設立の手続き

資本性ローンは個人と法人どちらで借りるか。利息と金利区分

結論

挑戦支援資本強化特別貸付は法人・個人企業のどちらも対象で、借り手の形態による条件の差は制度ページにありません。元金は期限一括返済、金利は融資後1年ごとに税引後当期純利益が0円以上なら年3.25〜3.95%、0円未満なら一律0.50%です。2,000万円・10年で借りると黒字区分の利息は年73万円で、手取りの減少は個人で37.5万〜43.7万円、法人で44.9万〜45.9万円でした(当サイト試算)。

  • 返済期間5年1ヵ月以上20年以内・期限一括返済・融資限度額7,200万円(別枠)・無担保無保証人。法的倒産手続きでは他の債務に劣後する
  • 金融機関の資産査定上は自己資本とみなせる。償還まで5年以上は残高の100%、5年未満になると1年ごとに20%ずつ減る
  • 利息73万円の実質負担率は個人51〜60%、法人61〜63%。利息は経費でも、元本2,000万円の一括返済は税引後の資金から出る

資本性ローンは「借入なのに自己資本として見てもらえる」点が注目されますが、税金と手取りの側から見ると普通の借入と同じで、経費になるのは利息だけです。そのうえで、この制度には赤字の年に金利が下がる仕組みがあり、黒字か赤字かの判定が個人と法人で同じ意味を持つとは限りません。ここでは制度の中身を公庫の制度ページで確認し、利息の重さを計算エンジンで比べます。

挑戦支援資本強化特別貸付の中身

日本政策金融公庫の制度ページで確認できる条件は次のとおりです。

項目内容
対象法人または個人企業。新規開業・スタートアップ支援資金、新事業活動促進資金、事業承継・集約・活性化支援資金などの対象となり、地域経済活性化にかかる事業を行う方
返済期間5年1ヵ月以上20年以内
返済方法期限一括返済(それまでは利息のみ)
融資限度額7,200万円(別枠)
担保・保証人無担保・無保証人
劣後性法的倒産手続きの開始決定があった場合、すべての債務(同等以下のものを除く)に償還順位が劣後

税務申告を1期以上行っている場合は、原則として所得税等を完納していることも要件です。対象の入口になる融資制度のひとつが創業向けの新規開業・スタートアップ支援資金で、その条件は創業融資は個人事業主と法人どちらで借りるかで整理しています。

自己資本とみなされる範囲は残存期間で減る

公庫は、このローンを金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができるとしています。ただし全期間100%ではありません。償還期限まで5年以上ある間は残高の100%、5年未満になると1年ごとに20%ずつ減ります。

期限一括返済なので、帳簿上の残高は返済日まで2,000万円のままです。それでも、満期が近づくと民間金融機関から見た「自己資本」は目減りしていきます。民間からの追加融資を受けやすくする効果は、借りてから最初の数年に厚い設計です。

金利は「黒字か赤字か」の2区分

利率は融資後1年ごとに、直近の業績に応じて決まります。

直近の業績返済期間利率
税引後当期純利益 0円以上5年1ヵ月3.25%
5年1ヵ月超7年以内3.40%
7年超10年以内3.65%
10年超15年以内3.80%
15年超20年以内3.95%
税引後当期純利益 0円未満期間にかかわらず0.50%

ほかに、民間金融機関の支援を受けて事業計画書を作り、必要資金のうち支援金融機関の融資が原則2分の1超などの条件を満たすと、融資後3年間は0.50%になる特例があります。

業績が悪い年に金利が下がるのは、出資に近い性格を持たせるためです。配当が業績で変わるのと同じように、利息の負担を業績に連動させています。

個人事業主の「税引後当期純利益」は制度ページに定義がない

判定に使う「税引後当期純利益」は法人の損益計算書の用語です。個人企業の場合に何を当てはめるかは、制度ページには書かれていません。個人事業主の青色申告決算書には所得税を差し引いた利益という欄がないため、個人で借りる場合の判定方法は申込み時に公庫へ確認する必要があります。当サイトでは確認できなかったため、個人の判定方法についての数値は載せていません。

法人では、役員報酬を高めに取ると法人の利益は小さくなり、赤字区分に入りやすくなります。ただし、赤字にするために報酬を上げると個人側の税と社会保険料が増えるので、0.5%との差(2,000万円・10年なら年63万円)だけを見て報酬を決めると逆効果になり得ます。

2,000万円・10年で借りた場合の利息の重さ

返済期間10年(7年超10年以内)で2,000万円を借り、全期間が黒字区分(3.65%)だったとします。年利息は73.0万円、10年間の利息合計は730.0万円です。全期間が赤字区分なら年10.0万円です。

この利息を経費に足して、個人事業主と法人(役員報酬は利息を足したうえで総当たりで再探索)の手取りがいくら減るかを計算エンジンで出しました(scripts/shihonsei-loan-risoku.mjs)。

売上・経費個人:手取り減個人:実質負担率法人:手取り減法人:実質負担率
売上1,200万・経費200万43.7万円60%45.9万円63%
売上1,800万・経費300万37.5万円51%44.9万円61%
売上2,500万・経費500万37.5万円51%44.9万円61%

前提:東京23区・協会けんぽ東京・40歳未満・単身・青色申告65万円(個人)・インボイス登録あり・合同会社。設立費用・税理士報酬は含めない。

利息73万円のうち、手取りが実際に減るのは4〜6割です。残りは税と社会保険料(個人の国保・事業税を含む)の減少で埋まります。この条件では個人のほうが実質負担率が低く出ました。所得が高い個人事業主は限界税率が高く、利息で所得が下がったときの税の減り方が大きいためです。

法人の試算では、最適な役員報酬のときに法人にも利益が残っており、利息73万円を引いても税引後の利益はプラスでした。つまりこの条件では金利は黒字区分のままで、0.5%への切替えは起きません。

元本の一括返済は税引後の資金から出る

期限一括返済は、毎月の資金繰りが楽になる反面、10年後に2,000万円を一度に返す必要があります。元本の返済は経費にならないので、返済原資は税引後の利益を積み立てた資金です。

法人の場合、返済原資は法人税を払った後の内部留保になり、個人の場合は所得税・住民税を払った後の事業の手元資金になります。どちらも、利息以外は税の軽減を受けられません。個人で借りたあとに法人成りする場合、借入は自動では法人に移りません。引継ぎの扱いは法人成りの借入金は自動的に法人へ移らないを参照してください。

個人で借りるか法人で借りるかの判断軸

制度ページ上、資本性ローンの条件に個人と法人の差はありません。差が出るのは次の3点です。

  1. 金利区分の判定:法人は税引後当期純利益で判定できる。個人の判定方法は公庫への確認が要る
  2. 利息の実質負担:上の条件では個人51〜60%、法人61〜63%。所得と役員報酬で変わる
  3. 返済原資の積み方:法人は利益を内部に残して返済できるが、その利益には法人税がかかる

借入の規模と返済計画が決まっている場合は、利息と役員報酬を含めた手取りを自分の売上と経費で確かめてから、個人か法人かを考えるのが確実です。

まとめ

  • 挑戦支援資本強化特別貸付は法人・個人企業とも対象で、期限一括返済・返済期間5年1ヵ月以上20年以内・限度額7,200万円
  • 金利は1年ごとに税引後当期純利益で判定し、黒字なら年3.25〜3.95%、赤字なら0.50%
  • 自己資本とみなせるのは残存5年以上で100%、5年未満で1年ごとに20%減
  • 2,000万円・10年の利息年73万円に対する手取り減は個人37.5万〜43.7万円、法人44.9万〜45.9万円(当サイト試算)
  • 元本の一括返済は経費にならず、税引後の資金から出る

一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

資本性ローンは個人事業主でも借りられますか?

公庫の制度ページでは、対象を「法人または個人企業」としています。新規開業・スタートアップ支援資金などの対象融資制度に該当し、地域経済の活性化にかかる事業を行うことなどが要件です。

資本性ローンの利息は毎年同じですか?

同じではありません。融資後1年ごとに直近の業績に応じて、税引後当期純利益が0円以上なら返済期間別の利率(年3.25〜3.95%)、0円未満なら一律0.50%が適用されます。

資本性ローンを借りると資本金が増えますか?

増えません。会計上は借入金のままで、公庫は「金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができる」としています。登記される資本金や、資本金で決まる税の区分とは別の話です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。