インボイス・消費税
プラットフォーム課税で海外アプリの消費税は控除できる?令和7年4月からの変化
結論
令和7年4月1日以後、国外の開発元が特定プラットフォーム事業者(App Store・Google Playなど5社)のストアで売り、代金をストア経由で払うアプリ・電子書籍は、ストアの運営会社が売ったものとみなされます。開発元がインボイス未登録でも、登録済みの運営会社の適格請求書を保存すれば、一般課税で仕入税額控除ができます。年13.2万円(税込)の課金なら控除額は1.2万円です。
- 対象外は3つ。国内の開発元のアプリ、開発元のWeb決済で直接払う場合、事業者向けの役務(広告配信など)。最後はリバースチャージのまま
- 名簿の5社のうち、iTunes・Google Asia Pacific・AWSジャパン・任天堂は令和5年10月1日に登録済み。令和8年12月指定のEpicは登録番号が見つからない(2026-10-09確認)
- 控除額が納付税額に効くのは一般課税の期間だけ。簡易課税・2割特例では変わらない。法人は2割特例の後継の3割特例を使えない
海外のアプリや電子書籍は、開発元がインボイス登録していなければ仕入税額控除ができない、という整理が令和5年10月から続いてきました。この結論は、ストアの課金で払う場合に限って、令和7年4月に変わっています。
変わったのは「誰が売り手か」です。開発元ではなく、国税庁長官が指定したストアの運営会社が売ったものとみなされます。運営会社はインボイス登録を済ませているため、その領収書を保存すれば控除できます。ただし、同じアプリでも買い方によっては対象外になります。
売り手が開発元からストアの運営会社に入れ替わった
消費税法15条の2は、次の3つがそろう取引について、特定プラットフォーム事業者が役務の提供を行ったものとみなすと定めています。
- 売り手が国外事業者(非居住者の個人事業者・外国法人)である
- アプリ・電子書籍・音楽の配信など、消費者向けの電気通信利用役務の提供である
- デジタルプラットフォームを介して行われ、代金を特定プラットフォーム事業者を介して受け取る
特定プラットフォーム事業者に指定されるのは、国外事業者が自分のストアを介して日本向けに行う消費者向けの役務提供の対価が、年50億円を超えるプラットフォーム事業者です。指定を受けると国税庁が名簿を公表し、運営会社は対象の開発元に通知します。
改正前は、国外の開発元が自分で日本の申告・納税を行う建前でした。改正後は、代金を集めているストアの運営会社が開発元に代わって申告・納税します。買い手の側から見ると、インボイスの発行者もストアに集約されたことになります。
国税庁のインボイスQ&A 問103-4は、プラットフォーム課税の対象となる取引なら特定プラットフォーム事業者が適格請求書を交付し、買い手はそれを保存して仕入税額控除を行うと答えています。
| 令和7年3月31日まで | 令和7年4月1日以後 | |
|---|---|---|
| 売り手(申告・納税する人) | 国外の開発元 | 特定プラットフォーム事業者 |
| 適格請求書を交付する人 | 国外の開発元(登録している場合だけ) | 特定プラットフォーム事業者(登録している場合) |
| 開発元が未登録のときの控除 | できない | 運営会社が登録済みならできる |
開発元自身がインボイス登録をしていても、プラットフォーム課税の対象になった取引については開発元に交付義務はありません(国外事業者用Q&A 問10)。保存するのは運営会社の領収書です。
名簿の5社と、インボイスの登録状況
令和8年6月10日現在の特定プラットフォーム事業者名簿に載っているのは次の5社です。登録状況は、名簿の法人番号を適格請求書発行事業者公表サイトで検索して確かめました。
| デジタルプラットフォーム | 特定プラットフォーム事業者 | 指定の効力発生日 | インボイス登録(2026-10-09確認) |
|---|---|---|---|
| App Store、Apple Books、Apple Podcasts | iTunes株式会社 | 令和7年4月1日 | T8011101043359(令和5年10月1日登録) |
| Google Play | Google Asia Pacific Pte. Ltd. | 令和7年4月1日 | T4700150006045(令和5年10月1日登録) |
| AWS Marketplace | アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 | 令和7年4月1日 | T6011001106696(令和5年10月1日登録) |
| ニンテンドーeショップ | 任天堂株式会社 | 令和7年4月1日 | T1130001011420(令和5年10月1日登録) |
| Epic Games Store、Fab | Epic Games Commerce GmbH | 令和8年12月1日 | 法人番号3700150135084の登録番号は検索で見つからない |
最初の4社は、制度が始まる前から登録を済ませています。この4つのストアで課金した国外の開発元のアプリ・電子書籍は、令和7年4月以後、開発元の登録の有無に関係なく控除の対象になります。
注意が要るのは5社目です。Epic Games StoreとFabは、指定の効力が令和8年12月1日に生じます。それまでは従来どおり開発元が売り手です。12月以後は運営会社が売り手とみなされますが、確認した時点では登録番号が見つかりませんでした。運営会社が登録していなければ、適格請求書を受け取れません。Fabでゲームや映像の素材を買っている一般課税の会社は、12月以後の領収書に登録番号が載るかを確認する必要があります。
名簿は指定や解除のたびに更新されます。上の表は令和8年6月10日現在の版です。
同じアプリでも対象外になる3つの買い方
国税庁の概要パンフレットとQ&Aは、次の取引をプラットフォーム課税の対象外としています。
| 買い方 | 売り手 | 一般課税での控除 |
|---|---|---|
| 国内の開発元のアプリをストアで買う | 国内の開発元 | 開発元が登録済みなら可。未登録なら免税事業者等からの仕入れの経過措置 |
| 国外の開発元のアプリを、開発元のWeb決済で直接買う(Q&A 問6) | 国外の開発元 | 開発元が登録済みなら可。未登録なら0 |
| 広告配信など「事業者向け」の役務 | 国外の事業者 | リバースチャージ。帳簿の保存だけで可 |
いちばん差が出るのは2行目です。同じ海外のツールでも、iPhoneのアプリ内課金で払えばストアの取引、開発元のWebサイトでカード決済すれば開発元との直接取引になります。国税庁の質疑応答事例は、未登録の国外事業者から受けた消費者向けの役務を仕入税額控除の対象外とし、国内の免税事業者からの仕入れに認められる経過措置も適用しないとしています。
3行目の事業者向けの役務は、プラットフォーム課税の条文から最初に除かれています。AWS Marketplaceが名簿に載っていても、事業者向けに当たる製品は従来どおり受け手のリバースチャージです。リバースチャージが実際に必要になる年は限られます。条件は海外のネット広告費のリバースチャージで計算しています。
1行目の国内の開発元は、ストアで売っていても売り手は開発元のままです。法人成りした国内のアプリ開発者も同じで、売る側の消費税の扱いは制度の前後で変わっていません。ストア経由の売上で使う媒介者交付特例は媒介者交付特例と法人成りで扱っています。
一般課税の法人で、控除額はいくらになるか
控除できるかどうかで動くのは、支払額(税込)の110分の10です。
表1 国外事業者の消費者向けアプリ・電子書籍などに払う額と、一般課税で控除できる消費税
| 年間の支払額(税込) | ストアの課金で払う(令和7年4月以後・ストアが登録済み) | 開発元のWeb決済で直接払う(開発元が未登録) | 差 |
|---|---|---|---|
| 66,000円 | 6,000円 | 0円 | 6,000円 |
| 132,000円 | 12,000円 | 0円 | 12,000円 |
| 330,000円 | 30,000円 | 0円 | 30,000円 |
| 660,000円 | 60,000円 | 0円 | 60,000円 |
| 1,320,000円 | 120,000円 | 0円 | 120,000円 |
※ 一般課税で、課税売上割合95%以上(全額控除)の法人の場合。消費者向け電気通信利用役務の提供(事業者向けに当たらないもの)に限る。ストア経由は特定プラットフォーム事業者が交付する適格請求書(領収書のデータ)を保存している前提。開発元のWeb決済は、開発元が国外事業者で適格請求書発行事業者の登録を受けていない場合で、国内の免税事業者からの仕入れに認められる経過措置も使えない。当サイトで計算(scripts/platform-kazei-shiire-kojo.mjs)
月1.1万円の課金なら年1.2万円です。同じツールに年額を払うなら、未登録の開発元にはストア経由で払うほうが控除の分だけ安くなります。ただし、ストアの価格が開発元のWeb価格より高く設定されていることもあるので、比べるのは控除後の金額です。
この差が納付税額に効くのは、一般課税で申告する課税期間だけです。簡易課税と2割特例は、売上の消費税額から納付税額を計算するため、何から仕入れたかで納付額は変わりません。
法人成りすると、この区別が効き始める
個人事業主のうちは、インボイス登録をしていても2割特例(個人は令和8年分まで)や簡易課税で申告している人が多く、この論点は表に出ません。個人には2割特例の後継として3割特例が設けられましたが、対象は個人事業者だけで法人は使えません。
2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間までの措置です。10月以後に設立した会社がインボイス登録をすると、申告は簡易課税(基準期間の課税売上高5,000万円以下で届出をした場合)か一般課税になります。一般課税を選んだ会社では、海外ツールの支払いがストア経由か直接かで、毎年の控除額が分かれます。
一方、法人化の損得そのものは、この控除額よりずっと大きな単位で動きます。
表2 アプリ開発・デザインの個人事業主が法人化した場合の年間の差額
| 売上(税抜)・経費 | 最適な役員報酬(月額) | 法人化の実質差額(3年目以降・年) | 損益分岐となる所得 |
|---|---|---|---|
| 800万円・200万円 | 42万円 | −37.6万円 | 1,266万円 |
| 1,200万円・300万円 | 54万円 | −18.4万円 | 1,266万円 |
| 1,800万円・400万円 | 54万円 | +13.7万円 | 1,266万円 |
※ 東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・合同会社・インボイス登録済み・最適な役員報酬で計算/2026年(令和8年)分基準。消費税の納付額は個人・法人で同じとみなしている。実質差額は税理士報酬を差し引いた後。損益分岐は青色申告特別控除の前の事業所得。当サイトで計算(scripts/platform-kazei-shiire-kojo.mjs)
表1の控除額は、年66万円の課金でも6万円です。法人化するかどうかを決めるのは表2の差額で、プラットフォーム課税は法人化した後の経理の論点として押さえておくものです。一般課税と簡易課税の比べ方は簡易課税のみなし仕入率で扱っています。
令和10年4月からは物品の販売にも広がる
令和8年4月に成立した消費税法の改正で、この仕組みは物品にも広がります。令和10年4月1日以後、国税庁長官が指定した「第二種プラットフォーム事業者」のオンラインモールを介し、代金をその事業者経由で受け取る次の販売は、運営会社が売ったものとみなされます。
- 国外事業者が国内で行う資産の譲渡
- 国外から通信販売で発送する1点1万円(税抜)以下の資産の譲渡(特定少額資産の譲渡)
同じ日に、今の特定プラットフォーム事業者は「第一種プラットフォーム事業者」に名称が変わります。第二種の指定は令和9年1月から3月の取引額で判定され、効力は令和10年4月1日に生じます。どのモールが指定されるかは、まだ公表されていません。現時点で海外の出品者から買う物品は、プラットフォーム課税の対象外です。
まとめ
- 令和7年4月1日以後、国外の開発元がApp Store・Google Playなどの指定ストアで売り、ストア経由で払う消費者向けのアプリ・電子書籍は、ストアの運営会社が売ったものとみなされる
- 名簿の5社のうち4社は令和5年10月1日に登録済みで、開発元が未登録でも運営会社の適格請求書で控除できる。令和8年12月指定のEpicは確認時点で登録番号が見つからない
- 国内の開発元のアプリ、開発元のWeb決済での直接払い、事業者向けの役務は対象外。未登録の国外事業者への直接払いは控除0で、経過措置もない
- 控除額は支払額(税込)の110分の10で、効くのは一般課税の期間だけ。法人は3割特例を使えないので、法人成り後に一般課税を選ぶと区別が効き始める
- 令和10年4月からは第二種プラットフォーム事業者を介した物品販売にも広がり、今の制度は「第一種」に名称が変わる
海外ツールの控除額は、法人化の損得を左右する大きさではありません。法人化するかどうかは、インボイス登録の有無を入れたうえで、自分の売上と経費で確かめてください。
よくある質問
App Storeで買った海外アプリの領収書は、誰の適格請求書として保存すればよいですか
プラットフォーム課税の対象なら、特定プラットフォーム事業者(App StoreならiTunes株式会社)が適格請求書を交付します(インボイスQ&A 問103-4)。開発元の登録番号ではなく、運営会社の登録番号が載っているかを確認して保存します。電子データで受け取った場合は、電子帳簿保存法に準じた方法か、整然と出力した書面で保存します。
自分が作ったアプリをApp Storeで売っている個人事業主にも関係しますか
プラットフォーム課税の対象は国外事業者が行う役務の提供なので、日本に住む個人や日本の法人が売るアプリは対象外です(国税庁 概要パンフレット)。法人成りしても国内事業者のままなので、売る側の消費税の扱いは従来どおりです。
令和7年3月以前に買った海外アプリにもさかのぼって適用されますか
されません。プラットフォーム課税は令和7年4月1日以後に行われる役務の提供から適用されます。それ以前に未登録の国外事業者から受けた消費者向けの役務は、ストア経由でも仕入税額控除の対象外です。
Amazonで海外の出品者から物品を買う場合も、運営会社の取引になりますか
現時点ではなりません。物品販売は電気通信利用役務の提供ではないため、プラットフォーム課税の対象外です(国税庁 Q&A 問5)。令和8年4月の改正で、令和10年4月1日以後は「第二種プラットフォーム事業者」を介した国外事業者の物品販売にも同じ仕組みが広がります。
出典
- e-Gov法令検索 消費税法(15条の2 特定プラットフォーム事業者を介して行う電気通信利用役務の提供)
- 国税庁 消費税のプラットフォーム課税について
- 国税庁 消費税のプラットフォーム課税について(令和6年4月・概要)
- 国税庁 特定プラットフォーム事業者名簿(令和8年6月10日現在)
- 国税庁 消費税のプラットフォーム課税に関するQ&A(国外事業者用・令和6年7月)
- 国税庁 インボイスQ&A 問103-4 プラットフォーム課税の対象となる取引に係る適格請求書等
- 国税庁 質疑応答事例 いわゆる「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合の仕入税額控除
- 国税庁 タックスアンサー No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係
- 国税庁 消費税法改正のお知らせ(令和8年4月)
- 国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト
- 国税庁 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。