税金の基礎
貸与奨学金の家計基準、個人事業主は売上1,200万円で第二種も外れる
結論
配偶者が無収入で高校3年生の子が1人の世帯では、個人事業主の貸与額算定基準額は売上1,000万円・経費200万円で29.3万円となり第二種だけ、売上1,200万円で41.8万円となり第二種の基準38万1,500円も超えます。法人化して最適報酬(月54万円)にすると16.4万円で、第一種と第二種の併用貸与の基準16万4,600円以下に収まります。
- 貸与額算定基準額=課税標準額×6%−市町村民税調整控除額(政令指定都市は3/4)。2026年度予約採用は併用16万4,600円・第一種18万9,400円・第二種38万1,500円以下
- ふるさと納税・住宅ローン控除などの税額控除は判定に影響しない。動かせるのは所得と所得控除だけ
- JASSOの目安表は給与所得者の世帯を年収、それ以外の世帯を所得で示している。個人事業主は右の列(所得)で読む
日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金は、無利子の第一種と有利子の第二種があり、どちらにも家計基準があります。判定するのは年収ではなく、生計維持者の住民税の課税標準額から計算する「貸与額算定基準額」です。
個人事業主は、この額が給与所得者より高く出ます。同じ利益でも給与所得控除がないためです。法人化して役員報酬に替わると、第二種も対象外だった世帯が第一種・第二種の併用貸与まで届く帯があります。
判定は「貸与額算定基準額」。3つの線がある
JASSOによる、2026年度に大学・短大・専門学校へ進学する人(予約採用)の家計基準です。2025年の収入に基づく2026年度の住民税情報で審査します。
| 希望する奨学金 | 生計維持者の貸与額算定基準額 |
|---|---|
| 第一種・第二種の併用貸与 | 16万4,600円以下 |
| 第一種奨学金(無利子) | 18万9,400円以下 |
| 第二種奨学金(有利子) | 38万1,500円以下 |
貸与額算定基準額の計算式は次のとおりです(100円未満切り捨て)。
(課税標準額)×6% −(市町村民税調整控除額)−(多子控除)−(ひとり親控除)−(私立自宅外控除)
- 政令指定都市に市民税を納めている場合、調整控除額に3/4を掛ける
- 生計維持者が子を3人以上扶養している場合、2人を超える子1人につき4万円を控除
- ひとり親世帯は4万円を控除
- 私立自宅外控除(2万2,000円)は在学採用だけで、予約採用では0円
生計維持者は、父母がいれば原則として父母の2人です。両親の貸与額算定基準額を合計して判定します。
税額控除は効かない
JASSOは、ふるさと納税などの寄附金控除や住宅ローン控除などの税額控除は、貸与額算定基準額に影響しないとしています。これらで所得割が非課税になっていても、基準額は0円にならない場合があります。判定を動かすのは、所得そのものと所得控除だけです。
売上別:個人のままは1,200万円で第二種も対象外
判定ツールと同じ計算エンジンで、個人のままと、法人化して手取りが最大になる役員報酬にしたときの貸与額算定基準額を並べました。
| 売上(経費200万円) | 個人の貸与額算定基準額 | 判定 | 法人化後の役員報酬 | 法人化後の貸与額算定基準額 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 600万円 | 76,500円 | 併用可 | 月28万円 | 38,800円 | 併用可 |
| 800万円 | 185,200円 | 第一種・第二種 | 月42万円 | 104,700円 | 併用可 |
| 1000万円 | 293,400円 | 第二種のみ | 月54万円 | 163,800円 | 併用可 |
| 1200万円 | 417,600円 | 対象外 | 月54万円 | 163,800円 | 併用可 |
| 1500万円 | 610,800円 | 対象外 | 月54万円 | 163,800円 | 併用可 |
| 2000万円 | 910,800円 | 対象外 | 月90万円 | 389,400円 | 対象外 |
前提:横浜市(政令指定都市)・40歳未満・配偶者は無収入・申込者(高校3年生、一般の扶養親族)1人・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。調整控除は市町村民税分に3/4を掛けた。多子控除・ひとり親控除はなし。
個人事業主は売上1,000万円で第一種の線(18万9,400円)を越えて第二種だけになり、売上1,200万円で第二種の線(38万1,500円)も越えます。
法人化後は、売上1,000万〜1,500万円の帯で最適報酬が月54万円のまま動かないため、基準額は16万3,800円で一定です。併用貸与の16万4,600円まで800円しか余裕がない点には注意が必要です。社会保険料や扶養の状況が少し違うだけで、併用から第一種・第二種に1段上がります。
売上2,000万円では最適報酬が月90万円まで上がり、法人化しても第二種の基準を超えます。
役員報酬別:月54万円が併用の上限、月80万円台が第二種の上限
同じ世帯で、役員報酬を動かしたときです。
| 役員報酬(月) | 住民税の課税標準額 | 貸与額算定基準額 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 月40万円 | 1,610,136円 | 93,200円 | 併用可 |
| 月50万円 | 2,416,500円 | 143,800円 | 併用可 |
| 月54万円 | 2,749,296円 | 163,800円 | 併用可 |
| 月60万円 | 3,282,876円 | 195,700円 | 第二種のみ |
| 月65万円 | 3,720,456円 | 222,000円 | 第二種のみ |
| 月70万円 | 4,223,916円 | 252,200円 | 第二種のみ |
| 月80万円 | 5,365,196円 | 320,700円 | 第二種のみ |
| 月90万円 | 6,510,380円 | 389,400円 | 対象外 |
| 月100万円 | 7,979,480円 | 477,600円 | 対象外 |
前提は上の表と同じ。役員報酬が同じなら、売上や会社の利益にかかわらず基準額は同じ。
第一種の18万9,400円を越えるのは月54万円と月60万円の間、第二種の38万1,500円を越えるのは月80万円と月90万円の間です。
JASSOの目安表は「給与所得者以外」の列で読む
JASSOは家計基準に加えて、収入・所得の上限の目安を示しています。この表は、給与所得者の世帯を給与収入、それ以外の世帯を所得金額で表しています。3人世帯(本人・親A・親Bは無収入)の目安はこうです。
| 世帯 | 第一種 | 第二種 | 併用貸与 |
|---|---|---|---|
| 親Aが給与所得者(年間の給与収入) | 716万円 | 1,113万円 | 661万円 |
| 親Aが給与所得者以外(年間の所得金額) | 536万円 | 879万円 | 489万円 |
個人事業主が左の列を見て「売上や利益が1,000万円未満だから第二種は大丈夫」と読むのは誤りです。個人事業主は右の列の所得金額で見ます。売上1,200万円・経費200万円なら事業所得は935万円で、第二種の目安879万円を超えます。上の計算結果と一致します。
JASSOはこの表を目安とし、世帯構成や保険料の支払い状況で上回っても対象になったり、下回っても対象にならなかったりすると注記しています。
判定に使われる年度に注意
予約採用は、申込みの前年の収入に基づく住民税情報で審査します。2026年度の予約採用なら2025年の収入です。法人化した年の役員報酬が審査に使われるのは、法人化の翌年の申込みからです。
給付型の奨学金と授業料減免(修学支援新制度)も同じく課税標準額から計算しますが、区分の線が違います。大学の修学支援新制度と法人化で計算しました。進学費用を公庫から借りる場合の基準は国の教育ローンと法人化で扱っています。
まとめ
- 貸与奨学金の家計基準は、生計維持者の課税標準額×6%−調整控除で出す貸与額算定基準額で判定する。2026年度予約採用は併用16万4,600円・第一種18万9,400円・第二種38万1,500円以下
- 配偶者無収入・子1人の世帯なら、個人事業主は売上1,000万円で第二種のみ、1,200万円で第二種も対象外
- 最適報酬で法人化すると、売上1,000万〜1,500万円の帯で併用貸与の基準に収まる。ただし余裕は800円
- JASSOの目安表は、個人事業主なら「給与所得者以外(所得金額)」の列で読む
奨学金の家計基準は法人化の損得を決める主因ではありませんが、子の進学の2〜3年前には判断材料になります。まず判定ツールで自分の売上と経費での最適報酬を確かめてください。
よくある質問
個人事業主は貸与奨学金の家計基準をどう判定されますか?
生計維持者(原則は父母2人)の住民税情報から、課税標準額×6%−市町村民税調整控除額で貸与額算定基準額を計算し、第一種は18万9,400円以下、第二種は38万1,500円以下(2026年度予約採用)かで判定します。年収ではなく住民税の課税標準額が基準です。
会社の利益は家計基準に入りますか?
家計基準は生計維持者個人の住民税情報で判定するため、社長の場合は役員報酬が給与所得として入り、会社に残した利益そのものは入りません。
ふるさと納税をすれば家計基準に通りやすくなりますか?
なりません。JASSOは、ふるさと納税などによる寄附金控除や住宅ローン控除などの税額控除は貸与額算定基準額に影響しないとしています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。