役員報酬

標準報酬月額の等級別分布。厚生年金の上限65万円に7.11%

結論

厚生年金保険(第1号)の被保険者4,284万9,361人のうち、上限の標準報酬月額65万円の等級にいるのは304万5,284人で、7.11%です(令和6年度末)。男性に限ると10.54%で、男性では上限の等級が最も人数の多い等級です。判定ツールで事業所得1,700万円以上のときに出る最適な役員報酬(月90万〜100万円)は、この上限の等級に入ります。

  • 上限の等級の人数は令和2年度末の233万1,495人から4年で30.6%増えた。被保険者全体の伸びは5.9%。令和9年9月からの上限引上げ(法は成立済み・未施行)で保険料が変わり得るのはこの層だけ
  • 前回の引上げ(令和2年9月、62万→65万円)の後の年度末でも、62万円以上の人の85.6%は新しい上限の65万円に張り付いていた
  • 判定ツールの最適報酬は事業所得1,600万円まで月54万円(標準報酬53万円・上位13.3%)。1,700万円で月90万円へ跳ぶ。上限を越えると厚生年金保険料が増えなくなるため

標準報酬月額の等級表は、どの記事にも載っています。しかし「その等級に何人いるのか」を見た記事はほとんどありません。分布を開くと、上限の65万円の等級だけが突き出た形をしています。

当サイトでは、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業年報」(e-Stat)の公式Excelから、標準報酬月額別の被保険者数を再集計しました。そのうえで、判定ツールが出す最適な役員報酬が、全被保険者のどこに位置するかを重ねています。

この統計が数えている人

使ったのは、事業年報の厚生年金保険(第1号)の標準報酬月額別被保険者数です。数字は年度末(3月末)現在の実数で、標本調査の推計値ではありません。

  • 第1号は、民間の会社・個人事業所に使用される被保険者です。公務員や私学の教職員(第2〜4号)は入っていません
  • 役員と従業員の区別はありません。 一人社長も、大企業の会社員も同じ表に入っています。役員だけの報酬の分布は、国税庁の統計を再集計した役員報酬の平均の記事で扱っています
  • 上限の等級の人は「報酬月額63万5,000円以上」としか分かりません。上限の上で実際にいくら受け取っているかは見えません

等級ごとの報酬月額の範囲は、日本年金機構の保険料額表(当サイトの税率データと同じ)に合わせています。保険料額や境目の考え方は標準報酬月額の等級表にまとめています。

等級別の分布:上限の65万円だけが突き出ている

令和6年度末の全32等級です。「この等級以上」は、その等級とそれより上の等級にいる人の合計の割合です。

令和6年度末(2025年3月末)・被保険者42,849,361人

等級標準報酬月額報酬月額被保険者数割合この等級以上
18.8万円93,000円未満319,4190.75%100.00%
29.8万円93,000〜101,000円未満227,5110.53%99.25%
310.4万円101,000〜107,000円未満82,4600.19%98.72%
411万円107,000〜114,000円未満136,1980.32%98.53%
511.8万円114,000〜122,000円未満220,4590.51%98.21%
612.6万円122,000〜130,000円未満242,2850.57%97.70%
713.4万円130,000〜138,000円未満309,0230.72%97.13%
814.2万円138,000〜146,000円未満363,0710.85%96.41%
915万円146,000〜155,000円未満610,6581.43%95.56%
1016万円155,000〜165,000円未満729,8591.70%94.14%
1117万円165,000〜175,000円未満896,4052.09%92.44%
1218万円175,000〜185,000円未満1,095,4022.56%90.34%
1319万円185,000〜195,000円未満1,182,0402.76%87.79%
1420万円195,000〜210,000円未満2,215,1055.17%85.03%
1522万円210,000〜230,000円未満2,801,8446.54%79.86%
1624万円230,000〜250,000円未満2,886,2176.74%73.32%
1726万円250,000〜270,000円未満3,061,4707.14%66.59%
1828万円270,000〜290,000円未満2,755,9856.43%59.44%
1930万円290,000〜310,000円未満2,735,4326.38%53.01%
2032万円310,000〜330,000円未満2,258,1075.27%46.63%
2134万円330,000〜350,000円未満2,003,7754.68%41.36%
2236万円350,000〜370,000円未満1,905,2914.45%36.68%
2338万円370,000〜395,000円未満1,963,8344.58%32.23%
2441万円395,000〜425,000円未満2,083,8074.86%27.65%
2544万円425,000〜455,000円未満1,609,9923.76%22.79%
2647万円455,000〜485,000円未満1,263,6822.95%19.03%
2750万円485,000〜515,000円未満1,184,3112.76%16.08%
2853万円515,000〜545,000円未満837,9111.96%13.32%
2956万円545,000〜575,000円未満705,3361.65%11.36%
3059万円575,000〜605,000円未満641,0381.50%9.71%
3162万円605,000〜635,000円未満476,1501.11%8.22%
3265万円635,000円以上3,045,2847.11%7.11%

※ 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報」厚生年金保険(第1号)標準報酬月額別被保険者数(年度末現在)を当サイトで集計。第1号は民間の会社・個人事業所に使用される被保険者(公務員・私学教職員を含まない)。役員と従業員の内訳はない ※ 報酬月額の範囲は令和8年度の等級表(日本年金機構 保険料額表)。「この等級以上」はその等級と上の等級の被保険者の合計の割合

30万円の等級を境に、上と下がほぼ半分ずつに分かれます。50万円の等級より上は16.08%です。

そこから等級が上がるほど人数は減っていき、62万円の等級は47万6,150人まで細ります。ところが次の65万円で304万5,284人に跳ね上がります。上限の等級には、報酬月額63万5,000円以上の人が全員まとめて入るためです。人数は26万円の等級(306万1,470人)に次ぐ2番目の多さです。

男性では上限の等級が最も多い

男女に分けると、上限の偏りはさらにはっきりします。

被保険者数65万円(上限)の人数割合53万円以上の人数割合
総数42,849,3613,045,2847.11%5,705,71913.32%
男子25,286,1862,666,36710.54%4,967,80219.65%
女子17,563,175378,9172.16%737,9174.20%

※ 令和6年度末。男子は一般男子・坑内員・船員の計 ※ 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報」厚生年金保険(第1号)標準報酬月額別被保険者数を当サイトで集計

男性で人数が最も多い等級は65万円(266万6,367人)で、2番目の30万円(164万3,678人)を大きく上回ります。女性で最も多いのは22万円の等級です。男性の10人に1人は、報酬がいくら増えても厚生年金保険料が増えない位置にいることになります。

上限に張り付く人は4年で30.6%増えた

上限の等級にいる人の割合を、平成27年度末から並べます。上限は令和2年9月に62万円から65万円へ引き上げられたため、比べやすいよう「62万円以上」の列も付けました。

年度末被保険者数上限等級上限等級の人数割合62万円以上の人数割合
平成27年度末36,863,74162万円2,406,2436.53%2,406,2436.53%
平成28年度末38,217,57662万円2,492,3356.52%2,492,3356.52%
平成29年度末39,112,16962万円2,559,0726.54%2,559,0726.54%
平成30年度末39,806,24562万円2,666,5566.70%2,666,5566.70%
令和元年度末40,374,47062万円2,767,8116.86%2,767,8116.86%
令和2年度末40,472,12765万円2,331,4955.76%2,724,0826.73%
令和3年度末40,645,17265万円2,454,8236.04%2,860,0517.04%
令和4年度末41,569,43565万円2,589,3266.23%3,003,0517.22%
令和5年度末42,108,80965万円2,792,7326.63%3,232,9237.68%
令和6年度末42,849,36165万円3,045,2847.11%3,521,4348.22%

※ 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報」厚生年金保険(第1号)標準報酬月額別被保険者数(年度末現在)を当サイトで集計 ※ 62万円以上=令和元年度末までは上限等級、令和2年度末からは62万円と65万円の2等級の合計

令和2年度末から令和6年度末の4年間で、上限の等級は233万1,495人から304万5,284人へ71万3,789人増えました。増加率は30.6%で、被保険者全体の伸び(5.9%)の5倍です。上限を3万円上げた直後の5.76%は、4年で引上げ前の水準(6.86%)を上回る7.11%まで戻りました。

前回の引上げでも、大半はまた上限に張り付いた

令和2年9月の引上げで何が起きたかを、引上げ前後の年度末で比べます。

令和元年度末(引上げ前)令和2年度末(引上げ後)
62万円等級2,767,811人(上限)392,587人
65万円等級—2,331,495人(上限)
62万円以上の合計2,767,811人2,724,082人
62万円以上のうち上限等級にいる割合100%85.6%

※ 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報」厚生年金保険(第1号)標準報酬月額別被保険者数を当サイトで集計 ※ 年度末どうしの比較で、同じ人を追跡した数字ではない(1年間の加入・脱退・昇給を含む)

上限が3万円上がっても、62万円以上の人の85.6%は新しい上限の65万円にそのまま張り付きました。62万円の等級に残ったのは14.4%です。上限に張り付いている層の多くは、上限を数万円上回る程度ではなく、それより高い報酬を受け取っていると読めます。

判定ツールの最適報酬は上位何%の等級か

ここからが当サイト独自の重ね合わせです。判定ツールの計算エンジンで、事業所得ごとに手取りが最大になる役員報酬を出し、その報酬の厚生年金の等級に全被保険者の何%がいるかを並べました。

事業所得最適な役員報酬厚生年金の標準報酬月額その等級以上の被保険者全被保険者に占める位置判定
600万円月42万円41万円11,847,511人上位27.6%個人のまま有利
800万円月54万円53万円5,705,719人上位13.3%個人のまま有利
1,000万円月54万円53万円5,705,719人上位13.3%ほぼ互角
1,200万円月54万円53万円5,705,719人上位13.3%ほぼ互角
1,500万円月54万円53万円5,705,719人上位13.3%法人化が有利
1,600万円月54万円53万円5,705,719人上位13.3%法人化が有利
1,700万円月90万円65万円(上限)3,045,284人上位7.1%法人化が有利
1,800万円月90万円65万円(上限)3,045,284人上位7.1%法人化が有利
2,000万円月90万円65万円(上限)3,045,284人上位7.1%法人化が有利
2,500万円月100万円65万円(上限)3,045,284人上位7.1%法人化が有利
3,000万円月100万円65万円(上限)3,045,284人上位7.1%法人化が有利

※ 最適な役員報酬は当サイトの計算エンジン(月5万〜100万円を1万円刻みで総当たり)。経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 被保険者の分布は令和6年度末の厚生年金保険(第1号)。事業所得は青色申告特別控除の前

この条件で法人化が有利と出る事業所得1,500万円以上では、最適な報酬はいずれも、会社員を含めた被保険者の上位13.3%以内の等級に入ります。そして事業所得1,700万円を境に、最適な報酬は月54万円から月90万円へ一気に跳び、上位7.1%の上限の等級に移ります。

跳ぶ理由は上限そのものにある

途中の月60万円台を通り過ぎるのは、上限を越えると厚生年金保険料がそれ以上増えないためです。報酬を上げたときの社会保険料の増え方が、上限の前後で変わります。

事業所得月54万円月63万円月70万円月90万円最適
1,600万円1032.6万円(社保180.5万円)1023.1万円(社保211.1万円)1021.0万円(社保228.6万円)1025.8万円(社保249.2万円)月54万円
1,700万円1085.7万円(社保180.5万円)1084.6万円(社保211.1万円)1082.4万円(社保228.6万円)1087.6万円(社保249.2万円)月90万円
1,800万円1138.8万円(社保180.5万円)1138.8万円(社保211.1万円)1143.9万円(社保228.6万円)1149.1万円(社保249.2万円)月90万円
2,000万円1245.1万円(社保180.5万円)1245.0万円(社保211.1万円)1250.6万円(社保228.6万円)1272.0万円(社保249.2万円)月90万円

※ 各セルは手取り合計(役員個人の手取り+法人に残る額の引出コスト20%控除後)と、社会保険料(労使計・年額)。条件は上の表と同じ

報酬を月54万円から月70万円へ上げる(年192万円増)と、社会保険料は労使合計で48.1万円増えます。月70万円から月90万円へ上げる(年240万円増)と、増えるのは20.6万円だけです。上限を越えた先では、健康保険料(子ども・子育て支援金を含む)しか増えないためです。

ただし、事業所得1,700万円では月54万円と月90万円の手取りの差は年1.9万円しかありません。この帯では、どちらを選んでも手取りはほぼ同じで、違うのは将来の年金と法人に残るお金の配分です。自分の売上と経費で、報酬額ごとの手取りの並びを確かめてください。

令和9年9月からの上限引上げは、この304万人の話

令和7年6月13日に成立した年金制度改正法で、厚生年金の標準報酬月額の上限(現在65万円)の段階的な引上げが決まりました。引上げ後の上限は2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円です。法律は成立済みで、引上げそのものはまだ施行されていません。

保険料が変わり得るのは、いま上限の65万円の等級にいる人だけです。令和6年度末でいえば304万5,284人、第1号の被保険者の7.11%にあたります。62万円以下の等級にいる92.89%の人は、この改正で保険料が変わりません。

前回の引上げで62万円以上の人の85.6%が新しい上限に張り付いたことを踏まえると、上限の等級にいる人の多くは、新しい上限にも届く報酬を受け取っている可能性があります。ただし、上限の等級の中の報酬の分布はこの統計では見えません。引上げで実際に保険料が増える人数は、この統計だけでは決まりません。

判定ツールの最適報酬が上限の等級に入る事業所得1,700万円以上の人は、引上げの影響を受ける側です。段階ごとに増える保険料と年金の額は厚生年金の上限が75万円へ。役員報酬いくらから影響するかで計算しています。

平均の2倍という物差しも、すでに65万円を超えている

厚生労働省は、65万円の上限を「全被保険者の標準報酬月額の平均の約2倍」と説明しています。厚生年金保険法20条2項には、3月31日時点の平均の2倍が上限を上回り、その状態が続くと認められるとき、9月1日から政令で上限の上に等級を加えられる仕組みがあります。令和2年9月の65万円への引上げは、この仕組みによる政令改正でした。

第1号の平均で同じ計算をすると、次のようになります。

年度末標準報酬月額の平均平均の2倍その時点の上限上限との比較
平成27年度末308,938円617,876円620,000円下回る
平成28年度末308,133円616,266円620,000円下回る
平成29年度末309,994円619,988円620,000円下回る
平成30年度末312,678円625,356円620,000円上回る
令和元年度末314,798円629,596円620,000円上回る
令和2年度末313,099円626,198円650,000円下回る
令和3年度末318,593円637,186円650,000円下回る
令和4年度末320,919円641,838円650,000円下回る
令和5年度末326,159円652,318円650,000円上回る
令和6年度末331,936円663,872円650,000円上回る

※ 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報」年次推移 第3表 厚生年金保険(第1号)標準報酬月額の平均(全被保険者・年度末)

法律の判定に使うのは公務員などを含む全厚生年金被保険者の平均で、この表の第1号の平均とは違います。それでも、民間の第1号だけで見ても、令和5年度末から平均の2倍が65万円を上回っています。前回の62万円のときも、平成30年度末から同じ状態になっていました。上限に張り付く人が増え続けているのは、賃金の伸びに上限が追いついていないことの表れです。

まとめ

  • 令和6年度末の第1号厚生年金被保険者4,284万9,361人のうち、上限の65万円の等級にいるのは304万5,284人(7.11%)。男性では10.54%で、最も人数の多い等級
  • 上限の等級の人数は令和2年度末から4年で30.6%増え、被保険者全体の伸び(5.9%)を大きく上回る
  • 前回の上限引上げ(62万→65万円)の後の年度末でも、62万円以上の人の85.6%は新しい上限に張り付いていた
  • 判定ツールの最適報酬は事業所得1,600万円まで月54万円(上位13.3%)、1,700万円から月90万〜100万円で上限の等級(上位7.1%)に入る
  • 令和9年9月からの上限引上げ(成立済み・未施行)で保険料が変わり得るのは、上限の等級にいる7.11%だけ

よくある質問

厚生年金の標準報酬月額で、いちばん人数が多い等級はどこですか?

令和6年度末の第1号厚生年金被保険者全体では26万円の等級(306万1,470人)が最も多く、上限の65万円(304万5,284人)が僅差の2番目です。男性だけで見ると65万円が最も多く、女性では22万円が最も多い等級です。

標準報酬月額の真ん中(中央値)はいくらですか?

令和6年度末の第1号厚生年金被保険者では、30万円の等級を境に上と下がほぼ半分ずつに分かれます(30万円以上が53.01%、32万円以上が46.63%)。等級でしか分からないため、円単位の中央値は出せません。

この統計で社長(役員)だけの分布は分かりますか?

分かりません。事業年報の標準報酬月額別被保険者数は、役員と従業員を区別していません。役員の報酬の分布を見るなら、国税庁の民間給与実態統計調査が役員を分けて集計しています。

上限の65万円にいる人は、実際にはいくらもらっているのですか?

この統計からは分かりません。上限の等級には報酬月額63万5,000円以上の人がすべてまとめて入るため、月64万円の人も月300万円の人も同じ65万円として数えられます。令和9年9月以降の引上げで実際にどれだけの人の保険料が増えるかは、この統計だけでは決まりません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。