。一方、個人の収益は、そこから国民年金や国民健康保険料、所得税を払う前の額です。同じ物差しではない点を押さえて読む必要があります。

年齢が上がるほど、会社を選ぶ割合が高い

起業者を年齢別に分けると、会社で起業した割合ははっきり違いました。

年齢個人で起業会社で起業会社で起業した割合
39歳以下44.6万人10.8万人19.4%
40〜49歳65.2万人23.9万人26.9%
50〜59歳71.9万人31.4万人30.4%
60〜69歳68.6万人30.2万人30.5%
70歳以上81.8万人37.5万人31.4%
総数332.1万人133.7万人28.7%

※ 総務省「令和4年就業構造基本調査」表04000から当サイトが計算。年齢は調査時点

39歳以下では会社を選んだ人が19.4%にとどまり、50歳以上では30%台になります。この統計は調査時点の年齢なので、「若いころ個人で始め、事業が大きくなってから法人成りした人」も、いまは会社などの役員として数えられています。年齢が高い層ほど会社の割合が高いのは、法人成りが積み重なった結果とも読めます。

役員報酬400万〜499万円は、法人化の分岐点より手前

会社で起業した役員の中央値の階級、役員報酬400万〜499万円は、判定ツールの計算エンジンで一人社長が手取りを最大にした場合の役員報酬に置き換えると、事業所得480万〜570万円にあたります。法人化で手取りが増え始める損益分岐点(東京23区・40歳未満・単身で事業所得1,266万円)よりかなり低い水準です。

つまり、会社で起業した人の多くは、税と社会保険の損得だけでは法人を選んでいない可能性があります。取引先が法人との契約を求める、許認可や入札の要件がある、信用や採用のため、将来の事業承継や出資の受け入れを考えて、といった理由です。法人化の判断を税以外も含めて整理したものは法人化のメリットと法人化のデメリットにあります。

逆に、個人で起業した人の5.0%(約16万人)は収益1,000万円以上で、分岐点の近くか、それを超えています。この層は、個人のままでいることで毎年の手取りに差が出ている可能性があります。所得別の分布を一人で働く業主全体で見た記事は一人で働く個人事業主の収益分布です。

所得ではなく世帯の貯蓄・負債で個人と会社の経営者を比べた結果は、法人経営者と個人経営者の世帯の貯蓄・負債で全国家計構造調査から集計しています。

個人で始めて、後から法人にする選択肢

最初から会社にするか、個人で始めて後から法人成りするかは、事業の立ち上がり方で変わります。個人で始めるなら、初年度は開業届と青色申告の承認申請だけで済み、設立費用も均等割もかかりません。売上が伸びて分岐点に近づいた時点で法人成りすれば、その間の固定費を抑えられます。法人化に向いたタイミングは年度途中に法人化するかで、所得の目安は法人化の目安は所得いくらかで扱っています。

まとめ

  • 令和4年の起業者465.8万人のうち、会社で起業した役員は133.7万人で28.7%
  • 所得の中央値は、個人で起業した自営業主が200万〜249万円、会社で起業した役員が400万〜499万円の階級。1,000万円以上は5.0%と16.1%
  • 役員の所得は役員報酬だけで、会社に残した利益は含まない。自営業主の収益とは中身が違う
  • 会社で起業した割合は39歳以下19.4%、50歳以上は30%台。後からの法人成りが積み重なった結果とも読める
  • 役員報酬の中央値の階級は、計算エンジンでは事業所得480万〜570万円の一人社長にあたり、損益分岐点より手前

個人で始めるか会社にするかの税と社会保険の損得は、自分の売上と経費で判定ツールにかけて確かめてください。

よくある質問

「起業者」は、いつ起業した人ですか。

時期は問いません。用語の解説では、自営業主と会社などの役員のうち、今の事業を自ら起こした者を起業者としています。何十年も前に起業して今も続けている人も含みます。

会社で起業した人の所得が高いのは、法人のほうが儲かるからですか。

そうとは言えません。もともと所得の高い人ほど会社を選ぶ、という逆向きの関係もありえます。この統計は起業したあとの所得を1時点で見たもので、法人にしたことの効果は分けられません。

役員の所得に、会社に残した利益は含まれますか。

含まれません。雇用者(役員を含む)の所得は、賃金・給料・ボーナスなど税込みの給与総額です。会社に残した利益や配当はここに入らないので、会社で起業した人の実際の取り分は、統計の所得より大きいことがあります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。