設立の手続き

予納ダイレクトで月12.4万円。法人税・消費税を決算前に払う

結論

売上1,200万円・経費200万円、インボイス登録済みの一人会社では、決算後に納める法人税・地方法人税41.0万円と消費税・地方消費税108.0万円の見込合計は149.0万円です。予納ダイレクトで期首から12回に分ければ月12.4万円を先払いできます。ただし法人住民税・法人事業税、源泉所得税は対象外です。

  • 登録・引落しができるのは対象税目の課税期間内。3月決算法人なら4月1日から翌3月31日までで、申告期限の5月末までではない
  • 同一課税期間に登録できるのは2税目。法人税を登録すると地方法人税、消費税を登録すると地方消費税も組み合わせて納付する
  • 残高不足で予納日に引き落とせなくても延滞税は発生しない。払い過ぎを還付する場合、予納していた期間の還付加算金は付かない

法人の納税資金を普通預金に残したままにすると、残高の全部を使えるお金だと見誤りやすくなります。国税庁の予納ダイレクトを使うと、決算後に納付すると見込む国税を、課税期間中に何回かに分けて口座から先払いできます。

これは申告期限を延ばす制度でも、税額を減らす制度でもありません。会社の口座から国へ実際に納付し、決算後の一括支払いを小さくする仕組みです。売上別の見込額を、当サイトの計算エンジンで出しました。

売上1,200万円なら、対象額は年149.0万円、12回で月12.4万円

東京23区、40歳未満・単身、インボイス登録済み、合同会社という条件で、法人税・地方法人税と消費税・地方消費税の見込額を計算します。役員報酬は手取りが最大になる額を使っています。

売上経費最適役員報酬法人税・地方法人税消費税・地方消費税予納対象の年額12回なら1回
1,000万円200万円月54万円9.4万円88.0万円97.4万円8.1万円
1,200万円200万円月54万円41.0万円108.0万円149.0万円12.4万円
1,500万円300万円月54万円72.4万円132.0万円204.4万円17.0万円
2,000万円400万円月54万円135.0万円176.0万円311.0万円25.9万円

※ 東京23区・40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・原則課税(経費の6割が課税仕入)/2026年(令和8年)分基準。中間申告による前払いはないものとする ※ 法人住民税・法人事業税・特別法人事業税、源泉所得税は予納ダイレクトの対象外なので含めない

売上1,200万円の行では、消費税等108.0万円を12で割ると月9.0万円、法人税等41.0万円を12で割ると月3.4万円です。合計は月12.4万円になります。毎月の売上が100万円なら、入金の約12%を予納へ回す計算です。

表は scripts/yonou-direct-nozei-shikin.mjs annual で再生成できます。実際の登録は円単位で調整し、最後の回で端数を合わせます。表の金額は確定税額ではないため、途中で売上・経費・役員報酬の見込みが変わったら更新します。

予納できる国税は4つ。地方税と源泉所得税は対象外

国税庁が挙げる利用可能税目は次のとおりです。

  • 申告所得税及び復興特別所得税
  • 贈与税
  • 法人税及び地方法人税
  • 消費税及び地方消費税

法人の通常の決算で使うのは、法人税・地方法人税と、消費税・地方消費税の2組です。同一課税期間に登録できるのは2税目までですが、地方法人税は法人税を登録することで利用でき、法人税へ優先的に収納されます。地方消費税も消費税と一緒に扱います。

名称に「地方」が入っていても、地方法人税と地方消費税は国へ申告・納付する税なので対象です。一方、自治体へ納める法人住民税、法人事業税、特別法人事業税はこの画面から予納できません。特別法人事業税は国税ですが、法人事業税と併せて都道府県へ申告納付するため、国税庁の予納ダイレクトの対象税目には含まれていません。

毎月または半年ごとに納める源泉所得税も対象外です。通常のダイレクト納付は利用できますが、この記事の予納とは別の操作です。対象外分まで含めて「月12.4万円払えば法人の税金は全部済む」と考えないようにします。

売上1,200万円の設例では、予納対象149.0万円とは別に、東京都へ法人住民税・事業税等21.5万円を納めます。税務署と都へ納める全体像は法人税・消費税が払えないときの換価の猶予の税目別表で確認できます。

登録できるのは課税期間中。申告期限までではない

最も間違えやすいのが日付です。予納日として登録できるのは、予納する税目の課税期間中の任意の日です。

3月決算法人であれば、事業年度が4月1日から翌年3月31日なので、予納日もその期間内です。法人税・消費税の申告納付期限が原則として5月31日でも、4月や5月を予納日にはできません。決算が終わって税額が固まってから予納する制度ではなく、事業年度の途中で見込みを立てて払う制度だからです。

そのため、始める時期が遅いほど1回の金額が大きくなります。売上1,200万円・経費200万円の見込額149.0万円を、残りの月数で割りました。

登録を始める時期残りの回数法人税等消費税等1回の合計
期首から12回3.4万円9.0万円12.4万円
6か月経過後から6回6.8万円18.0万円24.8万円
9か月経過後から3回13.7万円36.0万円49.7万円

※ 年額は法人税・地方法人税41.0万円、消費税・地方消費税108.0万円。単純に残り回数で均等割し、端数調整前

期首からなら月12.4万円ですが、残り3か月で同じ見込額を予納すると月49.7万円です。制度を使う目的が「決算後の一括支払いを避けること」なら、期末直前にまとめて登録する利点は小さくなります。

一方、期首時点の売上見込みは外れやすいので、12か月分を最初から固定する必要もありません。納付日と金額は複数登録でき、申出内容の照会・変更もできます。最初は消費税の見込みだけを置き、四半期ごとに実績を見て法人税分を調整する方法もあります。

通常のダイレクト納付との違いは、申告前に払うこと

同じ口座引落しでも、使う時点が違います。

手続いつ使うか何を払うか期日
通常のダイレクト納付申告等データの送信後確定した納付情報即時または指定日
予納ダイレクト課税期間中・申告前将来の確定申告で納付すると見込む額課税期間内の複数日を登録可
自動ダイレクト申告等データの送信時に選択申告で確定した額原則として法定納期限

予納ダイレクトを使うには、先にe-Taxの利用開始手続とダイレクト納付利用届出書の提出が必要です。法人は届出書をオンライン提出できず、所轄税務署へ書面で提出します。国税庁は利用開始のおおむね1か月前までの提出を案内しています。

実際の予納登録はe-Taxソフト(WEB版)の「ダイレクト納付を利用した予納の申出」から行います。ダウンロード版だけでは完結せず、WEB版へのショートカットが表示されます。法人は利用者識別番号と暗証番号でログインし、税目、課税期間、予納日、金額、引落口座を入力します。

国税を納める手段ごとの手数料と上限はキャッシュレス納付の比較で扱っています。予納ダイレクトの決済手数料は不要ですが、利用可能額は金融機関ごとに違うため、登録口座が対応しているかを国税庁の一覧で確認します。

引落しに失敗しても延滞税はない。ただし積立は進まない

予納日は法定納期限より前です。国税庁は、登録した予納日に残高不足などで引き落とせなくても、その時点では延滞税は発生しないと明記しています。まだ納期限を過ぎていないためです。

ただし、失敗した金額が自動的に次回へ上乗せされ、計画どおりの予納残高になるとは限りません。e-Taxのメッセージボックスで結果を確認し、登録内容を変更するか、口座へ資金を戻します。予納日の前週水曜日(祝日の場合は翌日)には「予納日到来のお知らせ」、当日には完了通知が格納されます。

この点は振替納税の残高不足と違います。振替納税は法定納期限後の振替日に失敗すると、法定納期限の翌日から延滞税がかかります。法人にはそもそも振替納税がないことと日付の差は、振替納税は法人にないで整理しています。

見積りより税額が増えたら差額納付、減ったら充当・還付

予納は、税額を確定する申告ではありません。決算で確定した税額と比べて過不足を精算します。

  • 予納額が少ない:確定税額との差額を申告・納付期限までに別途納める
  • 予納額が多い:ほかに未納の国税があれば順次充当され、残額は還付の対象になる
  • 中間申告分も対象にする:登録時に「予定納税(中間申告)分も納付する」を選ぶ

払い過ぎれば戻るため最終的な税額は変わりませんが、資金コストは残ります。国税庁は、税額確定後に予納税額を還付する場合でも、予納していた期間に対応する還付加算金は発生しないと案内しています。年初に多めに払って利息を受け取る制度ではありません。

売上が季節で大きく変わる事業なら、毎月均等より、入金が多い月の直後に多めの予納日を置くほうが資金繰りに合います。国税庁も、定期的な均等額だけでなく、収入に応じた任意のタイミングでの登録を利用例に挙げています。

一人会社での登録手順

  1. 利用する金融機関がダイレクト納付に対応しているか確認する
  2. e-Taxの利用開始手続きを済ませる
  3. 法人用のダイレクト納付利用届出書を税務署へ書面提出する
  4. 利用開始通知を確認する。提出から利用可能まで1か月程度を見込む
  5. 当期の売上、経費、役員報酬から法人税等・消費税等を見積もる
  6. e-Taxソフト(WEB版)で税目・課税期間を選ぶ
  7. 課税期間内の予納日、金額、引落口座を登録する
  8. 四半期ごとに見込税額と予納済額を照合し、以後の登録額を変更する
  9. 決算後、確定税額から予納済額を差し引き、残額と地方税を納期限までに払う

法人成り1年目は、個人事業の所得税・住民税・個人事業税の後払いも重なります。法人成り1年目の資金繰りの設例では個人側の後払いが225.8万円あるため、法人の国税を先払いしすぎると、個人の口座へ回す資金が不足します。個人の税金を法人の口座から払うことは、納税資金の振替ではなく役員への貸付等になる点にも注意が必要です。

まとめ

  • 予納ダイレクトは、課税期間中に法人税等・消費税等の見込額を国へ先払いする手続
  • 売上1,200万円・経費200万円の設例では対象額149.0万円、期首から12回なら月12.4万円
  • 法人住民税・法人事業税等と源泉所得税は対象外なので、別に資金を残す
  • 予納日として登録できるのは課税期間内。決算後から申告期限までの2か月は登録できない
  • 引落しに失敗してもその時点で延滞税はないが、予納は進んでいない
  • 払い過ぎは充当・還付の対象になるが、予納期間に対応する還付加算金は付かない

予納は税額を減らしません。口座残高から納税資金を先に切り離し、決算後の一括納付を月々の支払いへ変える手段です。自分の売上と経費で年額を計算し、地方税と運転資金を残したうえで、無理のない登録額を決めてください。

よくある質問

予納ダイレクトは、会社の別口座へ積み立てる制度ですか?

違います。登録日に会社の預金口座から国へ実際に納付する手続です。引き落とされたお金は運転資金として使えなくなります。会社内で取り分けるだけの積立預金とは性質が異なります。

予納額が確定税額より少なかったらどうなりますか?

確定した税額との差額を申告・納付期限までに別途納めます。予納は税額を確定する申告ではないため、売上や経費が見込みから変わったら登録額を見直す必要があります。

予納額が確定税額より多かったら、利息を付けて返してもらえますか?

ほかの未納国税があれば順次充当され、残額は還付の対象になります。ただし国税庁は、予納期間に対応する還付加算金は発生しないと案内しています。多めに納めて利息を得る制度ではありません。

源泉所得税や法人住民税も予納できますか?

予納ダイレクトの対象税目には入っていません。源泉所得税は通常のダイレクト納付、法人住民税・法人事業税等は自治体の納付手段で管理します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。