社会保険

出産手当金の実績2万件。2人以下の会社は1件79日・44万円

結論

令和7年10月の出産手当金2万549件を規模別に見ると、被保険者2人以下の事業所は1件当たり79.49日・44万721円で、500人以上の87.10日・49万9,658円より7.6日短く、件数は女性被保険者の人数に対して平均の0.50倍でした。単胎の上限98日に対し、実績の平均は83.03日です。

  • 受給の72.26%は1回の申請が80日以上で、産前・産後をまとめて申請する形が中心。資格喪失後の受給は0.32%しかない
  • 役員報酬が月54万円なら日額11,780円。上限98日で115.4万円、実績平均83.03日で97.8万円、2人以下の平均79.49日で93.6万円
  • 女性の受給は30〜34歳が39.08%。40歳以上は女性被保険者の62.99%を占めるが、受給は5.74%

出産手当金は、健康保険にあって国民健康保険にない給付の1つです。では実際には、どのくらいの日数・金額が支給されているのでしょうか。協会けんぽの令和7年度の調査を組み直すと、小さな事業所ほど受給が少なく、1件当たりの日数も短いという形が出てきました。

調査は令和7年10月の受給者2万549件

使ったのは、全国健康保険協会の現金給付受給者状況調査報告(令和7年度)第二部 出産手当金です。令和7年10月に出産手当金を受けた人を対象にした調査で、調査件数は2万549件でした。

項目令和7年10月
調査件数20,549件
1件当たり日数83.03日
1件当たり金額462,019円
女性被保険者1,000人当たり件数(1か月)1.85件
うち資格喪失後の受給0.32%

出産手当金の対象期間は、健康保険法第102条により、出産の日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までのうち、仕事を休んだ期間です。単胎なら最長98日になります。実績の平均は83.03日で、上限より15日ほど短いことになります。産前に働いていた日は対象から外れるためです。

1回でまとめて申請する人が7割

傷病手当金は1か月分ずつ申請する人が多いのに対し、出産手当金は違います。1回の申請の支給日数を見ると、**80日以上が72.26%**です。産前・産後の全期間を、産後にまとめて1回で申請する形が中心になっています。

1回の支給日数件数の割合1件当たり金額
55日以下12.50%—
56~60日7.00%313,585円
61~79日8.24%—
80日以上72.26%529,368円

※ 55日以下・61~79日は原表の区分を合算

56〜60日の区分が7.00%と目立つのは、産後の56日だけを申請した人がここに集まるためと読めます。また、資格喪失後の受給は0.32%しかありません。出産手当金はほぼ在職中の給付だと言えます。

規模別:2人以下の事業所は件数が半分、日数も短い

公式表の「件数の構成割合」を、参考値の「被保険者数(女性)の構成割合」で割って偏り(全体=1.00)とし、全国の1,000人当たり件数に掛けました。傷病手当金の実績記事(傷病手当金の実績19万件)と同じ組み直し方です。

事業所の規模1件当たり日数1件当たり金額件数の割合女性被保険者の割合偏り1,000人当たり件数(1か月)
総数83.03日462,019円100%100%1.001.85件
2人以下79.49日440,721円2.23%4.45%0.500.92件
3・4人79.32日425,189円2.62%4.39%0.601.10件
5~9人78.88日433,837円6.65%8.30%0.801.48件
10~19人80.16日441,888円10.06%9.62%1.051.93件
20~29人80.90日448,891円7.47%6.60%1.132.09件
30~49人81.76日454,247円9.16%8.23%1.112.06件
50~99人81.88日446,260円11.74%11.10%1.061.95件
100~299人83.45日455,343円19.03%17.82%1.071.97件
300~499人84.63日480,120円7.83%6.80%1.152.13件
500人以上87.10日499,658円23.21%22.68%1.021.89件

被保険者2人以下の事業所は、女性被保険者の人数に対して受給件数が0.50倍です。10人以上の事業所はどこも1.0倍を超えるので、小さな事業所だけが大きく下回っています。

1件当たり日数も、9人以下の区分は79日前後で、500人以上の87.10日より7〜8日短くなります。傷病手当金では2人以下の事業所の日数が全区分で最も長かったので、逆の形です。

統計から理由は断定できませんが、制度の形から読めることはあります。対象になるのは「仕事を休んだ期間」だけです。代わりのいない小さな事業所では、産前ぎりぎりまで働く人が多ければ、その分だけ日数が短くなります。 件数が少ないことには、女性被保険者の年齢構成の違い(小さな事業所ほど出産年齢の人が少ないなど)も混ざっていると考えられます。

等級別:報酬が高い帯ほど受給は少ない

標準報酬等級標準報酬月額1件当たり日数1件当たり金額件数の割合女性被保険者の割合偏り
第1〜5級5.8万〜9.8万円84.17日239,035円0.93%2.15%0.43
第6〜10級10.4万〜13.4万円82.38日262,218円3.51%4.19%0.84
第11〜15級14.2万〜18.0万円81.40日314,494円13.67%14.98%0.91
第16〜20級19.0万〜26.0万円82.77日420,818円49.53%43.46%1.14
第21〜25級28.0万〜36.0万円84.16日561,394円26.06%24.87%1.05
第26〜30級38.0万〜50.0万円84.41日737,716円4.96%7.61%0.65
第31〜35級53.0万〜65.0万円83.34日956,354円0.67%1.31%0.51
第36〜40級68.0万〜83.0万円80.21日1,144,798円0.32%0.61%0.52
第41〜45級88.0万〜109.0万円83.11日1,518,569円0.18%0.38%0.46
第46〜50級115.0万〜139.0万円86.31日2,090,766円0.17%0.44%0.38

受給が多いのは第16〜25級(月19万〜36万円)で、第26級以上は0.4〜0.65倍に下がります。報酬の高い女性被保険者は年齢が高めで、出産年齢から外れる人が多いことが効いていると考えられます。年齢別に見ると、受給の39.08%は30〜34歳で、女性被保険者の62.99%を占める40歳以上は受給の5.74%でした。

一方、1件当たり金額は等級に沿って増え、第31〜35級(月53万〜65万円)で95万6,354円です。日数は等級によらず80〜86日に収まっているので、金額の差はほぼ日額の差です。

役員報酬別に、受け取れる額を出す

出産手当金の日額は、傷病手当金と同じく、支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2です(健康保険法第102条第2項が第99条第2項を準用)。報酬が1年間一定なら、平均は標準報酬月額そのものになります。

役員報酬(月)標準報酬月額日額98日分(単胎の上限)実績平均83.03日分2人以下の平均79.49日分
月20万円200,000円4,447円43.6万円36.9万円35.3万円
月30万円300,000円6,667円65.3万円55.4万円53.0万円
月40万円410,000円9,113円89.3万円75.7万円72.4万円
月54万円530,000円11,780円115.4万円97.8万円93.6万円
月70万円710,000円15,780円154.6万円131.0万円125.4万円
月100万円980,000円21,780円213.4万円180.8万円173.1万円

月54万円は、当サイトの計算エンジンが売上1,500万円・経費300万円の人について手取り最大とした役員報酬です。上限の98日休めば115.4万円ですが、2人以下の事業所の実績どおり79.49日なら93.6万円で、差は21.8万円です。産前にどこまで働くかで、受け取る額はこれだけ動きます。

一人社長が受け取るための2つの条件

1つは、休んだ期間に報酬を受けないことです。健康保険法第108条第2項は、出産で休んだ期間に報酬を受けられる場合は出産手当金を支給せず、報酬が出産手当金より少ないときに差額を支給すると定めています。役員報酬を毎月同額で払い続けると、受け取れません。

もう1つは、実際に仕事から離れることです。対象は「労務に服さなかった期間」なので、休業中に会社の仕事をしていれば、その日は外れます。社長が自分1人の会社では、ここがいちばん難しい条件になります。

この2つを満たすと、産前産後休業の期間の健康保険料・厚生年金保険料も、本人負担分と会社負担分の両方が免除されます(健康保険法第159条の3)。役員にもこの免除が使えることと、育児休業の免除は使えないことは一人社長は育児休業で社会保険料を免除できないで整理しています。

個人事業主との差は「所得の補填」

個人事業主のままでも、出産時の負担軽減はあります。国民年金保険料は出産予定月の前月から4か月間(多胎は6か月間)免除され、国民健康保険料も同じ期間の所得割額・均等割額が減額されます。どちらも届出が必要です。法人の産休免除といくら違うかは出産で国保は4か月分軽くなる。法人の産休免除と比べた差額で売上別に比べています。

ですから、法人化で増えるのは保険料の軽減ではなく、休んだ期間の所得の補填です。役員報酬月30万円で実績平均83.03日なら55.4万円、月54万円なら97.8万円が、個人事業主には存在しない給付として加わります。配偶者を役員や従業員にして社会保険に入れる場合も同じ考え方です。保険料の増加分との比較は一人社長の社会保険料で、出産手当金と傷病手当金の制度の全体は一人社長の傷病手当金はいくらでまとめています。

単年の手取りの差だけでは、この給付は見えません。まず自分の売上と経費で、法人化したときの役員報酬と社会保険料を確かめてください。

まとめ

  • 令和7年10月の出産手当金は2万549件。1件当たり83.03日・46万2,019円で、単胎の上限98日より15日短い
  • 受給の72.26%は1回80日以上の申請で、産前産後をまとめて申請する形が中心。資格喪失後の受給は0.32%
  • 被保険者2人以下の事業所は、女性被保険者に対する受給件数が0.50倍、1件当たり79.49日で500人以上より7.6日短い
  • 役員報酬月54万円なら日額11,780円。98日で115.4万円、2人以下の実績平均の日数なら93.6万円
  • 受け取るには休業中に報酬を受けず、実際に仕事から離れることが必要。個人事業主との差は所得の補填の有無

よくある質問

女性の一人社長でも出産手当金を受け取れますか。

役員も健康保険の被保険者なら対象です。ただし健康保険法第108条第2項により、出産で休んだ期間に報酬を受けられる場合は支給されず、報酬が出産手当金より少ないときに差額が出ます。役員報酬を払い続けていると受け取れません。

出産手当金はいつからいつまでが対象ですか。

健康保険法第102条により、出産の日(出産が予定日より後なら予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までのうち、仕事を休んだ期間が対象です。

個人事業主のときは出産で何も受けられないのですか。

出産手当金はありませんが、国民年金保険料は出産予定月の前月から4か月間(多胎は6か月間)免除され、国民健康保険料も同じ期間の所得割額・均等割額が減額されます。いずれも届出が必要です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。