インボイス・消費税

法人が土地を売った年の消費税。準ずる割合の承認申請は期末までに

結論

法人が土地を売ると譲渡対価の全額が課税売上割合の分母に入り、課税売上4,000万円の設例では200.5万円を超える売却で95%を割ります。単発の売却なら、前3年の通算課税売上割合と前期の割合の低い方で「準ずる割合」の承認を受けられますが、課税期間の末日までに申請書を出し、翌日から1か月以内に承認されることが条件です。

  • 承認を受けても95%以上かどうかは実際の課税売上割合で判定する(基本通達11-5-9)。全額控除には戻らず、準ずる割合を使えるのは個別対応方式の共通仕入れだけ
  • 土地を6,000万円で売った設例では、承認の有無で仕入控除税額が35.8万円変わる。土地の売却にだけかかった仕入れの税額は、承認を受けても控除できない
  • 承認を使った翌課税期間に不適用届出書を出さないと、翌課税期間以降の承認が取り消される(国税庁 質疑応答事例)

土地の売却代金そのものに消費税はかかりません。それでも法人の消費税が増えることがあります。非課税売上として課税売上割合の分母に入り、仕入れにかかった消費税の一部が控除できなくなるからです。

国税庁はこの場面のために、「たまたま土地を売っただけ」なら過去の割合で計算してよいという取扱いを示しています。ただし条件と期限があり、承認を受けても元どおりの全額控除には戻りません。

土地の売却代金は、全額が分母に入る

課税売上割合は、課税期間中の資産の譲渡等の対価の額の合計に占める、課税資産の譲渡等の対価の額の割合です(消費税法30条6項、施行令48条)。土地の譲渡は非課税なので、売却代金は分子に入らず分母にだけ入ります。

有価証券や貸付金などの金銭債権を譲渡した場合は、譲渡対価の**5%**だけを分母に入れる特例があります(施行令48条5項)。土地にはこの特例がありません。売却代金が全額、分母に乗ります。

設例で、毎期の課税売上高4,000万円、受取利息10万円の法人を置きます。土地を売らない年の課税売上割合は99%台です。この法人が課税売上割合95%を割るのは、次の売却額を超えたときです。

95%を割る土地の譲渡対価:200.5万円を超えたとき(課税売上4,000万円・受取利息10万円)

本業の売上の5%程度の土地を売っただけで、全額控除の条件から外れます。課税売上割合の端数は任意の位で切り捨ててよいとされていますが、四捨五入して95%に届かせることは認められません(国税庁 質疑応答事例「課税売上割合の端数処理」)。

個人の自宅と違い、法人の土地は全部が「事業として」

個人事業者が生活の用に供している資産を売っても、「事業として」の譲渡には当たりません(消費税法基本通達5-1-1の注1)。自宅を売っても、個人の課税売上割合は動きません。

法人は違います。法人が行う資産の譲渡は、その全てが「事業として」に該当します(同注2)。遊休地、社宅の敷地、資材置場、役員から引き継いだ土地のどれを売っても、課税売上割合の分母に入ります。法人化したあとに不動産を会社で持つ場合、この点は個人のときと前提が変わります。法人成りで個人から会社へ資産を移すときの消費税は法人成りの資産引継ぎの記事で扱っています。

国税庁が示す「たまたま」の条件と、使える割合

課税売上割合に準ずる割合は、本来は従業員数や使用面積など、共通仕入れの性質に応じた合理的な基準で算出する割合です(基本通達11-5-7)。土地の売却で割合が一時的に下がった場合については、国税庁の質疑応答事例が別の算出方法を示しています。

承認が認められるのは、次の2つを満たす場合に限られます。

  • 土地の譲渡が単発のものであること
  • 土地の譲渡がなかったとした場合に、事業の実態に変動がないと認められること

後者は、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合とされています。

承認される割合は、次のいずれか低い割合です。

  1. 土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合(施行令53条の計算方法による)
  2. 土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合

設例の法人の前3期を当てはめると、次のとおりです(scripts/tamatama-tochi-jyunzuru-wariai.mjs で計算)。

項目割合
3期前(課税売上3,800万円・非課税8万円)99.78%
2期前(課税売上3,900万円・非課税12万円)99.69%
1期前(課税売上4,000万円・非課税10万円)99.75%
前3期の通算課税売上割合99.74%
前課税期間の課税売上割合99.75%
承認される割合(いずれか低い方)99.74%
前3期の最高と最低の差(5%以内が条件)0.09%

どちらの割合も前の課税期間の実績から出すため、比べる過去の課税期間があることが前提の取扱いです。土地の売買を繰り返している法人は「単発」とはいえないため、この取扱いの前提から外れます。

承認を受けても、全額控除には戻らない

ここが誤解されやすい点です。承認された割合が99.74%でも、その課税期間の仕入税額を全額控除できるわけではありません。

課税売上割合が95%未満かどうかは、税務署長の承認を受けているかどうかにかかわらず、課税売上割合によって判定します(基本通達11-5-9)。国税庁の質疑応答事例も、準ずる割合が95%以上でも課税売上割合が95%未満なら、個別対応方式か一括比例配分方式で計算すると回答しています。

そして準ずる割合が使えるのは、個別対応方式の「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」の税額を按分する部分だけです(消費税法30条3項)。計算は次のようになります。

  • 課税売上げにのみ要する仕入れ(イ):全額控除。承認とは関係ない
  • 共通して要する仕入れ(ハ):課税売上割合の代わりに、承認された割合を掛ける
  • 非課税売上げにのみ要する仕入れ(ロ):控除できない。土地の売却の仲介手数料などはここに入る

設例の法人で、土地の譲渡対価を変えて計算しました。

土地の譲渡対価課税売上割合承認なし・個別対応方式承認なし・一括比例配分方式承認あり・個別対応方式承認で増える控除額
1,000万円79.84%197.9万円183.6万円209.8万円11.9万円
3,000万円57.06%184.2万円131.2万円209.8万円25.6万円
6,000万円39.96%174.0万円91.9万円209.8万円35.8万円
10,000万円28.55%167.1万円65.7万円209.8万円42.7万円

※ 毎期の課税売上4,000万円・受取利息10万円。課税仕入れの税額はイ(課税売上げのみ)150万円・ハ(共通)60万円・ロ(土地の売却のみ)20万円(国・地方合計) ※ 承認される割合は 99.74%。割合は小数点以下第4位(%表示で小数第2位)未満を切り捨て ※ 「承認で増える控除額」は、承認なしで有利な方式との差。土地を売らなかった年はロがなく、95%以上なら全額控除で210.0万円

承認ありの列が土地の売却額にかかわらず209.8万円で止まるのは、割合が過去の実績で固定されるからです。承認がなければ、売却額が大きいほど控除額は減ります。承認の価値は、土地を高く売った年ほど大きくなります。

一括比例配分方式を選んでいると、承認の出番がない

準ずる割合は個別対応方式のハにしか使えません。一括比例配分方式は、すべての仕入れの税額に課税売上割合を掛ける方法で、準ずる割合を差し込む場所がありません。

さらに一括比例配分方式を選んだ事業者は、2年間継続して適用した後でなければ個別対応方式に戻れません(消費税法30条5項)。前期に一括比例配分方式を選んでいた法人は、土地を売った期に個別対応方式へ切り替えられず、承認を受けても使えないことになります。個別対応方式は仕入れをイ・ロ・ハに区分していることが前提なので、帳簿の区分も先に整えておく必要があります。2つの方式の選び方は個別対応方式と一括比例配分方式の記事にまとめています。

共通仕入れが多いほど、承認の価値は大きい

承認で増える控除額は、ハの税額に「承認された割合と実際の課税売上割合の差」を掛けた額です。家賃・通信費・会計ソフト・顧問料のように、どの売上のためとも言えない仕入れが多い法人ほど差が開きます。土地を6,000万円で売った年について、ハの税額だけを変えました。

ハ(共通)の税額承認なし・個別対応方式承認あり・個別対応方式承認で増える控除額承認を受けても控除できない額
30万円162.0万円179.9万円17.9万円20.1万円
60万円174.0万円209.8万円35.8万円20.2万円
120万円198.0万円269.7万円71.7万円20.3万円
240万円245.9万円389.4万円143.5万円20.6万円

※ イ150万円・ロ20万円は上の表と同じ。「控除できない額」はイ+ハ+ロの合計から承認ありの控除額を引いた額(ロの全額とハの一部)

承認を受けても、ロの20万円は戻りません。 土地の売却のためだけに払った仲介手数料などの消費税は、どの計算方法でも控除の対象外です。

期限は課税期間の末日。1か月のみなし承認がある

準ずる割合は、税務署長の承認を受けた日の属する課税期間から適用されます(消費税法30条3項)。承認は申請書を出した日ではなく、税務署長が承認した日で決まります。審査には一定の期間が必要なため、国税庁は時間的余裕をもって申請書を出すよう案内しています。

期末ぎりぎりの申請を救う規定もあります。適用を受けようとする課税期間の末日までに申請書を提出し、その翌日から1か月を経過する日までの間に承認があったときは、その課税期間の末日に承認があったものとみなされます(施行令47条6項)。

3月決算の法人なら、次のように整理できます。

申請書の提出日承認の日土地を売った期に使えるか
期中(3月31日まで)期中使える
3月31日まで4月1日〜4月30日使える(3月31日に承認があったものとみなす)
3月31日まで5月1日以降使えない(承認の日の属する翌期から適用)
4月1日以降いつでも使えない

申請書には、用いようとする割合の算出方法の内容などを記載します(施行令47条1項)。国税庁は、たまたま土地の譲渡があった場合の申請書の記載例を質疑応答事例のページで公開しています。税務署長は、割合が合理的に算出されたものでないと認めるときは申請を却下します(同条2項)。

土地の売却が決算月に入った場合、申請書を出せる時間は数週間しかありません。売却の話が出た段階で、どの課税期間の譲渡になるかを確認しておく必要があります。

翌課税期間に不適用届出書を出す

この承認は、たまたま土地の譲渡があった課税期間のためのものです。国税庁は、その課税期間で適用したときは翌課税期間に「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出するよう求め、提出がない場合は、承認を受けた日の属する課税期間の翌課税期間以降の承認を取り消すとしています。

不適用届出書は、適用をやめようとする課税期間の末日までに提出します。届出書を提出した日の属する課税期間以後は、準ずる割合を用いずに計算します(消費税法30条3項ただし書)。土地を売った期の申告が終わったら、翌期のうちに出しておく手続きです。

法人化の判断とどうつながるか

この論点が効くのは、一般課税で申告している法人だけです。簡易課税で申告していれば課税売上割合による按分を行わないので、土地を売っても仕入控除税額は変わりません。不動産を持つ法人で設備投資の還付を考える場合も、新設法人の消費税還付の記事の還付額は課税売上割合100%が前提なので、土地を売る期と重なれば小さくなります。

逆に言えば、土地を持つ法人では、売却の年だけ消費税の計算が一段複雑になります。設例では承認の有無で35.8万円の差でしたが、これは課税売上4,000万円・共通仕入れの税額60万円という前提での数字です。売上の規模と仕入れの構成で金額は動きます。

法人化そのものの損得は、消費税だけでは決まりません。インボイス登録の有無を含めた全体の差は、一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で判定ツールにかけて確かめてください。計算の前提は計算の考え方に置いています。

まとめ

  • 土地の売却代金は全額が課税売上割合の分母に入ります。課税売上4,000万円の設例では、200.5万円を超える売却で95%を割りました
  • 単発の売却で、過去3年の課税売上割合の差が5%以内なら、前3年の通算課税売上割合と前期の割合の低い方で準ずる割合の承認を受けられます
  • 承認を受けても95%の判定は実際の課税売上割合で行います。準ずる割合を使えるのは個別対応方式の共通仕入れだけで、土地の売却にだけかかった仕入れの税額は控除できません
  • 課税期間の末日までに申請書を出し、翌日から1か月以内に承認されれば、その期に適用できます。それより遅い承認は翌期からです
  • 適用した翌課税期間に不適用届出書を出さないと、翌課税期間以降の承認が取り消されます

よくある質問

個人事業主が自宅の土地を売った場合も、課税売上割合の分母に入りますか

個人事業者が生活の用に供している資産を譲渡する場合は「事業として」に該当しないとされているため(消費税法基本通達5-1-1の注1)、資産の譲渡等には当たりません。法人が行う資産の譲渡は、その全てが「事業として」に該当します。

承認を受けた準ずる割合が95%以上なら、仕入れの消費税を全額控除できますか

できません。95%未満かどうかは承認を受けているかどうかにかかわらず課税売上割合で判定するため(基本通達11-5-9)、土地を売って課税売上割合が95%を割った課税期間は、個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。

簡易課税で申告している法人も、この承認申請が必要ですか

簡易課税は課税売上高にみなし仕入率を掛けて仕入控除税額を計算するため、課税売上割合による按分を行いません。土地を売っても仕入控除税額の計算には影響しないので、準ずる割合の承認を受ける意味がありません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。