税金の基礎

会社員から独立1年目の税金と保険料。3年目に年70万円増える理由

結論

月給40万円の会社員が4月に独立し、事業所得(売上−経費)が独立した年450万円・翌年以降600万円の場合、税金と保険料の合計は独立した年102.2万円、翌年149.6万円、3年目以降172.7万円です。住民税・国民健康保険は前年の所得、個人事業税は前年の事業所得で決まるため、収入がほぼ同じでも負担は2年遅れで年70万円増えます。

  • 独立した年の住民税23.0万円と国保(年度38.1万円)は、会社員時代の給与所得340万円で決まっている
  • 個人事業税は開業した年の分から、翌年8月・11月に課税される。開業年は事業主控除290万円が月割(9か月なら217万5,000円)
  • 独立した年の所得税は給与と事業所得を合算して翌年3月に確定申告する。1〜3月の給与からの源泉徴収はそこで精算される

会社を辞めて独立した最初の年は、思ったより税金が少なく感じることがあります。ところが2年目、3年目と進むと、収入が同じでも負担は増えていきます。税金と保険料の多くが「前年の所得」で決まるためです。

どの負担が何年目に来るのかを、設例で計算しました。

設例:月給40万円の会社員が4月に独立

  • 前年まで会社員(月給40万円・賞与なし・年480万円)
  • 独立した年は1〜3月に給与120万円を受け取り、4月1日に個人事業を開業
  • 事業所得(売上−経費)は、独立した年の4〜12月で450万円、翌年以降は年600万円
  • 青色申告特別控除65万円(e-Tax)、東京23区・40歳未満・単身、個人事業税5%の業種

負担は、独立した年102万円→翌年150万円→3年目173万円

負担(その年に払う額)独立した年翌年3年目以降(定常)何の所得で決まるか
所得税(その年の所得分)17.1万円38.3万円35.5万円その年の所得(独立した年は給与+事業)
住民税23.0万円32.8万円41.4万円前年の所得
国民健康保険28.6万円45.4万円58.8万円前年の所得(4月〜翌3月)
国民年金16.1万円21.5万円21.5万円定額
個人事業税0.0万円11.6万円15.5万円前年の事業所得
会社員時代の社会保険料(1〜3月)17.5万円——給与
合計102.2万円149.6万円172.7万円
その年の収入(給与+事業所得)570.0万円600.0万円600.0万円

※ 住民税は前年の所得に対する年税額、国保は年度(4月〜翌3月)の保険料を月数で按分。所得税はその年の所得に対する年税額(独立した年の分は翌年3月の確定申告で精算)。個人事業税は開業年の事業主控除を9か月分に月割。雇用保険料と国保の減免は含めない。当サイトの計算エンジンの関数で算出(scripts/dokuritsu-1nenme-zeikin.mjs)

収入は3年とも600万円前後なのに、負担は102.2万円→149.6万円→172.7万円と増え、3年目は独立した年より年70.5万円重くなります。主な理由は、住民税・国保・個人事業税の3つが1年遅れで追いかけてくることです。

独立した年:住民税と国保は、会社員時代の給与で決まる

住民税は、前年1月1日から12月31日までの所得をもとに課税されます(総務省)。独立した年の6月から届く住民税は、会社員時代の給与所得(480万円の給与で340万円)に対するもので、設例では23.0万円です。

国民健康保険も、4月から翌3月までの年度の保険料を前年の所得で計算します。独立した年度の国保は、同じく会社員時代の給与所得340万円で決まり、年度で38.1万円です。設例では4月から加入するので、その年に払うのは9か月分の28.6万円になります。

つまり独立した年は、事業の実績とは無関係に、前年の給与で決まった住民税と国保を払うことになります。会社員時代の給与が高かった人ほど、1年目の負担は重く感じられます。国保と健康保険の任意継続のどちらが安いかは健康保険の任意継続と国保はどっち?で比べています。

翌年:事業の所得が住民税・国保・個人事業税に乗ってくる

翌年からは、独立した年の所得(給与所得46万円+事業所得385万円=合計431万円)で住民税と国保が決まります。さらに、独立した年の事業所得に対する個人事業税が、翌年の8月と11月に課税されます。

個人事業税は、所得から事業主控除290万円を引いた額に税率をかけますが、年の途中で開業した場合は事業主控除が月割になります(東京都主税局)。4月開業なら9か月分の217万5,000円です。設例では(450万円−217万5,000円)×5%=11.6万円でした。業種ごとの税率は個人事業税がかからない業種があるで扱っています。

3年目:ようやく「事業所得600万円」の負担になる

3年目になると、前年も前々年も通年で事業所得600万円なので、住民税・国保・個人事業税がすべて事業の所得で決まる定常状態に入ります。負担は172.7万円で、事業所得600万円の個人事業主が毎年払う額です。

1年目・2年目の負担が軽く見えるのは、前年の所得が低い、あるいは給与だったからにすぎません。1年目の手取りを基準に生活や投資の計画を立てると、3年目に年70万円の差が出ることになります。事業所得別の定常状態の負担は売上1,000万円のフリーランスの手取りは540万円で一覧にしています。

独立した年の所得税は、翌年3月に精算する

独立した年の所得税は、1〜3月の給与と4〜12月の事業所得を合算して計算します。年の途中で退職して再就職しなければ、会社での年末調整はないので、翌年3月15日までに確定申告をします。1〜3月の給与から源泉徴収された所得税は、このときに精算されます。

令和8年分は基礎控除の引上げ(合計所得489万円以下で104万円)が12月1日施行のため、会社員時代の源泉徴収には反映されていません(国税庁)。独立した年が令和8年なら、確定申告で引上げ後の基礎控除を使って精算することになります。

法人で独立する場合との違い

最初から法人を設立して役員報酬を受け取る場合、健康保険・厚生年金の保険料はその年の役員報酬で決まり、前年の給与で決まる国保は払いません。一方、住民税は前年の所得で決まるので、独立した年の住民税は個人事業でも法人でも同じです。独立した年の保険料を個人事業と法人で比べた表は再就職手当は起業でももらえるにあります。

法人化するかどうかは、1年目の負担ではなく、3年目以降の定常状態で比べるものです。当サイトのシミュレーターは定常状態で計算しているので、独立後の売上と経費の見込みで確かめてください。

まとめ

  • 月給40万円の会社員が4月に独立した設例では、税金と保険料は独立した年102.2万円、翌年149.6万円、3年目以降172.7万円
  • 独立した年の住民税(23.0万円)と国保(年度38.1万円)は、会社員時代の給与所得で決まっている
  • 個人事業税は開業年の分から翌年に課税され、開業年は事業主控除が月割(4月開業なら217万5,000円)
  • 収入が同じでも、負担は2年遅れで年70万円増える。1年目の手取りを基準にしない
  • 法人で独立すると国保は払わないが、独立した年の住民税は変わらない

よくある質問

独立した年も会社の年末調整はありますか

年の途中で退職して、その年に再就職していなければ、会社で年末調整は行われません。給与と事業所得を合わせて、翌年3月15日までに確定申告をします。1〜3月の給与から源泉徴収された所得税は、そこで精算されます。

住民税が高いのに収入が少ない1年目はどうすればいいですか

住民税は前年の所得に対する税で、独立した年に払う額は会社員時代の給与で決まっています。減らすことは難しいので、6月から届く納税通知書の額を先に確認し、手元資金を残しておくのが基本です。国民健康保険には所得が大きく下がった場合の減免の制度を設けている自治体もあります。

最初から法人で独立したら、この負担は変わりますか

法人を設立して役員報酬を受け取ると、健康保険・厚生年金はその年の役員報酬で決まり、前年の給与で決まる国民健康保険は払いません。住民税は前年の所得で決まる点が同じなので、独立した年の住民税は変わりません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。