税金の基礎

確定申告が期限後だと青色65万円控除は10万円に。増える負担を所得別に計算

結論

青色申告特別控除の65万円(紙なら55万円)は、確定申告期限までに申告書を出すことが要件で、期限後申告では10万円になります。事業所得500万円なら、控除の減少だけで所得税・住民税・国民健康保険料が年21.3万円増え、60日遅れなら無申告加算税1.4万円と延滞税0.1万円が加わります(概算)。

  • 負担の大半は加算税ではなく控除の減少。事業所得800万円で控除の減少は20.8万円、無申告加算税は4.2万円
  • 期限から1か月以内に自主的に申告し全額を納付するなど一定の場合は無申告加算税がかからないが、65万円控除は戻らない
  • 個人は期限後申告だけでは青色申告の承認は取り消されない。法人は期限内に申告しなかったことが取消事由になる

確定申告の期限(3月15日)を過ぎたとき、多くの人が気にするのは無申告加算税です。しかし個人事業主にとって、金額が大きいのは加算税ではなく、青色申告特別控除が65万円から10万円に下がることのほうです。控除の減少は、所得税だけでなく住民税と国民健康保険料にも跳ね返ります。

65万円控除は「期限までに出すこと」が要件

国税庁 No.2072 によると、55万円の青色申告特別控除は、正規の簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して、その年分の確定申告期限(翌年3月15日)までに申告書を提出することが要件です。65万円は、そのうえでe-Taxで期限までに送信するか、優良な電子帳簿で保存していることが加わります。

期限を過ぎると、この要件を満たさなくなります。残るのは、55万円・65万円の要件に当てはまらない青色申告者が受けられる10万円の控除です。

申告の状況青色申告特別控除
期限内にe-Taxで提出(または優良な電子帳簿)65万円
期限内に紙で提出55万円
期限後に提出10万円

1日遅れでも1か月遅れでも同じです。還付申告であっても、55万円・65万円を受けるには期限内の提出が必要だと No.2072 は明記しています。

令和9年分からは控除の額と要件が変わります(65万円が75万円に、紙の申告は10万円に)。期限内の提出が要件である点は変わりません。改正の内容は青色申告特別控除は令和9年分から75万円で扱っています。

期限後で増える負担は、事業所得500万円で年21万円

控除が65万円から10万円に下がると、所得が55万円増えます。その所得に所得税・住民税・国民健康保険料がかかります。個人事業税は、もともと青色申告特別控除を引く前の所得で計算するので変わりません。

事業所得(青色控除前)控除が10万円に減ることで増える税・保険料うち所得税無申告加算税(5%)延滞税(60日遅れ)合計
300万円13.2万円2.5万円0.0万円0.0万円13.2万円
400万円14.6万円3.8万円0.6万円0.0万円15.2万円
500万円21.3万円10.6万円1.4万円0.1万円22.8万円
600万円20.8万円10.0万円2.3万円0.2万円23.2万円
800万円20.8万円10.0万円4.2万円0.4万円25.3万円
1,000万円18.5万円12.9万円6.3万円0.6万円25.3万円
1,200万円24.0万円18.5万円9.2万円0.8万円34.0万円

※ 令和8年分を期限から60日遅れて自主的に期限後申告し、同日に全額納付した場合。無申告加算税・延滞税は所得税(復興特別所得税を含む)の全額に対して計算し、計算の基礎は1万円未満切捨て、加算税5,000円未満・延滞税1,000円未満は課されない(国税通則法118条・119条)。住民税・国民健康保険料は控除の減少で増える分のみ。東京23区・40歳未満・単身・経費200万円・源泉徴収と予定納税なし。延滞税は令和8年の率(年2.8%)で計算。当サイトの計算エンジンで算出(scripts/kigengo-shinkoku-aoiro.mjs)

どの所得でも、合計の半分以上は控除の減少によるものです。事業所得300万円では、所得税の増加は2.5万円だけですが、住民税と国民健康保険料を合わせると13.2万円になります。国民健康保険料は所得割の率が高く、所得が低い層ほど所得税より大きく効くためです。

1,000万円の行で控除の減少による増加が18.5万円と小さくなっているのは、国民健康保険料が賦課限度額に近づき、増えた所得に保険料がかかりにくくなるためです。

インボイス登録をしていて消費税の申告(期限は3月31日)も遅れた場合は、消費税にも別に無申告加算税と延滞税がかかります。売上が大きい人ほど、加算税は所得税より消費税の側で大きくなります。法人での内訳は法人の期限後申告、無申告加算税はいくら?で計算しています。

無申告加算税は5%から。1か月以内なら0円の場合もある

国税庁 No.2024 によると、税務署から調査の事前通知を受ける前に**自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は納める税金の5%**です。事前通知の後だと10%から、調査を受けた後だと15%からと、段階的に重くなります(令和5年分以降は、納める税金が300万円を超える部分で25%・30%)。

さらに、次の2つをどちらも満たせば、無申告加算税はかかりません。

  1. 法定申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告をしている
  2. 期限内に申告する意思があったと認められる。具体的には、納める税金の全額を期限後申告書の提出日までに納付していること、かつ過去5年以内に無申告加算税・重加算税を課されておらず、この不適用も受けていないこと

ただし、これで免れるのは加算税だけです。期限後申告であることは変わらないので、控除は10万円のままです。上の表で言えば、加算税の列が0円になっても、左の列の負担は残ります。

延滞税は年2.8%。60日遅れで数千円

期限後申告で納める税金は、申告書を提出した日が納期限です。延滞税は、法定納期限(3月15日)の翌日から納付した日までの日数で計算します。国税庁 No.9205 によると、令和8年中の割合は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、それを過ぎると年9.1%です。

期限後申告の日に全額を納めれば、2.8%の割合で済みます。60日遅れで所得税が50万円なら、延滞税は2,300円です。延滞税が重くなるのは、期限後申告を出したあとも納付しなかった場合です。

個人は青色申告の承認までは取り消されない。法人は違う

期限後申告をしても、個人事業主の青色申告の承認が取り消されるわけではありません。所得税法150条が定める取消事由は、帳簿の備付け・記録・保存の不備、税務署長の指示に従わないこと、帳簿の隠蔽・仮装の3つで、期限後申告は含まれていません。国税庁の事務運営指針も、この3つについての基準を定めています。翌年も期限内に出せば、65万円控除に戻れます。

法人は扱いが違います。法人税法127条1項4号は、確定申告書を提出期限までに提出しなかったことを青色申告の承認の取消事由にしています。取り消されると、欠損金の繰越などの青色申告の特典を失います。法人の申告期限と延長の手続きは法人の確定申告は決算から2か月で扱っています。

判定ツールは65万円控除を前提にしている

判定ツールの「個人のまま」は、青色申告(e-Taxで65万円)を初期値にしています。毎年のように期限に間に合わない人は、個人のままの手取りを実際より高く見積もっていることになります。

青色申告特別控除の差は、法人化の分岐点も動かします。65万円と10万円でどれだけ変わるかは青色申告65万円控除で法人化の分岐点は473万円変わるで計算しています。法人化すると、個人の確定申告は役員報酬の年末調整に置き換わり、会社の申告は決算から2か月後が期限になります。申告の期限そのものがなくなるわけではありません。

まとめ

  • 青色申告特別控除の65万円・55万円は、確定申告期限までの提出が要件。期限後は10万円になる
  • 控除の減少で増える所得税・住民税・国民健康保険料は、事業所得500万円で年21.3万円。負担の大半は加算税ではなくこちら
  • 自主的な期限後申告の無申告加算税は5%。1か月以内・全額納付などの条件を満たせば0円だが、控除は10万円のまま
  • 延滞税は期限後申告の日に納付すれば年2.8%で、60日遅れでも数千円
  • 個人は期限後申告だけでは青色申告の承認を取り消されない。法人は期限内に申告しなかったことが取消事由になる

自分の売上と経費で、青色申告の控除額を変えて手取りがどう動くかをシミュレーターで確かめてください。

よくある質問

還付申告なら期限後でも65万円控除は使えますか

使えません。国税庁 No.2072 は、還付申告書を提出する場合でも、55万円・65万円の控除を受けるには確定申告期限(翌年3月15日)までに申告書を提出する必要があるとしています。

期限後申告だと住民税や国民健康保険にも加算金がかかりますか

無申告加算税と延滞税は国税(所得税)にかかるものです。ただし控除が10万円に減った所得は住民税と国民健康保険料の計算にも使われるため、そちらの負担も増えます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。