設立の手続き

振替納税は法人にない。法人成りで納税日が52日早まる

結論

振替納税が使えるのは申告所得税と個人事業者の消費税だけで、法人税・法人の消費税にはありません。令和7年分の個人は所得税が4月23日、消費税が4月30日の引落しでしたが、12月決算の法人は3月2日が納期限です。事業所得1,000万円の設例では、個人が年末後に払う確定分64.5万円に対し、法人1期目は170.4万円を約2か月後に払います。

  • 国税庁の振替納税の対象税目は「申告所得税及び復興特別所得税」と「消費税及び地方消費税(個人事業者)」に限られている
  • 年末・期末から納付までの日数は、個人の所得税113日・消費税120日に対し、12月決算の法人は61日
  • 法人1期目は前事業年度がないため中間申告がなく、1年分の法人税等と消費税がまとめて確定申告で出ていく

振替納税を使っている個人事業主にとって、確定申告の税は「3月に申告して、4月下旬に落ちるもの」です。法人成りすると、この感覚がそのまま使えなくなります。法人税と法人の消費税には、振替納税という制度そのものがないからです。

金額の差ではなく、日付の差です。ただ法人1期目は日付の前倒しに中間申告の不在が重なるため、年末後に一度に出ていく額が2〜3倍になります。

振替納税の対象は2税目だけ

国税庁が振替納税を案内しているページの題名が、そのまま対象の範囲です。申告所得税及び復興特別所得税と、消費税及び地方消費税(個人事業者) の2つだけです。

対象になる納付も細かく決まっています。

税目振替納税できる納付
申告所得税及び復興特別所得税期限内に申告された確定申告(3期)分、延納分、予定納税(1期・2期)分
消費税及び地方消費税(個人事業者)期限内に申告された確定申告分、中間申告分

法人税、地方法人税、法人の消費税はどこにも出てきません。法人も口座から払う方法としてダイレクト納付は使えますが、これは即時または指定した期日に引き落とす仕組みです。指定できる期日は納期限までなので、支払いを後ろへずらす効果はありません。

令和7年分の日付を並べる

国税庁の「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」から、令和7年12月31日で締めた1年分の日付を取りました。12月決算の法人の期限は「事業年度終了日の翌日から2月以内」で、令和8年2月28日が土曜日のため3月2日(月)になります。

法定納期限実際に口座から出る日年末・期末からの日数
個人の所得税(確定申告分)令和8年3月16日令和8年4月23日(振替日)113日
個人の消費税(確定申告分)令和8年3月31日令和8年4月30日(振替日)120日
12月決算法人の法人税等・消費税令和8年3月2日令和8年3月2日61日

所得税は法定納期限から振替日まで38日、消費税は30日の間があります。この間は延滞税もかかりません。法人成りすると、年末から納付までの期間が113日から61日へ、52日縮みます。

一方で、この猶予には条件があります。国税庁は、口座引落しができなかった場合は法定納期限の翌日から延滞税がかかるとしています。振替日の前日に残高が足りなければ、猶予はさかのぼって消えます。

法人1期目は中間申告がないぶん、一度に出る

日付よりも効くのが、中間払いの有無です。

個人事業を何年も続けていると、確定申告の時点では税の多くをすでに払い終えています。前年分の所得税の申告納税額が15万円以上なら、7月と11月に3分の1ずつ予定納税をしています。前年の消費税(国税分)が48万円を超えていれば、消費税の中間申告もあります。48万円超400万円以下なら年3回、各回に前年の3/12ずつです。4月下旬に落ちるのは、その残りだけです。

法人の中間申告は、前事業年度の実績を基準に決まります。1期目には前事業年度がないので、法人税も消費税も中間申告がありません。1年分が、期末の2か月後にまとめて出ていきます。

当サイトの計算エンジンで、年末・期末の後に払う額を事業所得別に並べました。個人は前年も同じ所得の継続事業者、法人は最適な役員報酬をとった1期目です。

事業所得(青色控除前)個人:所得税の確定分(4月23日)個人:消費税の確定分(4月30日)個人の合計法人1期目:法人税等+消費税(3月2日)法人÷個人
600万円11.8万円17.0万円28.8万円80.2万円2.8倍
800万円24.4万円22.0万円46.4万円107.7万円2.3倍
1,000万円37.5万円27.0万円64.5万円170.4万円2.6倍
1,500万円88.7万円39.5万円128.2万円333.4万円2.6倍
2,000万円144.9万円52.0万円196.9万円391.1万円2.0倍

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・最適報酬/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人税等は法人税・地方法人税・法人住民税(均等割7万円を含む)・法人事業税の合計。消費税は原則課税の概算。計算は scripts/furikae-nozei-houjin.mjs

事業所得1,000万円では、個人のまま年末後に払うのは64.5万円、法人1期目は170.4万円です。しかも法人側は52日早く出ていきます。年間の税の総額が同じ水準でも、中間払いで均されていたものが1回に寄るだけで、期末直後の口座残高の必要額が2倍以上に変わります。

法人の役員報酬の源泉所得税や社会保険料は、この表に入れていません。これらは毎月または半年ごとに出ていくもので、1期目の月別の出入りは法人成り1年目の資金繰りでまとめています。

2期目以降は中間申告で均される

法人も2期目からは中間申告が始まります。消費税は個人と同じく前事業年度の国税分が48万円超なら対象で、法人税は前事業年度の法人税額が一定額を超えると半額の予定申告が必要です(詳しくは法人税の中間申告は20万円から)。

つまり1期目の偏りは一度きりです。ただし法人成りの1期目は、個人事業の最後の年の税(所得税の確定分、住民税、個人事業税)を払う年でもあります。個人の後払いと法人の1期目の確定申告が、同じ春に重なります。

時期個人の口座から法人の口座から
設立年の3月〜4月前年分の所得税・消費税の確定分—
設立年の6月〜翌1月前年分の住民税・個人事業税、予定納税毎月の社会保険料、源泉所得税
翌年3月2日(12月決算)—1期目の法人税等・消費税の全額

振替納税で「4月下旬まで払わなくてよい」と組んでいた資金計画は、法人の口座では組めません。

期限を延ばす手段はあるが、無料ではない

法人には、申告期限の延長の特例があります。定款で定時総会が決算日から2か月以内に開けない定めがある場合などに、法人税の申告期限を1か月延ばせます。ただし延ばせるのは申告の期限で、延長した期間には利子税がかかります。振替納税のように、延滞税なしで引落しを遅らせる仕組みとは別物です。詳しくは法人税の申告期限を1か月延長する特例で扱っています。

決算月を動かすのも手の1つです。期末から2か月後の納期限が、売上の入金が多い月の後に来るよう決算月を選べば、同じ額でも払いやすくなります。決算月の選び方は法人の決算月の決め方にまとめています。

まとめ

  • 振替納税の対象は申告所得税と個人事業者の消費税だけで、法人税・法人の消費税にはない
  • 令和7年分では、個人の所得税は4月23日、消費税は4月30日の引落し。12月決算の法人は3月2日が納期限で、年末からの日数は113日から61日へ縮む
  • 法人1期目は中間申告がないため、事業所得1,000万円の設例で個人の確定分64.5万円に対し170.4万円が一度に出る
  • 振替納税の猶予は引落しが成功した場合だけ。残高不足なら法定納期限の翌日から延滞税がかかる

法人化で税額がいくら変わるかは、年間の総額で見れば判定ツールの数字で足ります。ただ、いつ出ていくかは別の問題です。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で1期目の法人税等の額を確かめ、決算の2か月後に払えるかまで見てください。

よくある質問

法人でも口座引落しで税金を払えますか?

ダイレクト納付なら法人も口座引落しで納付できます。ただしダイレクト納付は即時または指定した期日に引き落とす仕組みで、納期限そのものは後ろにずれません。振替納税のように法定納期限より後の振替日が設定されるわけではありません。

振替納税の引落しに失敗するとどうなりますか?

国税庁は、口座引落しができなかった場合は法定納期限の翌日から延滞税がかかるとしています。振替日まで猶予されるのは、引落しが成功した場合に限られます。

法人成りした年は、個人の振替納税はどうなりますか?

前年分の個人の所得税と消費税は、廃業した後も確定申告で納めます。振替納税の依頼書を出していれば、その分は従来どおり4月下旬に引き落とされます。法人の税とは納期が別々に動きます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。