社会保険

国保の「資産割」は固定資産税に最大20%上乗せ。長野県13市町村の料率と法人化

結論

国保の資産割は、世帯の固定資産税額に料率を掛けて加える部分です。長野県の資料では、令和7年度の医療分に資産割があるのは77市町村のうち13で、料率は筑北村の20%から長和町の1%までです。固定資産税を年10万円払っている個人事業主なら、筑北村で年2万円、大町市で7,000円が国保に上乗せされます。法人化して協会けんぽに移れば、この部分はかかりません。ただし県は資産割を令和9年度までに廃止する方針です。

  • 令和6年度から令和7年度で、資産割のある市町村は20から13に減り、7市町村がやめ、残った13のうち11が率を下げた
  • 下諏訪町(20.8%)や佐久穂町(9%)のように資産割をやめた市町村もあり、多くは均等割・平等割などで調整している
  • 資産割は所得と関係なく固定資産税額で決まるので、所得の低い年でも、土地や家屋を持つ世帯の国保を押し上げる

国民健康保険料(税)は、所得に応じた所得割と、人数・世帯ごとの均等割・平等割で決まる、と説明されることが多い制度です。ところが一部の市町村には、もう1つの要素が残っています。持っている土地や家屋の固定資産税額に料率を掛ける「資産割」です。

資産割は所得と関係なくかかり、協会けんぽにはない仕組みです。法人化で消える国保の負担の中に、この部分も入ります。

国保の4つの要素と、資産割

長野県の資料は、国保料(税)の算定要素を次の4つと説明しています。

要素何をもとにするか
所得割被保険者の所得
資産割固定資産税額
均等割被保険者の数
平等割世帯

4つを全部使うのが4方式、資産割を除いた3つが3方式、所得割と均等割だけが2方式です。東京23区や政令市の多くは資産割を使っておらず、当サイトの国保の計算(国民健康保険料が高い市・安い市を比較)も、所得割・均等割・平等割で計算しています。

長野県で資産割が残る13市町村

長野県の「令和7年度国民健康保険料(税)率等の状況」の別紙には、77市町村の医療分の料率が令和6年度と令和7年度で並んでいます。資産割の欄がある市町村を抜き出し、固定資産税額ごとの資産割の額を計算しました。

市町村令和6年度の資産割令和7年度の資産割固定資産税5万円固定資産税10万円固定資産税20万円
筑北村30.00%20.00%10,000円20,000円40,000円
麻績村21.45%14.30%7,150円14,300円28,600円
小海町19.00%13.00%6,500円13,000円26,000円
中川村27.00%13.00%6,500円13,000円26,000円
北相木村18.00%12.00%6,000円12,000円24,000円
辰野町10.00%10.00%5,000円10,000円20,000円
大町市7.00%7.00%3,500円7,000円14,000円
野沢温泉村19.40%7.00%3,500円7,000円14,000円
立科町10.00%6.00%3,000円6,000円12,000円
東御市11.20%5.60%2,800円5,600円11,200円
川上村10.00%5.00%2,500円5,000円10,000円
中野市6.70%3.40%1,700円3,400円6,800円
長和町9.00%1.00%500円1,000円2,000円

※ 長野県「令和7年度国民健康保険料(税)率等の状況について」別紙(医療分のみ)。資産割の額は固定資産税額×資産割の率で、賦課限度額や軽減は考慮していない ※ 元資料は data/official/nagano-kokuho-shisanwari-r07/、抽出は scripts/nagano-kokuho-shisanwari.py、集計は scripts/nagano-kokuho-shisanwari.mjs

いちばん高い筑北村では、固定資産税を年10万円払っている世帯の国保(医療分)に、年2万円が資産割として加わります。自宅に加えて事業用の倉庫や作業場を個人名義で持っている個人事業主ほど、固定資産税額が大きく、資産割も大きくなります。

1年で7市町村がやめ、11市町村が下げた

令和6年度に資産割があったのは20市町村でした。令和7年度には、飯山市(3%)、佐久穂町(9%)、南相木村(5%)、坂城町(1%)、下諏訪町(20.8%)、原村(7%)、木島平村(7.75%)の7市町村がやめ、残った13のうち11が率を下げています。

長野県は国民健康保険運営方針で、資産割を令和9年度までに廃止して3方式に統一するとしています。資料の改定理由の欄には「資産割の段階的引下げ又は廃止等」「資産割の引下げに伴う調整等」が並んでいて、資産割を下げた分は所得割や均等割・平等割で調整されています。資産割がなくなっても、その分の国保の負担がそのまま消えるわけではありません。

法人化すると資産割はかからない

法人化して社長が協会けんぽに入ると、社長は国保の被保険者ではなくなります。協会けんぽの保険料は標準報酬月額に料率を掛けるだけで、固定資産税額は関係しません。持っている土地や家屋がどれだけあっても、健康保険料は変わりません。

立場国保の資産割健康保険料への固定資産の影響
個人事業主(資産割のある市町村)固定資産税額×資産割の率—
一人社長(協会けんぽ)かからないなし(標準報酬月額だけで決まる)

ただし金額は大きくありません。固定資産税10万円で最大年2万円、多くの市町村では1万円未満です。法人化の損益分岐を動かすのは、国保の所得割と上限、厚生年金と国民年金の差のほうです。国保の地域差が損益分岐をどれだけ動かすかは国保の自治体差は法人化の分岐点を4万円しか動かさないで計算しました。

資産割は、所得が少ない年でも土地や家屋を持っていればかかります。売上が落ちた年に国保の負担が思ったほど下がらない理由の1つになるので、資産割のある市町村に住む個人事業主は、所得割と分けて把握しておくと国保の見通しが立てやすくなります。国保の減免と軽減の違いは国民健康保険料の減免と軽減は別物で扱っています。

当サイトの判定ツールは資産割を計算に入れていません。資産割のある市町村に住んでいる場合は、ツールの個人側の国保に、この表の額を足して見てください。そのうえで、自分の売上と経費で法人化の損得を確かめてください。

まとめ

  • 国保の資産割は、固定資産税額に料率を掛けて加える部分。協会けんぽには同じ仕組みがない
  • 長野県では令和7年度に13市町村が医療分に資産割を残し、料率は筑北村20%〜長和町1%。固定資産税10万円なら年2万〜1,000円
  • 令和6年度から7年度で資産割のある市町村は20から13に減った。県は令和9年度までに廃止する方針で、下げた分は他の要素で調整されている
  • 法人化して協会けんぽに入ると資産割はかからない。ただし額は小さく、判定を動かすのは所得割と年金の差
  • 資産割は所得に関係なくかかる。資産割のある市町村に住む人は、ツールの国保に表の額を足して試算してください

よくある質問

資産割の対象になる固定資産税は、どこの市町村のものですか。

どの固定資産税額を算定に入れるか(他の市町村にある土地や家屋を含むか、償却資産を含むか)は、市町村の条例で決まります。お住まいの市町村の国保の案内で確認してください。

長野県以外にも資産割はありますか。

4方式(所得割・資産割・均等割・平等割)で賦課している市町村は他県にもあります。多くの都道府県で、県内の保険料水準をそろえる取組みの中で資産割をやめる動きが進んでいます。令和8年度の料率はお住まいの市町村のページで確認してください。

法人化して社長が協会けんぽに入っても、家族が国保に残る場合は資産割がかかりますか。

家族だけが国保に残る場合の資産割の扱いは、その市町村の条例で決まります。誰の固定資産税額を算定に入れるかは市町村ごとの定めを確認する必要があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。