税金の基礎
会社員が自分の会社から役員報酬。乙欄の源泉は月20万円で1万9,700円
結論
給与所得者の扶養控除等申告書は1か所にしか出せないため、勤務先に出している会社員が自分の会社から役員報酬を受けると、その報酬は乙欄で源泉徴収されます。令和8年分の月額表では、社会保険料等控除後の報酬が月20万円なら甲欄(扶養0人)4,340円に対し乙欄は1万9,700円です。2か所から給与を受ける人は、年末調整されなかった給与などが20万円を超えると確定申告が必要です。
- 乙欄には0円の帯がない。月10万5,000円未満でも社会保険料等控除後の金額の3.063%が引かれる
- 乙欄の源泉徴収は年末調整で精算されない。確定申告で、勤務先の給与と合わせて年税額を計算し直す
- 住民税は、他の事業所で特別徴収されている乙欄該当者として、自分の会社の分を普通徴収にできる(普B)
会社員を続けながら、副業の事業を法人にして自分の会社から役員報酬を受ける。いわゆるマイクロ法人の形です。このとき社長個人は2か所から給与を受ける人になり、源泉徴収の扱いが変わります。
自分の会社で払う役員報酬は、ほとんどの場合乙欄で源泉徴収することになります。
扶養控除等申告書は1か所にしか出せない
源泉徴収税額表には甲欄と乙欄があります。「給与所得者の扶養控除等申告書」を出している人の給与は甲欄、出していない人の給与は乙欄で税額を求めます(国税庁 No.2511)。
扶養控除等申告書は、2か所以上から給与を受ける場合でも1か所にしか出せません。勤務先に出している会社員が自分の会社から役員報酬を受けると、自分の会社での役員報酬は乙欄になります。
社長と会社は別の人格なので、自分の会社に対しても、社長は「給与の支払を受ける人」です。役員報酬の源泉徴収が甲欄でいくらから生じるかは役員報酬の源泉徴収はいくらからで整理しました。
甲欄と乙欄の税額の差
令和8年分の月額表から、社会保険料等を引いた後の役員報酬(月額)ごとの源泉徴収税額を抜き出しました。
| 社会保険料等控除後の給与(月) | 甲欄(扶養親族等0人) | 乙欄 | 乙欄の年額(×12) |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 0円 | 1,531円 | 1万8,372円 |
| 10万円 | 0円 | 3,063円 | 3万6,756円 |
| 15万円 | 2,420円 | 8,300円 | 9万9,600円 |
| 20万円 | 4,340円 | 1万9,700円 | 23万6,400円 |
| 30万円 | 7,930円 | 5万3,600円 | 64万3,200円 |
| 40万円 | 1万5,650円 | 8万8,700円 | 106万4,400円 |
※ 国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表(月額表)」の公式ファイルから scripts/otsuran-2kasho.mjs で抽出。10万5,000円未満の乙欄は3.063%(1円未満切捨て)
甲欄は基礎控除や給与所得控除を織り込んだ税額ですが、乙欄は主たる給与で控除を使い切っている前提の税額です。勤務先の給与と合算すれば税率が上がることを見込んで、高めに設定されています。
年末調整では精算されない。確定申告が必要
乙欄で源泉徴収した役員報酬は、自分の会社の年末調整の対象になりません。年末調整は扶養控除等申告書を出した1か所で行います。
国税庁 No.1900 は、給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える人は確定申告が必要としています。自分の会社から年20万円を超える役員報酬を受ければ、ほぼ確実に確定申告が必要です。
確定申告では、勤務先の給与と自分の会社の役員報酬を合わせて給与所得を計算し、年税額を出します。2か所の源泉徴収の合計が年税額より多ければ還付、少なければ追加納付です。乙欄で多めに引かれた分は、確定申告で精算されて初めて戻ります。
住民税は普Bで普通徴収にできる
住民税の特別徴収では、他の事業所で特別徴収されている乙欄該当者は「普B」として普通徴収にできます。自分の会社の給与支払報告書の摘要欄に普Bと書けば、会社が住民税を天引きする必要はありません。
ただし、住民税は勤務先の給与と自分の会社の役員報酬を合算した所得で計算されます。普通徴収にしても、勤務先の住民税の決定通知は合算後の税額を前提にした額になる点は変わりません。特別徴収と普通徴収の選び方は一人社長の住民税は特別徴収か普通徴収かで整理しました。
社会保険は2か所の報酬を合算する
勤務先で社会保険に入っている人が自分の会社でも役員報酬を受けると、2か所の報酬を合算して標準報酬月額を決め、それぞれの会社の報酬額で保険料を按分します。届出(二以上事業所勤務届)は本人が出します。
自分の会社での役員報酬が少額でも、合算によって社会保険料の総額が増えることがあります。仕組みと金額は副業の法人から役員報酬を受けるとで計算しています。
会社員を続けるかどうかで判断の前提が大きく変わるため、当サイトの判定ツールは副業の形を直接は扱っていません。事業の売上と経費を入れた結果は、本業の給与がない場合の比較として見てください。
まとめ
- 扶養控除等申告書は1か所にしか出せないため、勤務先に出している会社員が自分の会社から受ける役員報酬は乙欄になる
- 令和8年分の月額表で、社会保険料等控除後の報酬が月20万円なら甲欄4,340円、乙欄1万9,700円
- 乙欄には0円の帯がなく、10万5,000円未満でも3.063%が引かれる
- 2か所から給与を受け、年末調整されなかった給与などが20万円を超えると確定申告が必要。乙欄の源泉徴収はそこで精算される
- 住民税は普Bで普通徴収にでき、社会保険は2か所の報酬を合算して保険料を按分する
よくある質問
自分の会社のほうに扶養控除等申告書を出してもよいですか?
出す先は本人が選べます。ただし出せるのは1か所だけで、出さなかったほうが乙欄になります。給与の多いほうに出すのが一般的で、どちらに出しても確定申告で年税額は同じになります。
乙欄で引かれすぎた分は戻ってきますか?
確定申告で、2か所の給与を合わせた年税額を計算し直します。源泉徴収された合計が年税額より多ければ還付され、少なければ追加で納めます。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。