法人化の判断
民泊は原則「雑所得」。青色65万円が使えない分、法人化の分岐が近づく
結論
国税庁は、自己が居住する住宅を使った住宅宿泊事業(民泊)の所得を原則として雑所得としています。雑所得には青色申告特別控除65万円がないため、事業所得として申告できる場合より個人の手取りが減り、法人化との差が縮みます。東京23区・単身で民泊の利益が700万円なら、雑所得の個人と法人化(税理士報酬込み)の手取り差は約8,000円まで近づきます(当サイト試算)。
- 専ら民泊の所得で生計を立てているなど、事業として行っていることが明らかなら事業所得になる。賃貸の空室期間に一時的に行う場合は不動産所得に含めてよい
- 住宅宿泊事業は年180日が上限。宿泊料は1か月未満の貸付けなので、住宅の貸付けと違って消費税の課税対象になる
- 雑所得の赤字は給与など他の所得と損益通算できない。法人なら赤字を10年繰り越せる
自宅の空き部屋や、住まなくなった家を民泊として貸し出す。この所得を確定申告で「事業所得」にできると考えている人は少なくありません。
国税庁の整理では、民泊の所得は原則として雑所得です。そして雑所得には、青色申告特別控除65万円がありません。この差が、法人化の判断に効いてきます。
民泊の所得は原則「雑所得」
国税庁は、住宅宿泊事業法に基づく民泊の所得区分について、次のように整理しています。
| 状況 | 所得区分 |
|---|---|
| 自己が居住する住宅を使って民泊を行う(原則) | 雑所得 |
| 不動産賃貸業を営む人が、賃貸の空室期間に一時的に民泊を行う | 不動産所得に含めてよい |
| 専ら民泊の所得で生計を立てているなど、事業として行っていることが明らか | 事業所得 |
理由として国税庁は、民泊では宿泊者の安全確保や一定の宿泊サービスの提供が義務付けられ、対価には部屋の使用料のほか寝具・清掃・光熱費・日用品などの対価が含まれるため、一般的な不動産の貸付けとは異なることを挙げています。また、使える家屋が生活の本拠などに限られ、宿泊日数にも上限があることから、事業規模・期間を踏まえて原則は雑所得としています。
住宅宿泊事業の宿泊日数の上限は、届出住宅ごとに年180日です(観光庁)。
雑所得になると使えなくなるもの
所得区分が雑所得になると、事業所得と比べて次の点が不利になります。
| 項目 | 事業所得 | 雑所得 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除(最大65万円) | 使える | 使えない |
| 赤字の損益通算(給与などとの相殺) | できる | できない |
| 赤字の繰越し(青色申告なら3年) | できる | できない |
| 家族への給与(青色事業専従者給与) | 使える | 使えない |
民泊は開業時に家具や設備の費用がかかり、1年目は赤字になりやすい事業です。雑所得の赤字は、本業の給与と相殺できず、翌年にも繰り越せません。
法人化の分岐はどれだけ近づくか
民泊の利益(売上−経費)別に、事業所得として青色申告65万円を使える場合と、雑所得の場合の個人の手取りを、法人化した場合と比べました。
| 民泊の利益 | 個人・事業所得(青色65万円) | 個人・雑所得 | 法人化(最適報酬・税理士報酬込み) | 雑所得と法人化の差 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 270.5万円 | 254.8万円 | 223.0万円 | 個人が31.8万円多い |
| 500万円 | 407.8万円 | 383.3万円 | 366.9万円 | 個人が16.4万円多い |
| 700万円 | 528.1万円 | 503.6万円 | 502.8万円 | 個人が0.8万円多い |
※ 当サイトの計算エンジンによる試算(東京23区・単身・40歳未満・売上900万円でインボイス未登録の免税事業者、令和8年分の税率データ)。雑所得の列は青色申告特別控除なしで計算し、個人事業税がかかる前提のまま(かからない場合は個人の手取りがさらに増える)。法人化は2年目以降の税理士報酬を差し引いた額
雑所得の場合、事業所得より個人の手取りが年15万〜25万円少なくなります。その分、法人化との差は利益700万円でほぼ並ぶところまで縮みます。事業所得として申告できる人なら、700万円でも法人化より25万円以上有利です。
民泊の利益が売上1,000万円を超える規模になると、消費税の扱いも加わります。民泊の宿泊料は、1か月未満の貸付けなので住宅の貸付け(非課税)ではなく、ホテルや旅館と同じく消費税の課税対象です。
法人化すると所得区分の問題がなくなる
法人の所得には所得区分がありません。民泊の利益はすべて法人の所得として法人税の対象になり、赤字は10年繰り越せます(欠損金の繰越しは10年)。
ただし、自宅の一部を民泊に使っている場合、法人が民泊を行うには、住宅を法人に貸す形にするなど、権利関係の整理が必要です。自宅を法人に貸すときの家賃の考え方は自宅を法人に貸すときの家賃にまとめています。
不動産の貸付けを法人で行うかどうかの判断は、不動産所得の事業的規模と構造が似ています。どちらも「個人のままだと使えない控除」が、法人化の分岐を近づける方向に働きます。
自分の民泊の売上と経費で比べるときは、当サイトの判定ツールに入力したうえで、雑所得になる場合は青色申告の欄を「なし」にして個人側の手取りを確かめてください。
まとめ
- 自宅を使った民泊の所得は、国税庁の整理では原則として雑所得。事業として行っていることが明らかなら事業所得になる
- 雑所得には青色申告特別控除がなく、赤字の損益通算も繰越しもできない
- 東京23区・単身の試算では、雑所得の場合の個人と法人化の差は、民泊の利益700万円で約8,000円まで縮む
- 民泊の宿泊料は消費税の課税対象。住宅宿泊事業は届出住宅ごとに年180日が上限
- 法人なら所得区分の問題はなくなり、赤字は10年繰り越せる
よくある質問
民泊の所得が20万円以下なら、確定申告は不要ですか?
国税庁は、年末調整済みの給与所得がある人で、民泊による所得が20万円以下でほかに所得がない場合は、確定申告は不要としています。ただし住民税の申告が必要になる場合があります。
法人で民泊を行うこともできますか?
住宅宿泊事業の届出は法人でも行えます。法人の所得はすべて法人税の対象で、所得区分の問題はなくなります。ただし年180日の上限は届出住宅ごとにかかり、法人化しても変わりません。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。