インボイス・消費税

国税の滞納は52%が消費税。率で見ると申告所得税が4.18%で1位

結論

令和7年度の新規発生滞納額9,935億円のうち、消費税が5,172億円(52.1%)で最も多いです。ただし徴収決定済額を分母にした滞納発生割合は申告所得税が4.18%で最も高く、消費税1.95%、相続税1.51%、法人税0.62%、源泉所得税0.17%と続きます。法人化すると率が最も高い申告所得税は消えますが、インボイス登録済みなら消費税は法人にそのまま残ります。

  • 税目別の徴収決定済額が概要に載ったのは令和7年度分から。それ以前の概要は滞納額だけで、税目別の発生割合は計算できない
  • 地方消費税(外書1,458億円)を足すと払えなかった消費税は6,630億円。発生割合は1.95%で国税分だけのときと変わらない
  • 令和6年度に発生した滞納9,925億円のうち86.9%は2年度のうちに整理済み。残っているのは13.1%

法人化の損得を計算するとき、税額は「払える前提」で並びます。納期限までに納められなかった国税を集めた統計が毎年公表されていて、令和7年度は新規発生滞納額の52.1%が消費税でした。ただし税目ごとの金額をそのまま比べると、分母の大きさを無視することになります。徴収決定済額で割って率をそろえると、順位は入れ替わります。

滞納とは、督促状が出た状態のこと

国税庁は滞納を「国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたもの」と定義しています。納期限を少し過ぎただけのものではなく、督促状まで進んだ分の集計です。

令和7年度の全体像は次のとおりです。

  • 徴収決定済額(申告などにより課税されたものの額):89兆7,949億円
  • 新規発生滞納額:9,935億円
  • 滞納発生割合:1.1%
  • 令和7年度末の滞納整理中のものの額(滞納残高):9,847億円

新規発生滞納額はピークだった平成4年度(1兆8,903億円)の約5割、滞納残高はピークだった平成10年度(2兆8,149億円)の約3割です。全体として見れば、国税の滞納は長期的に縮んでいます。

なお、この統計には国税だけが入っています。個人事業税・個人住民税・法人住民税の均等割といった地方税は含まれません。消費税の欄も国税分で、地方消費税は外書として別に示されています。

税目別に開くと、半分が消費税

概要の「(参考)主要税目別の租税滞納状況」を、徴収決定済額と新規発生滞納額の2列で並べ直したものが次の表です。構成比と滞納発生割合は、この2列から計算しました。

税目徴収決定済額新規発生滞納額滞納額の構成比滞納発生割合
消費税265,657億円5,172億円52.1%1.95%
申告所得税51,322億円2,146億円21.6%4.18%
法人税233,180億円1,456億円14.7%0.62%
相続税40,631億円613億円6.2%1.51%
源泉所得税232,541億円397億円4.0%0.17%
その他税目74,618億円152億円1.5%0.20%
全税目合計897,949億円9,935億円100.0%1.11%

※ 国税庁「令和7年度租税滞納状況の概要」Ⅰ-6より。地方消費税を除く国税の金額。四捨五入のため内訳の合計は合計欄と一致しないことがある

金額で見れば、滞納の半分は消費税です。消費税5,172億円と申告所得税2,146億円を合わせると7,318億円で、全体の73.7%になります。

ここに地方消費税を足すと、事業者が払えなかった消費税はもう少し大きくなります。令和7年度の地方消費税は徴収決定済額73,780億円・新規発生滞納額1,458億円(概要の外書)で、国税分と合わせると徴収決定済額339,437億円・新規発生滞納額6,630億円です。申告のときに1つの申告書で納める以上、事業者から見ればこちらが実額に近い数字になります。

分母をそろえると、順位が入れ替わる

滞納発生割合は、徴収決定済額に占める新規発生滞納額の割合です。国税庁が公表しているのは全税目合計の1.1%だけで、税目別の割合は公表されていません。ただし令和7年度分の概要では主要税目別の表に徴収決定済額の列が加わったので、税目ごとに割れるようになりました(令和6年度分までの概要は滞納額だけの4列で、分母がありません)。

計算すると、最も高いのは**申告所得税の4.18%**です。消費税の1.95%の2.1倍で、法人税の0.62%とは6.7倍の開きがあります。

1つ断っておくと、申告所得税は確定申告で納める所得税の全体で、事業所得だけの数字ではありません。不動産所得や譲渡所得で申告した人も同じ欄に入っています。それでも、源泉徴収で先に取られる給与の分がここに入らないことは確かなので、自分で計算して自分で納める税目の率として読めます。

つまり「額が大きい税目」と「つまずきやすい税目」は別です。消費税の滞納額が大きいのは、課税された額そのものが26兆5,657億円と大きいからでもあります。一方で申告所得税は課税された額が5兆1,322億円と小さいのに、滞納額は消費税の4割を超えています。

源泉所得税の0.17%が最も低いのも、制度の形で説明がつきます。源泉所得税は給与や報酬から預かったお金を納めるもので、自分の利益から出すわけではありません。納付の原資が先に手元へ入っている税目は、率が低く出ます。

2年度を並べると、動き方も税目で違います。

税目令和6年度令和7年度差
消費税2.11%1.95%−0.16ポイント
申告所得税4.02%4.18%+0.17ポイント
法人税0.81%0.62%−0.19ポイント
相続税1.33%1.51%+0.18ポイント
源泉所得税0.20%0.17%−0.03ポイント
その他税目0.22%0.20%−0.02ポイント
全税目合計1.22%1.11%−0.12ポイント

※ 同じ概要に載っている令和6年度分と令和7年度分から計算。全税目合計の計算値(1.22%・1.11%)は、公表されている1.2%・1.1%と四捨五入で一致する

全体の割合は下がっているのに、申告所得税と相続税だけは上がっています。個人が自分で申告して自分で納める税目が、全体の流れと逆を向いているということです。

法人化すると、向き合う税目の組み合わせが入れ替わる

ここからが法人化の話です。個人事業主と一人会社では、納める国税の種類が入れ替わります。

納める国税個人事業主法人(一人会社)
事業の利益にかかる国税申告所得税(発生割合4.18%)法人税(0.62%)
役員報酬・給与から預かる国税従業員を雇っていなければなし源泉所得税(0.17%)
消費税1.95%1.95%

※ 括弧内は令和7年度の滞納発生割合。税目ごとの全国の数字で、事業の規模別・個人法人別の内訳ではない。消費税の1.95%には個人事業者と法人の両方が入っている

発生割合が最も高い申告所得税は、法人化すると事業の分がなくなります。代わりに付くのは、率の低い法人税と源泉所得税です。これだけ見ると、法人化は「つまずきにくい税目の組み合わせ」へ移る動きに見えます。

ところが消費税は入れ替わりません。ここが法人化の判断で最も誤解されている点です。法人を設立すると基準期間がないため1〜2期は消費税が免除される、という説明が広く出回っていますが、インボイス発行事業者として登録していれば、その登録を続ける限り免税は受けられません。計算エンジンで売上1,200万円・経費200万円の条件を置くと、設立1〜2期の免税の価値は、インボイス未登録なら年108.0万円、登録済みなら0円です。詳しくはインボイス登録済みなら、法人化しても消費税の2年間免税は受けられないにまとめています。

さらに令和8年9月30日を含む課税期間で2割特例が終わり、後継として新設された3割特例は個人事業者しか使えません。法人化すると、この軽減措置の側でも選択肢が1つ減ります(2割特例は令和8年で終了。後継の3割特例は法人が使えない)。

消費税の金額は、法人化の損得より桁が大きい

その消費税が、実際にいくらになるのかを計算エンジンで出しました。

年間売上(税抜)消費税の概算年額ひと月あたり売上に対する割合
800万円68.0万円5.7万円8.5%
1,000万円88.0万円7.3万円8.8%
1,200万円108.0万円9.0万円9.0%
1,500万円138.0万円11.5万円9.2%
2,000万円188.0万円15.7万円9.4%
3,000万円288.0万円24.0万円9.6%

※ 経費200万円・そのうち課税仕入れ6割・原則課税の概算。簡易課税と2割特例は含めていない。計算の前提は計算方法のとおり

売上1,200万円・経費200万円なら、消費税は年108.0万円、ひと月あたり9.0万円です。同じ条件で法人化の損得を計算すると、実質差額は年−14.7万円(税理士報酬の差と法人住民税の均等割を引いた後)でした。消費税の年額は、法人化の判定で動く金額の7倍以上ということになります。

法人化するかどうかを1円単位で詰める前に、この9.0万円を毎月よけておけるかどうかを見たほうが、事業としては大きい話です。消費税の滞納額が税目別で最も大きいのは、この積立が追いつかなかった分が積み上がった結果とも考えられます。ただし統計には規模の大きい法人の分も入っているので、一人会社だけの傾向として読むことはできません。

納期限の形も変わります。個人事業者の消費税は、12月31日に終わる課税期間については翌年3月31日が期限です。法人は課税期間(事業年度)の終了の日の翌日から2か月以内で、振替納税の制度もありません(振替納税は法人にない。法人成りで納税日が52日早まる)。前々期の消費税額が一定額を超えると中間申告も始まります(消費税の中間申告はいくらから?法人成り2期目に始まる前払い)。

発生した滞納の86.9%は、2年度のうちに消えている

滞納の統計には、もう1つ読み取れることがあります。概要には、令和6年度に課税された分がその後どうなったかの内訳が載っています。

令和6年度に発生した滞納 9,925億円の行き先金額発生額に対する割合
令和6年度中に整理済6,687億円67.4%
令和7年度中に整理済1,938億円19.5%
令和7年度末で滞納整理中1,301億円13.1%

※ 概要Ⅱ-2より。公表されているのは徴収決定済額に対する割合(0.8%・0.2%・0.2%)なので、滞納発生額を分母にした割合は当サイトが計算した

2年度のうちに**86.9%**が整理されています。滞納の多くは、事業がたたむところまで行ったものではなく、納期限に資金が間に合わなかったものだと考えられます。

とはいえ、遅れれば延滞税がかかります。令和8年の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降は年9.1%です。2か月を越えると率が3倍以上になる形なので、遅れ方の長さがそのまま金額に出ます。

国税庁は、この概要の中で「予納ダイレクト」による納税資金の準備を呼び掛けています。決算を待たずに毎月納めていく使い方は予納ダイレクトで月12.4万円。法人税・消費税を決算前に払うで、どうしても間に合わないときの猶予制度は法人税・消費税が払えないときの換価の猶予。延滞税は年9.1%から1.3%へで扱っています。

自分の売上と経費で消費税がいくらになり、法人化の差額がいくらなのかは、判定ツールに条件を入れると両方まとめて出ます。一般論の数字ではなく、自分の数字で確かめてください。

まとめ

  • 令和7年度の新規発生滞納額9,935億円のうち、消費税は5,172億円(52.1%)。地方消費税を足すと6,630億円
  • 徴収決定済額で割った滞納発生割合は申告所得税4.18%、消費税1.95%、相続税1.51%、法人税0.62%、源泉所得税0.17%。全体の割合が下がった年に、申告所得税と相続税だけが上がっている
  • 法人化すると発生割合が最も高い申告所得税は消えるが、インボイス登録済みなら消費税はそのまま残る
  • 売上1,200万円・経費200万円での消費税は年108.0万円(月9.0万円)で、同じ条件の法人化の実質差額−14.7万円より桁が大きい
  • 発生した滞納の86.9%は2年度のうちに整理されている。ただし遅れた分には年2.8%・9.1%の延滞税がかかる

よくある質問

滞納とは、いつからその状態になるのですか。

国税庁は「国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたもの」を滞納としています。納期限を1日過ぎた時点ではなく、督促状が出た段階から統計に入ります。

税目別の滞納発生割合は国税庁が公表しているのですか。

公表されているのは全税目合計の割合だけで、令和7年度は1.1%です。税目別の割合は、概要の「主要税目別の租税滞納状況」にある徴収決定済額と新規発生滞納額から当サイトが計算したものです。

消費税を納期限までに払えないと、どのくらい増えますか。

延滞税がかかります。令和8年の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降が年9.1%です。猶予制度を使えた場合の軽減については別の記事で扱っています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。