社会保険

労災の特別加入は誰が使っている?事業主64万人、特定フリーランスは1,132人

結論

厚生労働省の労働者災害補償保険事業年報(令和6年度末=令和7年3月31日現在)では、労災保険に特別加入している中小事業主等の事業主は64万4,368人で、その50.7%が建設事業です。労働者を使わない一人親方等は63万8,242人で、97.9%が建設業の一人親方でした。業種を問わずフリーランスが入れる特定フリーランス事業の枠は、始まって5か月の時点で1,132人、ITフリーランスの枠は431人にとどまります。

  • 中小事業主等の枠は労働者を使う事業主が対象で、個人事業主か法人の社長かは問わない。従業員ゼロの一人社長は通常この枠を使えない
  • 建設業以外で一人で働く人の特別加入は、特定フリーランス・ITフリーランス・芸能関係などを合わせても数千人規模
  • 中小事業主等には家族従事者43万1,281人も一緒に加入している

会社の役員も個人事業主も、通常の労災保険の対象ではありません。仕事中のけがに備えるには、特別加入という仕組みを使います。制度の入口は一人社長は労災に入れるかにまとめました。この記事では、実際に誰がどれだけ加入しているかを、厚生労働省の労災保険事業年報で数えます。

特別加入の4区分と加入者数

令和6年度の労働者災害補償保険事業年報の第2-1表から、全国の特別加入者を区分別に並べました。

区分対象加入者数
中小事業主等(事業主)労働者を使う中小事業主644,368人
中小事業主等(家族従事者)上の事業主と一緒に働く家族など431,281人
一人親方等労働者を使わずに対象事業を行う人638,242人
特定作業従事者農作業・ITフリーランスなど対象作業の従事者95,850人
海外派遣者海外の事業へ派遣される人80,539人

※ 厚生労働省 令和6年度 労働者災害補償保険事業年報 第2-1表(令和6年度末=令和7年3月31日現在)。元データは data/official/rousai-tokubetsu-kanyu-r06/、表は scripts/rousai-tokubetsu-kanyu-r06.mjs で再生成できる(業種別の合計が全国計と一致することを検算)

中小事業主等の枠は、労働者を使う事業主が、労働保険事務組合を通して従業員と一体で加入するものです。対象は個人事業主か法人の社長かを問いません。従業員がいない一人社長は、この枠を通常は使えません。

中小事業主等の事業主:半分は建設業

第2-2表で、中小事業主等の事業主を業種別に見ます。

業種事業主数家族従事者数事業主に占める割合
建設事業326,972人132,332人50.7%
その他の事業215,164人196,899人33.4%
製造業86,324人89,022人13.4%
運輸業10,723人9,666人1.7%
林業2,450人1,019人0.4%
漁業1,438人1,063人0.2%

※ 船舶所有者の事業・鉱業・電気ガス水道等は省略

建設事業が半分を占めます。建設現場では元請から労災の加入を求められることが多く、社長自身も特別加入しているためです。「その他の事業」には卸売・小売・飲食・宿泊やサービス業が入ります。

一人親方等:97.9%が建設業

労働者を使わずに働く人の枠である一人親方等は、対象となる事業が法令で決められています。

事業の種類団体数加入者数割合
建設業の一人親方3,112624,654人97.9%
個人タクシー・個人貨物運送業者1758,122人1.3%
林業の一人親方1151,944人0.3%
漁船による自営漁業者621,287人0.2%
特定フリーランス事業71,132人0.2%
あん摩はりきゅう師6476人0.1%
再生資源取扱業者21349人0.1%
柔道整復師696人0.0%
医薬品の配置販売業者1073人0.0%
歯科技工士355人0.0%

建設業の一人親方が62万4,654人と、ほとんどを占めます(一人親方の法人化)。令和6年11月1日に始まった特定フリーランス事業の枠は、令和6年度末で1,132人でした。業種を問わず企業等から業務委託を受けるフリーランスが対象ですが、始まって5か月の時点では利用はまだわずかです。

特定作業従事者の区分にも、一人で働く人向けの枠があります。ITフリーランスは431人、芸能関係作業従事者は1,563人、アニメーション制作作業従事者は34人でした(特定農作業従事者5万9,371人などを含め、区分全体で9万5,850人)。

法人化した一人社長への読み方

数字から分かるのは、特別加入が実質的に建設業と、従業員を使う事業主の制度になっていることです。建設業以外で一人で働く人の加入は、各枠を合わせても数千人規模にとどまります。

法人化しても、社長本人の労災の入口は個人事業主のときと同じ考え方で決まります。

  • 従業員を雇っている会社なら、中小事業主等の枠で社長も加入できる
  • 従業員ゼロなら、業務が一人親方等・特定フリーランス・特定作業の対象に当てはまるかを確認する
  • 当てはまらなければ、民間の保険で備えることになる。役員の業務に起因するけがは健康保険でも原則として給付の対象外で、例外は被保険者5人未満の会社で従業員と同一の業務と認められる場合に限られる(一人社長の傷病手当金)

法人化して協会けんぽに入ると、業務外の病気やけがには傷病手当金が付きます(一人社長の社会保険料)。ただし業務上のけがは労災の領域です。法人化で増える社会保険料と、その代わりに得られる保障の範囲を分けて確かめておくと、判断を誤りません。

まとめ

  • 特別加入している中小事業主等の事業主は64万4,368人、その50.7%が建設事業
  • 一人親方等63万8,242人の97.9%が建設業の一人親方
  • 特定フリーランス事業は令和6年度末で1,132人、ITフリーランスは431人
  • 中小事業主等の枠は労働者を使う事業主向けで、従業員ゼロの一人社長は業務の種類で入口を探す
  • 法人化しても社長本人の労災の入口の考え方は変わらない

よくある質問

一人社長は労災保険の特別加入ができますか。

労働者を使っていれば中小事業主等の枠で加入できます。従業員がいない場合は、建設業の一人親方や特定フリーランス事業など、業務の内容が対象区分に当てはまるかで決まります。法人か個人かではなく、労働者を使うかと業務の種類で入口が分かれます。

特定フリーランスの特別加入はどれくらい使われていますか。

令和6年11月1日に始まり、令和6年度末(令和7年3月31日)の加入者は1,132人、特別加入団体は7でした。始まってから5か月時点の数字です。

特別加入している事業主はどの業種が多いですか。

中小事業主等の事業主64万4,368人のうち、建設事業が32万6,972人(50.7%)、その他の事業が21万5,164人(33.4%)、製造業が8万6,324人(13.4%)です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。