税金の基礎
確定申告の誤りに気づいたら。修正申告の加算税は調査通知の前後で0%・5%・10%
結論
期限内申告の後に税額が少なかったと分かった場合、税務署からの調査通知の前に自分で修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません(国税通則法65条6項)。調査通知の後で更正の予知前なら5%、調査で指摘された後なら10%です。売上300万円の計上漏れでは、追加の所得税56.3万円に対し、加算税は0円・3.1万円・5.9万円と分かれます。延滞税は時期にかかわらずかかります。
- 期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分には、さらに5%が上乗せされる(国税通則法65条2項)
- 延滞税は法定納期限の翌日から納付の日まで。令和8年の割合は年2.8%(納期限の翌日から2か月を過ぎると年9.1%)
- 所得が増えると、住民税・個人事業税・国民健康保険料も後から増える。所得税だけで判断しない
確定申告を出した後で、入金の漏れや経費の二重計上に気づくことがあります。このとき大事なのは、税額より先に自分で直すタイミングです。同じ誤りでも、税務署から連絡が来る前か後かで、上乗せされる加算税が変わります。
加算税は、調査通知の前か後かで3段階に分かれる
期限内に申告した税額が少なかった場合に上乗せされるのが、過少申告加算税です。国税通則法65条が割合を定めています。
| 修正のタイミング | 過少申告加算税 | 根拠 |
|---|---|---|
| 調査通知の前に、自分で修正申告 | かからない | 65条6項 |
| 調査通知の後、更正を予知する前に修正申告 | 5% | 65条1項かっこ書き |
| 調査で誤りを指摘された後(更正の予知後)の修正申告・更正 | 10% | 65条1項 |
調査通知とは、税務署が調査の前に、調査の対象となる税目や期間などを納税者に伝えることです(国税通則法74条の9)。この通知の前に自分から直せば、加算税はゼロです。
50万円を超える部分には5%が上乗せ
65条2項は、追加で納める税額のうち、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分に、さらに5%を加えるとしています。調査通知後なら5%+5%、調査後なら10%+5%です。
期限内に納めた税額が少ない人ほど、50万円が基準になります。当初の所得税が20万円だった人が追加で120万円納める場合、50万円を超える70万円の部分が上乗せの対象です。
帳簿を出せないと、さらに加重される
令和6年1月以後に法定申告期限が来る年分からは、65条4項の加重もあります。調査で帳簿の提示・提出を求められて出さなかった場合や、売上など重要な事項の記載が著しく不十分な場合に、10%(不十分な場合は5%)が上乗せされます。帳簿を付けていないこと自体が、加算税の割合を押し上げる仕組みです。
売上の計上漏れ別に、いくら増えるか
売上1,200万円・経費700万円で期限内に申告した個人事業主が、後から売上の計上漏れに気づいた場合です。
| 計上漏れの売上 | 追加の所得税 | 自主修正(調査通知前) | 調査通知後・更正の予知前 | 調査後(更正の予知後) | 延滞税(259日) | 住民税・事業税・国保の増加 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 50万円 | 45,600円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 122,600円 |
| 100万円 | 188,000円 | 0円 | 9,000円 | 18,000円 | 3,500円 | 245,200円 |
| 300万円 | 563,300円 | 0円 | 31,000円 | 59,000円 | 11,100円 | 735,600円 |
| 600万円 | 1,192,600円 | 0円 | 94,000円 | 153,500円 | 23,600円 | 1,329,148円 |
※ 売上1,200万・経費700万で期限内申告(青色65万・e-Tax)、東京23区・40歳未満・独身・インボイス登録済み。加算税・延滞税は所得税(復興特別所得税込み)分のみ。延滞税は年2.8%(令和8年の割合)で259日。帳簿の不提示・記載不備による加重(国税通則法65条4項)と重加算税は含まない。当サイトで計算(scripts/shusei-shinkoku-kasanzei.mjs)
表から読み取れることが3つあります。
1つ目は、加算税より、本税と住民税などの増加のほうがはるかに大きいことです。300万円の漏れで、加算税は最大5.9万円ですが、所得税が56.3万円、住民税・個人事業税・国保が73.6万円増えます。修正申告を先延ばしにしても、この部分は減りません。
2つ目は、漏れが小さいと加算税がかからないことがある点です。加算税は計算の基礎となる税額の1万円未満を切り捨て、5,000円未満なら課されません(国税通則法118条3項・119条4項)。50万円の漏れでは、追加の所得税4.56万円の5%が2,000円となり、課されません。
3つ目は、50万円と100万円で追加の所得税が4倍になっている点です。所得が増えて、基礎控除が104万円から67万円の段階に下がったためです。令和8年分の基礎控除の段階は基礎控除104万円の条件で整理しています。
延滞税は、自主修正でもかかる
加算税と違い、延滞税は修正のタイミングで免除されません。国税通則法60条により、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じてかかります。
- 令和8年の割合は、納期限の翌日から2か月までが年2.8%、それを過ぎると年9.1%
- 修正申告の場合、納期限は修正申告書を出した日。出した日に納めれば、法定納期限からの期間は年2.8%で計算される
- 修正申告を出したのに納付を2か月以上遅らせると、そこから年9.1%に上がる
期限内に申告していて、法定申告期限から1年を過ぎてから修正申告した場合は、1年を過ぎた日の翌日から修正申告の日までの期間が延滞税の計算から除かれます(国税通則法61条1項)。ただし、偽りその他不正の行為で税を免れていた人が調査を予知して出した修正申告には、この除外はありません。
所得税を直すと、住民税・国保・事業税も後から増える
住民税、個人事業税、国民健康保険料は、所得税の申告で確定した所得をもとに計算されます。所得税の修正申告で所得が増えれば、これらも後から追加で請求されます。上の表の最右列がその額で、300万円の漏れなら73.6万円です。
とくに国保は、前年の所得で翌年度の保険料が決まります。修正申告が年度をまたぐと、過去の年度の保険料がさかのぼって増えることがあります。修正申告を出したら、住民税と国保の追加の通知が来る前提で資金を残しておく必要があります。
気づいたら、まず何を確かめるか
誤りに気づいたとき、確認する順番は次のとおりです。
- 税額が増えるのか減るのか。減る方向なら修正申告ではなく更正の請求です(更正の請求の期限は5年)
- 調査通知がもう来ているか。来ていなければ、自主修正で加算税はかからない
- 帳簿と証拠がそろっているか。修正後の数字の根拠を残す
- 住民税・国保の増加分の資金。所得税の追加だけで資金計画を立てない
期限までに申告できなかった場合は、仕組みが別です。過少申告加算税ではなく無申告加算税がかかり、青色申告特別控除も65万円が使えなくなります。その場合は期限後申告と青色65万円を、法人の場合の無申告加算税は法人の無申告加算税はいくらかを見てください。
まとめ
- 期限内申告の誤りは、調査通知の前に自分で修正申告すれば過少申告加算税はかからない
- 調査通知後・更正の予知前は5%、調査後は10%。期限内申告税額と50万円の多いほうを超える部分は5%上乗せ
- 延滞税は自主修正でもかかる。令和8年は年2.8%、納付が遅れて2か月を過ぎると年9.1%
- 計上漏れ300万円の例では、加算税は最大5.9万円だが、所得税56.3万円と住民税・事業税・国保73.6万円が増える
- 帳簿を提示できない・記載が不十分だと、加算税がさらに加重される
計上漏れを直すと所得が増え、法人化の損益分岐点を超えることもあります。一般論の数字ではなく、修正後の売上と経費で確かめてください。
よくある質問
修正申告と更正の請求はどう違いますか
税額が少なすぎた場合に自分で直すのが修正申告、多すぎた場合に税務署へ減額を求めるのが更正の請求です。修正申告はいつでも出せますが、更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内です。
期限後に申告した場合も、修正申告で過少申告加算税がかかりますか
期限後申告の後の修正申告には、原則として過少申告加算税ではなく無申告加算税がかかります。国税通則法65条1項は、期限内申告書が提出された場合を前提にしています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。