社会保険
協会けんぽの事業所の57%は被保険者2人以下。不動産業は84%
結論
協会けんぽに加入している275万6,729事業所(令和6年度末)のうち、被保険者2人以下は158万906事業所で57.35%を占めます。この規模の事業所の被保険者は合計152万2,216人、1か所当たり平均0.96人です。産業別では不動産業・物品賃貸業が84.0%、学術研究・専門技術サービス業が71.3%、情報通信業が67.8%と高くなっています。
- 被保険者2人以下の事業所は数では57.35%だが、そこで働く被保険者は全体の5.97%。被保険者の多くは大きな事業所にいる
- 加入事業所は平成26年度の172万から令和6年度の272万へ1.58倍。1事業所当たりの被保険者は10.37人(令和2年度末)から9.33人に減った
- 標準報酬月額の平均は全産業31万1,812円。情報通信業37万3,755円、学術研究・専門技術サービス業35万5,151円
このテーマの全体像 一人社長の社会保険料はいくらか
法人化すると、従業員がいなくても会社として社会保険に入ります。では、協会けんぽに加入している会社のうち、一人社長のような小さな事業所はどれくらいあるのでしょうか。協会けんぽの事業年報で数えると、加入事業所の半分以上が被保険者2人以下でした。
275万事業所のうち158万が「2人以下」
使ったのは、全国健康保険協会の**事業年報(令和6年度)**です。協会けんぽに加入している事業所数と被保険者数が、規模別(事業所の被保険者数)・産業別に載っています。
| 規模(被保険者数) | 事業所数 | 割合 | 被保険者数 | 割合 |
|---|---|---|---|---|
| 2人以下 | 1,580,906 | 57.35% | 1,522,216 | 5.97% |
| 3・4人 | 382,133 | 13.86% | 1,302,145 | 5.11% |
| 5~29人 | 658,374 | 23.88% | 7,084,955 | 27.78% |
| 30~99人 | 101,168 | 3.67% | 5,133,790 | 20.13% |
| 100~499人 | 30,627 | 1.11% | 5,832,310 | 22.87% |
| 500~999人 | 2,362 | 0.09% | 1,595,266 | 6.25% |
| 1000人以上 | 1,159 | 0.04% | 3,034,891 | 11.90% |
| 合計 | 2,756,729 | 100% | 25,505,573 | 100% |
※ 令和6年度末現在。被保険者数は任意継続被保険者を含まない
**被保険者2人以下の事業所は158万906か所で、全体の57.35%**です。4人以下まで広げると71.21%になります。
一方、この158万か所で働く被保険者は152万2,216人で、被保険者全体の5.97%しかいません。1か所当たりの被保険者は平均0.96人です。2人以下の区分には1人と2人の事業所が混ざりますが、平均が1人を下回っているので、被保険者が1人の事業所が大半と読めます(1人を下回るのは、年度末に被保険者がいない事業所も含まれるためと考えられます)。
統計は事業所の経営形態を区別していないので、すべてが一人社長の会社とは言えません。それでも、社長だけが被保険者という会社は、協会けんぽの中で例外ではなく、数の上では主流です。
産業別:不動産業は84%、専門サービスとITは7割前後
産業別に、被保険者2人以下の事業所の割合を並べました。
| 産業 | 事業所数 | うち被保険者2人以下 | 2人以下の割合 | 4人以下の割合 | 標準報酬月額の平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産業・物品賃貸業 | 274,235 | 230,259 | 84.0% | 92.6% | 329,808円 |
| 学術研究・専門技術サービス業 | 293,806 | 209,502 | 71.3% | 82.9% | 355,151円 |
| 情報通信業 | 99,544 | 67,446 | 67.8% | 78.2% | 373,755円 |
| 金融・保険業 | 27,260 | 17,850 | 65.5% | 80.3% | 376,562円 |
| 飲食店・宿泊業 | 134,221 | 84,267 | 62.8% | 78.1% | 278,885円 |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 118,631 | 73,965 | 62.3% | 76.6% | 288,054円 |
| 卸売・小売業 | 433,389 | 259,188 | 59.8% | 74.4% | 311,451円 |
| 教育・学習支援業 | 33,956 | 19,722 | 58.1% | 70.1% | 288,734円 |
| サービス業 | 204,349 | 107,273 | 52.5% | 67.7% | 277,368円 |
| 建設業 | 490,893 | 254,495 | 51.8% | 68.8% | 362,869円 |
| 農林水産業 | 46,743 | 22,953 | 49.1% | 69.0% | 292,853円 |
| 製造業 | 258,152 | 108,645 | 42.1% | 55.9% | 313,250円 |
| 医療・福祉 | 234,008 | 82,321 | 35.2% | 49.5% | 293,876円 |
| 運輸業・郵便業 | 77,133 | 25,647 | 33.3% | 43.7% | 323,438円 |
| 全産業 | 2,756,729 | 1,580,906 | 57.3% | 71.2% | 311,812円 |
※ 主な産業を抜粋。標準報酬月額の平均は産業全体(規模を問わない)の値で、2人以下の事業所だけの平均ではない
最も高いのは**不動産業・物品賃貸業の84.0%**です。賃貸物件を持つ資産管理会社のように、社長1人で運営する法人が多い業種です。不動産の法人化と社会保険の関係は不動産管理会社の3方式で扱っています。
法人化を考える個人事業主に多い業種も上位に並びます。学術研究・専門技術サービス業(コンサルタント、デザイン、設計など)は71.3%、情報通信業(ソフトウェア開発、Web制作など)は67.8%です。これらの業種では、法人化した会社の多くが社長1人で協会けんぽに入っていることになります。
建設業は51.8%と全体より低めですが、事業所数が49万と最も多いため、2人以下の事業所の数では25万4,495か所と卸売・小売業に次ぐ規模です。
加入事業所は10年で1.58倍、1か所当たりの人数は減っている
協会けんぽの加入事業所は増え続けています。年度平均の事業所数は、平成26年度の172万0,178から令和6年度の271万9,216へ、10年で1.58倍になりました。
| 年度 | 事業所数(年度平均) |
|---|---|
| 平成26年度 | 1,720,178 |
| 平成28年度 | 1,936,246 |
| 平成30年度 | 2,177,158 |
| 令和2年度 | 2,365,928 |
| 令和4年度 | 2,533,479 |
| 令和6年度 | 2,719,216 |
この間に、1事業所当たりの被保険者数は減っています。年度末の数字で、令和2年度の10.37人から令和6年度の9.33人へ下がりました。事業所の増え方に比べて被保険者の増え方がゆるやかで、小さな事業所の比重が高まっているということです。
増加の背景には、年金事務所の加入指導があります。厚生年金の適用事業所の増加の9割は加入指導による適用でした(厚生年金の適用事業所数の推移)。法人は従業員がいなくても適用事業所になるため、社会保険に入っていなかった小さな会社が加入していったことが、小規模事業所の増加につながっていると考えられます。
一人社長の会社に、協会けんぽが求めること
法人の事業所は、従業員の人数にかかわらず健康保険・厚生年金保険の適用事業所です。役員報酬を受ける社長は被保険者になり、健康保険組合に入らなければ協会けんぽの加入者になります。法人化で社会保険に入る義務の範囲は法人化すると社会保険は強制加入で整理しています。
被保険者2人以下の事業所は数が多い一方、給付の受け方は大きな事業所と違います。同じ協会けんぽの統計では、2人以下の事業所の傷病手当金の受給件数は被保険者の人数に対して平均の0.49倍、出産手当金は0.50倍でした(傷病手当金の実績19万件、出産手当金の実績2万件)。保険料は報酬に比例して払う一方、休業して給付を受けることは少ない、という形です。
社長1人の会社で社会保険料がいくらになり、手取りがどう変わるかは一人社長の社会保険料に早見表があります。自分の売上と経費では、判定ツールで役員報酬の最適額と社会保険料をまとめて確かめられます。
まとめ
- 協会けんぽの加入275万6,729事業所のうち、被保険者2人以下は158万906事業所(57.35%)。4人以下なら71.21%
- 2人以下の事業所の被保険者は152万2,216人で全体の5.97%、1か所当たり平均0.96人。被保険者1人の事業所が大半
- 産業別の2人以下の割合は、不動産業・物品賃貸業84.0%、学術研究・専門技術サービス業71.3%、情報通信業67.8%
- 加入事業所は平成26年度から令和6年度で1.58倍。1事業所当たりの被保険者は10.37人から9.33人に減った
- 2人以下の事業所は、傷病手当金・出産手当金の受給件数が平均の約半分
よくある質問
一人社長の会社も協会けんぽに入らないといけないのですか。
法人の事業所は、従業員がいなくても健康保険・厚生年金保険の適用事業所です。役員報酬を受ける社長は被保険者になり、健康保険組合に入らない場合は協会けんぽに加入します。
被保険者2人以下の事業所はすべて一人社長の会社ですか。
統計は事業所の業態や経営者の属性を区別していないため、すべてが一人社長の会社とは言えません。従業員1〜2人の個人事業所なども含まれます。ただし1か所当たりの被保険者が平均0.96人なので、被保険者1人の事業所が大半と読めます。
被保険者数が平均0.96人と1人を下回るのはなぜですか。
年度末時点で被保険者が0人の事業所が含まれるためと考えられます。役員が報酬を受けなくなった、従業員が退職したなどで、事業所としての加入が残ったまま被保険者がいない状態です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。