設立の手続き
試用期間中なら解雇予告は不要?「14日」を過ぎると変わる線
結論
解雇予告が不要になるのは、試用期間中で、かつ雇い入れてから14日以内の場合だけです(労働基準法21条)。試用期間を3か月と定めていても、15日目以降に解雇するなら30日前の予告か30日分以上の平均賃金が必要で、4月1日入社・月給25万円・月末締めの人を5月中に解雇すると、解雇予告手当は25万円です。
- 「14日」は試用期間の長さではなく、実際に引き続き使用した日数で数える。就業規則で試用期間を何か月と定めても延びない
- 平均賃金は通常は試用期間を除いて計算するが、試用期間中に解雇するときは試用期間中の日数と賃金で計算する(労基則3条)
- 試用期間中でも、給与を払うなら入社日から社会保険の被保険者になる。会社負担は月給25万円で月3万7,830円(東京都・40歳未満)
試用期間は「合わなければ本採用しない」ための期間だと考えられがちです。しかし労働基準法が試用期間を特別扱いするのは、雇い入れてから14日以内の解雇予告だけです。
一人会社が初めて人を雇う場合、合わなかったときに払うお金の見込みを、採用前に持っておく必要があります。
予告が要らないのは「試用期間中」かつ「14日以内」
労働基準法20条は、従業員を解雇するときは30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払うことを求めています。
21条はその例外を4つ挙げ、その1つが「試の使用期間中の者」です。ただし同条ただし書で、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は例外から外れるとしています。
| 解雇する時点 | 解雇予告・解雇予告手当 |
|---|---|
| 試用期間中で、雇い入れから14日以内 | 不要 |
| 試用期間中だが、雇い入れから15日目以降 | 必要(30日前予告か30日分以上の平均賃金) |
| 本採用後 | 必要 |
14日は試用期間の長さとは関係ありません。就業規則や雇用契約で試用期間を3か月、6か月と定めても、予告が不要な期間は延びません。実務上の「試用期間中だから予告なしで」は、ほとんどの場面で通用しないということです。
予告の日数は、平均賃金を払った日数分だけ短くできます(20条2項)。たとえば10日前に予告するなら、20日分の平均賃金を払えば足ります。
試用期間中の平均賃金は、試用期間の日数と賃金で計算する
解雇予告手当の基礎になる平均賃金は、直前3か月の賃金総額を暦日数で割った額です(12条1項)。賃金締切日があれば直前の締切日から数え、雇い入れから3か月に満たない人は雇い入れ後の期間で計算します(同条2項・6項)。
ここに1つ、試用期間に固有の規定があります。12条3項5号は、平均賃金の計算から試みの使用期間を除くとしています。本採用後に解雇する場合、試用期間中の日数と賃金は分母にも分子にも入りません。
一方で、試用期間中に解雇するなら除く期間しか残らず計算できません。そこで労働基準法施行規則3条が、試用期間中に算定事由が発生した場合は、その期間の日数と賃金を算入すると定めています。
4月1日入社・月末締め・毎月同額の月給で、試用期間中に解雇した場合の解雇予告手当(予告なしで即日解雇したとき)は次のとおりです。
| 月給 | 5月中に解雇(算定期間4/1〜4/30・30日) | 6月中に解雇(4/1〜5/31・61日) | 7月中に解雇(4/1〜6/30・91日) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 20万円 | 19万6,721円 | 19万7,802円 |
| 25万円 | 25万円 | 24万5,902円 | 24万7,253円 |
| 30万円 | 30万円 | 29万5,082円 | 29万6,703円 |
※ 残業代・手当がない場合の当サイトの試算。平均賃金は銭未満切捨て、30日分の合計は円未満を四捨五入
月給とほぼ同じ額が、予告なしで辞めてもらう場合のコストになります。30日前に予告すれば手当は不要ですが、その30日間の給与は払います。平均賃金の計算そのものは解雇予告手当はいくらかで詳しく説明しています。
予告や手当を払っても、解雇が有効になるとは限らない
解雇予告は、解雇の手続きのルールです。解雇そのものが認められるかは別の問題で、労働契約法16条が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の解雇を無効としています。
試用期間中の本採用拒否も解雇の一種です。採用時に知り得なかった事情が判明したなど、合理的な理由が求められる点は変わりません。「30日分払えば辞めてもらえる」と考えて採用すると、想定外の紛争になり得ます。
一人会社が試用期間を設ける意味は、予告の免除よりも、本採用の判断基準を事前に書面で示しておくことにあります。採用時に書面で渡す項目は労働条件通知書に書く項目で整理しています。
試用期間中でも、社会保険は入社日から
もう1つの誤解が、試用期間中は社会保険に入れなくてよい、というものです。
日本年金機構は、適用事業所で労務の対価として給与を受ける使用関係があれば被保険者になり、試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められるとしています。試用期間は、2か月以内の臨時雇用のような適用除外には当たりません。資格取得日は入社日です。
法人は従業員がいなくても社会保険の適用事業所なので、雇った人がフルタイムなら入社日から加入します。月給別の会社負担(健康保険・厚生年金・子ども・子育て拠出金、東京都・40歳未満)は次のとおりです。
| 月給 | 標準報酬月額 | 会社負担(月) | 会社負担(年) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 20万円 | 2万9,100円 | 34万9,200円 |
| 25万円 | 26万円 | 3万7,830円 | 45万3,960円 |
| 30万円 | 30万円 | 4万3,650円 | 52万3,800円 |
※ 当サイトの計算エンジンで算出。厚生年金保険料率18.3%、子ども・子育て拠出金0.36%、協会けんぽ東京支部の令和8年度料率(健康保険には子ども・子育て支援金を含む)。雇用保険・労災保険の会社負担は含まない
届出の手順は被保険者資格取得届の出し方にまとめています。
採用前に「合わなかった場合」の費用を見積もる
一人会社が初めて人を雇うとき、試用期間を理由に費用を小さく見積もるのは危険です。月給25万円の人を雇って2か月で辞めてもらうと、給与2か月分50万円、社会保険の会社負担約7万6,000円、即日解雇なら解雇予告手当約25万円で、合計80万円を超えます。
雇い入れ全体の費用は一人社長が初めて従業員を雇う費用で計算しています。人件費が経費に乗ると、法人化の損益分岐も変わります。当サイトの判定ツールで、人件費を含めた経費で自分の数字を確かめてください。
まとめ
- 解雇予告が不要なのは、試用期間中で、かつ雇い入れから14日以内の場合だけ。試用期間を長く定めても延びない
- 平均賃金は通常、試用期間を除いて計算するが、試用期間中に解雇するときは試用期間の日数と賃金で計算する
- 4月1日入社・月給25万円・月末締めの人を5月中に即日解雇すると、解雇予告手当は25万円
- 予告や手当を払っても、合理的な理由のない解雇は労働契約法16条で無効になり得る
- 試用期間中でも給与を払うなら入社日から社会保険に加入する。会社負担は月給25万円で月3万7,830円
よくある質問
試用期間を1か月と決めておけば、その間は予告なしで辞めてもらえますか?
いいえ。予告が不要なのは雇い入れてから14日以内に限られます。試用期間を1か月と定めても、15日目以降の解雇には30日前の予告か解雇予告手当が必要です。
試用期間中の従業員は、社会保険に入れなくてもよいですか?
給与を払う使用関係があれば、試用期間中でも入社日から健康保険・厚生年金の被保険者になります。日本年金機構は、試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められるとしています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。